【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ

文字の大きさ
28 / 315
第1章 復讐の魔女

第26話 10年前の再来

しおりを挟む
 警笛とランプの光が、夜のビオレールの街を照らす。
 衛兵が駆けつける足音が近づいてくる。

 私たちはすぐに身を隠し様子を伺う。
 やがてその足音は遠くへ消えてゆく。
 その様子を見て私は安堵のため息を漏らした。
 どうやら上手く撒いたようだ。

 転移先にあった目の前の建物は、営業のみで使われているらしい小さな酒場みたいだ。
 ごめんなさい。
 そう心の中で呟いて、解錠の魔法をかけて中へと入る。
 光球を出して照らす室内は、寝るスペースはないが、一晩隠れ潜むには丁度いい広さだ。

「ホント何がどうなってるのよ! どうして私たちが追われてるのよ! 冗談じゃないわ! あいつらの認識阻害の魔法かしら? ディアナ……私たちに何したのよ!」

 ベレニスが椅子に座り、苛立ちながら声を荒げる。

「静かに。……どうやら冒険者ギルドの面子も、俺たちの捜索に加わったようだ。八方塞がりだな。街全体が敵と思って行動した方が良さそうだ」

 リョウは冷静に状況を分析していた。

「てか、ローゼ! 転移魔法をやるならもっと遠くへ飛ばしなさいよ。めっちゃ近くじゃない」

「3人分なんだから無茶苦茶言わないの。正直成功するかも不安だったんだから」

「ま、傭兵が衛兵を倒しちゃって取り返しがつかなくなるよりマシね。で? ローゼは何がどうなったか説明出来るんでしょ?」

「……うん。10年前に私の師匠のディルが王都に仕掛けた、殺害された人物が病死と塗り替えられた魔法。……それと全く同じ魔法をディアナが使ったんだと思う」

「とんでもないわね。認識阻害というより、存在そのものを書き換える魔法。それって……」

 ベレニスが青褪めるのも無理はない。
 人の運命は本来不可逆なもの。
 それを無理矢理ねじ曲げたのだ。
 術者だけでなく、周囲全てに影響させて。

 つまり今、私たち3人はビオレールで領主を殺害して逃亡中に、ディアナとジーニアを襲った極悪人として世界は認識し、衛兵たちは私たちを捕縛しようとしているのだ。

 例え無実を訴えても、誰も聞く耳を持つはずがない。

 何故なら惨殺されて流血した死体があっても、例えその場に死体がなくても、王夫妻と愛娘は病死したと、誰もが疑わず歴史となった10年前の出来事。

 そんな改竄魔法が、ディアナによって再び行われたのだ。

「じゃあローゼが、さらに再び元に書き換えるってのは?」

「いやいやベレニス。この魔法を実際に使用したのって歴史上、七英雄の魔女アニスのみ。それに現代の魔女ディル。あっ! 言っておくけどアニスは悪事で利用してないからね。それは魔王軍との戦いで致命的な打撃を被った……」

「ローゼ、話が逸れてるからその話は後よ」

 おっと、いかんいかん。
 私は咳払いを一つし、説明を続ける。
 この世界が今どうなっているのかを。

 ディアナの使った魔法は、認識阻害と書き換えの複合魔法であり、当人だけではなく関わった全ての人間と物に対して作用する。

 要は、私たち3人は街の住民や衛兵から、領主殺害の犯人と完全に確定した状態で追われていることになっているのだ。

「理論も原理も伝わってないし、私自身は両親のこともあるけど……この手の人の運命をねじ曲げる魔法って、好きじゃないしやりたくもない。だから知識もないから無理なの」

「ふうん。ローゼって意外と潔癖なのね。まあいいわ。そのローゼの師匠の婆さんに頼むってのは?」

「それも無理。私が旅立つ時、ディルも何処かへ旅に出たから。……というか頭を下げて助けてくださいって言っても、高笑いしながら魔法を無限に連打してくるのが目に浮かぶし」

「ローゼ……真面目に言ってるのね。それはそれでその光景も見たいけど、居場所もわからないんじゃ無理ね。てか傭兵! あんたも何か案を出しなさいよ! さっきから黙ってないで!」

