【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ

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第2章 英雄の最期

第4話 新たな出逢い

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 外の陽射しが暑くなり始め、もうすぐ夏だなあと思いつつ、私は冒険者ギルドの掲示板に貼られている依頼書を見ていた。

 う~ん、これはビオレール領外に出なくちゃいけなくなるし無理かあ。
 となると報酬が良いのは……

「今日はローゼだけか? 珍しいな」

 掲示板を眺めていると、ここビオレールの冒険者ギルドマスターのバルドさんに声をかけられた。

 渋いおっさんのこの人は、数少ない私の正体を知る人物だ。
 ただそんなことをおくびにも出さず、私を冒険者の魔女としてこき使っている。

「ベレニスは起きなかったから置いてきた。リョウはまだ来てないけど、多分もうすぐ来ると思う」

「そうか。まあゆっくりしていってくれ」

 バルドさんはそう言うと、カウンターの方へ戻っていった。

 めぼしい依頼がなかった私は、ギルドの中に併設されている酒場で朝食を摂ることにした。
 ギルドの酒場は朝でも営業しており、様々な食事を提供する飲食店だ。
 それに冒険者たちが、情報交換や作戦会議などを行ったりする場所でもあるのだ。

 宿にも食事処はあるがレパートリーは少ないので、大抵はここで済ませるのである。

 今日の朝食は、柔らかいパンに野菜や肉を挟んだサンドイッチとミルクにしよう♪
 私はこの食べ方が気に入っている。
 口の中で一度に色んな味が楽しめるし、パンも美味しいから好きだ。
 これを考えた人は天才だと思う。
 何せあらゆる食材をパンで挟めるのだ。
 可能性は無限に広がっているのだ。
 世界広しといえど、こんなに食の楽しみ方を広げる人は他にいないだろう。
 この料理を考案した人を拝みたいと、心の底から思うほどに。

 私がサンドイッチを両手で持って、真ん中から頬張る至福の時を過ごしていると、ギルドの扉が開いて小さな女の子が入ってくる。
 物怖じせず、間取りと今いる冒険者をチェックするかのように見渡すと、受付嬢のいる方へと歩いていった。

 少女の緑色の髪はまるで新緑が芽吹いているみたいで、瞳の茶色は大木の幹を連想させる力強さを感じた。
 身長は私より頭一個分低い。
 年齢は10歳ぐらいだろうか?

 商人が着る上等なケープを羽織っているので、どこかの大商人の娘さんなのかもしれない。

「依頼をしたいんすけど、お願いするっす。これ、依頼書っす」

 少女は受付嬢に依頼書を手渡すと、報酬と依頼内容について説明していく。

「食事代宿代は自分持ちで、日当は大銀貨1枚っす。ルートはボルガン山地から王都ベルンまでっす」

「約2ヶ月はかかる行程ですね。依頼を受けた方が、王都よりビオレールに戻る代金は含みますか?」

「そこはまたその方が、別の護衛任務で戻ればって思うっすけど、どうっすかね?」

 少女は受付嬢に笑顔を向ける。

「さすがに往復4ヶ月で、ボルガン山地方面のルートとなりますと、受けてくれる冒険者がいないと思われます。西のソルト港からマミリア港まで船を使って、そこから王都へ向かうのが一般的ですし。……日付も10日程短縮出来ますので、こちらならば受けてくれる冒険者も出てくると思われますが?」

「う~ん。寄りたいのは王都の北の山脈の麓にある生まれ故郷なんすよね。船ルートですと余計に時間がかかっちゃうんすよ」

 私は少女が少し気になり始めていたので、会話に耳を傾けることにした。

「あちこちの商隊にも確認したんすが、今は西のルートばかりだとか。まさか5年ぶりの故郷のルートが閉ざされていたとは思いもしなかったっすよ」

「魔獣や盗賊が活発化してますからね。……事情はわかりました。依頼内容を受理します。希望の護衛者の数と日時を指定して下さい」

「数は1人でも何人でもいいっすよ。5日後までに決まらないなら、故郷に帰るのは諦めてソルトへ行くっす。自分、今はソフテック商会にお世話になっているので、決まったら連絡くださいっす」

 少女はそう言うと、受付にくるりと背を向け慌ただしく出ていった。
 その時、目が合ったけどプイッとされたような……

「変なガキだなあ。ま、報酬は良いけど南のルートじゃ受ける物好きいねえだろうな」

「つーか、ボルガン山地の奥の山々の麓ってどこよ。あ、まさかザガンに行くんじゃねえだろうな。あそこら辺は王都付近の食い詰めもんや、危ねえ連中が行く所だぞ。ガキが1人で行けるような場所じゃねえ」

 冒険者たちは少女を見送りながら、好き勝手なことを言い始めている。

 ザガンかあ……昔から政局が不安定になると盗賊が横行して、街の外を安心して歩けないって言われている場所だ。

 今がまさに政局不安定の時代。
 あちこちで盗賊や魔獣の出没が報告され、治安も悪化している。
 当然、護衛任務の需要も高まるわけだ。

 う~ん、私も王都へ行くつもりだったから受けたいけど、今は自由に動けないんだよなあ。

 2ヶ月程前、ここビオレールの領主が殺された。
 犯人は未だ不明のままだ。
 魔女の仕業と言われており、魔女の私も容疑者候補になってしまったのだ。

 というか、とある別の魔女の改竄魔法で完全に犯人扱いされもしたんだけど、どうにかこうにか乗り切って今に至るのだ。

 ただ、アリバイも犯行場所である領主の寝室に行ける手段も皆無だから、一応無罪!
 というわけで、領主代行トール・カークスからは、ビオレール領外に出ることを禁止されているのだ。
 はあ~、いつになったら解除されることやら。

