創造魔法で想像以上に騒々しい異世界ライフ

埼玉ポテチ

文字の大きさ
93 / 151

第九十三話

しおりを挟む
 結局、『聞く物語』第1弾は6日間で5万台以上売れた。毎日の集計の数字を見る限りまだまだ売れそうだ。月に10万台は不可能な数字では無いだろう。そして明日はいよいよ第2弾のミステリーが発売される。

 ユーリは開店前に各店舗に商品を卸し明日の10時に一斉に発売する事を伝える。また、店頭宣伝用の魔道具も明日からはこれにして下さいと新しいのを渡す。それから第1弾のポスターの隣に第2弾のポスターを貼って来た。今日来た客はポスターを見て第2弾が出る事を口コミしてくれるだろう。

 一方でチェスカさんの商会に卸したタオルも順調だ。まったく新しい生地と言う事で注目を集め、すぐに追加注文が1000枚ずつ入った。

「これで洋服を作る事も可能ですよね?反物はありませんか?」

 チェスカさんが尋ねて来た。

「洋服も作れますが、これでシーツを作ると気持ち良いですよ。って事で140センチ×30メートルの生地を10種類預けます。価格設定は自由に行って構いません。売り上げの20%を仕入れ値として頂きます。この条件で如何でしょう?」

「解りました。その条件で問題ありません。」

 じゃあと言って、何時もの様にマジックバッグに入れてチェスカさんに渡す。

「うちの商会で独占商品が扱えるなんて夢みたいです。お父さんも私が役に立ったので喜んでます。」

「チェスカさんが見つけて、自分で決断したんだから。自信をもって良いと思うよ。」

「そうですかね?でも、元々はユーリさんがお風呂場に置いて置いた備品ですから、私が開発した訳じゃないですし、まだまだですね。」

 チェスカさんはまだ自信を持つには至っていない様だが、商才はあるとユーリは睨んでいる。



 
 ミステリーが発売される日が来た。各店舗で魔道具が起動された10時、ユーリの隣にはユーカとイルミが居た。

「なんで学院休んでるの?」

「いや、やっぱり気になるじゃん。」

「そうそう、どうせ学院は辞めるし、こっちの方が面白いから。」

 やはり学院は辞めると言う結論になった様だ。

「バートさん、偵察の方お願いします。」

「解りました。商会でじっとしてるのは気が気じゃないですからね。」

 そう言って商会から出て行く。

「さて、他の皆も気になるだろうけど、新商品のアイデアは見つかったかい?」

「あー、私はタオル生地の使い道で頭が一杯で・・・」

 チェスカさんが目を逸らす。

「ユーカとイルミは?」

「私は、あの魔道具に貼ってあるステッカーが気になります。」

 ユーカの発言だ。『聞く物語』の魔道具にはパッケージと同じ絵柄のステッカーが本体の裏面に貼ってある。これは後々本数が増えた時に、判別が出来るようにだ。

「どう言う風に気になるの?」

「あれって何にでも貼れるんですか?」

「基本的には平らな所なら貼れるね。ただ水に弱いので濡れてる物とかは駄目かな。」

「では、あれに魔道具の使い方とか書いて魔道具に貼ったり出来ますか?魔道具って使い方を説明してから販売するんですが、結構後から使い方が解らなくなったって言う問い合わせが多いんですよ。」

「なるほど、そう言う使い方はありだと思うよ。他にも魔道具に作者の名前や商会の名前を入れるとかね。」

 発想は面白いが、商売としてはどうだろう?

「イルミはどう?」

「私は小冊子の方が面白いと思うな。あんな感じで絵を沢山並べて、最小限の文字でストーリーを付けて行ったら、小説とは違う物語が出来そう。」

 それは最早マンガだな。まだこの世界でマンガは早いのではないだろうか?

 そんな雑談をしていたらバートさんが帰って来た。

「どうでした?」

「凄い事になってましたよ。まだ、販売開始して何分も経ってないのに大行列が出来てました。3店舗全部が同じ状況です。」

「うーん。商会2つは大丈夫だろうけど、雑貨屋イルミは応援が必要かな?」

「大丈夫よ。ベンマック商会から応援を3人出してるから。」

 イルミが勝ち誇ったような顔で言った。どうやら、こうなる事を見越して先に手を打っていたらしい。流石はイルミだ。

「流石はオーナーと褒める所かな?」

「でしょ?」

「じゃあ、ちょっと早いけど昼食にしようか?何が食べたい?」

「「「甘い物!!」」」

 女性3人がハモってる。
 ユーリは、意表をついて大福を出してみた。飲み物は甘くない紅茶だ。皆、初めて見る甘味に興味津々だ。イルミとユーカも餡子は初めて食べるはずなので反応が楽しみだ。

「これはこのまま噛り付けば良いの?」

 早速イルミが大福を突きながら質問してくる。

「そうだね、特に作法は無いから、片手で持って噛り付いて下さい。あまり沢山口に入れると喉に詰まるのでそれだけ注意してね。」

「面白い食感ね。中に入っているのは何かのジャムかしら?」

「これは大福と言う食べ物です。中に入っているのは甘く煮た豆ですね。餡子と言います。」

「これは何と言うか優しい甘さですね、男性にも受けそうです。」

 バートさんが半分に割ってまじまじと餡子を見ている。

「そうですね。ケーキなどと違って油分が少ないので沢山食べても太り難いし、あっさりとした甘味を食べたい時にお勧めです。」

「太り難い?」

「物には限度ってものがあるからね、特にユーカ。」

 


