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第八十八話
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翌朝日課を済ませてグラストフへ転移すると、領主邸に久しぶりに訪れた。閑散としていた領主邸だが、それなりに見られる様になっている。
「これは、伯爵様。ようこそおいで下さいました。」
門番から聞いたのかマードルさんが何時の間にか後ろに居た。気配感じなかったけど?
「えっと、マードルさんだよね?留守の間ありがとうございます。」
「いえいえ、これが私の仕事ですので、お気になさらずに。」
「えーと、指示を出していなかったね。使用人は30人程度集めて下さい。それから、料理人は6人雇って下さい。その他、家具や調度品はマードルさんの自由に決めちゃって構わないから。当面の資金として、白金貨を3枚渡して置きます。使用人の給料は住み込みで一律金貨1枚でお願いします。」
そう言ってユーリは小さな袋をマードルに渡す。
「ありがとうございます。使用人は現在、最低人数として12人雇っています。指示通り近日中に30人まで増員致します。」
フロッシュさんの言う通りなかなか有能らしい。細かい物や日用品はアイテムボックスを持ってるので、適当に持ち込むので、あまりぴっちりと揃えなくても良いと伝える。なるべく大きい物から揃える様にと指示を出して置いた。
「じゃあ、僕は代官邸の方へ挨拶に行くので後はよろしく!」
そう言って、代官邸へ歩いて行く。代官邸までは10分程度だ。まだ馬を買って無いので馬車は動かない。
代官邸に着いて、来訪を伝えると、セッテンが2人の若者を従えて出て来た。
「領主様、伯爵になられたそうでおめでとうございます。」
流石はセッテン、情報が早い。
「その2人は後継者候補かな?」
「その通りです。向かって右がローソ。左がエミットです。」
2人共まだ成人したてに見える。ローソは赤髪の青年で背が高く痩せている。エミットはその反対でがっしりとしていて背は低目だ。銀髪をやや長めに伸ばしているので目が半分隠れている。
「随分と若いのを選んだね。」
「次代を担う訳ですから若い方が良いかと。」
「なるほど。じゃあ、激励の魔法を掛けてあげるよ。」
ユーリは鑑定を発動し、2人の知力を確認する。400台と2人共かなり高い数字だ。ユーリは改変の魔法で2人の知力を1万まで上げる。
「これは、アレですか?」
「そう、アレです。」
ユーリとセッテンの間で謎の会話が行われる。後継者候補の2人は何の事か首を捻っている。
「と言う事で、セッテン。これからも頼むね!」
「解りました。ああ、そう言えば領主様の言われた場所から鉄鉱石が出ました。この町もこれから賑やかになるでしょう。」
「未来は3人の肩にかかってるんだから頑張ってね。僕もたまにお手伝いに来るから。」
代官邸を辞し、一旦王都へ転移で帰る。お昼過ぎだが、まだ朝から何も食べていない。ユーリは自宅の自分の部屋で遅い食事を取るのであった。
2時を過ぎた所で、馬車の手配を頼み、ユーカとイルミの迎えに学院へと向かう。学院の門で2人を拾い。馬車でバート商会へと向かう。雑貨屋イルミを越えて商業ギルドの方向へ向かうとバート商会が見えて来る。
「あそこだよ。」
ユーリが指さすと2人は、あれ?と言う顔をする。
「なんかユーリ君の商会にしては小さくない?」
「物を売らない商会だからね、店舗が要らない分小さくなるんだよ。それにメンバーもそれ程集める予定は無いしね。」
「ああ、そう言う事か。本当に学院販売部みたいね。」
商会の前に馬車を止めて3人は下りる。御者に銀貨を渡し、先に帰って良いと伝える。
3人が中に入ると既にバートさんとチェスカさんが何やらディスカッションをしている。
「あ、ユーリさんいらっしゃい。」
「何を話していたんですか?」
「新しい商品の考え方ですかね。」
「ほう?」
「で、そちらの2人は?」
ユーリは一人ずつ紹介をして行く。もちろん4人全員だ。
「学院販売部のイルミさんとユーカさんって言う事は、先輩になるんですかね?」
バートさんが面白い事を言う。
