【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ

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第2章 英雄の最期

第6話 旅立ち

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「お別れか。寂しくなるね」

 ビオレール南の門まで見送りに来てくれた、王国騎士の隊長のオルタナ・アーノルドさん。
 スラリとした長身と世の女性たちを虜にしちゃう甘いマスクで、寂しそうに微笑む。
 女性なのが残念無念って思っちゃうほどに。

 面倒見が良くて優しくて頼れる素敵な人物だけど、唯一の欠点は戦闘狂ってとこかな?

 私やベレニスは特に直接的な被害は受けなかったけど、同じ剣士のリョウは何度も被害を受けている。
 数日前は城の兵士と模擬戦をやらされた直後に、一騎討ちをされてボコボコにされていた。

「アーノルドって、アデル準男爵の御子息っすか⁉ うわあ、綺麗な人っすねえ。お目にかかれて光栄っすよ」

「私もだよ。フィーリアちゃん。領主代行に直接お目通りして、ローゼちゃんたちの領外出国禁止を解除させた謎の少女。まさか、こんなに可愛い女の子だったなんてね」

「あっ、その話は!」

 やっぱりフィーリアが関わっていたのか。
 タイミングが良すぎると思ったんだよなあ。
 ……でも、どうやってだよ。

「あっはっはっは、すまないすまない。王都ベルンに着いたら、我がアーノルド家を訪ねたまえ。父には文を出しておこう」

「オルタナさん、色々お世話になりました。また会える日を楽しみにしてます」

 スノッサの森を出てからビオレールでの日々の数ヶ月、長いようで短い間だったけど楽しかった。
 その思い出に微笑むと、オルタナさんもニッコリ微笑み返してくれた。

「オルタナ殿、ご指導ご鞭撻、誠にありがとうございました」

「オルタナ! またおっぱいを揉ませてね! じゃあねバイバイ」

 リョウもベレニスも、それぞれオルタナさんに感謝の言葉と別れの挨拶を済ませる。

「君たちの旅路に、女神の祝福があらんことを」

 オルタナさんは片手を胸に当て、私たちに祈りを捧げてくれた。

 こういう仕草、一つ一つに品があって優雅なんだよね。
 立ち居振る舞いだけで、見る者を魅了しちゃうのは本当に凄いよ。

 私たち4人は、オルタナさんの優雅な見送りを受けながらビオレールを後にした。

 ボルガン山地へ向かう街道、以前ロック鳥を退治しに通った記憶が鮮明に蘇る。

 初夏の陽光を浴びた草花や木々の緑が、まるで私たちの旅路を祝福するかのように鮮やかだ。
 南へと続く道を、私たちは希望と不安を胸に歩み始めた。

「ところでフィーリア。どうやって領主代行と会って、私たちの出国禁止を解いたの?」

 先頭を歩くリョウと、後方でバルドさんから餞別で貰った菓子を食べながらついてくるベレニス。
 私はそんな2人に挟まれた状態で、気になっていたことをフィーリアに尋ねる。

「まあそれは蛇の道は蛇っすね。ゴニョゴニョしてゴニョゴニョっすよ」

 耳元に囁かれるフィーリアの声。

 まさか領主代行のトール・カークスと知り合いだったとは……
 にしても情報は武器って言うけど、情勢を語って今後の展望を述べただけで私たちを自由にするって……

 ……フィーリア、恐ろしい子。

「こっちも質問いいっすか? リョウ様と、ローゼさん、ベレニスさんはどういう関係なんすか? もしかしてデキて……」

 フィーリアが私に耳打ちする。

「ほえっ⁉ そ、そんなわけないでしょ! 仲間! パーティーメンバーってやつ! ていうか男1人と女の子2人なんだから違うって!」

「いやいや、そこら辺はよくある話っすし珍しくもないっすよ? 宿の部屋割もありますんで、そこのところは今のうちにハッキリさせようと思ったんす。自分1人で、ローゼさんたち3人の部屋割じゃなくていいんすね?」

「リョウ1人で、フィーリア含めて私たち3人でお願い」

「それもまた難儀っすねえ。大抵の宿は、部屋にベッド2つっすからねえ。自分がリョウ様と同じ部屋にするっすか?」

「それは駄目!」

 ヤバい。速攻で否定してしまった。
 聡いフィーリアは、何かを察してしまったようだ。
 意味深に口元を緩ませてやがる!

