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第2章 英雄の最期
第21話 とある英雄候補の死
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黒竜の鋭い爪がドワーフの戦士を薙ぎ払おうとした。
その瞬間、私の炎魔法が黒竜を襲う。
「小僧に小娘! フィーリアはどうした!」
「話は後じゃクルト! 小僧! 斬り込むぞ。小娘は魔法で援護せえ」
ゲッペンさんの言葉に頷くと、私とリョウは駆けだした。
黒竜はその巨体と咆哮で、私たちに構わずドワーフたちに襲いかかっているが、斧で受け止められたり、頑丈な肉体に阻まれたりして大したダメージは与えられず、苛立っている様子だ。
ただ、私の魔法も、リョウの剣も、ドワーフたちの斧も、同様に黒竜の硬い鱗に阻まれ、大したダメージにはなっていない。
「ローゼ! この黒竜ってやつはどうしたら倒せる!」
「どの種族も共通! 頭か心臓を狙うしかない! ただ気をつけて! 黒竜にはブレスがある!」
黒竜が息を吸い込む。
ブレスの合図だ!
「いかん! 皆避けよ!」
ゲッペンさんが叫ぶが間に合わない。
くっ! 魔法障壁を張らなきゃ!
「小娘、助かったわい」
「けど、これで私は防御一辺倒になっちゃったかも」
ヒシヒシと黒竜から、障壁を解いたら真っ先に始末するとの殺気が伝わってくる。
防御魔法や治癒に特化した、神聖魔法の使い手さえいればと悔やまれる。
「十分だ。ローゼはそのまま皆の防御を頼む。俺はあの黒竜に突っ込む!」
「リョウ!」
「小僧め! 馬鹿か! 皆の者! 黒竜へ斧を投げつけよ! 小僧を援護するのじゃ!」
ドワーフたちの斧が黒竜の鱗に突き刺さり、リョウはその斧を足場にして、黒竜の頭の近くまで登ると頭部に剣を突き立てた。
狂ったように暴れる黒竜に、魔法障壁にもヒビが入ってしまう。
それでも私は魔法障壁を維持し続ける。
リョウにもドワーフの皆にも、死んでほしくないから。
リョウを振り落とそうと暴れる黒竜。
だが、リョウはしがみついたままだ。
剣が抜けない⁉
このままではリョウが無防備なまま振り落とされてしまう!
そう思いながら駆け寄ろうとすると。
「小僧! これを使え!」
クルトさんがリョウに剣を投げつける。
それはリョウが預けていた漆黒の剣!
ドワーフの鍛冶師にメンテされ、本来の剣の力が最大限に発揮される。
太陽の光を反射する漆黒の剣に黒竜が、今までで一番の咆哮を上げた。
「うおおおおおおおおお!」
リョウは掴んだ剣を、そのまま再び、黒竜の脳天に突き刺した。
刃が全て黒竜の頭の中へ入った瞬間、私は魔法障壁を解いた。
『炎よ、我が魔力を糧とし、彼の竜を打ち砕け』
私はありったけの魔力で炎魔法を放ち、竜の胴体を焼き尽くす。
私の魔法とリョウの剣が同時に黒竜へとダメージを与え、その巨体は轟音を立てて崩れ落ちた。
周りから歓声が一斉に上がった。
私は気が抜けて、その場にへたり込んでしまった。
「よくやった。小僧も小娘も英雄の器じゃ」
クルトさんが私の頭をガシガシと撫でてくる。
私はその手を掴んで離し、立ち上がってリョウに駆け寄る。
そして、そのまま抱きついた。
「……良かった。本当に無事で良かったよ……リョウ」
「お、おいローゼ」
ドッと、ドワーフたちの笑い声が湧き上がった。
ドワーフたちはガハガハ笑いながら、喜びを露わにして肩を組んでいた。
……やっちゃった! 気がついたらリョウを抱きしめていた。
いや、私としては無事に黒竜を倒した喜びを分かち合いたかっただけだぞ?