「いや、ここはバート商会だから。2人は経験者だけど新人だね。」
「経験者が入るのは嬉しいわね。色々と教えて貰えるし。」
チェスカさんが無邪気に喜んでいる。
とりあえず座りましょうと言う事で応接室に5人で座る。まだかなりの余裕がある。
「イルミ、飲み物は何が良い?」
「レモンスカッシュが良いかな。」
「ユーカ、おやつの希望は?」
「今日はガッツリとハンバーガーで!」
ユーリは、テーブルに5人分のハンバーガーとレモンスカッシュを出して行く。
「良い物を考えるには美味しい物を食べないとね。」
ユーカが偉そうにバートさんとチェスカさんに語ってる。
「ちなみに、下着を考えたのはユーカなんですよ。」
ユーリが援護射撃をする。
「で、イルミは、雑貨屋イルミのオーナーでベンマック商会の娘さん。実質皆のリーダーでしたね。」
「へぇ、凄い2人なんですね。うちに入ってくれるんですか?」
「暫くはこの時間帯だけになります。学院がありますからね。」
「それでも構いません。やはり経験者と言うのは大きいですからね。」
そんなこんなで2人のバート商会入りが決まってしまった。2人の事だ、多分ここを気に入って学院を辞めるって言いだすだろうな。
「それで、バートさんとチェスカさんは結論が出たんですか?」
「ああ、丁度その話の途中だったんだけど、僕は既存の商品例えば、パンです。アトマス商会のレシピで作ると既存のパンとは違う物が出来上がります。そう言う風にアレンジから入るのが近道じゃないかと思うんですが。」
「私は、小説の様に、今までに無かったもの、人々が欲する物を追及して行くべきだと。」
「なるほど、意見が食い違っている訳ですね。どう思う?ユーカ。」
あえて、ユーカに振ってみた。
「結局、アプローチが違うだけで、目指すところは一緒なんですよね。アレンジも新規も要は買ってくれる人の事を一番に考えないと売れません。と言う事で、最初は自分が欲しい物を考えるのが一番早いと思いますよ。」
「ユーカの言う通りだね。まずは自分の欲しい物を1つ、2人それぞれ考えてみてよ。それをみんなで売れるかどうか協議してみよう。」
皆、意欲がある様で何よりだ。この商会はきっと成功するだろうと確信するユーリであった。
「これは、伯爵様。ようこそおいで下さいました。」
門番から聞いたのかマードルさんが何時の間にか後ろに居た。気配感じなかったけど?
「えっと、マードルさんだよね?留守の間ありがとうございます。」
「いえいえ、これが私の仕事ですので、お気になさらずに。」
「えーと、指示を出していなかったね。使用人は30人程度集めて下さい。それから、料理人は6人雇って下さい。その他、家具や調度品はマードルさんの自由に決めちゃって構わないから。当面の資金として、白金貨を3枚渡して置きます。使用人の給料は住み込みで一律金貨1枚でお願いします。」
そう言ってユーリは小さな袋をマードルに渡す。
「ありがとうございます。使用人は現在、最低人数として12人雇っています。指示通り近日中に30人まで増員致します。」
フロッシュさんの言う通りなかなか有能らしい。細かい物や日用品はアイテムボックスを持ってるので、適当に持ち込むので、あまりぴっちりと揃えなくても良いと伝える。なるべく大きい物から揃える様にと指示を出して置いた。
「じゃあ、僕は代官邸の方へ挨拶に行くので後はよろしく!」
そう言って、代官邸へ歩いて行く。代官邸までは10分程度だ。まだ馬を買って無いので馬車は動かない。
代官邸に着いて、来訪を伝えると、セッテンが2人の若者を従えて出て来た。
「領主様、伯爵になられたそうでおめでとうございます。」
流石はセッテン、情報が早い。
「その2人は後継者候補かな?」
「その通りです。向かって右がローソ。左がエミットです。」
2人共まだ成人したてに見える。ローソは赤髪の青年で背が高く痩せている。エミットはその反対でがっしりとしていて背は低目だ。銀髪をやや長めに伸ばしているので目が半分隠れている。
「随分と若いのを選んだね。」
「次代を担う訳ですから若い方が良いかと。」
「なるほど。じゃあ、激励の魔法を掛けてあげるよ。」
