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第八話:快楽と禁忌
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プレシディオ・テラスの屋敷は、緑の木立と美しい庭に囲まれている。
今はその木々を、しとしとと降る雨が濡らしている。8月も終わり、秋の気配とフットボールシーズンの始まりが近づいていた。
「あっ……、あんっ……」
「そうそう……兄さん腰振るのが上手になったね」
アントンのベッドで、テレンスはアントンに背中を支えられながら、下から貫かれている。
デスクに積み上げられたオカルト本の上には、黒縁メガネが置かれ、レコード・プレイヤーからは、おどろおどろしいジャケットのハードロックが流れている。
テレンスが想像していたよりも、そのメロディは緩やかに雨音に溶け、むせび泣くようなギターのリフが、アントンを無駄にムーディな男に見せていた。
青い怜悧な瞳が、熱と甘さを含んだ表情で、漆黒の前髪の間からテレンスを見上げている。
「あっ、あっ、あんっ……!」
「兄さん……、どんどん俺とのセックスで気持ちよくなっているね……可愛い……♡」
テレンスを犯すようになってからというもの、アントンに隠れていた獣性のようなものが、どんどんにじみ出るようになった気がする。
「ここしばらく、抱いてあげられてなかったからね。いっぱいしよう……?」
「あぁんっ!」
腰を使ってぐちゅっと突き上げられ、テレンスは背中を反らせた。
この三週間ほど、夏季休暇で父親とアントンの母親が家にいたのだ。
アントンの奴は、部屋に引きこもってオカルトロックだのヘヴィメタルだの、よくわからない音楽を、いつもより大音量で流していた。
アントンの母親は、大学も出ていない整形モデルのクセにビジネスパートナーぶって、収益性も実現可能性も見込めない、空虚な夢ばかり語っていた。
テレンスは、形式的な笑みを浮かべながら、ポジティブな物言いで適当な会話を続けた。
大学を卒業したら、さっさと父親からフィットネスブランドを譲り受けて、この女を追い出そう。円満に追い出すために、多少のコミュニケーションは取っておかなければならない。
どうやらアントンもこの女が嫌いなようだが、相手をする作業をテレンス一人に任せるとは、これだからナードは「臆病者」なのだ。
だがアントンが部屋に引きこもってテレンスにちょっかいをかけてこないのは助かった。
そんな両親は、商談とやらでNYに行って、しばらく戻ってこない。
「駄目だよ兄さん、俺のことだけ考えて?」
気が散っているのを見抜かれたようで、こてん、とベッドに押し倒され、正常位で激しく奥を突かれる。
「あうっ、あっ、あっ、あっ……!」
「ねえ兄さん、俺の名前呼びながらイッてくれる?」
「な、んでだよっ……!」
「俺のこと考えてるんだって、わかるでしょ? ……ね」
口ごたえをちゅるっとキスでふさがれた。
「んっ……!」
くちゅくちゅと舌を絡め、舌先をぺろぺろと舐められると、喉から下半身に向けて電気のような快感が走る。
ごちゅっ、ごちゅっと気持ちいいところをペニスで押しつぶされて、舌をつき合わせていると、抵抗する気がどんどん溶けていってしまう。
「あ……、あっ……、アントン……」
「嬉しいよ兄さん……愛してる」
胎の中のモノが大きさを増し、大きな涙袋を細めてアントンが笑った。
上からテレンスを見下ろすアントンの輪郭。
愉悦を含んだその眼差しに、見覚えがあったような気がして、テレンスは閉じそうになった目を見開いた。
つい最近までは、テレンスがアントンを見下ろしていた。
洗面所で髪をセットしていると、鏡の向こうに黒いボサボサ頭のまま、背中を丸めてぬぼーっと立っているダサいアントンが見えて、テレンスは鼻で笑いながら鏡越しにアントンを見下していたものだ。
同じだ。その時見ていた顔と。
そう、それは鏡で毎朝見ていた――テレンス自身の顔だった。
恐ろしい空想が脳裏によぎって思わず身体を離そうとしたが、アントンはテレンスの太腿を抱え上げて膝を曲げさせ、激しく肉杭を打ち込んでくる。
「アントン……! あ、あ、あああっ!」
あっという間にテレンスの考えは霧散し、杭打ちピストンの快楽に頭が塗りつぶされていく。
「愛してるよ、兄さんっ……!」
ドチュンッ! と奥を突かれ、テレンスはアントンの首に縋りついてしまう。
「ああっ! あーっ! イクっ、イクっ」
きゅうきゅうと肉襞がうねって、まるでアントンの精子を欲しがっているみたいに締めつける。
「あっ……締まる……、俺の精子欲しいって……」
ドチュドチュドチュッ!
