【完結】ガン=カタ皇子、夜に踊る

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Final Chapter

帝国VS聖地

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 皇帝ヴァンドリックの御前で、レトゥがチップとペンダントを手にして魔力を媒体につなぎ合わせる。
すると二つは静かに融合して、壁にエルフ族が何をやってきたのか、何を目的としているかの映像を音声付きで投影し始めたのだった――。
さしものヴァンドリックも完全に黙したまま全てを見終えた最後に、ハルハの声が入っていた。

 『「ヴェロキラプトル」は精霊獣インベンダーの知識と力を使って、聖地にとんでもないモノを構築しましたー。「マステマ・ジャッジメント」と呼んでいる、聖地のヘルリアン由来の莫大な魔力で起動する最悪の兵器ですー……。これは直撃すると帝都を跡形も無く消し飛ばす威力なんですがー、一番の問題はそこじゃ無いんですよねー。3発放って帝都を完全に焼失させた後にー、「サタン・サークル」を爆心地に打ち込んで、そこから大気中にありとあらゆる知的生命体をヴォイドと化す病原体と病原体を宿す物質を拡散させる計画なんですよー。この病原体はかつてエルデベルフォーニを滅ぼした病の源と全く同種でしてー、エルフを除く全種族に感染するんですねー。「ヴェロキラプトル」の計画では7日以内に、世界中の全ての知的生命体が生きたままヴォイドに変わりますー……』


 一刻の猶予も無いと、皇帝ヴァンドリックは下知を飛ばす。
「即時動かせる全ての帝国軍を動員せよ。準備が整い次第に聖地に攻め込む!」
「陛下、どのようにして天空の聖地リシャデルリシャに橋を架けなさるので?」
ここまで来れば腹は決まったと、宰相『礼範』カルポは逆に落ち着き払っている。
皇帝ヴァンドリックはフォートンを見て頷き、フォートンは恭しく頭を垂れて返した。
「実は、先ほど『賢梟』より献策があった。『逆雷』にも検討させたが、名案なりと太鼓判を押された」
フォートンは小さな声で、帝国十三神将だけに聞こえるように言う。
「本当は私の策では無いのです。精霊獣オラクルの『スキル:メッセージ』から閃いたのです」
「どのような策なのです?」
『毒冠』ヌスコが顔色を変えて訊ねると、
「『影の子が祈りの階に、祈りの階は光の橋に、光の橋は遠き月に……』と。陛下の精霊獣ロードの『スキル:レイン』はありとあらゆる所に結界を展開するもの。では、その結界で空に浮かぶ階を作ったならば……?」
「そうだそうだ!そうですねえ!」
突拍子もない大声で叫んだのは『浮仙』レトゥである。
「そりゃあそうですねえ!結界を階のごとく展開して軍隊を聖地に至らしめるなんて、此の世でも陛下の他には不可能な御業だ!まるでこの時のために神々が『便利な』陛下を下界に遣わされたかのようですねえ!」
いつもの事ではあるが、何と言う不遜だとフォートンとカルポとロクブとヌスコが揃って嫌そうな顔をする。
「レトゥめ!」
無礼が過ぎると怒ったのは『逆雷』であった。
老いたとは言え、鉄拳が容赦なくレトゥを襲う。
「一体陛下を何だと思うておるのじゃ!この馬鹿者が!」
レトゥは2発までは大人しく殴られたが、3発目を悟って逃げ出す。
止める気も無くて、『昏魔』や『峻霜』達は呆れた顔をしていた。
「ウギャ!ウギャ!――助けて下さいトキトハ、僕ちゃん殴られましたよお!」
「何で医者はこんなのの怪我まで見てやらなきゃいけないんだ……」
どうせもうすぐ負傷兵の手当で文字通り『死に物狂い』になるのに、とトキトハはぼやいたが手当てはしてやった。

 『……今頃、そちらはきっと愉快な事になっているんでしょうけれどねー』
ハルハの音声が聞こえて、その騒動はピタリと止まる。
『私達も精々、「マステマ・ジャッジメント」の発射を止めるよう頑張るのでー……。お願いですから、間に合って下さいねー。これが聖地の防御障壁を解除する魔法鍵ですからー……』

 それを最後に、チップは小指の大きさほどの認証キーに姿を変えたのだった。
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