 食事休憩が済むとまた雑談タイムに入る。この雑談の中から新製品が生まれるのでユーリは積極的に話をするように推奨している。

「そう言えば、ユーカにはお兄さんが居るんだよね?会った事無いけど何してるの?」

「兄は12歳の時から魔道具職人の家に住み込みで弟子入りしています。月に1度くらいは帰ってきますね。」

「商会はお兄さんが継ぐの?」

「はい、一人前になったら帰って来いって父に言われてるそうです。」

「チェスカさんは兄弟は居るの?」

「うちは弟が居ます。今、12歳で、家の手伝いをしながら商会を継ぐ勉強をしています。」

「なるほど、と言う事は問題はイルミの所だけか。イルミは一人っ子だったよね?」

「そうだよ。でも、その辺はユーリ君に何か策があるんでしょ?」

「まあね。バートさんの所はお兄さんが継ぐんでしょ?今後ライビット商会とはどう言う関係にするつもりですか?」

 急に振られてバートさんが慌てる。

「あの商会は僕が色々と手を加えているので、正直愛着があります。兄は頭が良いので、売れる商品を提供すれば断る事はしないでしょう。」

「じゃあ、今後もライビット商会にアドバイスして行くと?」

「そうですね、毎日実家に帰っているので家族とは色々な話をします。その中で気が付いた点があれば、ライビット商会にアドバイスしたり、バート商会に生かしたり出来ればと。」

「良いんじゃない?私もそんな感じだし。」

 イルミが賛同している。




 雑談をしているとたまに通信が入る。各店舗からの報告である。その時点ではユーリは何も言わない。

 全ての商会からの通信が入り集計が出ると、ユーリはようやく発表する。

「集計が出ました。今日の販売本数は18、690個です。」

 おお~と歓声が上がる。

「もう少しで2万だったのに惜しかったですね。」

「いやいや、十分な数字だから。」

 イルミから突っ込みが入る。

「今月はこの2作品でどれだけ売り上げが伸びるか様子見だね。」

「来月は恋愛物ともう1本だよね?準備は出来てるの?」

「ストーリーは出来てるよ。後は魔道具にするだけだね。」

「相変わらずやる事早いね。」

「これで、一段落着いたからあまり学院を休むなよ。」

「「はーい!」」
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

【本編完結】転生隠者の転生記録———怠惰?冒険?魔法?全ては、その心の赴くままに……

ひらえす
ファンタジー
後にリッカと名乗る者は、それなりに生きて、たぶん一度死んだ。そして、その人生の苦難の8割程度が、神の不手際による物だと告げられる。  そんな前世の反動なのか、本人的には怠惰でマイペースな異世界ライフを満喫するはず……が、しかし。自分に素直になって暮らしていこうとする主人公のズレっぷり故に引き起こされたり掘り起こされたり巻き込まれていったり、時には外から眺めてみたり…の物語になりつつあります。 ※小説家になろう様、アルファポリス様、カクヨム様でほぼ同時投稿しています。 ※残酷描写は保険です。 ※誤字脱字多いと思います。教えてくださると助かります。

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

モフモフテイマーの、知識チート冒険記 高難易度依頼だって、知識とモフモフモンスターでクリアします!

あけちともあき
ファンタジー
無能テイマーとしてSランクパーティをクビになったオース。 モフモフテイマーという、モフモフモンスター専門のテイマーであった彼は、すぐに最強モンスター『マーナガルム』をテイムするが……。 実はオースこそが、Sランクパーティを支える最強メンバーだったのだ。 あらゆるモンスターへの深い知識。 様々なクラスを持つことによる、並外れた器用さ。 自由になったオースは、知識の力で最高の冒険者へと成り上がっていく。 降って湧いた凶悪な依頼の数々。 オースはこれを次々に解決する。 誰もがオースを最高の冒険者だと認めるようになっていく。 さらに、新たなモフモフモンスターが現れて、仲間も増えて……。 やがて、世界を巻き込む陰謀にオースは関わっていくのだ。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

レンタル従魔始めました!

よっしぃ
ファンタジー
「従魔のレンタルはじめました!」 僕の名前はロキュス・エルメリンス。10歳の時に教会で祝福を受け、【テイム】と言うスキルを得ました。 そのまま【テイマー】と言うジョブに。 最初の内はテイムできる魔物・魔獣は1体のみ。 それも比較的無害と言われる小さなスライム(大きなスライムは凶悪過ぎてSランク指定)ぐらいしかテイムできず、レベルの低いうちは、役立たずランキングで常に一桁の常連のジョブです。 そんな僕がどうやって従魔のレンタルを始めたか、ですか? そのうち分かりますよ、そのうち・・・・

【完結】子爵令嬢の秘密

りまり
恋愛
私は記憶があるまま転生しました。 転生先は子爵令嬢です。 魔力もそこそこありますので記憶をもとに頑張りたいです。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

処理中です...