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 僕とビアンカはギルドを出て調査に向かう。しかし何故かピアーズが付いて来る。

「って言うか、なんでピアーズさんが付いて来るんですか?」

「なんでって、面白そうだからに決まってるだろう?」

「面白そうって、公務なんですけど?」

「いや、そっちじゃ無くて、この町に俺以外のSランク冒険者が来るってのが面白いんだよ。」

 そう言えばSランクが2人揃うのは数十年ぶりとか言ってたな。

「それに聞き込みに回るんだろう?だったら俺が居た方が何かと便利だぞ。」

 とりあえず、聞き込みに回る。出て行った人間達に共通の特徴が無かったか等を聞いて回るが、成果は無い。どうやら完全無差別に連れ去られている様だ。ただし、無理やり拉致された訳では無さそうだ。

 3万人規模の町で数千人が出て行ってもあまり話題になって居ないのはおかしい気もする。

「町の人達はあまり気にして居ない様だな。」

「それは、出て行く者も居れば入って来る者も居るからな。この町は冒険者ギルドがある。当然人の出入りは激しい。だから出て行く者が居ても何も感じないのだろう。」

 ピアーズが僕の疑問に答えてくれた。

「周辺の小さな町や村には冒険者ギルドがありませんからね。冒険者になりたい人はこの町へ来るって言う事ですよね?でも、冒険者で無い人たちが出て行くのは普通ではありえないのではありませんか?」

 ピアーズの言葉にビアンカが疑問を投げかける。

「この町から西へ10日程の距離にボーマット辺境伯の治めるトゥーファルと言う大きな町がある。王国で2番目に大きな都市だ。都会に出たいと言う願望を持つ者は多い、なのでこの町からもトゥーファルへ行く者は多い。と言う事でこの町は元々人の出入りが激しい町でもあるんだよ。」

「そう言う事でしたか。確かに王都の近郊の町も似た様な状況なので、合点は行きますね。」

 ビアンカは納得しているが、僕はなんか釈然としない。

 確かに人は都会へ都会へと向かう習性がある。だが、町から都市へ向かう様に、村から町へ向かう者も居る。なのでこの規模の町が、突然過疎化すると言うのは少し変だ。まあ、実際には一時的な物でまた増加する可能性が無い訳では無いので完全に否定も出来ないが。

「とりあえず、町の人は違和感を感じていない。大きな混乱も無いと言う事だな。後は、町の外の魔物の増加か、これも確認が必要だな。」

「まさか、このお嬢ちゃんを連れて町の外で出る気か?」

 ピアーズが大げさに言う。

「おいおい、じゃあ、僕らはどうやってここに来たと思っているんだ?」

「あ、そうか。王都からここまで馬車で来たとしても途中危険な事に変わりは無いって事になるな。しかも王都からだと1か月半位掛かるよな?」

 実際は転移で一瞬なので危険は無いのだが、面倒なので頷いて置く。

「って事で僕らは町の外を調査に行く。ここでお別れだな。」

「ん?何でだ?俺も行くぞ?戦力は多い方が良いだろう?」

 まだ、ついて来るつもりらしい。

 って言うか、ここの冒険者ギルドは暇なのか?Sランク冒険者が遊んでいて大丈夫なのだろうか、町の外の魔物がヤバいって自分で言ってたよね?そう言うのを減らすのがSランカーの仕事では無いのだろうか?

 とりあえず現在位置から一番近い北門を抜けて外へ出る。北側には小さな町や村が多いらしく街道が綺麗に整備されている。

「街道沿いはとりあえず安全だ、だが街道を一歩踏み外すと途端に魔物が襲って来るぞ。気を付けろよ。」

 何故かピアーズが先頭で偉そうに語っている。真ん中にビアンカ、殿が僕だ。

「以前の状況を知らないので教えて貰いたいのだが、以前はこの辺の魔物の分布はどうだったんだ?」

「正直町の近くには大した魔物は出なかったな。ゴブリンが出る程度と言えば解るか?だが今は、町の近くまでBランクの魔物が出る事がある。正直Cランクパーティー以下の冒険者はキツイだろうな。」

「Cランク以上の冒険者の絶対数ってどの位なんだ?」

「80人位かな、ギルドの規模の割には多いと思うぞ。」

 確かにギルドの規模から考えれば多いが、魔物の数の方が勝っているからヤバい状態なんだろう?って言うか、Dランク以下の冒険者は何をしているんだろう?