ユーリは鑑定を発動し、2人の知力を確認する。400台と2人共かなり高い数字だ。ユーリは改変の魔法で2人の知力を1万まで上げる。
「これは、アレですか?」
「そう、アレです。」
ユーリとセッテンの間で謎の会話が行われる。後継者候補の2人は何の事か首を捻っている。
「と言う事で、セッテン。これからも頼むね!」
「解りました。ああ、そう言えば領主様の言われた場所から鉄鉱石が出ました。この町もこれから賑やかになるでしょう。」
「未来は3人の肩にかかってるんだから頑張ってね。僕もたまにお手伝いに来るから。」
代官邸を辞し、一旦王都へ転移で帰る。お昼過ぎだが、まだ朝から何も食べていない。ユーリは自宅の自分の部屋で遅い食事を取るのであった。
2時を過ぎた所で、馬車の手配を頼み、ユーカとイルミの迎えに学院へと向かう。学院の門で2人を拾い。馬車でバート商会へと向かう。雑貨屋イルミを越えて商業ギルドの方向へ向かうとバート商会が見えて来る。
「あそこだよ。」
ユーリが指さすと2人は、あれ?と言う顔をする。
「なんかユーリ君の商会にしては小さくない?」
「物を売らない商会だからね、店舗が要らない分小さくなるんだよ。それにメンバーもそれ程集める予定は無いしね。」
「ああ、そう言う事か。本当に学院販売部みたいね。」
商会の前に馬車を止めて3人は下りる。御者に銀貨を渡し、先に帰って良いと伝える。
3人が中に入ると既にバートさんとチェスカさんが何やらディスカッションをしている。
「あ、ユーリさんいらっしゃい。」
「何を話していたんですか?」
「新しい商品の考え方ですかね。」
「ほう?」
「で、そちらの2人は?」
ユーリは一人ずつ紹介をして行く。もちろん4人全員だ。
「学院販売部のイルミさんとユーカさんって言う事は、先輩になるんですかね?」
バートさんが面白い事を言う。
「いや、ここはバート商会だから。2人は経験者だけど新人だね。」
「経験者が入るのは嬉しいわね。色々と教えて貰えるし。」
チェスカさんが無邪気に喜んでいる。
とりあえず座りましょうと言う事で応接室に5人で座る。まだかなりの余裕がある。
「イルミ、飲み物は何が良い?」
「レモンスカッシュが良いかな。」
「ユーカ、おやつの希望は?」
「今日はガッツリとハンバーガーで!」
ユーリは、テーブルに5人分のハンバーガーとレモンスカッシュを出して行く。
「良い物を考えるには美味しい物を食べないとね。」
ユーカが偉そうにバートさんとチェスカさんに語ってる。
「ちなみに、下着を考えたのはユーカなんですよ。」
ユーリが援護射撃をする。
「で、イルミは、雑貨屋イルミのオーナーでベンマック商会の娘さん。実質皆のリーダーでしたね。」
「へぇ、凄い2人なんですね。うちに入ってくれるんですか?」
「暫くはこの時間帯だけになります。学院がありますからね。」
「それでも構いません。やはり経験者と言うのは大きいですからね。」
そんなこんなで2人のバート商会入りが決まってしまった。2人の事だ、多分ここを気に入って学院を辞めるって言いだすだろうな。
「それで、バートさんとチェスカさんは結論が出たんですか?」
「ああ、丁度その話の途中だったんだけど、僕は既存の商品例えば、パンです。アトマス商会のレシピで作ると既存のパンとは違う物が出来上がります。そう言う風にアレンジから入るのが近道じゃないかと思うんですが。」
「私は、小説の様に、今までに無かったもの、人々が欲する物を追及して行くべきだと。」
「なるほど、意見が食い違っている訳ですね。どう思う?ユーカ。」
あえて、ユーカに振ってみた。
「結局、アプローチが違うだけで、目指すところは一緒なんですよね。アレンジも新規も要は買ってくれる人の事を一番に考えないと売れません。と言う事で、最初は自分が欲しい物を考えるのが一番早いと思いますよ。」
「ユーカの言う通りだね。まずは自分の欲しい物を1つ、2人それぞれ考えてみてよ。それをみんなで売れるかどうか協議してみよう。」
皆、意欲がある様で何よりだ。この商会はきっと成功するだろうと確信するユーリであった。
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