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Second Chapter
オレ達の知らぬ所で危機迫る
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昼過ぎからやけに帝国城が騒がしいと思ったら、夜になる直前に青い顔をした宦官がやって来て、
「皇族の方々は急ぎ『東宮御所』に避難せよとのご下命でございまする!」
「一体、何があったのだ?」
「ピシュトーナ家の反乱軍に帝都が攻囲されてございます!」
「何だと!?」
「帝都近くのガルヴァリー大河の向こうにも!四方八方を地平線が見えぬまでピシュトーナ家の軍勢が埋め尽くしておりまする!もはや帝都へ攻め寄せるも時間の問題!」
「そんな数の兵士を何時、何処でどうやって用意したのだ!」
大軍の用意には時間がかかるし、そんな大軍の動きなんてすぐに周囲に気付かれるだろうが!
「兵士ではありませぬ!何れもピシュトーナ家当主の弟ツェクでございまする!」
「は……?」
「精霊獣の魔力を悪用したピシュトーナ家の一族の固有魔法は、もはや神魔の領域にて!通常ならば2体が限度の『分身』が、無制限に行えるも同じ模様!」
そこで事情を調べに行っていたクノハルが帰ってきたので、オレ達は宦官に、
「急ぎ移動の支度をする」と帰らせて、皆で机を囲んだのだった。
「……そんな事が、起きていたのか」
それは帝国城も大騒ぎになるはずだ。帝都がここまでの危機に陥ったのは歴史上でも数回もない。
そして陥落した国の都で起きるのは、いつだって――。
クノハルは冷静に、
「『裂縫』が現在も装置の摘出手術をしているそうです。これに失敗した場合は、事態の打開のためにセージュを殺さざるを得ないでしょう。しかし、救援が来るまで持ちこたえられるかどうか……」
オユアーヴが顔をしかめて、「本来ならすぐに殺した方が被害は出ない。だが……それは嫌だな」
『少しは人の心が分かって来たじゃあないか、オユアーヴ』
無音通信の向こうでロウが少し笑ったのが分かった。
『オユアーヴってとことん人の気持ちが分からないけれど、人が嫌がったり嬉しがったりした事への学習能力が無い訳じゃあないのよね!嫌だ、止めてって言われた事も、有り難う嬉しいって言われた事も、ちゃんと覚えて気にしているだけまだ大したものよー?ロウなんてこの可愛くってブリリアントでお利口さんのパーシーバーちゃんが口が酸―っぱくなるくらい言っても、全然赤字経営を止めないんだものーっ!』
「……今ひとつ分かってはいないが、少しは覚えている」
『それで良いさ』
ロウが深呼吸してから、暗い声で話し始めた。
『実は、昼頃にゲイブンが「逆雷」の爺さんの屋敷に担ぎ込まれた』
「何て事!」とユルルアちゃんも目を見張った。
『出血が酷いらしくてな……目覚めるかどうか分からん、と言われたよ』
「何処で見つかったの、ロウさん!」
『案の定、ピシュトーナ家のあの屋敷の地下に監禁されていたらしい。調査に来た「閃翔」が見つけたらしくてな』
「ゲイブンが……!」
泣きそうな顔をするユルルアちゃんだったが、紙を持ってきて文をしたためだした。
「誰への文ですか?」
不思議そうな顔のクノハルに、ユルルアちゃんはきっぱりと言う。
「私の実家の兄上へ、優秀な医者と薬を手配して貰うようにお願いするわ」
「カドフォ公家は、こと医薬に関係する固有魔法に秀でた者が多いのでしたね」
「私も『劇毒』でなければ良かったのにと思うわ」
「毒にならぬものは薬にもなりませんから」
これは、きっと褒めているのだろうな。
いや、流石に褒めているんだよな?
