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第八話
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盛大にカミングアウトして一週間。我が家の食卓には様々な料理が少しずつ並ぶ様になった。まだ、料理人が料理の再現に四苦八苦している途中なので、ユーリが魔法で作っているが、レシピや材料を渡しているので、その内、ユーリが居なくても美味しい食事が食べられる様になるだろう。料理人達は、この料理を覚えていずれ独立して店を持ちたい等と言って、かなり積極的だ。
ユーリはハンバーグやホワイトシチュー、ビーフシチュー等の比較的アレンジしやすい料理を出し、料理人達に自由に研究させている。また、パンは様々な種類を毎朝人数分用意する。こちらも、基本は一緒なのでそう遠くない時期に再現出来ると期待している。
そんな感じで過ごしていると、姉上の初登校の日がやって来た。魔法使いの出る事が少ないオーバルバイン家で、久しぶりに魔法の才のある姉上だが、実はあまり期待はされていない。魔法の使えない者は居ないこの世界だが、『魔法使い』として生活をして行ける者は20%位だそうだ。魔法学院の生徒でさえ三分の一が魔法騎士団や魔法使いとして就職出来るが、それ以外は魔法の使える~~と言った感じで別の職業に就く。女性の場合は成人すると結婚を決めてしまう事も多く更に『魔法使い』は狭き門となる。
姉上の場合も、多分成人したら嫁ぐ事になるだろうと父上が言っていた。学院行きは花嫁修業の様なものらしい。
姉上の初登校は母上が付いて行った。ユーリは朝食後に料理人達に質問責めにあっている。ここ最近の日課みたいな物だ。父上は今日は午後から登城らしく、まだゆったりとした服装で、その様子を眺めている。
「ユーリ!今日、約束した商人が来るぞ。落ち着いたら動きやすい服装に着替えておきなさい。」
部屋に戻り際に父上が声を掛けてきた。低いが良く通る声である。
「解りました。楽しみにしています。」
「店や商会の事は二人で相談して、後で報告だけしてくれれば良い。金の事は気にするな。思いっきりやれ!」
父上は上機嫌に笑いながら自室へと戻って行った。
午後一番に件の商人はやって来た。
「レイモンド商会のフレデリック・レイモンドです。そして後ろに控えているのが息子のアトマス・レイモンドでございます。」
大柄で金髪の商人は綺麗なお辞儀をした。
「ユーライナ・オーバルバインです。ご丁寧な挨拶痛み入ります。」
礼を返すと。驚かれた。
「6歳と聞いて心配していたのですが、これは伯爵の言われる通り神童と言うのも嘘では無さそうですね。」
「父上は大げさなんですよ。たまたま商売になりそうなネタを見つけてテンションが上がっていたんでしょう。僕は普通の子供ですよ。」
「まあ、そう謙遜なさらずとも。今回の話、当商会でもかなり儲かると踏んでいます。ただ、伯爵様の提案で、若い物だけでやらせてみようと言う事になり、こうして、息子を連れて来た次第です。ここから先は二人で話し合って色々決めて下さい。アトマスには私のノウハウをしっかり叩き込んであります。そこらの商人よりは有能だと保証します。ただ、成人したてで経験と人脈が無いだけですので、鍛えてやって下さい。」
海千山千の商人ではこちらに不利な商売になってしまうと踏んで、父上が仕組んだ作戦らしい。
「えっと、二人でって言う事は、レイモンド商会とは別の商会を立ち上げると言う事ですか?」
「そう言う事です。後は息子と二人で頑張って下さい。私は極力口は出しません。もちろん頼って頂ければ。それなりのアドバイスは致します。では、私は商会に戻りますので、アトマス!ユーライナ様に失礼のないようにな。」
そう言うと、本当に帰ってしまった。
とりあえず、アトマスさんにはユーリの部屋へ入ってもらう。
「ここなら、誰も人は来ませんので、楽にしてください。」
「ありがとうございます。ユーライナ様。」
思いっきり緊張しているアトマス。
「えっと、とりあえず、その呼び名止めましょう。ユーリと呼んで下さい。」
「いや、貴族の方にそんなとんでもない。」
「僕は貴族ではありませんよ。父が貴族なだけで、僕は何もしてませんし、三男ですし、平民扱いで問題無いですよ。」
するとアトマスが首が取れそうなほど横に振る。
「滅相も無い。私が貴族のユーライナ様を呼び捨てなどしたら、不敬罪で首が飛びます。それにユーライナ様はオーナーでいらっしゃる。」
「不敬罪なんて言いませんよ。それにアトマスさんの方が年上だし、オーナーもアトマスさんにやって貰うつもりですよ。」
「え?私がオーナーですか?」
「そうです。僕は12歳になったら学院へ行く予定です。卒業後も商人を続けるかは分かりませんし、アトマスさんはずっと商人一筋で行くんでしょ?だったら、オーナーはアトマスさんの方が都合が良い。父上にもオーバルバインの名前は出すなとも言われてますしね。」
アトマスは吃驚して何やら考え込んでしまった。
「二人で決めろって言われましたよね?二人で決めたのなら誰も文句は言わないでしょう。最初は実質僕がオーナーをやりますが、徐々にアトマスさん主導に切り替えて行きましょう。折角作る商会です。潰したくは無いでしょ?」
ユーリが背中を押すとアトマスもやっと決心が着いたようである。
「解りました。私も商人です。自分の商会を持つのが夢でした。ユーライナ様の提案に乗りましょう!」
「ユーライナ様はやめて下さい。せめてユーリ様でお願いします。」
