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第百十五話

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 翌日2人は依頼を受けた。魔物が活性化していると言う情報が気になったので確認の為だ。ミントとシーネは別のAランクの冒険者と合同で依頼を受けたらしい。CランクにしてAランク相当の実力がある、ミントとシーネは冒険者たちの間では有名だ、こうやって高ランクの合同依頼も多い。特に魔法使いのシーネは人気がある。高ランクの魔法使いは1人居るだけで戦力が大幅にアップする。引き抜きの話も結構あるらしい。

 リュートとエリシアは北西の森、ミントたちは北東の森へ出かけるらしい。基本北側の森が大きいので南より北の方が魔物が強い。ちなみに北の森を超えると別の王国があるらしいが、森越えのルートを取る者は少ない。

 町の近辺は北の街道もある為一定期間ごとに討伐が行われているので魔物が少ない。リュートたちはなるべく森の奥へと歩を進める。

 基本Sランクの2人は雑魚を相手にしない。リュートのサーチで魔物の反応を探りながら魔物の隙を縫って奥へと進む。これは他の冒険者の獲物を横取りしない為の暗黙のルールの様な物だ。

 30分程奥へ進むとAランクの魔物が出て来る。この辺りから狩りが始まる。

 リュートのサーチに複数の魔物の反応が現れる。

「エリシア、右を頼む。俺は左から攻める、中央にでかい反応があるので動く前に片ずけるぞ。」

「解った、任せろ。」

 こう言う時に前はエリシアが判断を下していたのだが、今ではリュートが作戦を指示する様になっている。

 2人は身体強化で素早く左右に散り、Bランクのフォレストファングをそれぞれ瞬殺する。リュートはアイテムボックスに、エリシアはマジックバッグに獲物を仕舞い、中央の敵に備える。

 中央からゆっくり現れたのはAランクのフォレストタイガーだ。

「バインドを掛ける。エリシア頼むぞ。」

「了解だ。」

 フォレストタイガーはゆっくりと近づいて来るのでバインドが掛けやすい。バインドが決まると、後は止めを刺すだけだ。エリシアのバトルアックスが首を飛ばす。

「ふむ、この辺の魔物は活性化している感じはしないな。」

「ランクが低い魔物から影響を受けているとしたら、何か強い魔物が生まれたのかもしれんぞ。」

 エリシアが物騒な事を言う。

「そう言う事があるのか?」

「オークなどは、上位種が生まれると活性化するだろう?」

「確かにそう言う傾向はあるな。しかし、魔物全体に影響を与える程の魔物っているのか?」

「オークジェネラルなどが生まれると弱い魔物は逃げ出すと聞くぞ。」

「オークジェネラルってAランクだよな?とすると、Cランク以下の魔物に影響が出てもおかしくは無いか?」

「Sランクのオークキングと言う可能性もある。」

「ふむ、調べる価値はありそうだな。」

 その後もフォレストタイガーやレッドボア等のAランクの魔物を狩るが、特に何かの影響を受けている感じは無い。一通り狩りをした後、ギルドに戻り、ミント達の帰りを待つ、彼女たちは低目の魔物とも戦っているだろうから、何か情報を得られるかもしれない。

