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第十一話
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商業ギルドはユーリたちの店から、北へ20分程の場所にある。大商会の並ぶ中央通りの中心だ。二人はギルドへ入り、従業員斡旋の手続きをする。とりあえず2名は確保したい。
商売の事を考えると年齢はともかく女性が好ましい等と、ギルドの受付で一通り要望を伝える。
「ん~、一人ならすぐに働ける人材がいるのですが、もう一人は1週間位は時間が欲しいですね。」
ギルドの受付嬢が1枚の書類を手渡して来た。ざっと目を通すが問題は無さそうだ。
「では、とりあえず、この人と面談させて下さい。最低賃金とかあるんですか?」
「そうですね。厳密な決まりはありませんが、住み込みなら銀貨5枚、通いなら銀貨7枚と言うのが新人店員の相場になります。」
「解りました。じゃあすぐにでも面接したいのですが、どうすれば良いでしょうか?」
「アトマス商会さんですよね?では1時間後にお店に向かう様に手配します。」
「ありがとうございます。」
二人は深く頭を下げギルドを出た。
ゆっくりと歩きで店へと向かう。そう言えば、お金の事を殆ど考えていなかった事に気付く二人。
「アトマスさんはあのグラスを幾らで販売する予定ですか?」
「そうですねぇ、普通のガラスのグラスが大銅貨1枚程度ですから、あの透明度のグラスなら銀貨3枚程度かなと。」
「高すぎますよ~。普通のグラスが大銅貨1枚なら、あのグラスは大銅貨2枚で十分利益が出ます。軽食の相場って、どんな感じなんですか?」
「大銅貨2枚って本気ですか?貴族なら金貨1枚でも買いますよ。あれは。軽食はそうですねぇ。串焼きやスープ類なら銅貨数枚で食べられます。冒険者等はパンとスープで銅貨5枚以下に抑えるのが普通ですね。」
どうやら、庶民の物価はユーリの考えている物より低目らしい。アトマスさんは、高級路線で行くつもりなのも分かった。
「解りました。ではグラスの値付けはアトマスさんにお任せします。その代わり、軽食は僕の好きな値付けで良いですか?」
「はぁ。それで構いませんが、損失だけは出さない様にお願いします。」
「元値はゼロですからね。売れれば売れるだけ全部儲けになりますよ。で、従業員の給料ですが、レイモンド商会ではどの位出してるんですか?」
「あ、うちは、通いで銀貨8枚です。住み込みは食事代も含まれるので銀貨4枚ですね。」
「となると、条件の悪い私たちの店だと通いで銀貨9枚。住み込みで銀貨6枚と言った所ですかね。」
「その給料ならまず、断る人は居ないと思いますよ。」
アトマスの言葉にユーリはホッとした。そうこうしているうちに店へとたどり着く。面接の時間まで、あと20分以上ある。そこで、ユーリは棚へグラスを並べ始める売り物の現物があった方が面接の時に説明しやすいと思ったからだ。魔法で、100個近いグラスを棚に綺麗に陳列した。住み込み用の部屋も2階に10部屋程の空き部屋がある。もともと2階は商会の寮だった様だ。ユーリとアトマスの部屋は既に1階に確保してある。もちろん事務所とは別だ。
こうして、時間を費やしているうちに、従業員候補の女の子が訪ねてきた。
見た目は成人して間もない感じ、アトマスと同年齢だろう。赤髪の、ちょっと垢抜けない感じの子だが愛嬌はある。
「はじめまして。ギルドから紹介を受けたルイーゼと申します。」
「はい、伺っております。私が、このアトマス商会の会長のアトマスです。どうぞお座り下さい。」
アトマスが接客用の椅子を勧める。小さめのテーブルを挟んでアトマスが彼女の正面。その左にユーリが座る。
「僕は、ここのオーナーでユーリと言います。子供ですが、よろしくお願いします。」
ユーリがオーナーと名乗ったので、ルイーゼは若干驚いていた。続きはアトマスに任せる。基本従業員の斡旋や教育はアトマスの仕事になる。これは将来アトマスが商会を一人で運営する時の為でもある。
「基本、この店では2種類の商品を扱います。一つはそこに並んでいる透明なグラスです。」