ユーリはユーライナ様と言われる度に顔が赤くなるのを堪えていた。
「解りました。ユーリ様。これからよろしくお願い致します。」
深々と頭を下げるアトマスであった。なんと言うか気真面目過ぎる商人である。これがユーリとアトマスの出会いの一幕であった。
ユーリはハンバーグやホワイトシチュー、ビーフシチュー等の比較的アレンジしやすい料理を出し、料理人達に自由に研究させている。また、パンは様々な種類を毎朝人数分用意する。こちらも、基本は一緒なのでそう遠くない時期に再現出来ると期待している。
そんな感じで過ごしていると、姉上の初登校の日がやって来た。魔法使いの出る事が少ないオーバルバイン家で、久しぶりに魔法の才のある姉上だが、実はあまり期待はされていない。魔法の使えない者は居ないこの世界だが、『魔法使い』として生活をして行ける者は20%位だそうだ。魔法学院の生徒でさえ三分の一が魔法騎士団や魔法使いとして就職出来るが、それ以外は魔法の使える~~と言った感じで別の職業に就く。女性の場合は成人すると結婚を決めてしまう事も多く更に『魔法使い』は狭き門となる。
姉上の場合も、多分成人したら嫁ぐ事になるだろうと父上が言っていた。学院行きは花嫁修業の様なものらしい。
姉上の初登校は母上が付いて行った。ユーリは朝食後に料理人達に質問責めにあっている。ここ最近の日課みたいな物だ。父上は今日は午後から登城らしく、まだゆったりとした服装で、その様子を眺めている。
「ユーリ!今日、約束した商人が来るぞ。落ち着いたら動きやすい服装に着替えておきなさい。」
部屋に戻り際に父上が声を掛けてきた。低いが良く通る声である。
「解りました。楽しみにしています。」
「店や商会の事は二人で相談して、後で報告だけしてくれれば良い。金の事は気にするな。思いっきりやれ!」
父上は上機嫌に笑いながら自室へと戻って行った。
午後一番に件の商人はやって来た。
「レイモンド商会のフレデリック・レイモンドです。そして後ろに控えているのが息子のアトマス・レイモンドでございます。」
大柄で金髪の商人は綺麗なお辞儀をした。
「ユーライナ・オーバルバインです。ご丁寧な挨拶痛み入ります。」
礼を返すと。驚かれた。
「6歳と聞いて心配していたのですが、これは伯爵の言われる通り神童と言うのも嘘では無さそうですね。」
「父上は大げさなんですよ。たまたま商売になりそうなネタを見つけてテンションが上がっていたんでしょう。僕は普通の子供ですよ。」
「まあ、そう謙遜なさらずとも。今回の話、当商会でもかなり儲かると踏んでいます。ただ、伯爵様の提案で、若い物だけでやらせてみようと言う事になり、こうして、息子を連れて来た次第です。ここから先は二人で話し合って色々決めて下さい。アトマスには私のノウハウをしっかり叩き込んであります。そこらの商人よりは有能だと保証します。ただ、成人したてで経験と人脈が無いだけですので、鍛えてやって下さい。」
海千山千の商人ではこちらに不利な商売になってしまうと踏んで、父上が仕組んだ作戦らしい。
「えっと、二人でって言う事は、レイモンド商会とは別の商会を立ち上げると言う事ですか?」
「そう言う事です。後は息子と二人で頑張って下さい。私は極力口は出しません。もちろん頼って頂ければ。それなりのアドバイスは致します。では、私は商会に戻りますので、アトマス!ユーライナ様に失礼のないようにな。」
そう言うと、本当に帰ってしまった。
とりあえず、アトマスさんにはユーリの部屋へ入ってもらう。
「ここなら、誰も人は来ませんので、楽にしてください。」
「ありがとうございます。ユーライナ様。」
思いっきり緊張しているアトマス。
「えっと、とりあえず、その呼び名止めましょう。ユーリと呼んで下さい。」
「いや、貴族の方にそんなとんでもない。」
「僕は貴族ではありませんよ。父が貴族なだけで、僕は何もしてませんし、三男ですし、平民扱いで問題無いですよ。」
するとアトマスが首が取れそうなほど横に振る。
「滅相も無い。私が貴族のユーライナ様を呼び捨てなどしたら、不敬罪で首が飛びます。それにユーライナ様はオーナーでいらっしゃる。」
「不敬罪なんて言いませんよ。それにアトマスさんの方が年上だし、オーナーもアトマスさんにやって貰うつもりですよ。」
「え?私がオーナーですか?」
「そうです。僕は12歳になったら学院へ行く予定です。卒業後も商人を続けるかは分かりませんし、アトマスさんはずっと商人一筋で行くんでしょ?だったら、オーナーはアトマスさんの方が都合が良い。父上にもオーバルバインの名前は出すなとも言われてますしね。」
アトマスは吃驚して何やら考え込んでしまった。
「二人で決めろって言われましたよね?二人で決めたのなら誰も文句は言わないでしょう。最初は実質僕がオーナーをやりますが、徐々にアトマスさん主導に切り替えて行きましょう。折角作る商会です。潰したくは無いでしょ?」
ユーリが背中を押すとアトマスもやっと決心が着いたようである。
「解りました。私も商人です。自分の商会を持つのが夢でした。ユーライナ様の提案に乗りましょう!」
「ユーライナ様はやめて下さい。せめてユーリ様でお願いします。」
ユーリはユーライナ様と言われる度に顔が赤くなるのを堪えていた。
「解りました。ユーリ様。これからよろしくお願い致します。」
深々と頭を下げるアトマスであった。なんと言うか気真面目過ぎる商人である。これがユーリとアトマスの出会いの一幕であった。
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