ミッドナイト・サバト~義弟との黒ミサ~

ぽんぽこまだむ

文字の大きさ
9 / 14

第八話:快楽と禁忌

しおりを挟む
 プレシディオ・テラスの屋敷は、緑の木立と美しい庭に囲まれている。
 今はその木々を、しとしとと降る雨が濡らしている。8月も終わり、秋の気配とフットボールシーズンの始まりが近づいていた。

「あっ……、あんっ……」
「そうそう……兄さん腰振るのが上手になったね」

 アントンのベッドで、テレンスはアントンに背中を支えられながら、下から貫かれている。
 デスクに積み上げられたオカルト本の上には、黒縁メガネが置かれ、レコード・プレイヤーからは、おどろおどろしいジャケットのハードロックが流れている。
 テレンスが想像していたよりも、そのメロディは緩やかに雨音に溶け、むせび泣くようなギターのリフが、アントンを無駄にムーディな男に見せていた。
 青い怜悧な瞳が、熱と甘さを含んだ表情で、漆黒の前髪の間からテレンスを見上げている。

「あっ、あっ、あんっ……!」
「兄さん……、どんどん俺とのセックスで気持ちよくなっているね……可愛い……♡」

 テレンスを犯すようになってからというもの、アントンに隠れていた獣性のようなものが、どんどんにじみ出るようになった気がする。

「ここしばらく、抱いてあげられてなかったからね。いっぱいしよう……?」
「あぁんっ!」

 腰を使ってぐちゅっと突き上げられ、テレンスは背中を反らせた。

 この三週間ほど、夏季休暇で父親とアントンの母親が家にいたのだ。
 アントンの奴は、部屋に引きこもってオカルトロックだのヘヴィメタルだの、よくわからない音楽を、いつもより大音量で流していた。
 アントンの母親は、大学も出ていない整形モデルのクセにビジネスパートナーぶって、収益性も実現可能性も見込めない、空虚な夢ばかり語っていた。
 テレンスは、形式的な笑みを浮かべながら、ポジティブな物言いで適当な会話を続けた。
 大学を卒業したら、さっさと父親からフィットネスブランドを譲り受けて、この女を追い出そう。円満に追い出すために、多少のコミュニケーションは取っておかなければならない。
 どうやらアントンもこの女が嫌いなようだが、相手をする作業をテレンス一人に任せるとは、これだからナードは「臆病者ナード」なのだ。
 だがアントンが部屋に引きこもってテレンスにちょっかいをかけてこないのは助かった。
 そんな両親は、商談とやらでNYに行って、しばらく戻ってこない。

「駄目だよ兄さん、俺のことだけ考えて?」

 気が散っているのを見抜かれたようで、こてん、とベッドに押し倒され、正常位で激しく奥を突かれる。

「あうっ、あっ、あっ、あっ……!」
「ねえ兄さん、俺の名前呼びながらイッてくれる?」
「な、んでだよっ……!」
「俺のこと考えてるんだって、わかるでしょ? ……ね」

 口ごたえをちゅるっとキスでふさがれた。

「んっ……!」

 くちゅくちゅと舌を絡め、舌先をぺろぺろと舐められると、喉から下半身に向けて電気のような快感が走る。
 ごちゅっ、ごちゅっと気持ちいいところをペニスで押しつぶされて、舌をつき合わせていると、抵抗する気がどんどん溶けていってしまう。

「あ……、あっ……、アントン……」
「嬉しいよ兄さん……愛してる」

 胎の中のモノが大きさを増し、大きな涙袋を細めてアントンが笑った。
 上からテレンスを見下ろすアントンの輪郭。
 愉悦を含んだその眼差しに、見覚えがあったような気がして、テレンスは閉じそうになった目を見開いた。

 つい最近までは、テレンスがアントンを見下ろしていた。
 洗面所で髪をセットしていると、鏡の向こうに黒いボサボサ頭のまま、背中を丸めてぬぼーっと立っているダサいアントンが見えて、テレンスは鼻で笑いながら鏡越しにアントンを見下していたものだ。
 同じだ。その時見ていた顔と。

