【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ

文字の大きさ
73 / 315
第2章 英雄の最期

第31話 ザガン伯爵の饗し

しおりを挟む
 ザガンの街はビオレールのような大規模な城塞都市と違い、人口も少なく、北部も南部も山脈で囲まれているため、旅人の往来も少ない。

 城門をくぐり抜けると、すでに街中では夕食の支度だろうか、料理の香りが漂っていた。
 治安面では盗賊や魔獣が山々に出ているが、領内での被害はほとんどない。

 そのため、民衆は税金が高くなってしんどいという愚痴はあれど、深刻な雰囲気はないみたいだ。

「このまま真っ直ぐ進むと領主邸があります。ザガン伯爵様は気さくな方だから、盗賊討伐の報酬はちゃんと出ると思いますよ」

 ナフトさんはそう説明してくれたが、リョウは何か考え込んでいるようだ。

 そして私たちは領主邸に到着して、門番の兵士に事情を説明したら、すぐに邸内へと通された。

 応接間にて待つようにと言われたので、私とベレニスとフィーリアはソファに座り寛ぐ。
 リョウだけはソファに座ることなく、壁にもたれて立ったままだ。

 暫くして、30代半ばくらいのいかにも貴族という衣装を纏った男性が応接間に入ってきた。

 金髪で長身だが横幅はあるなあ。
 この人がザガン領主かな?
 その男性がソファに腰掛けて話し始める。

「アランの傭兵のリョウ・アルバース殿とそのお仲間たちですな。此度の盗賊退治、大儀であった。今晩は我が屋敷にて、疲れを癒やすが良いぞ。食事がまだなら支度しよう」

 おお~、良い人そう。
 ベレニスも食事と聞いて、ジュルリと涎を流している。

「ナフトからおおよそのことは聞いたが、不明の盗賊がおると言っておった。安心せよ。すでにそ奴らなら、数刻前に我が屋敷前で縄で縛られ、眠った状態で置かれておったぞ。ナフトに面通しもさせたが、リョウ殿たちが倒した盗賊で間違いないそうだ」

「屋敷前に置かれていたんですか?」

「ナフトもビックリしておったが、魔女の転移魔法とやらで飛ばしたんじゃないのか? 盗賊の連中は金髪の少女の……お前さんか、の仕業に違いないと言っておったぞ?」

 ザガン伯爵の発言に嘘はなさそう。
 嘘を見破れるベレニスが、心が食事に奪われたままだし。

「壮年の旅人風の男が、ナフトさんに毒入りの干し肉を渡したっすけど、その人物に心当たりはあるっすか?」

「ないのお。我が領内の者ならナフトも知っておろうしな。さて、話ばかりも疲れるから食事にしようか」

 ザガン伯爵はそう締めくくり、私たちも応接間を出て食卓のあるホールに案内される。
 お肉料理に山菜料理、川魚料理など、多種多様な料理がテーブルに並んでいた。

「うひゃあ美味しそう! ふっふ~ん♪ ようやく、活躍に見合う報酬が貰えるわねえ」

 ベレニスは呑気にご馳走に目を輝かせているが、リョウは相変わらずだ。

 何か考えているのかな?
 食事中も談笑する私たちに対して、リョウだけは考え事をしているようだ。
 まだ気になることがあるのかな?

「皆様の冒険譚は聞いていて飽きぬ。リョウ殿は口数が少ないが、それもまた英雄たる由縁なのでしょう」

「まあ私からしたらまだまだだけど、この傭兵は盗賊や黒竜を倒すのに役に立ったのは事実よね。今後もエルフにして超絶美少女の私、ベレニス一行の冒険譚を沢山増やすんだから、楽しみにしといてよね!」

 ベレニスはこれまでの体験を、誇張しながら面白おかしく話してきた。
 ザガン伯爵もナフトさんも大笑いしているが、リョウだけは無表情なまま食事を口に運んでいる。

「ま~ったくベレニスさんは。……にしてもローゼさん、領主様とナフトさんの様子が気になるっすね。特にナフトさんは演技が下手っぽいっす。リョウ様はもう詮索しないで終わらす気配が濃厚っすけど、ローゼさんはどうするっすか?」

 小声でフィーリアが告げてくる。

「気になるのは、報酬の小銀貨50枚を渡してくる気配がないのと、ルシエンについて全く触れない点かな? 他に何か気になる点があるなら教えて欲しいけど」

 小声でフィーリアに返す。

「報酬は出ないと思うっすよ。端的に言うとこの食事でもてなしたから、後は適当にお帰り下さいっすね。……恐らくはアテが外れたんすね。ナフトさん、多分ですけど領主様に、めっちゃ怒られたと思うっすよ。落ち込んでいる表情を隠すのが下手すぎて、商人ならカモにされすぎて真っ先に破産っすね。善人ですけど、生真面目すぎて仇となったっすねえ」