そんな言い訳を自分にしながら、私は顔を赤くする。
けど……本当に無事で良かったよ……
「何よこれ? 倒したの? 私抜きで⁉」
「黒竜っすか……なんで黒竜が……いやそれよりもっす。これはとんでもないことっすよ! リョウ様! ローゼさん! 自分が見込んだ想像以上っす! これは本当に英雄の器っすよ! いや、英雄そのものっす!」
フィーリアが大興奮で駆けてくる。
ベレニスも仲間はずれにされたみたいに、ムス~っとしながら寄ってきた。
「ベレニス、フィーリア、2人とも無事で良かった」
「まだ気を抜くな。ルシエンと盗賊が残っている」
「ルシエン? 盗賊? 一体何の話じゃ。それが黒竜と関係あんのか?」
ゲッペンさんの疑問に私はざっくりと説明した。
フィーリアは嫌がりながらもクルトさんに肩車されながら聞き、他のドワーフたちも神妙に聞いてくれた。
「人間どもが騙したのか? だが意図がわからぬな」
「ザガンの騎士のナフトさんは知らなかったと思います」
そう言って、ベレニスに顔を向けると頷きが返ってくる。
「あのおっさんに嘘はなかったわ。てか、私はルシエンってのに会ってないから断定はしないけど、そのルシエンってジーニアみたいに邪教の魔女なんじゃないの? 初手で騙されるなんて、は~あ、私がいないと駄目なんだから」
いや、ベレニス……その時に寝ていたのは誰だよ。
「おかしいっすね。里に戻る時に大規模な人間の集団は確認できなかったっす。ベレニスさん、気づいたっすか?」
「木々の揺らぎもなかったし、いなかったわね。もしかして黒竜を囮にして逃げたんじゃないの? 私に怯えてね」
フフン♪ とベレニスは得意げにドヤ顔だ。
でもそれも、黒竜を使うにはおかしな話になるし、そもそも拠点を放棄して勝手に逃げていけばいい。
「やっぱり、ルシエンが何かを企んでいるとしか思えないかな。ここはまずザガンに行って、どういう理由でルシエンの話を聞いたのか確認して、ナフトさんと捕えていた盗賊も回収しなきゃ……って、あれ?」
目眩を感じてふらついた。
魔力切れか。転移魔法をして、ありったけの出力で黒竜に炎魔法を連発したからかな?
私は膝から崩れる様に倒れるのを、リョウが抱き止めてくれた。
「お、おい!」
「大丈夫。ただの魔力切れだから」
そんな私たちをみんながニヤニヤしているのが、なんか恥ずかしいんだけど。
「頑張ったんじゃ。休んでおれ。動ける者は周囲の警戒に当たれ! 魔女ルシエンと盗賊の行方を探るのじゃ!」
ゲッペンさんの指示に、頷くドワーフたちにリョウやベレニス。
そんな中、私はフィーリアに背負われた。
ちっちゃいのにさすがはドワーフ。
私ぐらいは軽々なのか。
「自分が部屋まで運ぶっすよ。魔力回復で試したい試作品の魔導具があるっす」
……大丈夫なのかそれ?
ま、いっか。黒竜ほどの脅威はもうないだろうし。
ルシエンの力量が少々不安だけど、もし邪教の魔女だとしたらジーニアと似たような実力だろう。
リョウやベレニスに、ドワーフの戦士がたくさんいるし何とかなるでしょ。
……多分だけど、そんな油断が、話し合いを終えて解散したみんなにもあった。
ただ1人……リョウを除いて。
「ローゼ‼」
その叫びで振り返った光景、何が起きているのか理解できなかった。
天を覆う矢が私を目掛けてくる。
そして……全身に矢を浴びて崩れ落ち、血を大量に流していくリョウの姿。
「魔法で矢が操作されているわ! また来る!」
ベレニスが顔を歪めながら叫び、ドワーフたちが対応していく中、リョウの姿を見て絶句し、震えて立ち尽くすフィーリア。
……その背中の私は声なき声を叫ぶ。
「あ、あ、あああああああああああ……っ!」
私のせいだ。私が油断したからだ。
どうしてリョウは私を庇ったの?