すぐにユルルアちゃんが書き上げた文をオユアーヴに託すと、「すぐに届ける」と言ってオユアーヴは走って行った。
自分に出来る事をやったユルルアちゃんは、少しすっきりとした顔をしてオレ達に向かう。
「テオ様、如何されますか?」
「『これ』の試し撃ちにも丁度良い」
オレ達は『シルバー&ゴースト・ネクスト』を握りしめた。
さあ、ようやくだ。
オレ達の時間が――夜が来たのだ。
「すぐに出る。後を頼む」
「ご武運を!」
「皇族の方々は急ぎ『東宮御所』に避難せよとのご下命でございまする!」
「一体、何があったのだ?」
「ピシュトーナ家の反乱軍に帝都が攻囲されてございます!」
「何だと!?」
「帝都近くのガルヴァリー大河の向こうにも!四方八方を地平線が見えぬまでピシュトーナ家の軍勢が埋め尽くしておりまする!もはや帝都へ攻め寄せるも時間の問題!」
「そんな数の兵士を何時、何処でどうやって用意したのだ!」
大軍の用意には時間がかかるし、そんな大軍の動きなんてすぐに周囲に気付かれるだろうが!
「兵士ではありませぬ!何れもピシュトーナ家当主の弟ツェクでございまする!」
「は……?」
「精霊獣の魔力を悪用したピシュトーナ家の一族の固有魔法は、もはや神魔の領域にて!通常ならば2体が限度の『分身』が、無制限に行えるも同じ模様!」
そこで事情を調べに行っていたクノハルが帰ってきたので、オレ達は宦官に、
「急ぎ移動の支度をする」と帰らせて、皆で机を囲んだのだった。
「……そんな事が、起きていたのか」
それは帝国城も大騒ぎになるはずだ。帝都がここまでの危機に陥ったのは歴史上でも数回もない。
そして陥落した国の都で起きるのは、いつだって――。
クノハルは冷静に、
「『裂縫』が現在も装置の摘出手術をしているそうです。これに失敗した場合は、事態の打開のためにセージュを殺さざるを得ないでしょう。しかし、救援が来るまで持ちこたえられるかどうか……」
オユアーヴが顔をしかめて、「本来ならすぐに殺した方が被害は出ない。だが……それは嫌だな」
『少しは人の心が分かって来たじゃあないか、オユアーヴ』
無音通信の向こうでロウが少し笑ったのが分かった。
『オユアーヴってとことん人の気持ちが分からないけれど、人が嫌がったり嬉しがったりした事への学習能力が無い訳じゃあないのよね!嫌だ、止めてって言われた事も、有り難う嬉しいって言われた事も、ちゃんと覚えて気にしているだけまだ大したものよー?ロウなんてこの可愛くってブリリアントでお利口さんのパーシーバーちゃんが口が酸―っぱくなるくらい言っても、全然赤字経営を止めないんだものーっ!』
「……今ひとつ分かってはいないが、少しは覚えている」
『それで良いさ』
ロウが深呼吸してから、暗い声で話し始めた。
『実は、昼頃にゲイブンが「逆雷」の爺さんの屋敷に担ぎ込まれた』
「何て事!」とユルルアちゃんも目を見張った。
『出血が酷いらしくてな……目覚めるかどうか分からん、と言われたよ』
「何処で見つかったの、ロウさん!」
『案の定、ピシュトーナ家のあの屋敷の地下に監禁されていたらしい。調査に来た「閃翔」が見つけたらしくてな』
「ゲイブンが……!」
泣きそうな顔をするユルルアちゃんだったが、紙を持ってきて文をしたためだした。
「誰への文ですか?」
不思議そうな顔のクノハルに、ユルルアちゃんはきっぱりと言う。
「私の実家の兄上へ、優秀な医者と薬を手配して貰うようにお願いするわ」
「カドフォ公家は、こと医薬に関係する固有魔法に秀でた者が多いのでしたね」
「私も『劇毒』でなければ良かったのにと思うわ」
「毒にならぬものは薬にもなりませんから」
これは、きっと褒めているのだろうな。
いや、流石に褒めているんだよな?
すぐにユルルアちゃんが書き上げた文をオユアーヴに託すと、「すぐに届ける」と言ってオユアーヴは走って行った。
自分に出来る事をやったユルルアちゃんは、少しすっきりとした顔をしてオレ達に向かう。
「テオ様、如何されますか?」
「『これ』の試し撃ちにも丁度良い」
オレ達は『シルバー&ゴースト・ネクスト』を握りしめた。
さあ、ようやくだ。
オレ達の時間が――夜が来たのだ。
「すぐに出る。後を頼む」
「ご武運を!」
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