アトマスが、棚の方を手で示すとルイーゼの顔がパッと輝く。
「綺麗なグラス・・・」
「そして、もう一つは軽食なんだけど、これは実際に食べて貰った方がわかり易いかな。」
そう言ってアトマスはユーリの方を向く。これは事前に決めてあった事なので、アトマスも淀みなく話を進めて行く。ユーリはうなずくと、テーブルの上に冷えたミックスフルーツジュースと野菜たっぷりドレッシングたっぷりのローストチキンサンドを3人分出して行く。
「さ、これは商品なので遠慮しないで食べて、感想を聞かせて下さい。」
そうアトマスが勧めると、ルイーゼは恐る恐る紙の包みを開いて行く。
「わぁ。すごい柔らかいパン!それにとても美味しそうな香りがする。」
そして、一口齧れば、恒例の沈黙タイム。あっという間にローストチキンサンドが小さくなって行く。
「こんなに美味しい食事初めてです。それにこの飲み物も凄い美味しいです。冷えてて甘くてジューシーで。」
「ありがとうございます。この2点がうちの商品です。軽食の方は毎日メニューは変わる予定ですので、毎日これが出る訳ではありません。如何でしょうか?当店で働いてみる気になりましたか?」
「こんな美味しい物が他にもあるんですか?やります!働かせて下さい!!」
「賃金まだ言って無いけど決めちゃって良いの?」
ユーリはあまりの展開の速さについ言葉に出してしまった。
「ユーリ様、余計な事言わないで下さいよぉ~折角やる気になってるのに!!」
「ごめんよ、アトマスさん。」
そんなやり取りにルイーゼがつい噴き出してしまう。
こうして、従業員が一人増えたのであった。
「あの、従業員は私一人ですか?」
思い出した様にルイーゼが聞いて来る。
「いや、もう一人雇う予定なんだけど、まだ、ギルドの方と調整が付いてなくてね。」
「じゃあ、あの・・・私の知り合いを雇って頂けませんか?」
「良い子が居るなら歓迎するよ。明日にでも面談出来るかな?」
「はい、明日のこの時間に連れてきます。よろしくお願いします!」
思いがけず、二人目の従業員もなんとか決まりそうな気配がする。
ここまでは順調だ。なお、従業員二人は住み込み希望らしい。
問題はオープン初日だ。これを上手く乗り切らないと・・・
商売の事を考えると年齢はともかく女性が好ましい等と、ギルドの受付で一通り要望を伝える。
「ん~、一人ならすぐに働ける人材がいるのですが、もう一人は1週間位は時間が欲しいですね。」
ギルドの受付嬢が1枚の書類を手渡して来た。ざっと目を通すが問題は無さそうだ。
「では、とりあえず、この人と面談させて下さい。最低賃金とかあるんですか?」
「そうですね。厳密な決まりはありませんが、住み込みなら銀貨5枚、通いなら銀貨7枚と言うのが新人店員の相場になります。」
「解りました。じゃあすぐにでも面接したいのですが、どうすれば良いでしょうか?」
「アトマス商会さんですよね?では1時間後にお店に向かう様に手配します。」
「ありがとうございます。」
二人は深く頭を下げギルドを出た。
ゆっくりと歩きで店へと向かう。そう言えば、お金の事を殆ど考えていなかった事に気付く二人。
「アトマスさんはあのグラスを幾らで販売する予定ですか?」
「そうですねぇ、普通のガラスのグラスが大銅貨1枚程度ですから、あの透明度のグラスなら銀貨3枚程度かなと。」
「高すぎますよ~。普通のグラスが大銅貨1枚なら、あのグラスは大銅貨2枚で十分利益が出ます。軽食の相場って、どんな感じなんですか?」
「大銅貨2枚って本気ですか?貴族なら金貨1枚でも買いますよ。あれは。軽食はそうですねぇ。串焼きやスープ類なら銅貨数枚で食べられます。冒険者等はパンとスープで銅貨5枚以下に抑えるのが普通ですね。」
どうやら、庶民の物価はユーリの考えている物より低目らしい。アトマスさんは、高級路線で行くつもりなのも分かった。
「解りました。ではグラスの値付けはアトマスさんにお任せします。その代わり、軽食は僕の好きな値付けで良いですか?」
「はぁ。それで構いませんが、損失だけは出さない様にお願いします。」
