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第9章 死神の世界
死神長の親心
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明らかに話し方が変わった。
先程までは誰もが恐れる死神長だったが、今はただの年寄りのような柔らかい雰囲気になった。
そして乾いた優しい声で話し出す。
「お前達は元々死神だ。」
「えっ…?」
「死神にはランクがあるだろう?あれは誰かが決めているものじゃない。元々は皆同じランクの死神だった。しかし罪を犯した死神が罰を受け、ランクが下がっていくうちに、私達の死神界が出来上がった。」
知るはずのない歴史に私は驚いた。
元々は皆同じであったが、誰かが私のように罪を犯したせいでランクが出来上がってしまった。
それが今の死神界になっている。
「では、私も…?」
「そうだ。お前は何回も罪を犯して今に至る。だから私は「また貴様か」と言ったのだ。」
「そうだったんですね…。」
「本当に手のかかる子だ。だが、私にとっては皆可愛い死神の子だ。信頼出来る仕事仲間だ。どんなに手のかかる子でも可愛さは変わらないんだよ。」
私はまた胸がムズムズする感覚になった。
「これは…、恥ずかしいっていう気持ち。」
「照れておるのか、随分と人間らしくなったなぁ。」
死神長は愛らしいものを見るかのような優しい目をして、乾いた声で笑う。
「では死神長も元々は私達と同じだったのですか?それとも私達が死神長と同じ立場だったのでしょうか?」
次々と疑問が生まれ、まるで小さい子どもの様に質問を投げかける。
「元々は私1人であった。だがそれが寂しくてな、子どもを作るという意味で幼児の身体を模した死神を作った事がきっかけだ。」
「確かに、死神は皆人間の子どもと同じ見た目をしている。」
「それはあまりに大家族になってしまった。だから1つの世界を作り、子ども達に仕事を与える事にした。私は死者の魂があの世に行けず彷徨っている姿を何度も見た事がある。その者達を助けるような仕事を子ども達にして欲しいと思ったのだ。」
私はまるで物語のような歴史に釘付けになっていた。
「誰かを助ける事には優しさが芽生え、心が強くなる。子ども達にはそういう死神になって欲しくて、この仕事を分け与えた。その頃は皆ランクなど関係なく感情があった。しかし、時に感情が仕事の邪魔をしていたのだ。」
柔らかく微笑んだ目は、急に物悲しげな目へと変わった。
「人間に優しくする死神を利用して、悪い事をたくらむ奴が現れ出した。お金が欲しい、憎いやつを殺してきてくれ、最後だから願いを叶えてくれ。ろくな奴はいない。」
「それに対して死神達はどうしたのですか?」
「あの子達は優しいからなぁ、何でも言うことを聞いて願いを叶えてやっていた。それが悪い事だと分かっていなかったんだろうな。」
いつもの迫力のある声ではなく、弱々しく震えた声。
声だけでも、自分の愛する者達を利用された事への腹ただしさや悲しみが分かる。
「だから子ども達の感情を忘れさせる事にした。自分をコントロール出来る者だけに感情を与え、そうでない者は記憶や感情を奪う。そうしていくうちに死神のランクが出来上がった。」
「そうか、感情が無い訳ではなくて、あった頃の記憶を奪っていたのか。」
私の言葉に死神長は大きく頷く。
「子ども達には悪い事をしたと思っている。分かってくれとは言わない、ただ私の家族は私が守らなければならないんだよ。」
溜息を吐きながら言葉を口にする死神長は、様々な想いがあって辛い決断をしていたのだ。
ずっと恐ろしいと思っていた上司は、私達を愛する父親だった。
「他の死神にこれを聞かせても、分かってくれる者は多くないでしょう。でも私には分かります、あなたの愛が…。」
真っ直ぐに目の前にいる年寄りを見ると、彼は驚いた顔をしていた。
そしてすぐにまた柔らかい微笑みへと変わった。
「もう少しこっちへ来なさい。」
死神長の乾いた声に誘われて、私は彼の傍へ行くと、大きな身体にいきなり抱きしめられ、頭を撫でられた。
私を潰さないように、力強くも優しく抱き込む。
「本当にお前はいい子だ。罰を受ける死神達の多くは暴走した子ども達だ。人間と悪い事を企んだり、誰かを陥れたり…。だがお前が罰を受ける時はいつだって人間の為だった。」
「……!!」
その言葉のせいなのか記憶が一気に蘇った。
死神だった頃の私、出会った人間達。
全てがフラッシュバックした。
「私が理想としていた死神像にお前は1番近しい。お前を手放すのが本当に名残惜しい。特別な子だよ。」
年寄りの温かい体温、優しい匂い。
蘇った感情と記憶のおかげで、死神長の優しさを鮮明に捉えることが出来ている。
「お前達のような存在が、人間界で生きる罰を与えられるのは、最期までしっかり生きて、魂がここへ帰ってくるようにするためだ。またお前の可愛い顔を見せてくれ。」
その言葉に私はまた涙した。
罰を与えられる事は怖いものだと思っていたが、彼の考える事は全て子ども達の為だった。
彼の愛情が私の心を温かくし、それに浸っていると大きな雨が私へと降り注ぐ。
見上げると死神長も大きな涙を流していた。
