【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ

文字の大きさ
113 / 315
第3章 公爵令嬢の選択

第33話 戦いの外側で

しおりを挟む
 ルインズベリー公爵家の惨劇跡地を、ニクラス公爵に任せたアデルは急ぎ教会へと向かった。

 照りつける日差しの中、静寂に佇む教会は普段と変わらぬ外見で存在しているが、アデルは奇異に感じた。

「おかしい。王都で公爵邸が燃え、多くの犠牲者が出たというのに、司祭もシスターも様子すら確認しに来ないとは」

 アデルは教会の扉をノックする。
 だが、中からの返答はない。

 もう一度ノックするがやはり反応がない。
 先行して、レスティア公爵令嬢が護衛の冒険者と共にここに向かったはずなのに、なぜいないのか?

「突入するぞ。戦闘準備!」

 兵たちに号令し、扉を開けようとするが、開かない。
 膂力は王国随一と自他共に認めるアデルですら、その扉はビクともしなかった。

 一度退き、体勢を整えて兵たちと再度試みるがやはり開かない。

 中からの応答もない。
 剣で、槍で、弓矢で攻撃しても、破壊音すらしないのだ。

「これは困ったが、異常事態が教会で起きているのは明白。敷地をくまなく探すのだ。侵入できるルートを調べよ」

 よじ登ってみたり穴を掘っての侵入も試すが、よじ登った者は一定の高さまで行くと出発点に戻り、穴を掘った者も膝が入るぐらい掘ると、出発点へ戻ってしまう。

「ふむう。誰ぞ王宮へ急使を頼む。儂ではお手上げだ」

 そう兵に告げるアデルの目に、金髪オールバックの少年が兵を率いて現れる姿が見えた。

「フハハ、アデル準男爵。お困りのようだな。どれ、俺の部下たちに任せて休んでろ」

 テスタ宰相の長子であるウイルヘルム公子だ。
 馬上から血走った眼で、アデルの言を待たずに手勢を動かしていった。

 なんでこの若僧がここに、と思うアデルへ、兵の1人が耳打ちする。

「陛下から余計な真似をさせず、アデル殿の指揮下に置くように、と」

「縛っておくしかあるまいな」

 アデルは少しだけ待った。
 もしかすると追い詰められた状況のウイルヘルムが、火事場の馬鹿力で現状を打破する可能性もあるやもと賭けたのだ。
 扉が開けば殴って気絶させればいいとも考えていた。

「ハアハアハア、駄目です。扉は開きません!」

「こ、この役立たずが! シャイニング家存亡の危機なんだぞ! 駄目と口走ったり諦めたりした奴は、俺が斬り殺してやる! 見せしめだ! お前は殺す‼」

 報告した部下に、ウイルヘルムは剣を向けた。

 振り降ろされる剣に、怯え諦めるシャイニング公爵家の兵。
 しかし、その剣はアデルが弾き飛ばした。

「き、貴様! 平民の分際で俺に逆らう気か!」

「ここの指揮権は儂にあります。儂の命に従わぬなら軍の掟で処刑しますぞ」

 ウイルヘルムを睨み付けアデルは言う。

 一瞬怯むも、まだプライドからか、ウイルヘルムは再度剣を振るおうとする。
 だが、アデルの剣気に当てられ、腰から崩れ落ちた。

 アデルは剣を鞘に収めて、部下の兵が持ってきた手拭いをウイルヘルムに渡して汗を拭くように促した。

「功を焦るお気持ちはわかりますが落ち着かれよ。公子は何もせぬのが無難と思われますぞ」

「ひっ!……わ、わかった。お、大人しくしている」

 その様子を見て、アデルはこれなら縛っておく必要もあるまいと判断し、待機を命じた。

 いくらこ奴が愚かでも、手柄を横取りするための無茶をしないだろうと確信し、教会の方に目を向け、思案する。

 そこへ、トールが2人の男女を連れて歩いてきた。

「クスクス。不可侵結界ね。また随分凝っているわね」

「使えそうな魔導具は持ってきたが、何か役立てるか?」

「そうね。……通信魔法を増幅させるのはあるかしら?」

「ほらよ。やるならフィーリアが適任だろう」

「そうね……でもジーニアはきっと頭のキレるフィーリアちゃんを警戒しているわ。それはローゼちゃんも同じ。ベレニスちゃんは顔に出ちゃいそうだし……だからあえて傭兵クンにしようかしら? クスクス、この魔導具なら、魔力の流れを読む天賦の才の持ち主でなければ気づかれないわね。ローゼちゃんも気づかなそう」

