9 / 151
第九話
しおりを挟む
次の日、ユーリとアトマスの二人はオーバルバイン伯爵が用意したと言う店舗候補地を訪れていた。
用意したと言えば聞こえが良いが、実は借金の形に押し付けられ、だいぶ前から持っていた物件である。
ユーリが預かってきたカギでドアを開けて二人は中に入った。かなり放置されていたようで埃の臭いが充満している。
「まずは掃除ですね。アトマスさんは窓を開けて回って下さい。僕が魔法を掛けます。」
そう言ってユーリは家を丸ごと包むクリーンの魔法を無詠唱で掛ける。
家はすっかり埃臭さが無くなり、窓から入ってくる風の香りで呼吸がしやすくなる。
「あと、痛みも結構あるので直しましょう。」
そう言ってオールリペアの魔法を掛ける。大工を入れてリフォームしないと使えないのではと考えていたアトマスは激変した物件を見て大いに驚く。
「なんというか、ユーリ様って色々と反則ですね。」
「そうですか?クリーンは生活魔法なのでアトマスさんも使えるでしょ?」
「いや、こんなに大掛かりなクリーンは普通の人には使えませんよ!」
ついつい声が大きくなってしまったアトマスであった。
二人は家の造りを一通り見て回り、店として使える部分や、倉庫、事務室、軽食販売の場所などを、話し合いながら決めて行く。
「ところで、販売するのはグラスと軽食だけなのですか?」
「それなんだけど、僕もちょっと弱いなって思っていたんですよ。他にもう一品何か欲しいですよね?」
ユーリには文明を上げると言う使命の様な物がある。ここは欲張って、流通させる物を増やしたい。
「しかし、最初からあまり手を広げると失敗した時に痛いですよ。うちの店主、父親ですが、グラスだけでも十分商売になると言ってました。」
「そうですか・・・そう言えばアトマスさんにはまだ商品を見せてませんでしたよね?」
そう言うと、ユーリはテーブルの上に、氷の入ったサイダーと焼うどんを二人分出す。ユーリの分には箸を、アトマスの分にはフォークをつけてある。何故焼うどんなのかと言うと、ユーリが食べたかったと言う単純な理由だ。
「続きは食べながらしましょう。」
「これが、噂のグラスですか?本当に綺麗に透き通ってますね。」
やはり商人のアトマスには、透明なグラスが衝撃的な様だ。だが、ユーリが本当に広めたいのは食事の方である。
「冷めないうちに食べて下さい。」
「はい、熱々の料理と冷えた飲み物、魔法とは便利なものですね。」
そして、一口食べれば他の人と反応は一緒。黙々とフォークを動かし、時折冷たいサイダーを味わう。
「如何ですか?商売になりそうですか?」
「これは、絶対に売れます。いや、売って見せます!!」
アトマスの目にやる気が漲っている。ユーリは焼うどんを味わいながら微笑んだ。
「やはり本物の商人に言われると嬉しいですね。でも本当にこのグラスと軽食だけで行くんですか?」
「そうですね、最初は軽食だけでもかなり注目を浴びると思います。グラスも目立つ位置に置けば自然と売れるでしょう。客足が安定してから次の商品を投入した方が効果は高いと思いますよ。」
ユーリとしては折角の広い店なので、もっと色々売りたいのだが、本職の商人が言うのであれば、その方が良いのであろう。
(まあ、すぐに次の商品を投入出来る準備はして置こう!)
今日はこの後、アトマスには商会の手続きに商業ギルドに行ってもらう予定なので、ユーリは帰り支度を始める。
「では、アトマスさん。手続きの方はお願いします。」
「はい、でも本当に商会名はアトマス商会で良いのですか?」
「もちろん。僕は名前を出せない身ですからね!では、また明日、同じ時刻にここで!」
家に帰ると父上が既に帰っていた。まだ昼過ぎなのに何かあったのだろうか?
