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第四十五話
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「実はな、とある貴族の子息が病気でな。教会で治療して貰ったのだが治らないらしい。で、うちへ話が回って来た。この病気を治す薬が欲しいとな。しかし、教会の治療で治らない病気を治す薬なんて何処の商会に行っても売ってる訳がない。当然だがうちにもそんな薬は無い。しかし、貴族の頼みを断る訳には行かないって話なんだが、どうにかなるかね?ユーリ君。」
「なるほど、それは無理難題を吹っ掛けられましたね。でも治せれば貴族の覚えは良くなると?」
「まあ、そう言う事だ。」
「病気の症状を教えて貰えますか?」
ユーリはイルミの父親から情報をなるべく引き出す。現代科学で解決できる問題なら何とかなるはずだ。
「なんでも、良く転ぶってのが最初の症状だったらしい、次第に周りの物にぶつかったり、そのうち頭痛がしてきたりして、今では外へ出ずに部屋に引きこもってるらしい。」
「その人太ってたりしますか?」
「いや、太ってはいないな。食欲は普通にあるらしいが、大食いではない。」
「病気の前と後で変わった事は?」
「そう言えば、本を読むのが好きだったらしいが、今では一切本を読まなくなったって言ってたな。」
なるほど、だいたい解ってきたぞ。これはアレだな。って事は、この世界にアレは無いんだろうな?どうする?『賢者の叡智』の出番だな。
「その貴族の子息に会えますか?」
「ああ、可能だが。治せるのか?」
「僕の予想が当たってれば治す事は可能です。」
2日後イルミの父親に連れられて、子爵家の門をくぐった。
「本当にその子供が息子の病気を治せるのか?」
「はい、この子に無理なら他の誰にも治せないでしょう。」
「ほう?ベンマック商会のベンマックにそこまで言わせるか。面白い。」
そう言って子爵は応接室で待つように言って、息子の部屋へ向かった。数分後、父親にもたれかかるように青年が連れられて来た。まだ成人して間もない位の年齢だろう。
「これが息子だ。さあ診てやってくれ。」
「その前に質問を2つだけ良いですか?」
「構わん。」
「教会で受けた治療魔法の種類は?」
「ヒールとハイヒールだな。」
「ありがとうございます。もう一つはご子息に、これは何本ですか?」
そう言ってユーリは指を1本立てて見せる。距離は3メートル程離れてるだろうか。
「あ、えっと、2本、いや、3本かな・・・」
「解りました。ご子息の病気は目です。視力が極度に落ちています。」
「目だと?」
「はい、いわゆる近視ですね。ただ進行が速かったので病気と思われたのでしょう。」
「いや、しかし、そんな・・・」
「これから治療します。すぐに治りますので、ご安心を。」
ユーリはそう言って青年に近づき『リカバリー』の魔法を掛ける。
「どうです?」
「目が、昔みたいに綺麗にはっきりと見える。僕はこんなに目が悪かったのか・・・」
この世界に透明なガラスは普及していない。よってレンズも普及していないので眼鏡と言う文化が無いのだ。ユーリは今回あえて眼鏡を選択しなかった。それはこの世界には魔法があり、病気の治療も魔法の文化のうちだからだ。ユーリの目的は文化・文明の引き上げだ。眼鏡と言う文化で魔法と言う文化を壊すわけには行かないのだ。
「これで、何もない所で転んだり、周りの物にぶつかったり、頭痛がしたりと言う症状は無くなると思います。」
「子供の癖に博識だな。しかもリカバリーと言う上級魔法まで使えるとは。いや、良くやってくれた。感謝する。」
「感謝してくれるなら、ベンマック商会をひいきにしてやって下さい。僕も大変お世話になってるので。」
「解った、其方がそう言うのならそう計らおう。」
「ありがとうございます。」
こうして、子爵家の子息の病気騒動は終わった。帰り道ベンマックさんに礼は何が欲しいと聞かれたので、ベンマック商会に出入りする自由が欲しいと言ったら笑われた。
「そんな事で良いのか?金貨10枚位なら出せるぞ。なんなら娘をやっても良い。」
「いや、お金も女性も不自由していませんので、勉強する機会が欲しいです。」
「ますます面白いな君は。是非、娘婿に欲しいよ。」
「大商会の取引は面白いですよ。今日の商売も金貨10枚以上の勉強になりました。ベンマック商会に出入りしていればもっと面白い事に遭遇しそうです。」
「しかし、あれだけの情報で良くあの病気が分かったな?」
「まあ、偶然似た様な事例を知っていたのが幸いしました。難しい病気だったらお手上げでしたけどね。」
「なんにせよ、知識と情報は金になる。それを知ってるお前さんは将来大成するよ。」
ベンマックさんは多分、自分に息子が居たらこうやって色々教えたかったんだろうなとユーリは思った。やはり娘と息子では距離感が違うのだろう。イルミさんはどこまでベンマックさんの教えを解っているのだろうか?