 ギルドに併設されている酒場でエールを呑んでいると。ミント達が帰って来る。

 依頼の報告が済むのを待ち声を掛ける。

「今日の依頼どうだった?」

「今日は大漁だったよ。兄貴に貰ったマジックバッグが一杯になるかと思う程魔物が居たよ。」

「ほう?ちなみにその魔物って何だ?」

「種類は色々だけど、Cランクの魔物が多いね。あとオークも多かった。ゴブリンは倒したけど素材は拾って無いよ。」

「魔物が活性化しているって言う感じはしたか?」

「そうだね、普段は下りて来ない魔物も結構下まで降りてきているし、弱いくせに攻撃しても逃げない魔物が多かった気がする。」

「ちなみに俺たちは通常運転だった。つまり影響を受けているのはCランク以下の魔物だけって事になる。」

「どう言う事ですか?」

「オークと戦ったんだろう?オークの様子はどうだった?」

 ミントとシーネは顔を見合わせる。

「特に変わった様子は感じませんでしたね。」

「そうか?ではエリシアの推理も違うかな。」

「ドラゴンと言う線はないだろうか?」

 エリシアが発言する。

「ドラゴン?」

「ふむ、ドラゴンが現れると生態系が崩れる。北の森の何処かにドラゴンが住み着いたのかもしれん。」

「しかし、ドラゴンなら俺のサーチに引っ掛かりそうな物だが。」

「まあ、低位の魔物だけならそう問題にはならないだろう。暫くは様子見だな。」

「そうだな。食事に行くか?」

 そう言って4人で連れ立ってギルドを後にする。

 明日は訓練の日なのでミントとシーネは泊って行くだろう。食堂で美味い物を食わせて明日に備えよう。

 帰宅し、明日の打ち合わせをしてから各自ベッドに入る。エリシアは呑み過ぎたと言って先に寝ている。

 リュートは昼間の事が何故か気になってなかなか眠れない。

 すると突然世界が白くなった。

「これは神様の?」

「久しぶりだな。」

「また、僕は死んだのでしょうか?」

「いや、そうではない。これは天啓とか神託と言った奴だな。」

「天啓ですか?」

「私からの宿題の答えは出たかな?」

「いや、それは・・・」

「だろうな。本来なら5年時間を与えるつもりだった。その間に答えを見つけ出せばよいと思って居たのだが、ちょっと時間が早まってな。」

「時間ですか?」

「まあ、自由にやっているのは悪い事ではない。別の大陸に来て色々と見える物も増えた様だ。ただ、創造魔法を封印したのは感心しない。何故自分が創造魔法を与えられたのかを考える事だ。」

「しかし、今の魔力量では大した魔法は使えませんよ?」

「それも勘違いだな。魔量量3000オーバーは人としては大き過ぎる力だ。更に君には膨大な知力もある。組み合わせる事は考えなかったのか?」

「知力と魔力量の組み合わせですか?」

「そうだ、人の最大の武器だぞ。」

「そこには至りませんでした。とにかく亜神になるのが怖くて。」

「まあ、それは良い。で、本題だが。1年後この大陸に邪神が生まれる。」

「それを倒せと?」

「いや、人の身で神は倒せんよ。邪神は生まれるとすぐに天界に上る。相手は私がする。長い戦いになるだろう。数千年、数万年と言った単位の戦いだ。問題は邪神が生まれる事に寄る余波だ。」

「余波ですか?」

「そう、邪神が生まれる時には膨大な魔力が消費される。生まれてしまえば問題無いが、それまでが大変だ。まず魔物の活性化。次に魔物の凶暴化。そして邪神の子と呼ばれる強力な魔物の出現だ。」

「そう言えば魔物が活性化していると冒険者の間で噂になっています。」

「それは邪神の影響を受けた魔物だな。基本弱い魔物から影響を受け始める。これから邪神誕生が近くなるにつれその影響は大きくなるだろう。更に、魔物が邪神の影響下に入ると狂暴になり強くなる。」

「止める手立ては無いのですか?」

「無いな。更に邪神の子が生まれる。これは何時何処にどんな姿で生まれるか判らない。」

「対処の方法が無いじゃないですか?」

「人間にはまず無理だろうな。今、この地上で邪神の子に対抗できるとしたら、それは君だけだ。」

「僕ですか?」

「そうだ、だが今の君の力では無理だ。」

「こういう時、勇者とか現れるのでは無いのですか?」

「勇者が退治できるのはせいぜいドラゴンまでだな。邪神の子はエンシェントドラゴンより遥かに強い。」

「人類滅亡の危機じゃないですか?」

「その通り。だが、君が居た。と言うか、この地に邪神が現れる事は解っていたのであえてここに君を落とした。」

「どう言う事ですか?」

「君に人類の存亡を任せるよ。」

「何故僕に?」

「まあ、理由はいろいろあるのだが、君が一度失敗した人間だからだ。」

「え?」

「基本神にとって地上での出来事はあまり干渉すべき事では無い。それが滅亡であってもな。だが、君には責任を感じているのだよ。別の世界から連れて来た、新しい神候補だからな君は。」

「神候補?」

「そうだ、だから創造魔法を君に与えた。普通の人間に神の魔法を与えると思うか?」

「では、最初から、全て神様の掌の上って事ですか?」

「そう言う訳でも無いぞ。君の資質を見ていた。」

「要は試されていたわけですね?」

「そう言う事だ。と言う事で君から奪った魔力を返そう。今度亜神になったら次は無いぞ。どのタイミングでどういう使い方をするか。それが邪神の子との戦いで重要になる。この世界がどうなるか、君の肩にかかっている事を忘れるな。」

「一つだけ質問させて下さい。創造魔法を封印したのは間違えだったと言いましたよね?でも、創造魔法を使い過ぎると神になるとも言いました。僕はどうすれば良いのでしょうか?」

「創造魔法は神の魔法だ。一番最初にそう言ったな?そこに答えがある。神に欲望は無い。これがヒントだ。」

「ああ、なんとなく判った気がします。」

「そうか、では頼むぞ。」

 気が付くと朝だった。昨日のアレは夢?慌ててステータス魔法を使う。

 魔力量が700万オーバーになっている。どうやら夢では無かったらしい。
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