「死神長…?大丈夫、私は必ず帰ってきます。」
「本当にお前は…、いい子だ。」
先程までは誰もが恐れる死神長だったが、今はただの年寄りのような柔らかい雰囲気になった。
そして乾いた優しい声で話し出す。
「お前達は元々死神だ。」
「えっ…?」
「死神にはランクがあるだろう?あれは誰かが決めているものじゃない。元々は皆同じランクの死神だった。しかし罪を犯した死神が罰を受け、ランクが下がっていくうちに、私達の死神界が出来上がった。」
知るはずのない歴史に私は驚いた。
元々は皆同じであったが、誰かが私のように罪を犯したせいでランクが出来上がってしまった。
それが今の死神界になっている。
「では、私も…?」
「そうだ。お前は何回も罪を犯して今に至る。だから私は「また貴様か」と言ったのだ。」
「そうだったんですね…。」
「本当に手のかかる子だ。だが、私にとっては皆可愛い死神の子だ。信頼出来る仕事仲間だ。どんなに手のかかる子でも可愛さは変わらないんだよ。」
私はまた胸がムズムズする感覚になった。
「これは…、恥ずかしいっていう気持ち。」
「照れておるのか、随分と人間らしくなったなぁ。」
死神長は愛らしいものを見るかのような優しい目をして、乾いた声で笑う。
「では死神長も元々は私達と同じだったのですか?それとも私達が死神長と同じ立場だったのでしょうか?」
次々と疑問が生まれ、まるで小さい子どもの様に質問を投げかける。
「元々は私1人であった。だがそれが寂しくてな、子どもを作るという意味で幼児の身体を模した死神を作った事がきっかけだ。」
「確かに、死神は皆人間の子どもと同じ見た目をしている。」
「それはあまりに大家族になってしまった。だから1つの世界を作り、子ども達に仕事を与える事にした。私は死者の魂があの世に行けず彷徨っている姿を何度も見た事がある。その者達を助けるような仕事を子ども達にして欲しいと思ったのだ。」
私はまるで物語のような歴史に釘付けになっていた。
「誰かを助ける事には優しさが芽生え、心が強くなる。子ども達にはそういう死神になって欲しくて、この仕事を分け与えた。その頃は皆ランクなど関係なく感情があった。しかし、時に感情が仕事の邪魔をしていたのだ。」
柔らかく微笑んだ目は、急に物悲しげな目へと変わった。
「人間に優しくする死神を利用して、悪い事をたくらむ奴が現れ出した。お金が欲しい、憎いやつを殺してきてくれ、最後だから願いを叶えてくれ。ろくな奴はいない。」
「それに対して死神達はどうしたのですか?」
「あの子達は優しいからなぁ、何でも言うことを聞いて願いを叶えてやっていた。それが悪い事だと分かっていなかったんだろうな。」
いつもの迫力のある声ではなく、弱々しく震えた声。
声だけでも、自分の愛する者達を利用された事への腹ただしさや悲しみが分かる。
「だから子ども達の感情を忘れさせる事にした。自分をコントロール出来る者だけに感情を与え、そうでない者は記憶や感情を奪う。そうしていくうちに死神のランクが出来上がった。」
「そうか、感情が無い訳ではなくて、あった頃の記憶を奪っていたのか。」
私の言葉に死神長は大きく頷く。
「子ども達には悪い事をしたと思っている。分かってくれとは言わない、ただ私の家族は私が守らなければならないんだよ。」
溜息を吐きながら言葉を口にする死神長は、様々な想いがあって辛い決断をしていたのだ。
ずっと恐ろしいと思っていた上司は、私達を愛する父親だった。
「他の死神にこれを聞かせても、分かってくれる者は多くないでしょう。でも私には分かります、あなたの愛が…。」
真っ直ぐに目の前にいる年寄りを見ると、彼は驚いた顔をしていた。
そしてすぐにまた柔らかい微笑みへと変わった。
「もう少しこっちへ来なさい。」
死神長の乾いた声に誘われて、私は彼の傍へ行くと、大きな身体にいきなり抱きしめられ、頭を撫でられた。
私を潰さないように、力強くも優しく抱き込む。
「本当にお前はいい子だ。罰を受ける死神達の多くは暴走した子ども達だ。人間と悪い事を企んだり、誰かを陥れたり…。だがお前が罰を受ける時はいつだって人間の為だった。」
「……!!」
その言葉のせいなのか記憶が一気に蘇った。
死神だった頃の私、出会った人間達。
全てがフラッシュバックした。
「私が理想としていた死神像にお前は1番近しい。お前を手放すのが本当に名残惜しい。特別な子だよ。」
年寄りの温かい体温、優しい匂い。
蘇った感情と記憶のおかげで、死神長の優しさを鮮明に捉えることが出来ている。
「お前達のような存在が、人間界で生きる罰を与えられるのは、最期までしっかり生きて、魂がここへ帰ってくるようにするためだ。またお前の可愛い顔を見せてくれ。」
その言葉に私はまた涙した。
罰を与えられる事は怖いものだと思っていたが、彼の考える事は全て子ども達の為だった。
彼の愛情が私の心を温かくし、それに浸っていると大きな雨が私へと降り注ぐ。
見上げると死神長も大きな涙を流していた。
「死神長…?大丈夫、私は必ず帰ってきます。」
「本当にお前は…、いい子だ。」
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