どうして、なんで⁉ ねえ! なんでよ‼
私はただ、リョウが生きてて側にいてくれたことが嬉しくて……それだけで良かったのに。
「ローゼさん……リョウ様はもう……」
フィーリアがそう言った気がする。
でももう何も聞こえないし、何も見えないし、何もわからない。
ただ、私は感情の赴くままに叫び、泣き叫んだ。
その瞬間、私の炎魔法が黒竜を襲う。
「小僧に小娘! フィーリアはどうした!」
「話は後じゃクルト! 小僧! 斬り込むぞ。小娘は魔法で援護せえ」
ゲッペンさんの言葉に頷くと、私とリョウは駆けだした。
黒竜はその巨体と咆哮で、私たちに構わずドワーフたちに襲いかかっているが、斧で受け止められたり、頑丈な肉体に阻まれたりして大したダメージは与えられず、苛立っている様子だ。
ただ、私の魔法も、リョウの剣も、ドワーフたちの斧も、同様に黒竜の硬い鱗に阻まれ、大したダメージにはなっていない。
「ローゼ! この黒竜ってやつはどうしたら倒せる!」
「どの種族も共通! 頭か心臓を狙うしかない! ただ気をつけて! 黒竜にはブレスがある!」
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「いかん! 皆避けよ!」
ゲッペンさんが叫ぶが間に合わない。
くっ! 魔法障壁を張らなきゃ!
「小娘、助かったわい」
「けど、これで私は防御一辺倒になっちゃったかも」
ヒシヒシと黒竜から、障壁を解いたら真っ先に始末するとの殺気が伝わってくる。
防御魔法や治癒に特化した、神聖魔法の使い手さえいればと悔やまれる。
「十分だ。ローゼはそのまま皆の防御を頼む。俺はあの黒竜に突っ込む!」
「リョウ!」
「小僧め! 馬鹿か! 皆の者! 黒竜へ斧を投げつけよ! 小僧を援護するのじゃ!」
ドワーフたちの斧が黒竜の鱗に突き刺さり、リョウはその斧を足場にして、黒竜の頭の近くまで登ると頭部に剣を突き立てた。
狂ったように暴れる黒竜に、魔法障壁にもヒビが入ってしまう。
それでも私は魔法障壁を維持し続ける。
リョウにもドワーフの皆にも、死んでほしくないから。
リョウを振り落とそうと暴れる黒竜。
だが、リョウはしがみついたままだ。
剣が抜けない⁉
このままではリョウが無防備なまま振り落とされてしまう!
そう思いながら駆け寄ろうとすると。
「小僧! これを使え!」
クルトさんがリョウに剣を投げつける。
それはリョウが預けていた漆黒の剣!
ドワーフの鍛冶師にメンテされ、本来の剣の力が最大限に発揮される。
太陽の光を反射する漆黒の剣に黒竜が、今までで一番の咆哮を上げた。
「うおおおおおおおおお!」
リョウは掴んだ剣を、そのまま再び、黒竜の脳天に突き刺した。
刃が全て黒竜の頭の中へ入った瞬間、私は魔法障壁を解いた。
『炎よ、我が魔力を糧とし、彼の竜を打ち砕け』
私はありったけの魔力で炎魔法を放ち、竜の胴体を焼き尽くす。
私の魔法とリョウの剣が同時に黒竜へとダメージを与え、その巨体は轟音を立てて崩れ落ちた。
周りから歓声が一斉に上がった。
私は気が抜けて、その場にへたり込んでしまった。
「よくやった。小僧も小娘も英雄の器じゃ」
クルトさんが私の頭をガシガシと撫でてくる。
私はその手を掴んで離し、立ち上がってリョウに駆け寄る。
そして、そのまま抱きついた。
「……良かった。本当に無事で良かったよ……リョウ」
「お、おいローゼ」
ドッと、ドワーフたちの笑い声が湧き上がった。
ドワーフたちはガハガハ笑いながら、喜びを露わにして肩を組んでいた。
……やっちゃった! 気がついたらリョウを抱きしめていた。
いや、私としては無事に黒竜を倒した喜びを分かち合いたかっただけだぞ?