 ベレニスがリョウに掴み掛かる。
 だが彼は動じない。
 それどころか……

「俺が単身城に斬り込む。その隙にローゼとベレニスはビオレールを脱出して、策を練ればいいさ」

「何バカ言ってるの⁉」

 とんでもない事を口にしたので、私は慌てて彼を制止する。
 何か策があるならまだしも、単独での無謀な特攻なんて絶対に認められない。
 それを実行すればリョウは死ぬ。

 ビオレール城には、庇護されたであろうディアナやジーニアだけではなく、ビオレール兵に王国騎士たちが待ち構えている。
 いくら剣の腕が立つと言っても、今の領主殺しの汚名を着せられて手配されているリョウでは……
 いや、私たち3人が束になってもどうにもならない。

「運悪ければオルタナ殿と対峙して終わりだろうな。だが、気にするな。元々俺は、単身でトールを殺す目的でこの街に来たんだ。この騒動で、奴はビオレール領主代行の地位を手に入れた。現実に得をしているのはあいつだけだ」

「馬鹿言わないで。ちょっと冷静に……」

 私が言い切る前に……

「傭兵さあ。ローゼが王女と知って、自分とは住む世界が違うからって余所余所しくなってない? 呆れたわ。そもそもローゼの復讐には、あんただって無関係じゃなくなったのに」

 ベレニスが苛立ちながらリョウを睨む。

 そうだ……言わなくっちゃ……

「ベレニス! それにリョウ!」

 2人の間に入り込み深々と頭を下げる。
 このタイミングでいいのかわからないけど言わなくちゃ。

「ごめん2人とも! 私が王女だって隠してて!」

 ディアナとジーニアの襲撃を知らせる為に送った会話付きの魔力波は、ベレニスとリョウに私の正体がバレるキッカケにもなった。

 2人は知らなかったとはいえ、私はその事実を2人に隠してきたのだ。

「少しだけ……私の話をしてもいいかな?」

 リョウとベレニスが頷き、私は10年前の出来事を話しだした。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

クラス転移したからクラスの奴に復讐します

wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。 ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。 だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。 クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。 まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。 閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。 追伸、 雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。 気になった方は是非読んでみてください。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

みそっかす銀狐(シルバーフォックス)、家族を探す旅に出る

伽羅
ファンタジー
三つ子で生まれた銀狐の獣人シリル。一人だけ体が小さく人型に変化しても赤ん坊のままだった。 それでも親子で仲良く暮らしていた獣人の里が人間に襲撃される。 兄達を助ける為に囮になったシリルは逃げる途中で崖から川に転落して流されてしまう。 何とか一命を取り留めたシリルは家族を探す旅に出るのだった…。

《完》義弟と継母をいじめ倒したら溺愛ルートに入りました。何故に?

桐生桜月姫
恋愛
公爵令嬢たるクラウディア・ローズバードは自分の前に現れた天敵たる天才な義弟と継母を追い出すために、たくさんのクラウディアの思う最高のいじめを仕掛ける。 だが、義弟は地味にずれているクラウディアの意地悪を糧にしてどんどん賢くなり、継母は陰ながら?クラウディアをものすっごく微笑ましく眺めて溺愛してしまう。 「もう!どうしてなのよ!!」 クラウディアが気がつく頃には外堀が全て埋め尽くされ、大変なことに!? 天然混じりの大人びている?少女と、冷たい天才義弟、そして変わり者な継母の家族の行方はいかに!?

貴方がLv1から2に上がるまでに必要な経験値は【6億4873万5213】だと宣言されたけどレベル1の状態でも実は最強な村娘!!

ルシェ(Twitter名はカイトGT)
ファンタジー
この世界の勇者達に道案内をして欲しいと言われ素直に従う村娘のケロナ。 その道中で【戦闘レベル】なる物の存在を知った彼女は教会でレベルアップに必要な経験値量を言われて唖然とする。 ケロナがたった1レベル上昇する為に必要な経験値は...なんと億越えだったのだ!!。 それを勇者パーティの面々に鼻で笑われてしまうケロナだったが彼女はめげない!!。 そもそも今の彼女は村娘で戦う必要がないから安心だよね?。 ※1話1話が物凄く短く500文字から1000文字程度で書かせていただくつもりです。

処理中です...