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第七十話
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翌日、各店舗を回り補充を済ませてから学院へ行こうとしたら執事のフロッシュさんから今日は学院はお休みらしいですよと言われた。
久しぶりに学院へ行けると思ったらこれだ。仕方が無いので街へ必要な物を買いに出かけるか。まだ子爵邸は殆ど物が無い。最低限必要な物は執事のフロッシュさんが揃えてくれたが、家具や調度品などの大きなものは買っていない。イルミとユーカに頼むつもりだったが、2人は2人で忙しい様なので、今日は自分で買い物に行ってみるつもりだ。
幸い子爵邸は大通りに近いので買い物に行くのには便利だ。家の近所を散策しながら、大通りに向かい歩いて行く。大通りには商会が多く並ぶが、ユーリはあまり詳しくないので看板を頼りに歩いていた。
上を気にしていたのが悪かったのか、人とぶつかってしまった。キャッと小さな声を上げて転んだ少女はこっちを睨んでる。
「ごめん。看板を気にして歩いていたので、君に気付かなかったんだ。」
そう言って手を伸ばし少女を起こしてあげる。
「私も看板ばかり見ていたからお相子ね。」
「ん~、探し物かい?」
「雑貨屋」
「雑貨屋?この辺は商会ばかりだから、雑貨屋なら商店街の方が良いんじゃない?」
「普通の雑貨屋じゃないの。変わった物が沢山売ってる雑貨屋なの。」
「それって、もしかして『雑貨屋イルミ』では?」
「そうなの!知ってるの?」
少女は顔をパァっと輝かせて喰いついて来る。金髪碧眼、将来は美人になりそうだ。年は12歳位だろうか。
「連れて行っても良いんだけど、保護者の方は?」
「あそこに爺やが居るよ。」
少女が指をさした方を見ると執事っぽい老人が100メートル程離れた位置でこちらを見ている。もしかしたら貴族の令嬢かな?お辞儀をされたのでお辞儀を返す。
「じゃあ、少し歩くけど大丈夫かい?」
「うん。大丈夫!」
ここからだと子供の足でも15分あれば着くだろう。ユーリは少女の歩く速度に合わせて雑貨屋イルミに向かう。ぶらぶらと歩きながら取り留めのない話をする。少女の名前は『ソフィ』と言うらしい。何処の貴族かはあえて聞かない。
「お兄ちゃんの名前は教えてくれないの?」
「ああ、そうだったね。僕はユーリって言うんだ。」
「ユーリは魔法学院の生徒?」
「そうだよ。今、2年生なんだ。」
「そうなんだ?私も魔法学院行きたいんだけど、お父様が貴族学院へ行きなさいって言うの。」
貴族学院って言う事はソフィは貴族の長女で上に男子が居ないって事になるな。
「ほら、あそこの透明なガラスの扉の店解る?あそこが雑貨屋イルミだよ。」
「本当だ、ちゃんと看板に書いてある。ありがとうユーリ!」
「どういたしまして。僕も用事があるから一緒に入ろう。」
そう言って2人で雑貨屋イルミに入るとオーナーのイルミが居た。
「どうしたのユーリ?」
「いや、こちらのお嬢様がこの店を探していてね。案内してたんだよ。」
「相変わらず面倒見が良いね。」
「うわぁ、見た事無い物がいっぱいある~」
ソフィは商品に釘付けである。外を見ると執事さんの姿が見えた。
「貴族の令嬢みたいだから、気を付けて接待してね。」
イルミと店員にだけ聞こえる様にこそっと話をする。
2人は黙ってうなずく。
「ソフィ、そんなに買って大丈夫?お金持ってる?」
「大丈夫、お金は爺やが持ってるから。」
ソフィはシャンプーや石鹸、そして大量の下着の山をカウンターに乗せている。更に手鏡やポーチも買うらしい。
「これ下さい。お金は爺やが払うので。ほら、あそこに居る人。」
ソフィが執事を手招きすると音も無く近づいて来て。お幾らですかと渋い声で聞く。
「銀貨5枚と大銅貨2枚になります。」
店員がさっと計算して答えると銀貨を6枚財布から差し出す。
「お釣りは結構。」
そう言ってさっさと店を出て行った。ソフィも付いて行く。
「なるほど、あれが貴族の買い物の仕方かぁ勉強になるな。」
「何言ってんの?ユーリ?」
「ああ、そうだイルミこの後空いてる?買い物付き合って欲しいんだけど。」
「18時までに家に帰れれば良いわよ。」
こうして、2人は買い物デートに行く事になったのであった。
「まず、ベッドを買ってその後それに合わせて家具を買いたいんだけど、何処の店に行けば良いか解らなくてね。」
「家具ならアップス商会かな。安いのから高いのまで品ぞろえが良いって話よ。」
「じゃあ、まず、そこへ行こう!」
と、2人で歩き出そうとした時。
「ユーリ!」
ソフィに呼び止められた。あれ?帰ったんじゃないの?