 そう、それは鏡で毎朝見ていた――テレンス自身の顔だった。

 恐ろしい空想が脳裏によぎって思わず身体を離そうとしたが、アントンはテレンスの太腿を抱え上げて膝を曲げさせ、激しく肉杭を打ち込んでくる。

「アントン……! あ、あ、あああっ!」

 あっという間にテレンスの考えは霧散し、杭打ちピストンの快楽に頭が塗りつぶされていく。

「愛してるよ、兄さんっ……!」

 ドチュンッ! と奥を突かれ、テレンスはアントンの首に縋りついてしまう。

「ああっ! あーっ! イクっ、イクっ」

 きゅうきゅうと肉襞がうねって、まるでアントンの精子を欲しがっているみたいに締めつける。

「あっ……締まる……、俺の精子欲しいって……」

 ドチュドチュドチュッ!

「ひぁんっ! あぁんっ! やぁっ、イッてる、イッてるのに、あぁっ――!」

 もうどこをどう突かれても気持ちいい。まぶたの奥がまぶしくなって、さっきの恐ろしい疑惑も何も、真っ白に飛んでいく。

「兄さんっ……今あげるからね……!」
「あああぁんっ! あぁぁぁぁんっ――!」

 ドクンッ! とアントンのペニスが脈打ち、ビュクッビュクッと熱い精液が注ぎ込まれて、テレンスはアントンの身体にぶら下がるようにして、力を抜いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

愛する者の腕に抱かれ、獣は甘い声を上げる

すいかちゃん
BL
獣の血を受け継ぐ一族。人間のままでいるためには・・・。 第一章 「優しい兄達の腕に抱かれ、弟は初めての発情期を迎える」 一族の中でも獣の血が濃く残ってしまった颯真。一族から疎まれる存在でしかなかった弟を、兄の亜蘭と玖蘭は密かに連れ出し育てる。3人だけで暮らすなか、颯真は初めての発情期を迎える。亜蘭と玖蘭は、颯真が獣にならないようにその身体を抱き締め支配する。 2人のイケメン兄達が、とにかく弟を可愛がるという話です。 第二章「孤独に育った獣は、愛する男の腕に抱かれ甘く啼く」 獣の血が濃い護は、幼い頃から家族から離されて暮らしていた。世話係りをしていた柳沢が引退する事となり、代わりに彼の孫である誠司がやってくる。真面目で優しい誠司に、護は次第に心を開いていく。やがて、2人は恋人同士となったが・・・。 第三章「獣と化した幼馴染みに、青年は変わらぬ愛を注ぎ続ける」 幼馴染み同士の凛と夏陽。成長しても、ずっと一緒だった。凛に片思いしている事に気が付き、夏陽は思い切って告白。凛も同じ気持ちだと言ってくれた。 だが、成人式の数日前。夏陽は、凛から別れを告げられる。そして、凛の兄である靖から彼の中に獣の血が流れている事を知らされる。発情期を迎えた凛の元に向かえば、靖がいきなり夏陽を羽交い締めにする。 獣が攻めとなる話です。また、時代もかなり現代に近くなっています。

兄のやり方には思うところがある!

野犬 猫兄
BL
完結しました。お読みくださりありがとうございます! 少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです! 第10回BL小説大賞では、ポイントを入れてくださった皆様、そしてお読みくださった皆様、どうもありがとうございました!m(__)m ■■■ 特訓と称して理不尽な行いをする兄に翻弄されながらも兄と向き合い仲良くなっていく話。 無関心ロボからの執着溺愛兄×無自覚人たらしな弟 コメディーです。

弟が兄離れしようとしないのですがどうすればいいですか?~本編~

荷居人(にいと)
BL
俺の家族は至って普通だと思う。ただ普通じゃないのは弟というべきか。正しくは普通じゃなくなっていったというべきか。小さい頃はそれはそれは可愛くて俺も可愛がった。実際俺は自覚あるブラコンなわけだが、それがいけなかったのだろう。弟までブラコンになってしまった。 これでは弟の将来が暗く閉ざされてしまう!と危機を感じた俺は覚悟を持って…… 「龍、そろそろ兄離れの時だ」 「………は?」 その日初めて弟が怖いと思いました。