 そんなことを考えつつ、ミルクを飲み終えて、見落としはないかと掲示板を覗こうとしていたら、ガラの悪そうな男の怒鳴り声が外から響いてきた。

 見ると先程の女の子が、数人の冒険者に取り囲まれている。
 ……な~んか嫌な予感がするなあ。

「ぶつかっておいて、『すまなかったっす』で済むかよ。親のところへ連れて行きな。ちゃーんと、お詫びの金を頂くからよ」

「その格好、商人か? 小さいのに働いてて偉いねえ。だったら、こういう時のお詫びの仕方も知っているだろう?」

 なんか、完全に絡まれているなあ。
 あ! あいつら、以前ベレニスに倒された奴らだ。
 全く! 懲りてないんだから!

 冒険者たちはニヤニヤしながら少女を囲んでいる。
 けれど少女は怯えた様子もなく、平然としていた。

「悪いっすけど、ぶつかった程度で払うお金はないっすね。そもそもそっちが道を塞いでたのが原因ですし。それとも何すか? 悪いことをしたのに、こんな子供からさらに巻き上げようって訳っすか?」

 少女の言葉に冒険者たちはイラッとした表情を見せた。
 ありゃりゃ、煽っちゃったよ~。

「このガキ! いいから親はどこのどいつだ! 二度とへらず口を叩けねえように注意してやる‼」

 拳を振りかざす冒険者たち。
 見てられないなあ、もう。

『炎よ! 不埒者に浴びせよ』

「「ぎゃあああああああああああ」」

 かる~く魔法を唱えて、少女を囲むガラの悪い連中に悲鳴を出させる。

 殺してないし、ほんのちょっと気絶させた程度だ。
 全く、これに懲りたら誰彼構わず喧嘩を吹っかけないでよね。

 通行人やギルド内からは拍手があがる。
 少女は私に気づいたのか、目をパチクリさせている。

 私は笑顔で少女に声をかけた。

「大丈夫? 怪我はない?」

 って優しく、安心させようと。
 だけど……

「ハァ……」

 なんか、ため息を吐かれたんですけど!

「魔女っすか。全く魔女はこれだから。いいっすか? この連中だって動く口があったんす。この程度の連中の拳ぐらいなら自分避けられるっすし、その間に対話でなんとかできたっすよ。正直、余計なお世話っす」

 ほえっ⁉
 予想外の反応に思考が停止する。

「ま、助けてくれたのは事実っすから礼は言うっす。ありがとうっす」

「えっと……どういたしまして」

「おや? 素直な魔女さんっすね。でも力に溺れて対話で解決せず、魔力という暴力で解決するのは良くないっすよ。それではいずれ、力に飲み込まれるっすよ」

 ……なんか説教された。
 しかも、私より年下の女の子に。公衆の面前で。
 ……泣きたいかも。

「はい。ごめんなさい」

「ま、わかればいいっす。ただ、助けようと行動してくれたのは嬉しいっすので、感謝しているのも本当っす。それじゃ、自分はこの辺で失礼するっす」

 と言って少女は立ち去ろうとするが、野次馬の通行人の1人を見て走るのをやめた。

「あっ! その黄土色の皮鎧! アラン傭兵団の人っすよね! 黒髪黒瞳から察するに、パルケニアの出身っすか⁉」

 って、リョウじゃん!
 なんで野次馬に混じって、私が公開説教されているのをただ眺めていたんだ!

 ちょっと思考停止してたでしょ!
 こっちは2ヶ月一緒にいて、リョウは命のやり取り以外、ボケっとしてるの知ってるんだからね!

「あ、ああ。リョウ・アルバースだ。何か用か?」

「リョウ・アルバース! ダーランドの麻薬戦争で活躍したっていう傭兵団の1人っすね! 噂で聞いたことあるっす! いやあ、会えて光栄っすよ!」

 リョウが、女の子から尊敬の眼差しを向けられている⁉

「随分と詳しいな。君は一体?」

「申し遅れたっす。自分はフィーリアっていうっす。リョウ様、今なにか依頼を受けてるっすか? もし何も受けてなければ、自分の話を聞いてほしいっす!」

 興奮気味に話すと、リョウの手を引っ張りギルドへと戻る少女。
 リョウは困惑した様子で私に視線を向けてくる。
 勘が良いのか、わかりやすいのか、フィーリアが気づく。

「ん? 2人は恋人っすか?」

 リョウと私の視線だけで何を言い出すんだ! このフィーリアって娘は⁉

「ち、ちがくてパーティーメンバーで……」

「そっすか。なら魔女さんも一緒でいいので話を聞いてほしいっす」

 私は黙って頷くと、リョウは諦めたようにため息をして、フィーリアの後をついてギルドへと入っていったのであった。
 
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