「ユーリ。例の王家に献上するグラスはどうなった?」
「はい、既に50個完成していますよ。ただ、透明なだけじゃ芸が無いと思い、ちょっとしたデザインも入れてあります。見てみますか?」
そう言ってアイテムボックスからグラスを1個取り出して見せる。ストレートなタンブラーではなく、曲線をあしらったビアタンブラーの様な形にしてある。
「おおこれは素晴らしい。50個揃っているのだな?ならばすぐにこのアイテムバッグに移してくれ。これから献上に行ってくる。」
父上は透明なグラスの事を国王陛下に話したらしく、陛下がすぐにでも持って来るようにと言われたらしい。急いでアイテムバッグを持ち、馬車で王城へと向かう父上だった。
この日から、透明なグラスを国王陛下が諸侯に自慢したらしく、どこで手に入るのかと貴族の間で話題になるのであった。
そんな事になっていると知らないユーリとアトマスは店を軽食メインのカフェ風にすると言う方向で話を進めているのであった。
用意したと言えば聞こえが良いが、実は借金の形に押し付けられ、だいぶ前から持っていた物件である。
ユーリが預かってきたカギでドアを開けて二人は中に入った。かなり放置されていたようで埃の臭いが充満している。
「まずは掃除ですね。アトマスさんは窓を開けて回って下さい。僕が魔法を掛けます。」
そう言ってユーリは家を丸ごと包むクリーンの魔法を無詠唱で掛ける。
家はすっかり埃臭さが無くなり、窓から入ってくる風の香りで呼吸がしやすくなる。
「あと、痛みも結構あるので直しましょう。」
そう言ってオールリペアの魔法を掛ける。大工を入れてリフォームしないと使えないのではと考えていたアトマスは激変した物件を見て大いに驚く。
「なんというか、ユーリ様って色々と反則ですね。」
「そうですか?クリーンは生活魔法なのでアトマスさんも使えるでしょ?」
「いや、こんなに大掛かりなクリーンは普通の人には使えませんよ!」
ついつい声が大きくなってしまったアトマスであった。
二人は家の造りを一通り見て回り、店として使える部分や、倉庫、事務室、軽食販売の場所などを、話し合いながら決めて行く。
「ところで、販売するのはグラスと軽食だけなのですか?」
「それなんだけど、僕もちょっと弱いなって思っていたんですよ。他にもう一品何か欲しいですよね?」
ユーリには文明を上げると言う使命の様な物がある。ここは欲張って、流通させる物を増やしたい。
「しかし、最初からあまり手を広げると失敗した時に痛いですよ。うちの店主、父親ですが、グラスだけでも十分商売になると言ってました。」
「そうですか・・・そう言えばアトマスさんにはまだ商品を見せてませんでしたよね?」
そう言うと、ユーリはテーブルの上に、氷の入ったサイダーと焼うどんを二人分出す。ユーリの分には箸を、アトマスの分にはフォークをつけてある。何故焼うどんなのかと言うと、ユーリが食べたかったと言う単純な理由だ。
「続きは食べながらしましょう。」
「これが、噂のグラスですか?本当に綺麗に透き通ってますね。」
やはり商人のアトマスには、透明なグラスが衝撃的な様だ。だが、ユーリが本当に広めたいのは食事の方である。
「冷めないうちに食べて下さい。」
「はい、熱々の料理と冷えた飲み物、魔法とは便利なものですね。」
そして、一口食べれば他の人と反応は一緒。黙々とフォークを動かし、時折冷たいサイダーを味わう。
「如何ですか?商売になりそうですか?」
「これは、絶対に売れます。いや、売って見せます!!」
アトマスの目にやる気が漲っている。ユーリは焼うどんを味わいながら微笑んだ。
「やはり本物の商人に言われると嬉しいですね。でも本当にこのグラスと軽食だけで行くんですか?」
「そうですね、最初は軽食だけでもかなり注目を浴びると思います。グラスも目立つ位置に置けば自然と売れるでしょう。客足が安定してから次の商品を投入した方が効果は高いと思いますよ。」
ユーリとしては折角の広い店なので、もっと色々売りたいのだが、本職の商人が言うのであれば、その方が良いのであろう。
(まあ、すぐに次の商品を投入出来る準備はして置こう!)