 よく考えたら不自然じゃないか?町の近くにBランクの魔物が出るって言うのは冒険者の絶対数とは関係なく無いか?Cランク以下の魔物が少なくなってるんじゃ無いだろうか?

 結果、Dランク以下の仕事が無くなって、冒険者を廃業あるいは他の街へ移転と言うのが実際では無いだろうか?

 町の住民が少なくなったと言うのが事象の始まりでは無い。逆だ。魔物が強くなっているのがそもそもの始まりでは無いだろうか?

 魔物が強くなれば町は危険に晒される、結果として住民や冒険者が流出したと言うのが本当の所では無いかと思う。

 あれ?そうなると、これって救済の箱舟とは関係ないんじゃないか?

「気を付けろ。魔物の気配だ。」

 考え事に集中して居たらピアーズにそう声を掛けられた。急いでサーチを展開すると結構な数の魔物が集まって来ている。中にはAランク相当の魔物も含まれている。

「まだ、町を出てから15分位だよな?それで、これは確かに危ないな。」

「だろう?俺がこの町を拠点にしているのもそれが理由だ。」

 とりあえず、ビアンカを後ろに下がらせる、背後から襲って来る気配は無い。探知魔法位はビアンカにも教えた方が良いかな?

 最初に現れたのはオークだ。こいつらは恐らくこの辺が縄張りなのだろう。まあ、居てもおかしくない魔物だ。ピアーズがサクッと片付けてくれた。

 しかし、次に現れたのがレッドベア―だ、いきなりAランクが出て来るとか生態系が滅茶苦茶だな。

 まあ、一匹だったので近づく前に僕がライトニングで沈黙させた。

「ほう?魔法使いなのか?」

 ピアーズがそう呟いた。

 それを合図にした訳では無いだろうが、BランクCランクの魔物がぞろぞろと出て来る。

 魔物によって弱点属性は異なる。まあ、雷属性の魔法は大抵の魔物に効くので使い勝手が良いのだが、今は一人では無いので仲間も巻き込み兼ねない広範囲魔法は使えない。

 仕方が無いので、瞬動を駆使して剣を振るう。右側から回り込む様に敵を倒して行く。半分位倒したところで、ピアーズの方もかなりの数を倒しているのが見えた。Sランクと言うのも伊達じゃない様だ。

 ピアーズがフォレストファングの群れに手こずっている間に残りの魔物を殲滅させる。
 
 ビアンカの元に戻った時には全てが終わって居た。

「剣も魔法も使うとは面白い奴だな。」

「あんたも、相当な腕だ。王都でも通用するぞ。」

「昔、王都で3か月程Sランクパーティーに居た事があるよ。」

 なるほど、そう言えばSランクの試験って王都のギルドじゃ無いと受けられないんだったな。ピアーズは王都に居た事がある様だ。

「魔物の様子がおかしくなった時期って何時頃か解りますか?」

「おそらくだが、5か月程前だった気がする。」

「では、町の人口が減り始めたのは何時からですか?」

「そうだな、ハッキリとした時期は解らないが、気が付いたのは3か月位前だったと思う。」

 これは決まりだな。

「結論から言うと、町の人口の減少は魔物の生態系の異常が原因です。大規模討伐をして、魔物の数を減らせば人口の減少は止められますよ。」

「ほう?たった半日調べただけで、そこまで解るのか?」

「まあ、小さな町ですからね。小さな異変が大きな事件の原因だったと言う事は良くある事です。今回の場合は解り易かったのですぐに判明して良かったです。」

「解った。その件は、俺からギルドマスターに話して置くよ。2人はこれからトゥーファルへ向かうんだろう?」

「良く解りましたね。ここから西へ行けばトゥーファルへは近いですよね?」

「まあ、感と運が良く無いと冒険者はやってられないからな。」

 少し先に街道が十字路になって居る場所がある。恐らくだが、左に曲がればトゥーファルに辿り着くはずだ。

「お前の腕なら護衛は要らないな。俺は引き返すよ。」

「なるほど、護衛をしてくれてたんですね。僕らはこのままトゥーファルへ向かいます。」

「そこの十字路を左に曲がれば30分程で小さな村がある。今日はそこで休むと良い。じゃあな。」

 ピアーズが右手を挙げて別れの挨拶をする。僕も手を挙げ、ビアンカはお辞儀をした。
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