「元値はゼロですからね。売れれば売れるだけ全部儲けになりますよ。で、従業員の給料ですが、レイモンド商会ではどの位出してるんですか?」
「あ、うちは、通いで銀貨8枚です。住み込みは食事代も含まれるので銀貨4枚ですね。」
「となると、条件の悪い私たちの店だと通いで銀貨9枚。住み込みで銀貨6枚と言った所ですかね。」
「その給料ならまず、断る人は居ないと思いますよ。」
アトマスの言葉にユーリはホッとした。そうこうしているうちに店へとたどり着く。面接の時間まで、あと20分以上ある。そこで、ユーリは棚へグラスを並べ始める売り物の現物があった方が面接の時に説明しやすいと思ったからだ。魔法で、100個近いグラスを棚に綺麗に陳列した。住み込み用の部屋も2階に10部屋程の空き部屋がある。もともと2階は商会の寮だった様だ。ユーリとアトマスの部屋は既に1階に確保してある。もちろん事務所とは別だ。
こうして、時間を費やしているうちに、従業員候補の女の子が訪ねてきた。
見た目は成人して間もない感じ、アトマスと同年齢だろう。赤髪の、ちょっと垢抜けない感じの子だが愛嬌はある。
「はじめまして。ギルドから紹介を受けたルイーゼと申します。」
「はい、伺っております。私が、このアトマス商会の会長のアトマスです。どうぞお座り下さい。」
アトマスが接客用の椅子を勧める。小さめのテーブルを挟んでアトマスが彼女の正面。その左にユーリが座る。
「僕は、ここのオーナーでユーリと言います。子供ですが、よろしくお願いします。」
ユーリがオーナーと名乗ったので、ルイーゼは若干驚いていた。続きはアトマスに任せる。基本従業員の斡旋や教育はアトマスの仕事になる。これは将来アトマスが商会を一人で運営する時の為でもある。
「基本、この店では2種類の商品を扱います。一つはそこに並んでいる透明なグラスです。」
アトマスが、棚の方を手で示すとルイーゼの顔がパッと輝く。
「綺麗なグラス・・・」
「そして、もう一つは軽食なんだけど、これは実際に食べて貰った方がわかり易いかな。」
そう言ってアトマスはユーリの方を向く。これは事前に決めてあった事なので、アトマスも淀みなく話を進めて行く。ユーリはうなずくと、テーブルの上に冷えたミックスフルーツジュースと野菜たっぷりドレッシングたっぷりのローストチキンサンドを3人分出して行く。
「さ、これは商品なので遠慮しないで食べて、感想を聞かせて下さい。」
そうアトマスが勧めると、ルイーゼは恐る恐る紙の包みを開いて行く。
「わぁ。すごい柔らかいパン!それにとても美味しそうな香りがする。」
そして、一口齧れば、恒例の沈黙タイム。あっという間にローストチキンサンドが小さくなって行く。
「こんなに美味しい食事初めてです。それにこの飲み物も凄い美味しいです。冷えてて甘くてジューシーで。」
「ありがとうございます。この2点がうちの商品です。軽食の方は毎日メニューは変わる予定ですので、毎日これが出る訳ではありません。如何でしょうか?当店で働いてみる気になりましたか?」
「こんな美味しい物が他にもあるんですか?やります!働かせて下さい!!」
「賃金まだ言って無いけど決めちゃって良いの?」
ユーリはあまりの展開の速さについ言葉に出してしまった。
「ユーリ様、余計な事言わないで下さいよぉ~折角やる気になってるのに!!」
「ごめんよ、アトマスさん。」
そんなやり取りにルイーゼがつい噴き出してしまう。
こうして、従業員が一人増えたのであった。
「あの、従業員は私一人ですか?」
思い出した様にルイーゼが聞いて来る。
「いや、もう一人雇う予定なんだけど、まだ、ギルドの方と調整が付いてなくてね。」
「じゃあ、あの・・・私の知り合いを雇って頂けませんか?」
「良い子が居るなら歓迎するよ。明日にでも面談出来るかな?」
「はい、明日のこの時間に連れてきます。よろしくお願いします!」
思いがけず、二人目の従業員もなんとか決まりそうな気配がする。
ここまでは順調だ。なお、従業員二人は住み込み希望らしい。
問題はオープン初日だ。これを上手く乗り切らないと・・・
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