そんな言い訳を自分にしながら、私は顔を赤くする。
けど……本当に無事で良かったよ……
「何よこれ? 倒したの? 私抜きで⁉」
「黒竜っすか……なんで黒竜が……いやそれよりもっす。これはとんでもないことっすよ! リョウ様! ローゼさん! 自分が見込んだ想像以上っす! これは本当に英雄の器っすよ! いや、英雄そのものっす!」
フィーリアが大興奮で駆けてくる。
ベレニスも仲間はずれにされたみたいに、ムス~っとしながら寄ってきた。
「ベレニス、フィーリア、2人とも無事で良かった」
「まだ気を抜くな。ルシエンと盗賊が残っている」
「ルシエン? 盗賊? 一体何の話じゃ。それが黒竜と関係あんのか?」
ゲッペンさんの疑問に私はざっくりと説明した。
フィーリアは嫌がりながらもクルトさんに肩車されながら聞き、他のドワーフたちも神妙に聞いてくれた。
「人間どもが騙したのか? だが意図がわからぬな」
「ザガンの騎士のナフトさんは知らなかったと思います」
そう言って、ベレニスに顔を向けると頷きが返ってくる。
「あのおっさんに嘘はなかったわ。てか、私はルシエンってのに会ってないから断定はしないけど、そのルシエンってジーニアみたいに邪教の魔女なんじゃないの? 初手で騙されるなんて、は~あ、私がいないと駄目なんだから」
いや、ベレニス……その時に寝ていたのは誰だよ。
「おかしいっすね。里に戻る時に大規模な人間の集団は確認できなかったっす。ベレニスさん、気づいたっすか?」
「木々の揺らぎもなかったし、いなかったわね。もしかして黒竜を囮にして逃げたんじゃないの? 私に怯えてね」
フフン♪ とベレニスは得意げにドヤ顔だ。
でもそれも、黒竜を使うにはおかしな話になるし、そもそも拠点を放棄して勝手に逃げていけばいい。
「やっぱり、ルシエンが何かを企んでいるとしか思えないかな。ここはまずザガンに行って、どういう理由でルシエンの話を聞いたのか確認して、ナフトさんと捕えていた盗賊も回収しなきゃ……って、あれ?」
目眩を感じてふらついた。
魔力切れか。転移魔法をして、ありったけの出力で黒竜に炎魔法を連発したからかな?
私は膝から崩れる様に倒れるのを、リョウが抱き止めてくれた。
「お、おい!」
「大丈夫。ただの魔力切れだから」
そんな私たちをみんながニヤニヤしているのが、なんか恥ずかしいんだけど。
「頑張ったんじゃ。休んでおれ。動ける者は周囲の警戒に当たれ! 魔女ルシエンと盗賊の行方を探るのじゃ!」
ゲッペンさんの指示に、頷くドワーフたちにリョウやベレニス。
そんな中、私はフィーリアに背負われた。
ちっちゃいのにさすがはドワーフ。
私ぐらいは軽々なのか。
「自分が部屋まで運ぶっすよ。魔力回復で試したい試作品の魔導具があるっす」
……大丈夫なのかそれ?
ま、いっか。黒竜ほどの脅威はもうないだろうし。
ルシエンの力量が少々不安だけど、もし邪教の魔女だとしたらジーニアと似たような実力だろう。
リョウやベレニスに、ドワーフの戦士がたくさんいるし何とかなるでしょ。
……多分だけど、そんな油断が、話し合いを終えて解散したみんなにもあった。
ただ1人……リョウを除いて。
「ローゼ‼」
その叫びで振り返った光景、何が起きているのか理解できなかった。
天を覆う矢が私を目掛けてくる。
そして……全身に矢を浴びて崩れ落ち、血を大量に流していくリョウの姿。
「魔法で矢が操作されているわ! また来る!」
ベレニスが顔を歪めながら叫び、ドワーフたちが対応していく中、リョウの姿を見て絶句し、震えて立ち尽くすフィーリア。
……その背中の私は声なき声を叫ぶ。
「あ、あ、あああああああああああ……っ!」
私のせいだ。私が油断したからだ。
どうしてリョウは私を庇ったの?
どうして、なんで⁉ ねえ! なんでよ‼
私はただ、リョウが生きてて側にいてくれたことが嬉しくて……それだけで良かったのに。
「ローゼさん……リョウ様はもう……」
フィーリアがそう言った気がする。
でももう何も聞こえないし、何も見えないし、何もわからない。
ただ、私は感情の赴くままに叫び、泣き叫んだ。
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