今日はこの後、アトマスには商会の手続きに商業ギルドに行ってもらう予定なので、ユーリは帰り支度を始める。
「では、アトマスさん。手続きの方はお願いします。」
「はい、でも本当に商会名はアトマス商会で良いのですか?」
「もちろん。僕は名前を出せない身ですからね!では、また明日、同じ時刻にここで!」
家に帰ると父上が既に帰っていた。まだ昼過ぎなのに何かあったのだろうか?
「ユーリ。例の王家に献上するグラスはどうなった?」
「はい、既に50個完成していますよ。ただ、透明なだけじゃ芸が無いと思い、ちょっとしたデザインも入れてあります。見てみますか?」
そう言ってアイテムボックスからグラスを1個取り出して見せる。ストレートなタンブラーではなく、曲線をあしらったビアタンブラーの様な形にしてある。
「おおこれは素晴らしい。50個揃っているのだな?ならばすぐにこのアイテムバッグに移してくれ。これから献上に行ってくる。」
父上は透明なグラスの事を国王陛下に話したらしく、陛下がすぐにでも持って来るようにと言われたらしい。急いでアイテムバッグを持ち、馬車で王城へと向かう父上だった。
この日から、透明なグラスを国王陛下が諸侯に自慢したらしく、どこで手に入るのかと貴族の間で話題になるのであった。
そんな事になっていると知らないユーリとアトマスは店を軽食メインのカフェ風にすると言う方向で話を進めているのであった。
12
あなたにおすすめの小説
侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
召喚失敗から始まる異世界生活
思惟岳
ファンタジー
庭付き一戸建て住宅ごと召喚されたせいで、召喚に失敗。いったん、天界に転送されたジュンは、これからどうしたいかと神に問われた。
「なろう」さまにも、以前、投稿させていただいたお話です。
ペンネームもタイトルも違うし、かなり書き直したので、別のお話のようなものですけれど。
転生先ではゆっくりと生きたい
ひつじ
ファンタジー
勉強を頑張っても、仕事を頑張っても誰からも愛されなかったし必要とされなかった藤田明彦。
事故で死んだ明彦が出会ったのは……
転生先では愛されたいし必要とされたい。明彦改めソラはこの広い空を見ながらゆっくりと生きることを決めた
小説家になろうでも連載中です。
なろうの方が話数が多いです。
https://ncode.syosetu.com/n8964gh/
疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
転生令息は攻略拒否!?~前世の記憶持ってます!~
深郷由希菜
ファンタジー
前世の記憶持ちの令息、ジョーン・マレットスは悩んでいた。
ここの世界は、前世で妹がやっていたR15のゲームで、自分が攻略対象の貴族であることを知っている。
それはまだいいが、攻略されることに抵抗のある『ある理由』があって・・・?!
(追記.2018.06.24)
物語を書く上で、特に知識不足なところはネットで調べて書いております。
もし違っていた場合は修正しますので、遠慮なくお伝えください。
(追記2018.07.02)
お気に入り400超え、驚きで声が出なくなっています。
どんどん上がる順位に不審者になりそうで怖いです。
(追記2018.07.24)
お気に入りが最高634まできましたが、600超えた今も嬉しく思います。
今更ですが1日1エピソードは書きたいと思ってますが、かなりマイペースで進行しています。
ちなみに不審者は通り越しました。
(追記2018.07.26)
完結しました。要らないとタイトルに書いておきながらかなり使っていたので、サブタイトルを要りませんから持ってます、に変更しました。
お気に入りしてくださった方、見てくださった方、ありがとうございました!
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
【完結】憧れのスローライフを異世界で?
さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。
日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる