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第4章 竜は泉で静かに踊る
第25話 消滅のペンダント
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ヴィレッタも、レオノールも、ベレニスも、フィーリアも、クリスの幻想的な光景に心を奪われていた。
「左肩が出血してるよ。片翼を斬られたところ? ヴィレッタほどの回復力はないけど、私でも治せると思う。見せてくれるかな?」
私はクリスに近づき、笑顔で告げた。
もう戦いは終わったのだ。
赤竜の姿で片翼を失ったクリスだが、人の姿の傷は大したことはないように見えた。
それでも、飛べなくなっているのが悲しそうだった。
「ん~いいよ~。明るくなって、暗くなって、また明るくなる頃には翼は戻るから~」
「そんなに早く再生するの⁉ さすがは伝説の赤竜ってところかな? でも傷は傷! 女の子なんだし、背中も大事にする! それに仲間なんだし、遠慮しないの!」
強引にクリスの手を握ろうとした瞬間、クリスの身につけているペンダントから異様な魔力を感じ取った。
それは、冷たく、澱んでいて、まるで魂を吸い取られるような、底知れぬ闇の力だった。
その魔力に触れた瞬間、私の身体は震え、背筋には冷たい汗が流れる。
周囲の空気も歪み、ペンダントから発せられる闇の気配に圧倒されてしまう。
「これは、ラフィーネを滅ぼせと言った人間の男が取り付けたもの。外せば死ぬし、盟約を破ったら死ぬって言ってたけど、どうやらその通りになりそうだね」
人の形態では、いつものんびり喋っていたクリスが、時を惜しむように喋りだした。
「お別れだよ。ローゼ、みんな。仲間になれなくてごめんね。さあ離れて。巻き込みたくないから」
それは、穏やかで優しげで、悲しげな笑顔だった。
「ふざけないで! 私の魔力でぶっ壊す!」
「ローゼさん、駄目っす! そのペンダントは『消滅のペンダント』っす。強引に壊せば全員死ぬっす!」
魔導具に詳しいフィーリアがそれに気づき、絶叫した。
消滅のペンダント。
……それは七英雄の物語で、ただ一度のみ登場する人口一万の人の街を一瞬で無にした、とある魔族が使用したとされる魔導具の名だ。
まさか? なんて疑わない。
このペンダントから感じる魔力は、伝説級に十分な代物だ。
「うん。フィーリアの言う通りだよ。ありがとうローゼ。ローゼがなんとかしようとしてくれたのが凄く嬉しい。みんなの悲しそうな表情も胸がチクチクする。……こういうのなんだね。みんなが誰かを助けようとして必死になるのって。死にたくない。みんなと、一緒にずっといたいなあと思って初めて理解したよ。助けたいし、助けてもらいたい。救いたいし救われたい。この想いが『仲間』なんだね」
クリスが手を伸ばし、私を弾き飛ばした。
「ローゼたちは、これからもそういうのを助けていくんだから、ここで死んじゃ駄目だよ。じゃあね……みんな」
遠くなっていくクリスの身体は、まるで踊っているかのように優雅で儚い姿だった。
ペンダントの邪悪な光がクリスを包む。
私たちを巻き込まぬよう、クリスは泉へと飛び込んだのであった。
「冗談じゃない! これからもそういうのを助けていく? クリスを犠牲にして? 私を舐めるな!」
魔力を瞬時に練り上げる。
赤竜の魔法結界を壊すほどの魔力なら、消滅のペンダントくらい消し飛ばせるはずだ。
全身から強烈な魔力があふれ出す。
我が魔力よ! 太陽のごとき黄金の光となりて闇を照らせ!
泉に飛び込みクリスを見つけると、両手に込めた魔力を遠慮容赦なく放つ!
身体が自由に動くが、ヴィレッタとフィーリアが、私が飛び込む瞬間に神聖魔法と魔導具で付与してくれたみたいだ。
ベレニスやレオノール……それに気絶中のリョウの想いも伝わってくる。
クリスを死なせてなるものかって!
なら、クリス? その気持ちを受け止めないと駄目なんだよ?
このバカ! 勝手に諦めて、死のうとするな!
最初から理由を言え! 私たちを信じろ!
私はもうエマさんやオルガ、シャルロッテのような悲劇を見たくないんだ!
リョウに出会い、ベレニスやフィーリアと友達になって、ヴィレッタと再会してレオノールと友人になれた。
だからクリスとも仲間になれるんだから!
何が赤竜だ! 赤竜王ドラルゴがどうした!
私はローゼ・スノッサ! 魔女を舐めるな!
泉の底から溢れ出すのは、悪意に満ちた消滅のペンダントが発する膨大な魔力。
私の魔力が喰われていくのもわかる。
でも負けない! クリスを死なせてなるものか!
私はクリスの手を離さない! 絶対にだ‼
クリスの心の中で、死への諦めが徐々に希望へと変わっていったのがわかる。
私たちの必死の想いが、まるで暖かい光のように心に染み渡り、生きたいという強い意志が芽生えていったのだ。
なら、私たちは負けはしない‼
泉の中で、私の放つ魔力とペンダントの邪悪な力が激しくぶつかり合った。
水中に金色と闇色が交錯し、まるで荒れ狂う海のように渦を巻いていった。
泉の水は激しく沸騰し、巨大な水柱となって空高く舞い上がる。
そして……泉の底から溢れる光が私たちを包み込んだ。
それはまるで七色の虹のような光だった。
ドワーフの里でフィーリアから貰った、私の魔力を満タンに込めていた魔石が砕けた瞬間、想像を絶する魔力が解き放たれた。
その力は私の魔力と混ざり合い、まるで新たな生命が誕生するかのような輝きを放った。
私たちの想いと、クリスの想いが溶け合うように混ざり合い、消滅のペンダントは跡形もなく砕け散っていった。
泉の底に座り込むクリスを抱き上げ、私は感謝を伝える。
ありがとう。
諦めないでくれて……助けさせてくれて……私の手を取ってくれて……ありがとうって!
「左肩が出血してるよ。片翼を斬られたところ? ヴィレッタほどの回復力はないけど、私でも治せると思う。見せてくれるかな?」
私はクリスに近づき、笑顔で告げた。
もう戦いは終わったのだ。
赤竜の姿で片翼を失ったクリスだが、人の姿の傷は大したことはないように見えた。
それでも、飛べなくなっているのが悲しそうだった。
「ん~いいよ~。明るくなって、暗くなって、また明るくなる頃には翼は戻るから~」
「そんなに早く再生するの⁉ さすがは伝説の赤竜ってところかな? でも傷は傷! 女の子なんだし、背中も大事にする! それに仲間なんだし、遠慮しないの!」
強引にクリスの手を握ろうとした瞬間、クリスの身につけているペンダントから異様な魔力を感じ取った。
それは、冷たく、澱んでいて、まるで魂を吸い取られるような、底知れぬ闇の力だった。
その魔力に触れた瞬間、私の身体は震え、背筋には冷たい汗が流れる。
周囲の空気も歪み、ペンダントから発せられる闇の気配に圧倒されてしまう。
「これは、ラフィーネを滅ぼせと言った人間の男が取り付けたもの。外せば死ぬし、盟約を破ったら死ぬって言ってたけど、どうやらその通りになりそうだね」
人の形態では、いつものんびり喋っていたクリスが、時を惜しむように喋りだした。
「お別れだよ。ローゼ、みんな。仲間になれなくてごめんね。さあ離れて。巻き込みたくないから」
それは、穏やかで優しげで、悲しげな笑顔だった。
「ふざけないで! 私の魔力でぶっ壊す!」
「ローゼさん、駄目っす! そのペンダントは『消滅のペンダント』っす。強引に壊せば全員死ぬっす!」
魔導具に詳しいフィーリアがそれに気づき、絶叫した。
消滅のペンダント。
……それは七英雄の物語で、ただ一度のみ登場する人口一万の人の街を一瞬で無にした、とある魔族が使用したとされる魔導具の名だ。
まさか? なんて疑わない。
このペンダントから感じる魔力は、伝説級に十分な代物だ。
「うん。フィーリアの言う通りだよ。ありがとうローゼ。ローゼがなんとかしようとしてくれたのが凄く嬉しい。みんなの悲しそうな表情も胸がチクチクする。……こういうのなんだね。みんなが誰かを助けようとして必死になるのって。死にたくない。みんなと、一緒にずっといたいなあと思って初めて理解したよ。助けたいし、助けてもらいたい。救いたいし救われたい。この想いが『仲間』なんだね」
クリスが手を伸ばし、私を弾き飛ばした。
「ローゼたちは、これからもそういうのを助けていくんだから、ここで死んじゃ駄目だよ。じゃあね……みんな」
遠くなっていくクリスの身体は、まるで踊っているかのように優雅で儚い姿だった。
ペンダントの邪悪な光がクリスを包む。
私たちを巻き込まぬよう、クリスは泉へと飛び込んだのであった。
「冗談じゃない! これからもそういうのを助けていく? クリスを犠牲にして? 私を舐めるな!」
魔力を瞬時に練り上げる。
赤竜の魔法結界を壊すほどの魔力なら、消滅のペンダントくらい消し飛ばせるはずだ。
全身から強烈な魔力があふれ出す。
我が魔力よ! 太陽のごとき黄金の光となりて闇を照らせ!
泉に飛び込みクリスを見つけると、両手に込めた魔力を遠慮容赦なく放つ!
身体が自由に動くが、ヴィレッタとフィーリアが、私が飛び込む瞬間に神聖魔法と魔導具で付与してくれたみたいだ。
ベレニスやレオノール……それに気絶中のリョウの想いも伝わってくる。
クリスを死なせてなるものかって!
なら、クリス? その気持ちを受け止めないと駄目なんだよ?
このバカ! 勝手に諦めて、死のうとするな!
最初から理由を言え! 私たちを信じろ!
私はもうエマさんやオルガ、シャルロッテのような悲劇を見たくないんだ!
リョウに出会い、ベレニスやフィーリアと友達になって、ヴィレッタと再会してレオノールと友人になれた。
だからクリスとも仲間になれるんだから!
何が赤竜だ! 赤竜王ドラルゴがどうした!
私はローゼ・スノッサ! 魔女を舐めるな!
泉の底から溢れ出すのは、悪意に満ちた消滅のペンダントが発する膨大な魔力。
私の魔力が喰われていくのもわかる。
でも負けない! クリスを死なせてなるものか!
私はクリスの手を離さない! 絶対にだ‼
クリスの心の中で、死への諦めが徐々に希望へと変わっていったのがわかる。
私たちの必死の想いが、まるで暖かい光のように心に染み渡り、生きたいという強い意志が芽生えていったのだ。
なら、私たちは負けはしない‼
泉の中で、私の放つ魔力とペンダントの邪悪な力が激しくぶつかり合った。
水中に金色と闇色が交錯し、まるで荒れ狂う海のように渦を巻いていった。
泉の水は激しく沸騰し、巨大な水柱となって空高く舞い上がる。
そして……泉の底から溢れる光が私たちを包み込んだ。
それはまるで七色の虹のような光だった。
ドワーフの里でフィーリアから貰った、私の魔力を満タンに込めていた魔石が砕けた瞬間、想像を絶する魔力が解き放たれた。
その力は私の魔力と混ざり合い、まるで新たな生命が誕生するかのような輝きを放った。
私たちの想いと、クリスの想いが溶け合うように混ざり合い、消滅のペンダントは跡形もなく砕け散っていった。
泉の底に座り込むクリスを抱き上げ、私は感謝を伝える。
ありがとう。
諦めないでくれて……助けさせてくれて……私の手を取ってくれて……ありがとうって!
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