死神さん、こっちです!

ボブえもん工房

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第6章 Sin and punishment for falling in love

堕ちた死神の罪と罰

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今の私は死神裁判にかけられている。
罪の名前は職務放棄と掟破り。
なぜ私がここに居るのか、正直詳しいことは覚えていない。
消失感で頭が正常に動いていないのだ。
覚えているのは、魂をあの世に送り届ける存在がドアを担いで窓から来て、柚希の魂をあの世に送った事。
そして、私がその場にいることを不審に思ったその存在が、私に色々と質問していく内に、私が掟を破った事が判明し裁判にかけられたという事だ。
あの世に行く柚希が私に何か言っていたが、その時の私にはもう何も聞こえていなかった。
他には…。
あと1つ覚えているのは、母親から物を投げつけられ「悪魔」「死神」「お前のせいだ」「そこに居るんだろう」と怒りをぶつけられた事だ。
母親から私は見えていないはずなのに、確実に私の元へと物は投げられている。
そして投げられた物は私の体をすり抜けているのに、母親がぶつけてくる怒りの声だけは、すり抜けること無くしっかりと受け止めていた。
私が覚えているのはそれだけだ。
後は流れるように時が進み、今に至る。
目の前にいる巨人の様な大きさの死神長は怖い形相をしている。
「おい、聞いているのか!!!」
死神長の大きな怒鳴り声。
「はい、聞いています…。」
私の返事は、まるで機械が出している音のように無機質だった。
「貴様の罪は職務放棄と掟破りだ。これは死神にとって大きな罪となる。」
「分かっています…。」
「仕事のランクが上がる程、死神の感情が強くなっていくのは、それほど自己責任の負担が大きくなるからだ。生きた人間と関わるということはそれほど危険なんだ。死神の存在が危険に脅かされるかもしれないんだぞ。」
「はい…。」
「よって貴様の起こした罪はとても重い。何か反論はあるか?」
「いいえ…、ありません。」
私は反論することなく、死神長の言葉と罪を受け入れた。
私のした事はそれ程までに深い罪だと分かっているからだ。
「それでは貴様を死神堕ちの刑とする。今日から死神としてではなく、死者の魂をあの世に送る存在として生きるように。」
「はい…。」
私は罰を受けるため、死神長と償いの場へと歩いていく。


どのくらい歩いただろう。
放心状態の私にはもう、何も分からなくなっている。
しかし辿り着いたそこには、深く暗い大きな穴があった。
「今からこの穴へと飛び降りてもらう。」
「分かりました…。」
「いいか、この穴に飛び込むと今まで見た物や聞いた物、感じた物の全ての記憶を失う。つまり無になってしまうという事だ。」
「……!なるほど、そういう事だったんですね…。魂をあの世に送る存在は、感情が無いのではなく、忘れてしまっているだけなのですね。」
「そうだ。忘れているから思い出せもしない。そもそも感情があった事すら知らない。知らないという事は…。」
「無いものと同じ…。」
私は死神長の言葉を遮った。
「怖くなったか?」
死神長が先程の恐ろしい声とは違う、優しい声で尋ねる。
「はい、正直怖いです…。でも仕方がないんです…。私の罪の重さは、これくらいしないと軽くなりませんから…。」
「そうか…、では行ってこい。」
死神長から優しく背中を押され、私は暗い穴へと吸い込まれるように落ちていく。
その時に、今までの記憶が過ぎった。
その中でも1番強い記憶はやっぱり柚希だった。
『僕いつも1人で退屈なんだ。』
今なら分かる、退屈なんじゃなくて寂しかったんだよね。
辛い話を楽しそうにしてたんじゃない。
そうでもしないと自分の心が壊れてしまうから、そうしなきゃいけなかったんだよね。
彼の1つ1つの言葉や表情の意味を、私は今になって知った。
パン屋、海、学校。
穴の奥へと落ちていく度、徐々に2人で見た美しい景色を忘れていっているのが分かる。
でも彼の声、彼の瞳、彼の仕草、彼の匂い。
彼の事だけは鮮明に全てが思い出されていく。
そしてこの温かい気持ち。
「そっか…、私恋してたんだ…。」
自分の恋心に気づき、私は涙を流した。


私は春のような温かい気持ちと、夏のようにキラキラとした記憶、秋のような消失感、冬のように白い身体を、大きな暗い穴の中へと忘れていった。
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