「イルミさんはベンマックさんから見てどうですか?」
「あれは賢い、教えなくても色々な事を見て覚えている。頭の良さだけなら俺より上だろうな。だが、商人はそれだけじゃ大成しない。ユーリなら解るだろう?」
「そうですね。イルミさんはまだ若いせいか、直接的な儲けには敏感ですが、潜在的な儲けに対しては鈍感な所がありますね。また、お金を使うタイミングがまだイマイチ解ってない感じでした。あと、自分の魅力をあまり理解してない気もします。」
「良く見てるな。それでも嫁に貰う気は無いと?」
「いや、先は解りませんよ。僕がまだ、自分の器を把握しきってないので結論が出せないだけです。」
「結論は何時頃出そうなんだ?」
「成人するまでには出すつもりです。」
「楽しみにしておこう。」
2人揃って商会へ戻る姿は親子に見えた。
「なるほど、それは無理難題を吹っ掛けられましたね。でも治せれば貴族の覚えは良くなると?」
「まあ、そう言う事だ。」
「病気の症状を教えて貰えますか?」
ユーリはイルミの父親から情報をなるべく引き出す。現代科学で解決できる問題なら何とかなるはずだ。
「なんでも、良く転ぶってのが最初の症状だったらしい、次第に周りの物にぶつかったり、そのうち頭痛がしてきたりして、今では外へ出ずに部屋に引きこもってるらしい。」
「その人太ってたりしますか?」
「いや、太ってはいないな。食欲は普通にあるらしいが、大食いではない。」
「病気の前と後で変わった事は?」
「そう言えば、本を読むのが好きだったらしいが、今では一切本を読まなくなったって言ってたな。」
なるほど、だいたい解ってきたぞ。これはアレだな。って事は、この世界にアレは無いんだろうな?どうする?『賢者の叡智』の出番だな。
「その貴族の子息に会えますか?」
「ああ、可能だが。治せるのか?」
「僕の予想が当たってれば治す事は可能です。」
2日後イルミの父親に連れられて、子爵家の門をくぐった。
「本当にその子供が息子の病気を治せるのか?」
「はい、この子に無理なら他の誰にも治せないでしょう。」
「ほう?ベンマック商会のベンマックにそこまで言わせるか。面白い。」
そう言って子爵は応接室で待つように言って、息子の部屋へ向かった。数分後、父親にもたれかかるように青年が連れられて来た。まだ成人して間もない位の年齢だろう。
「これが息子だ。さあ診てやってくれ。」
「その前に質問を2つだけ良いですか?」
「構わん。」
「教会で受けた治療魔法の種類は?」
「ヒールとハイヒールだな。」
「ありがとうございます。もう一つはご子息に、これは何本ですか?」
そう言ってユーリは指を1本立てて見せる。距離は3メートル程離れてるだろうか。
「あ、えっと、2本、いや、3本かな・・・」
「解りました。ご子息の病気は目です。視力が極度に落ちています。」
「目だと?」
「はい、いわゆる近視ですね。ただ進行が速かったので病気と思われたのでしょう。」
「いや、しかし、そんな・・・」
「これから治療します。すぐに治りますので、ご安心を。」
ユーリはそう言って青年に近づき『リカバリー』の魔法を掛ける。
「どうです?」
「目が、昔みたいに綺麗にはっきりと見える。僕はこんなに目が悪かったのか・・・」
この世界に透明なガラスは普及していない。よってレンズも普及していないので眼鏡と言う文化が無いのだ。ユーリは今回あえて眼鏡を選択しなかった。それはこの世界には魔法があり、病気の治療も魔法の文化のうちだからだ。ユーリの目的は文化・文明の引き上げだ。眼鏡と言う文化で魔法と言う文化を壊すわけには行かないのだ。
「これで、何もない所で転んだり、周りの物にぶつかったり、頭痛がしたりと言う症状は無くなると思います。」
「子供の癖に博識だな。しかもリカバリーと言う上級魔法まで使えるとは。いや、良くやってくれた。感謝する。」
「感謝してくれるなら、ベンマック商会をひいきにしてやって下さい。僕も大変お世話になってるので。」
「解った、其方がそう言うのならそう計らおう。」
「ありがとうございます。」
こうして、子爵家の子息の病気騒動は終わった。帰り道ベンマックさんに礼は何が欲しいと聞かれたので、ベンマック商会に出入りする自由が欲しいと言ったら笑われた。
「そんな事で良いのか?金貨10枚位なら出せるぞ。なんなら娘をやっても良い。」
「いや、お金も女性も不自由していませんので、勉強する機会が欲しいです。」
「ますます面白いな君は。是非、娘婿に欲しいよ。」
「大商会の取引は面白いですよ。今日の商売も金貨10枚以上の勉強になりました。ベンマック商会に出入りしていればもっと面白い事に遭遇しそうです。」
「しかし、あれだけの情報で良くあの病気が分かったな?」
「まあ、偶然似た様な事例を知っていたのが幸いしました。難しい病気だったらお手上げでしたけどね。」
「なんにせよ、知識と情報は金になる。それを知ってるお前さんは将来大成するよ。」
ベンマックさんは多分、自分に息子が居たらこうやって色々教えたかったんだろうなとユーリは思った。やはり娘と息子では距離感が違うのだろう。イルミさんはどこまでベンマックさんの教えを解っているのだろうか?
「イルミさんはベンマックさんから見てどうですか?」
「あれは賢い、教えなくても色々な事を見て覚えている。頭の良さだけなら俺より上だろうな。だが、商人はそれだけじゃ大成しない。ユーリなら解るだろう?」
「そうですね。イルミさんはまだ若いせいか、直接的な儲けには敏感ですが、潜在的な儲けに対しては鈍感な所がありますね。また、お金を使うタイミングがまだイマイチ解ってない感じでした。あと、自分の魅力をあまり理解してない気もします。」
「良く見てるな。それでも嫁に貰う気は無いと?」
「いや、先は解りませんよ。僕がまだ、自分の器を把握しきってないので結論が出せないだけです。」
「結論は何時頃出そうなんだ?」
「成人するまでには出すつもりです。」
「楽しみにしておこう。」
2人揃って商会へ戻る姿は親子に見えた。
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