隠れヤンデレストーカーのクール系執事が傷心金持ち生意気DKを騙して番にしちゃう話

Nes(ネス)
BL
クール系執事×傷心生意気DK意地の張り合いからの甘々番契約♡ 深川緑郎 30代後半(見た目) 190cm 黒川家の執事。滅多なことでは動じないクール系。黒髪で紺碧の瞳という珍しい容姿。だいぶ長く黒川家に仕えているらしいが…。 黒川光生 DK 179cm 黒川家の跡継ぎ。獅子雄の幼なじみ。外では優しく振舞っているが、本当は意地っ張りで寂しがり屋。 今どきの長めの黒髪でイケメン。女性にモテるが、何故か交際までは至らない。 https://www.alphapolis.co.jp/novel/236578036/314939827 上記とシリーズ物となります!

ヤンデレ執着系イケメンのターゲットな訳ですが

街の頑張り屋さん
BL
執着系イケメンのターゲットな僕がなんとか逃げようとするも逃げられない そんなお話です

執着男に勤務先を特定された上に、なんなら後輩として入社して来られちゃった

パイ生地製作委員会
BL
【登場人物】 陰原 月夜(カゲハラ ツキヤ):受け 社会人として気丈に頑張っているが、恋愛面に関しては後ろ暗い過去を持つ。晴陽とは過去に高校で出会い、恋に落ちて付き合っていた。しかし、晴陽からの度重なる縛り付けが苦しくなり、大学入学を機に逃げ、遠距離を理由に自然消滅で晴陽と別れた。 太陽 晴陽(タイヨウ ハルヒ):攻め 明るく元気な性格で、周囲からの人気が高い。しかしその実、月夜との関係を大切にするあまり、執着してしまう面もある。大学卒業後、月夜と同じ会社に入社した。 【あらすじ】  晴陽と月夜は、高校時代に出会い、互いに深い愛情を育んだ。しかし、海が大学進学のため遠くに引っ越すことになり、二人の間には別れが訪れた。遠距離恋愛は困難を伴い、やがて二人は別れることを決断した。  それから数年後、月夜は大学を卒業し、有名企業に就職した。ある日、偶然の再会があった。晴陽が新入社員として月夜の勤務先を訪れ、再び二人の心は交わる。時間が経ち、お互いが成長し変わったことを認識しながらも、彼らの愛は再燃する。しかし、遠距離恋愛の過去の痛みが未だに彼らの心に影を落としていた。 更新報告用のX(Twitter)をフォローすると作品更新に早く気づけて便利です X(旧Twitter): https://twitter.com/piedough_bl 制作秘話ブログ: https://piedough.fanbox.cc/ メッセージもらえると泣いて喜びます:https://marshmallow-qa.com/8wk9xo87onpix02?t=dlOeZc&utm_medium=url_text&utm_source=promotion

【完結】弟を幸せにする唯一のルートを探すため、兄は何度も『やり直す』

バナナ男さん
BL
優秀な騎士の家系である伯爵家の【クレパス家】に生まれた<グレイ>は、容姿、実力、共に恵まれず、常に平均以上が取れない事から両親に冷たく扱われて育った。  そんなある日、父が気まぐれに手を出した娼婦が生んだ子供、腹違いの弟<ルーカス>が家にやってくる。 その生まれから弟は自分以上に両親にも使用人達にも冷たく扱われ、グレイは初めて『褒められる』という行為を知る。 それに恐怖を感じつつ、グレイはルーカスに接触を試みるも「金に困った事がないお坊ちゃんが!」と手酷く拒絶されてしまい……。   最初ツンツン、のちヤンデレ執着に変化する美形の弟✕平凡な兄です。兄弟、ヤンデレなので、地雷の方はご注意下さいm(__)m

鬼ごっこ

ハタセ
BL
年下からのイジメにより精神が摩耗していく年上平凡受けと そんな平凡を歪んだ愛情で追いかける年下攻めのお話です。

処理中です...