 男女が会話している中、アデルはトールにこの2人の素性を尋ねた。

「魔女のディアナと商人のヘクター。私が協力を要請した民間人です」

「魔女ディアナ? ああ、ビオレールの騒動の」

 どういった経緯で今ここにいるのかは知らぬが、これは任せたほうがよさそうだとアデルは判断した。

 そして魔女ディアナの妖艶な肢体が発光し、アランの傭兵リョウ・アルバースに問いかける声が響く。

「心で念じるだけでいいわ。気取られないように。……ええ………そう、魔法陣はどんな紋様かしら? …………破壊をお願いできるかしら? それが突破口よ。⁉……気づかれた‼ この魔力は……」

 その言葉が終わると、魔女ディアナの発光は治まり、冷や汗が一雫流れ落ちた。

「あの少年はなんと?」

「状況は最悪ね。傭兵クンは、同じアランの傭兵のオルガ・フーガと一騎討ち。ローゼちゃんたちは、魔族に変えられたポール公子の魔力弾に防戦一方。……そしてポール公子の妹のシャルロッテ公女は人質としてジーニアに確保され、魔法陣を描かれて眠らされているそうよ」

「なんと……」

 悪夢のような情報の多さに、アデルは思わず立ち眩みを感じた。

「大丈夫かディアナ? 気づかれたのは誰にだ?」

 ヘクターの問いに、ディアナは悲しげに教会を見た。

「何とかなるか?」

 トールの問いにディアナは首を横に振る。

「こればっかりは2つの未来しかないわ。成功するか全滅するかのね。……クスクス。でも私は成功するほうに賭けるわ」

 ディアナの微笑みは勝利を確信しているようであり、そしてどこか寂しさを感じるものであった。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

クラス転移したからクラスの奴に復讐します

wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。 ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。 だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。 クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。 まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。 閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。 追伸、 雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。 気になった方は是非読んでみてください。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

みそっかす銀狐(シルバーフォックス)、家族を探す旅に出る

伽羅
ファンタジー
三つ子で生まれた銀狐の獣人シリル。一人だけ体が小さく人型に変化しても赤ん坊のままだった。 それでも親子で仲良く暮らしていた獣人の里が人間に襲撃される。 兄達を助ける為に囮になったシリルは逃げる途中で崖から川に転落して流されてしまう。 何とか一命を取り留めたシリルは家族を探す旅に出るのだった…。

《完》義弟と継母をいじめ倒したら溺愛ルートに入りました。何故に?

桐生桜月姫
恋愛
公爵令嬢たるクラウディア・ローズバードは自分の前に現れた天敵たる天才な義弟と継母を追い出すために、たくさんのクラウディアの思う最高のいじめを仕掛ける。 だが、義弟は地味にずれているクラウディアの意地悪を糧にしてどんどん賢くなり、継母は陰ながら?クラウディアをものすっごく微笑ましく眺めて溺愛してしまう。 「もう!どうしてなのよ!!」 クラウディアが気がつく頃には外堀が全て埋め尽くされ、大変なことに!? 天然混じりの大人びている?少女と、冷たい天才義弟、そして変わり者な継母の家族の行方はいかに!?

貴方がLv1から2に上がるまでに必要な経験値は【6億4873万5213】だと宣言されたけどレベル1の状態でも実は最強な村娘!!

ルシェ(Twitter名はカイトGT)
ファンタジー
この世界の勇者達に道案内をして欲しいと言われ素直に従う村娘のケロナ。 その道中で【戦闘レベル】なる物の存在を知った彼女は教会でレベルアップに必要な経験値量を言われて唖然とする。 ケロナがたった1レベル上昇する為に必要な経験値は...なんと億越えだったのだ!!。 それを勇者パーティの面々に鼻で笑われてしまうケロナだったが彼女はめげない!!。 そもそも今の彼女は村娘で戦う必要がないから安心だよね?。 ※1話1話が物凄く短く500文字から1000文字程度で書かせていただくつもりです。

処理中です...