「ひぁんっ! あぁんっ! やぁっ、イッてる、イッてるのに、あぁっ――!」
もうどこをどう突かれても気持ちいい。まぶたの奥がまぶしくなって、さっきの恐ろしい疑惑も何も、真っ白に飛んでいく。
「兄さんっ……今あげるからね……!」
「あああぁんっ! あぁぁぁぁんっ――!」
ドクンッ! とアントンのペニスが脈打ち、ビュクッビュクッと熱い精液が注ぎ込まれて、テレンスはアントンの身体にぶら下がるようにして、力を抜いた。
今はその木々を、しとしとと降る雨が濡らしている。8月も終わり、秋の気配とフットボールシーズンの始まりが近づいていた。
「あっ……、あんっ……」
「そうそう……兄さん腰振るのが上手になったね」
アントンのベッドで、テレンスはアントンに背中を支えられながら、下から貫かれている。
デスクに積み上げられたオカルト本の上には、黒縁メガネが置かれ、レコード・プレイヤーからは、おどろおどろしいジャケットのハードロックが流れている。
テレンスが想像していたよりも、そのメロディは緩やかに雨音に溶け、むせび泣くようなギターのリフが、アントンを無駄にムーディな男に見せていた。
青い怜悧な瞳が、熱と甘さを含んだ表情で、漆黒の前髪の間からテレンスを見上げている。
「あっ、あっ、あんっ……!」
「兄さん……、どんどん俺とのセックスで気持ちよくなっているね……可愛い……♡」
テレンスを犯すようになってからというもの、アントンに隠れていた獣性のようなものが、どんどんにじみ出るようになった気がする。
「ここしばらく、抱いてあげられてなかったからね。いっぱいしよう……?」
「あぁんっ!」
腰を使ってぐちゅっと突き上げられ、テレンスは背中を反らせた。
この三週間ほど、夏季休暇で父親とアントンの母親が家にいたのだ。
アントンの奴は、部屋に引きこもってオカルトロックだのヘヴィメタルだの、よくわからない音楽を、いつもより大音量で流していた。
アントンの母親は、大学も出ていない整形モデルのクセにビジネスパートナーぶって、収益性も実現可能性も見込めない、空虚な夢ばかり語っていた。
テレンスは、形式的な笑みを浮かべながら、ポジティブな物言いで適当な会話を続けた。
大学を卒業したら、さっさと父親からフィットネスブランドを譲り受けて、この女を追い出そう。円満に追い出すために、多少のコミュニケーションは取っておかなければならない。
どうやらアントンもこの女が嫌いなようだが、相手をする作業をテレンス一人に任せるとは、これだからナードは「臆病者」なのだ。
だがアントンが部屋に引きこもってテレンスにちょっかいをかけてこないのは助かった。
そんな両親は、商談とやらでNYに行って、しばらく戻ってこない。
「駄目だよ兄さん、俺のことだけ考えて?」
気が散っているのを見抜かれたようで、こてん、とベッドに押し倒され、正常位で激しく奥を突かれる。
「あうっ、あっ、あっ、あっ……!」
「ねえ兄さん、俺の名前呼びながらイッてくれる?」
「な、んでだよっ……!」
「俺のこと考えてるんだって、わかるでしょ? ……ね」
口ごたえをちゅるっとキスでふさがれた。
「んっ……!」
くちゅくちゅと舌を絡め、舌先をぺろぺろと舐められると、喉から下半身に向けて電気のような快感が走る。
ごちゅっ、ごちゅっと気持ちいいところをペニスで押しつぶされて、舌をつき合わせていると、抵抗する気がどんどん溶けていってしまう。
「あ……、あっ……、アントン……」
「嬉しいよ兄さん……愛してる」
胎の中のモノが大きさを増し、大きな涙袋を細めてアントンが笑った。
上からテレンスを見下ろすアントンの輪郭。
愉悦を含んだその眼差しに、見覚えがあったような気がして、テレンスは閉じそうになった目を見開いた。
つい最近までは、テレンスがアントンを見下ろしていた。
洗面所で髪をセットしていると、鏡の向こうに黒いボサボサ頭のまま、背中を丸めてぬぼーっと立っているダサいアントンが見えて、テレンスは鼻で笑いながら鏡越しにアントンを見下していたものだ。
同じだ。その時見ていた顔と。
そう、それは鏡で毎朝見ていた――テレンス自身の顔だった。
恐ろしい空想が脳裏によぎって思わず身体を離そうとしたが、アントンはテレンスの太腿を抱え上げて膝を曲げさせ、激しく肉杭を打ち込んでくる。
「アントン……! あ、あ、あああっ!」
あっという間にテレンスの考えは霧散し、杭打ちピストンの快楽に頭が塗りつぶされていく。
「愛してるよ、兄さんっ……!」
ドチュンッ! と奥を突かれ、テレンスはアントンの首に縋りついてしまう。
「ああっ! あーっ! イクっ、イクっ」
きゅうきゅうと肉襞がうねって、まるでアントンの精子を欲しがっているみたいに締めつける。
「あっ……締まる……、俺の精子欲しいって……」
ドチュドチュドチュッ!
「ひぁんっ! あぁんっ! やぁっ、イッてる、イッてるのに、あぁっ――!」
もうどこをどう突かれても気持ちいい。まぶたの奥がまぶしくなって、さっきの恐ろしい疑惑も何も、真っ白に飛んでいく。
「兄さんっ……今あげるからね……!」
「あああぁんっ! あぁぁぁぁんっ――!」
ドクンッ! とアントンのペニスが脈打ち、ビュクッビュクッと熱い精液が注ぎ込まれて、テレンスはアントンの身体にぶら下がるようにして、力を抜いた。
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