創造魔法で想像以上に騒々しい異世界ライフ

埼玉ポテチ

文字の大きさ
11 / 151

第十一話

しおりを挟む
 商業ギルドはユーリたちの店から、北へ20分程の場所にある。大商会の並ぶ中央通りの中心だ。二人はギルドへ入り、従業員斡旋の手続きをする。とりあえず2名は確保したい。
 商売の事を考えると年齢はともかく女性が好ましい等と、ギルドの受付で一通り要望を伝える。

「ん~、一人ならすぐに働ける人材がいるのですが、もう一人は1週間位は時間が欲しいですね。」

 ギルドの受付嬢が1枚の書類を手渡して来た。ざっと目を通すが問題は無さそうだ。

「では、とりあえず、この人と面談させて下さい。最低賃金とかあるんですか?」

「そうですね。厳密な決まりはありませんが、住み込みなら銀貨5枚、通いなら銀貨7枚と言うのが新人店員の相場になります。」

「解りました。じゃあすぐにでも面接したいのですが、どうすれば良いでしょうか?」

「アトマス商会さんですよね?では1時間後にお店に向かう様に手配します。」

「ありがとうございます。」

 二人は深く頭を下げギルドを出た。
 ゆっくりと歩きで店へと向かう。そう言えば、お金の事を殆ど考えていなかった事に気付く二人。

「アトマスさんはあのグラスを幾らで販売する予定ですか?」

「そうですねぇ、普通のガラスのグラスが大銅貨1枚程度ですから、あの透明度のグラスなら銀貨3枚程度かなと。」

「高すぎますよ~。普通のグラスが大銅貨1枚なら、あのグラスは大銅貨2枚で十分利益が出ます。軽食の相場って、どんな感じなんですか?」

「大銅貨2枚って本気ですか?貴族なら金貨1枚でも買いますよ。あれは。軽食はそうですねぇ。串焼きやスープ類なら銅貨数枚で食べられます。冒険者等はパンとスープで銅貨5枚以下に抑えるのが普通ですね。」

 どうやら、庶民の物価はユーリの考えている物より低目らしい。アトマスさんは、高級路線で行くつもりなのも分かった。

「解りました。ではグラスの値付けはアトマスさんにお任せします。その代わり、軽食は僕の好きな値付けで良いですか?」

「はぁ。それで構いませんが、損失だけは出さない様にお願いします。」

「元値はゼロですからね。売れれば売れるだけ全部儲けになりますよ。で、従業員の給料ですが、レイモンド商会ではどの位出してるんですか?」

「あ、うちは、通いで銀貨8枚です。住み込みは食事代も含まれるので銀貨4枚ですね。」

「となると、条件の悪い私たちの店だと通いで銀貨9枚。住み込みで銀貨6枚と言った所ですかね。」

「その給料ならまず、断る人は居ないと思いますよ。」

 アトマスの言葉にユーリはホッとした。そうこうしているうちに店へとたどり着く。面接の時間まで、あと20分以上ある。そこで、ユーリは棚へグラスを並べ始める売り物の現物があった方が面接の時に説明しやすいと思ったからだ。魔法で、100個近いグラスを棚に綺麗に陳列した。住み込み用の部屋も2階に10部屋程の空き部屋がある。もともと2階は商会の寮だった様だ。ユーリとアトマスの部屋は既に1階に確保してある。もちろん事務所とは別だ。
 こうして、時間を費やしているうちに、従業員候補の女の子が訪ねてきた。
 見た目は成人して間もない感じ、アトマスと同年齢だろう。赤髪の、ちょっと垢抜けない感じの子だが愛嬌はある。

「はじめまして。ギルドから紹介を受けたルイーゼと申します。」

「はい、伺っております。私が、このアトマス商会の会長のアトマスです。どうぞお座り下さい。」

 アトマスが接客用の椅子を勧める。小さめのテーブルを挟んでアトマスが彼女の正面。その左にユーリが座る。

「僕は、ここのオーナーでユーリと言います。子供ですが、よろしくお願いします。」

 ユーリがオーナーと名乗ったので、ルイーゼは若干驚いていた。続きはアトマスに任せる。基本従業員の斡旋や教育はアトマスの仕事になる。これは将来アトマスが商会を一人で運営する時の為でもある。