「ええ~? 報酬が出ないと知ったら、ベレニスが暴れるんじゃないの? それは宥めるのが大変になりそう……」

「まあ領主様は、他の取引を持ってくるかもっすねえ。ベレニスさんは納得しないでしょうっすけど」

「ごめんフィーリア。なんとかできる?」

「できるっすが、その前に取引っす」

 ゴニョゴニョと私の耳に直接口を寄せ、フィーリアが囁いてくる。

 私が頷くと同時に、フィーリアも頷いたのであった。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と甘々ライフ~

月城 友麻
ファンタジー
『お前みたいな無能、最初から要らなかった』 恋人に裏切られ、仲間に陥れられ、家族に見捨てられた。 戦闘力ゼロの鑑定士レオンは、ある日全てを失った――――。 だが、絶望の底で覚醒したのは――未来が視える神スキル【運命鑑定】 導かれるまま向かった路地裏で出会ったのは、世界に見捨てられた四人の少女たち。 「……あんたも、どうせ私を利用するんでしょ」 「誰も本当の私なんて見てくれない」 「私の力は……人を傷つけるだけ」 「ボクは、誰かの『商品』なんかじゃない」 傷だらけで、誰にも才能を認められず、絶望していた彼女たち。 しかしレオンの【運命鑑定】は見抜いていた。 ――彼女たちの潜在能力は、全員SSS級。 「君たちを、大陸最強にプロデュースする」 「「「「……はぁ!?」」」」 落ちこぼれ軍師と、訳あり美少女たちの逆転劇が始まる。 俺を捨てた奴らが土下座してきても――もう遅い。 ◆爽快ざまぁ×美少女育成×成り上がりファンタジー、ここに開幕!

古代文明の最強王、5000年後に転生すると魔法が弱体化しすぎていたのでもう一度最強になります。~底辺貴族からの成り上がり~

しNぱ
ファンタジー
5000年前、魔法文明マギア魔導王国を築き、 魔法体系そのものを創造した王アーケ・マギアス・マギアは、 さらなる魔法の発展を求め、自らの魂を未来へ送る転生魔法を発動した。成熟した古代魔法を超える研究が進んだ世界を見たいという純粋な探求心から、5000年後の世界へと意識を沈めた。 目覚めた先は、スケルド男爵家三男レイフとしての赤子の身体だった。産まれた瞬間から記憶を持つ彼は、質素な家と薄い魔力の流れを前に、未来の魔法研究が古代よりも大きく退化していることに気づく。最底辺と呼ばれる家に生まれながらも、家族は温かく、彼の異常な魔力量を希望として受け入れた。 幼少期から魔力操作を自然に行い、三歳で石を浮かせ、五歳で光魔法を自在に扱うなど、古代王としての力を隠しながら成長する。外では古代魔法を使わず、転生者であることを悟られないよう慎重に振る舞いながら、未来の魔法体系を観察し続けた。 十歳になると身体強化などの古代魔法を最低限だけ使い、父との剣術訓練でも圧倒的な動きを見せるが、本来の力は隠したまま過ごす。そして十六歳、高等魔導学園に入学したレイフは、初日の実技試験で無詠唱魔法や術式無効化を用いて試験官を圧倒し、最底辺男爵家ながらA級判定を受ける。 その姿を見たストラング公爵家の令嬢エリナは、彼に強い興味を抱く。5000年後の世界は古代より魔法が退化していたが、だからこそ発展の余地がある。レイフは古代王としての知識をもとに、もう一度魔法の未来を切り開くことを決意する。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

クラス転移したからクラスの奴に復讐します

wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。 ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。 だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。 クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。 まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。 閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。 追伸、 雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。 気になった方は是非読んでみてください。

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

《完》義弟と継母をいじめ倒したら溺愛ルートに入りました。何故に?

桐生桜月姫
恋愛
公爵令嬢たるクラウディア・ローズバードは自分の前に現れた天敵たる天才な義弟と継母を追い出すために、たくさんのクラウディアの思う最高のいじめを仕掛ける。 だが、義弟は地味にずれているクラウディアの意地悪を糧にしてどんどん賢くなり、継母は陰ながら?クラウディアをものすっごく微笑ましく眺めて溺愛してしまう。 「もう!どうしてなのよ!!」 クラウディアが気がつく頃には外堀が全て埋め尽くされ、大変なことに!? 天然混じりの大人びている?少女と、冷たい天才義弟、そして変わり者な継母の家族の行方はいかに!?

処理中です...