「……そっすか。となると、誰かが1つのベッドで2人で寝ることになるっすねえ」

「私は嫌よ。ベッドは広々と使いたいから」

 ベレニスが会話に割り込んでくる。

「まあ、ベレニスさんはそう言うと思ったっす。となると、ローゼさんと自分になるっすねえ。ローゼさんは、反応見る限りノーマルな人みたいなんで別にいいっすけど、問題はリョウ様っすね」

 小走りしてリョウのところへ行くフィーリア。

「私の反応って?」

「ローゼは顔に出やすいってことでしょ?」

 そんな適当にベレニスに返事される中、フィーリアがリョウにとんでもないことを訊くのであった。

「大事なことなんすけど、リョウ様はどのくらいの頻度で女を買われたりするんすか?」

 って⁉ 何を訊いてるんだフィーリア⁉
 リョウ、固まっちゃったぞ‼

「いや、これ冗談で訊いてるんじゃなくマジっすよ。長旅の男女パーティーで痴情のもつれとか、男の人の欲求不満でとんでもない事態になった経験を、自分は何度も見てきているんすよ」

 よくある話なんだろうけど、ちびっ子のフィーリアの口から聞くと、衝撃度が違うぞ。

「いや、一度もないが」

 リョウの返答にフィーリアは驚愕した。

「それじゃ欲求不満になった時、どうしてるんすか? 娼館とか利用しないんすか?」

「したことない」

 その回答を得ると、フィーリアは青ざめて私の横に戻ってくる。

「リョウ様は危ないっすね。いつ襲われるかわかんないっすけど、狙われるならローゼさんでしょうから、気をつけたほうがいいっす」

「いやいやいや、リョウはそういう男じゃないから……」

「その考えは甘いっすよ。そう思って油断している女の人が襲われて、とんでもない目に遭うのを何度も見てきたっす。男と一緒に旅するなら防衛手段は必須っすよ」

 まあ、心配してくれてるんだよね?
 その気持ちは素直に嬉しいけど……

 なんていうか、リョウに聞かれながらする話ではないと思うぞ?

「ふっふっふ、まだまだお子様ねフィーリアは。まだまだ男を見る目がないようね」

 誇らしげな顔をして、ベレニスがフィーリアに絡む。

 おお! ベレニスがリョウを擁護⁉
 いつもリョウには厳しい態度をとってるけど、もう2ヶ月一緒にパーティーを組んでるもんね。
 愛着が湧いてくれたのかな?

「まあ、自分に男性経験はないっすが、ベレニスさんよりかはあるっすよ」

「はあ? ないよりあるって、どういう意味よ!」

 ま~た始まったよ。
 エルフとドワーフは、口喧嘩しなくちゃいけない決まりでもあるのか。

「自分は旅を共にした男の人、大勢いるっすぅ~。ベレニスさんのように、リョウ様だけとはわけが違うっすぅ~」

「フッ。語るに落ちたわね。フィーリアが今まで、どんな男を見てきたか知らないけど、傭兵なら私のほうが知ってるわ。……傭兵はね、エッチなのは1人でするのよ!」

 ベレニスがドヤ顔で言い放つ。
 それはドヤ顔するところなのか?

 というかベレニス、断定して言うなって!

「ま、マジっすか……」

 お~い、フィーリア? 驚愕の事実を知ったかのようにリョウの背中を見るなっての。
 絶対聞こえているだろうリョウは、振り返りはしない。
 けど、あれ……相当凹んでるぞ。
 見慣れた背中がそう物語っている。

 あーあ、ベレニスめ余計なことを……

 ていうかどういうことかな?
 いやいや私はリョウを信じているぞ!

「え~あ~コホン。お、俺からも質問いいか?」

 おっ? リョウが自分から口を開くとは珍しい。
 これは相当動揺しているんだなあ。

「エルフとドワーフは長寿の種族と聞いたが、ベレニスもフィーリアも、その、なんだ。2人も見た目より年齢がかなり高いのか?」

 それは私も気になるけど、今聞く話題じゃないでしょ!
 もっと考えて喋ってよ!

 案の定、2人はドン引きした。

「うわあ。女の子に見た目より年食ってるだろって聞くのサイテー」

「ベレニスさん、リョウ様ってこういう人っすか? 自分、凄いガッカリっす」

 やめろ、2人とも。リョウ、ちょっと涙目になっているぞ……

 でもあんたたち、普通に喧嘩せず会話出来るんだ良かった良かった♪

 私は照りつける太陽を見上げて、現実逃避に勤しみつつ、後でリョウにフォローしてやらねばと心に誓う。

 リョウを1人置いてけぼりにした中、女3人の会話は弾んで途切れはしない。

 こうして、リョウ以外は楽しい(?)旅路が始まったのであった。
 
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