「基本、この店では2種類の商品を扱います。一つはそこに並んでいる透明なグラスです。」

 アトマスが、棚の方を手で示すとルイーゼの顔がパッと輝く。

「綺麗なグラス・・・」

「そして、もう一つは軽食なんだけど、これは実際に食べて貰った方がわかり易いかな。」

 そう言ってアトマスはユーリの方を向く。これは事前に決めてあった事なので、アトマスも淀みなく話を進めて行く。ユーリはうなずくと、テーブルの上に冷えたミックスフルーツジュースと野菜たっぷりドレッシングたっぷりのローストチキンサンドを3人分出して行く。

「さ、これは商品なので遠慮しないで食べて、感想を聞かせて下さい。」

 そうアトマスが勧めると、ルイーゼは恐る恐る紙の包みを開いて行く。

「わぁ。すごい柔らかいパン!それにとても美味しそうな香りがする。」

 そして、一口齧れば、恒例の沈黙タイム。あっという間にローストチキンサンドが小さくなって行く。

「こんなに美味しい食事初めてです。それにこの飲み物も凄い美味しいです。冷えてて甘くてジューシーで。」

「ありがとうございます。この2点がうちの商品です。軽食の方は毎日メニューは変わる予定ですので、毎日これが出る訳ではありません。如何でしょうか?当店で働いてみる気になりましたか?」

「こんな美味しい物が他にもあるんですか?やります!働かせて下さい!!」

「賃金まだ言って無いけど決めちゃって良いの?」

 ユーリはあまりの展開の速さについ言葉に出してしまった。

「ユーリ様、余計な事言わないで下さいよぉ~折角やる気になってるのに!!」

「ごめんよ、アトマスさん。」

 そんなやり取りにルイーゼがつい噴き出してしまう。
 こうして、従業員が一人増えたのであった。

「あの、従業員は私一人ですか?」

 思い出した様にルイーゼが聞いて来る。

「いや、もう一人雇う予定なんだけど、まだ、ギルドの方と調整が付いてなくてね。」

「じゃあ、あの・・・私の知り合いを雇って頂けませんか?」

「良い子が居るなら歓迎するよ。明日にでも面談出来るかな?」

「はい、明日のこの時間に連れてきます。よろしくお願いします!」

 思いがけず、二人目の従業員もなんとか決まりそうな気配がする。
 ここまでは順調だ。なお、従業員二人は住み込み希望らしい。

 問題はオープン初日だ。これを上手く乗り切らないと・・・
 



しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

【完結】子爵令嬢の秘密

りまり
恋愛
私は記憶があるまま転生しました。 転生先は子爵令嬢です。 魔力もそこそこありますので記憶をもとに頑張りたいです。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ

如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白? 「え~…大丈夫?」 …大丈夫じゃないです というかあなた誰? 「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」 …合…コン 私の死因…神様の合コン… …かない 「てことで…好きな所に転生していいよ!!」 好きな所…転生 じゃ異世界で 「異世界ってそんな子供みたいな…」 子供だし 小2 「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」 よろです 魔法使えるところがいいな 「更に注文!?」 …神様のせいで死んだのに… 「あぁ!!分かりました!!」 やたね 「君…結構策士だな」 そう? 作戦とかは楽しいけど… 「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」 …あそこ? 「…うん。君ならやれるよ。頑張って」 …んな他人事みたいな… 「あ。爵位は結構高めだからね」 しゃくい…? 「じゃ!!」 え? ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!

【完結】憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

みそっかす銀狐(シルバーフォックス)、家族を探す旅に出る

伽羅
ファンタジー
三つ子で生まれた銀狐の獣人シリル。一人だけ体が小さく人型に変化しても赤ん坊のままだった。 それでも親子で仲良く暮らしていた獣人の里が人間に襲撃される。 兄達を助ける為に囮になったシリルは逃げる途中で崖から川に転落して流されてしまう。 何とか一命を取り留めたシリルは家族を探す旅に出るのだった…。

処理中です...