「どうしたんだい?帰ったんじゃないの?」
「忘れ物をして。」
「忘れ物?」
「ユーリは甘いけど甘くないケーキ食べた事ある?」
ん?なぞなぞか?
「伯爵のおばさんが食べさせてくれたの。あとはんばーがーって言う美味しいパンも!」
「ケーキにハンバーガー、母上のお茶会のメンバーか、でもソフィはまだ子供だし・・・」
ひょっとして!公爵家の娘?とりあえず、一旦雑貨屋イルミに戻り、バックヤードの応接室へ通した。執事さんも一緒だ。
「もしかして、甘いけど甘くないケーキって白くて3角形の?」
「うんうん。ユーリも知ってるの?」
「じゃあ、こう言うのは食べた事ある?」
そう言ってシュークリームを皿に出してみる。生とカスタードのダブルクリームだ。
「手でつかんでそのまま食べてごらん。」
他のメンバー、イルミと執事さんだが、の分も出す。飲み物はオレンジジュースにして置く。
「美味しい!これも甘いけど甘くない~」
「じゃあ、もう1個これはどうかな?」
今度はエクレアである。チョコレートが受けるかどうかのテストでもある。
「これも美味しい!上の茶色いのが凄く美味しいよ。」
他の2人にも出してあげる。
さらにマジックバッグを取り出して。
「執事さん。これに各100個ずつ入れて置きました。公爵家の皆さんでお召し上がり下さい。」
「何故、公爵家と?」
「私はオーバルバイン伯爵家の息子です。母が何時もお世話になってます。」
「なるほど、オーバルバイン伯爵家の」
「では、用事がありますので今日はこの辺で失礼します。」
そう言って今度こそ本当に買い物デートに出かけるのであった。
久しぶりに学院へ行けると思ったらこれだ。仕方が無いので街へ必要な物を買いに出かけるか。まだ子爵邸は殆ど物が無い。最低限必要な物は執事のフロッシュさんが揃えてくれたが、家具や調度品などの大きなものは買っていない。イルミとユーカに頼むつもりだったが、2人は2人で忙しい様なので、今日は自分で買い物に行ってみるつもりだ。
幸い子爵邸は大通りに近いので買い物に行くのには便利だ。家の近所を散策しながら、大通りに向かい歩いて行く。大通りには商会が多く並ぶが、ユーリはあまり詳しくないので看板を頼りに歩いていた。
上を気にしていたのが悪かったのか、人とぶつかってしまった。キャッと小さな声を上げて転んだ少女はこっちを睨んでる。
「ごめん。看板を気にして歩いていたので、君に気付かなかったんだ。」
そう言って手を伸ばし少女を起こしてあげる。
「私も看板ばかり見ていたからお相子ね。」
「ん~、探し物かい?」
「雑貨屋」
「雑貨屋?この辺は商会ばかりだから、雑貨屋なら商店街の方が良いんじゃない?」
「普通の雑貨屋じゃないの。変わった物が沢山売ってる雑貨屋なの。」
「それって、もしかして『雑貨屋イルミ』では?」
「そうなの!知ってるの?」
少女は顔をパァっと輝かせて喰いついて来る。金髪碧眼、将来は美人になりそうだ。年は12歳位だろうか。
「連れて行っても良いんだけど、保護者の方は?」
「あそこに爺やが居るよ。」
少女が指をさした方を見ると執事っぽい老人が100メートル程離れた位置でこちらを見ている。もしかしたら貴族の令嬢かな?お辞儀をされたのでお辞儀を返す。
「じゃあ、少し歩くけど大丈夫かい?」
「うん。大丈夫!」
ここからだと子供の足でも15分あれば着くだろう。ユーリは少女の歩く速度に合わせて雑貨屋イルミに向かう。ぶらぶらと歩きながら取り留めのない話をする。少女の名前は『ソフィ』と言うらしい。何処の貴族かはあえて聞かない。
「お兄ちゃんの名前は教えてくれないの?」
「ああ、そうだったね。僕はユーリって言うんだ。」
「ユーリは魔法学院の生徒?」
「そうだよ。今、2年生なんだ。」
「そうなんだ?私も魔法学院行きたいんだけど、お父様が貴族学院へ行きなさいって言うの。」
