【完結】ガン=カタ皇子、夜に踊る

2626

文字の大きさ
89 / 297
First Chapter

偽シャドウ②

しおりを挟む
 「シャドウが2人?どう言う意味だ」
ギルガンドが少しだけ顔を引いた瞬間、ロウはオレ達の方を向いて、頷いた。
オレ達も、へい、と頷いて返す。
「昨夜、『地獄横町』にもシャドウが現れたんだ。……地獄横町の暗殺者を取り仕切る闇組織『スーサイド・レッド』の中に裏切り者が現れたそうで、掟で御法度のはずの『神々の血雫』に手を出しただけでなく、その売人のような真似さえしていたらしい。当然、ヴォイドに成り果てていたから、身内でも処分する事も出来なかった。差し向けた手練れが全員返り討ちにされたそうだ。
組織の党首本人がここに来て、どうにかならないかと俺に相談してきたんだぞ」
「あの『依頼達成率9割5分』の……。それで、シャドウが現れたと?」
「そうだ。朝起きたら玄関前に『スーサイド・レッド』の党首からの謝礼が置いてあって危うく転ぶ所だった。これから突っ返しに行くつもりだったんだ」


 地獄横町とは、貧民街の中でも最も治安が悪い区画である。ここには『スーサイド・レッド』に代表される闇の非合法組織の根城だったり、違法な薬物や禁制品の闇マーケットがあったりするので、貧民街の住民でさえ怖がって、滅多に近寄らないのだ。


 建築法なんてのっけから無視した無茶苦茶な構造で、古すぎる建物がずらりと天高く連なり、昼間でもどこか薄暗くて、大通りを一歩でも外れればネズミがうろつきハエが飛んでいる裏路地に出る。そこには地下街への道がある。この地下街こそ、うっかりでも足を踏み入れれば、貧民街の住民でさえも生きたまま帰る事は出来ない魔窟なのだ。
「おい……」
ギルガンドは地獄横町に漂う悪臭に顔をしかめたが、ロウは平然と先に進む。
「怖いなら帰れ。ここは血の池地獄の門の中だ」
「逃げるつもりか!」
流石に高等武官の格好でここに来たら大事になるので、ギルガンドにはボロ布を上に被って貰っていた。
「逃げたってアンタは空を飛べるんだからすぐに追いつけるだろうが」
「ここには地下街があると……」
「おっ、気付いたようだ。少しだけで良い、黙っていてくれ」
裏路地に出た瞬間、明らかにオレ達一行を狙っている――ならず者達が薄暗がりの中から現れた。
「おい……ここが何処か分かって来たのか、兄ちゃん達」
「ああ、『ピジョンブラッド』を探してきたんだ」
「……。付いてこい」
ならず者の中で立場が上の者がオレ達に合図すると、地下街への階段を下り始めた。
「あれが暗号符丁か」
ギルガンドが小声でロウに言う。
「俺も知るのに手間がかかったよ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

エレンディア王国記

火燈スズ
ファンタジー
不慮の事故で命を落とした小学校教師・大河は、 「選ばれた魂」として、奇妙な小部屋で目を覚ます。 導かれるように辿り着いたのは、 魔法と貴族が支配する、どこか現実とは異なる世界。 王家の十八男として生まれ、誰からも期待されず辺境送り―― だが、彼は諦めない。かつての教え子たちに向けて語った言葉を胸に。 「なんとかなるさ。生きてればな」 手にしたのは、心を視る目と、なかなか花開かぬ“器”。 教師として、王子として、そして何者かとして。 これは、“教える者”が世界を変えていく物語。

処理中です...