貴族学院って言う事はソフィは貴族の長女で上に男子が居ないって事になるな。
「ほら、あそこの透明なガラスの扉の店解る?あそこが雑貨屋イルミだよ。」
「本当だ、ちゃんと看板に書いてある。ありがとうユーリ!」
「どういたしまして。僕も用事があるから一緒に入ろう。」
そう言って2人で雑貨屋イルミに入るとオーナーのイルミが居た。
「どうしたのユーリ?」
「いや、こちらのお嬢様がこの店を探していてね。案内してたんだよ。」
「相変わらず面倒見が良いね。」
「うわぁ、見た事無い物がいっぱいある~」
ソフィは商品に釘付けである。外を見ると執事さんの姿が見えた。
「貴族の令嬢みたいだから、気を付けて接待してね。」
イルミと店員にだけ聞こえる様にこそっと話をする。
2人は黙ってうなずく。
「ソフィ、そんなに買って大丈夫?お金持ってる?」
「大丈夫、お金は爺やが持ってるから。」
ソフィはシャンプーや石鹸、そして大量の下着の山をカウンターに乗せている。更に手鏡やポーチも買うらしい。
「これ下さい。お金は爺やが払うので。ほら、あそこに居る人。」
ソフィが執事を手招きすると音も無く近づいて来て。お幾らですかと渋い声で聞く。
「銀貨5枚と大銅貨2枚になります。」
店員がさっと計算して答えると銀貨を6枚財布から差し出す。
「お釣りは結構。」
そう言ってさっさと店を出て行った。ソフィも付いて行く。
「なるほど、あれが貴族の買い物の仕方かぁ勉強になるな。」
「何言ってんの?ユーリ?」
「ああ、そうだイルミこの後空いてる?買い物付き合って欲しいんだけど。」
「18時までに家に帰れれば良いわよ。」
こうして、2人は買い物デートに行く事になったのであった。
「まず、ベッドを買ってその後それに合わせて家具を買いたいんだけど、何処の店に行けば良いか解らなくてね。」
「家具ならアップス商会かな。安いのから高いのまで品ぞろえが良いって話よ。」
「じゃあ、まず、そこへ行こう!」
と、2人で歩き出そうとした時。
「ユーリ!」
ソフィに呼び止められた。あれ?帰ったんじゃないの?
「どうしたんだい?帰ったんじゃないの?」
「忘れ物をして。」
「忘れ物?」
「ユーリは甘いけど甘くないケーキ食べた事ある?」
ん?なぞなぞか?
「伯爵のおばさんが食べさせてくれたの。あとはんばーがーって言う美味しいパンも!」
「ケーキにハンバーガー、母上のお茶会のメンバーか、でもソフィはまだ子供だし・・・」
ひょっとして!公爵家の娘?とりあえず、一旦雑貨屋イルミに戻り、バックヤードの応接室へ通した。執事さんも一緒だ。
「もしかして、甘いけど甘くないケーキって白くて3角形の?」
「うんうん。ユーリも知ってるの?」
「じゃあ、こう言うのは食べた事ある?」
そう言ってシュークリームを皿に出してみる。生とカスタードのダブルクリームだ。
「手でつかんでそのまま食べてごらん。」
他のメンバー、イルミと執事さんだが、の分も出す。飲み物はオレンジジュースにして置く。
「美味しい!これも甘いけど甘くない~」
「じゃあ、もう1個これはどうかな?」
今度はエクレアである。チョコレートが受けるかどうかのテストでもある。
「これも美味しい!上の茶色いのが凄く美味しいよ。」
他の2人にも出してあげる。
さらにマジックバッグを取り出して。
「執事さん。これに各100個ずつ入れて置きました。公爵家の皆さんでお召し上がり下さい。」
「何故、公爵家と?」
「私はオーバルバイン伯爵家の息子です。母が何時もお世話になってます。」
「なるほど、オーバルバイン伯爵家の」
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そう言って今度こそ本当に買い物デートに出かけるのであった。
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