【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ

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第4章 竜は泉で静かに踊る

第25話 消滅のペンダント

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 ヴィレッタも、レオノールも、ベレニスも、フィーリアも、クリスの幻想的な光景に心を奪われていた。

「左肩が出血してるよ。片翼を斬られたところ? ヴィレッタほどの回復力はないけど、私でも治せると思う。見せてくれるかな?」

 私はクリスに近づき、笑顔で告げた。

 もう戦いは終わったのだ。
 赤竜の姿で片翼を失ったクリスだが、人の姿の傷は大したことはないように見えた。

 それでも、飛べなくなっているのが悲しそうだった。

「ん~いいよ~。明るくなって、暗くなって、また明るくなる頃には翼は戻るから~」

「そんなに早く再生するの⁉ さすがは伝説の赤竜ってところかな? でも傷は傷! 女の子なんだし、背中も大事にする! それに仲間なんだし、遠慮しないの!」

 強引にクリスの手を握ろうとした瞬間、クリスの身につけているペンダントから異様な魔力を感じ取った。
 それは、冷たく、澱んでいて、まるで魂を吸い取られるような、底知れぬ闇の力だった。

 その魔力に触れた瞬間、私の身体は震え、背筋には冷たい汗が流れる。
 周囲の空気も歪み、ペンダントから発せられる闇の気配に圧倒されてしまう。

「これは、ラフィーネを滅ぼせと言った人間の男が取り付けたもの。外せば死ぬし、盟約を破ったら死ぬって言ってたけど、どうやらその通りになりそうだね」

 人の形態では、いつものんびり喋っていたクリスが、時を惜しむように喋りだした。

「お別れだよ。ローゼ、みんな。仲間になれなくてごめんね。さあ離れて。巻き込みたくないから」

 それは、穏やかで優しげで、悲しげな笑顔だった。

「ふざけないで! 私の魔力でぶっ壊す!」

「ローゼさん、駄目っす! そのペンダントは『消滅のペンダント』っす。強引に壊せば全員死ぬっす!」

 魔導具に詳しいフィーリアがそれに気づき、絶叫した。

 消滅のペンダント。
 ……それは七英雄の物語で、ただ一度のみ登場する人口一万の人の街を一瞬で無にした、とある魔族が使用したとされる魔導具の名だ。

 まさか? なんて疑わない。
 このペンダントから感じる魔力は、伝説級に十分な代物だ。

「うん。フィーリアの言う通りだよ。ありがとうローゼ。ローゼがなんとかしようとしてくれたのが凄く嬉しい。みんなの悲しそうな表情も胸がチクチクする。……こういうのなんだね。みんなが誰かを助けようとして必死になるのって。死にたくない。みんなと、一緒にずっといたいなあと思って初めて理解したよ。助けたいし、助けてもらいたい。救いたいし救われたい。この想いが『仲間』なんだね」

 クリスが手を伸ばし、私を弾き飛ばした。

「ローゼたちは、これからもそういうのを助けていくんだから、ここで死んじゃ駄目だよ。じゃあね……みんな」

 遠くなっていくクリスの身体は、まるで踊っているかのように優雅で儚い姿だった。

 ペンダントの邪悪な光がクリスを包む。
 私たちを巻き込まぬよう、クリスは泉へと飛び込んだのであった。

「冗談じゃない! これからもそういうのを助けていく? クリスを犠牲にして? 私を舐めるな!」

 魔力を瞬時に練り上げる。
 赤竜の魔法結界を壊すほどの魔力なら、消滅のペンダントくらい消し飛ばせるはずだ。

 全身から強烈な魔力があふれ出す。
 我が魔力よ! 太陽のごとき黄金の光となりて闇を照らせ!

 泉に飛び込みクリスを見つけると、両手に込めた魔力を遠慮容赦なく放つ!
 身体が自由に動くが、ヴィレッタとフィーリアが、私が飛び込む瞬間に神聖魔法と魔導具で付与してくれたみたいだ。

 ベレニスやレオノール……それに気絶中のリョウの想いも伝わってくる。

 クリスを死なせてなるものかって!
 なら、クリス? その気持ちを受け止めないと駄目なんだよ?

 このバカ! 勝手に諦めて、死のうとするな!
 最初から理由を言え! 私たちを信じろ!

 私はもうエマさんやオルガ、シャルロッテのような悲劇を見たくないんだ!

 リョウに出会い、ベレニスやフィーリアと友達になって、ヴィレッタと再会してレオノールと友人になれた。
 だからクリスとも仲間になれるんだから!

 何が赤竜だ! 赤竜王ドラルゴがどうした!
 私はローゼ・スノッサ! 魔女を舐めるな!

 泉の底から溢れ出すのは、悪意に満ちた消滅のペンダントが発する膨大な魔力。
 私の魔力が喰われていくのもわかる。
 でも負けない! クリスを死なせてなるものか!

 私はクリスの手を離さない! 絶対にだ‼

 クリスの心の中で、死への諦めが徐々に希望へと変わっていったのがわかる。
 私たちの必死の想いが、まるで暖かい光のように心に染み渡り、生きたいという強い意志が芽生えていったのだ。

 なら、私たちは負けはしない‼

 泉の中で、私の放つ魔力とペンダントの邪悪な力が激しくぶつかり合った。
 水中に金色と闇色が交錯し、まるで荒れ狂う海のように渦を巻いていった。
 泉の水は激しく沸騰し、巨大な水柱となって空高く舞い上がる。

 そして……泉の底から溢れる光が私たちを包み込んだ。
 それはまるで七色の虹のような光だった。

 ドワーフの里でフィーリアから貰った、私の魔力を満タンに込めていた魔石が砕けた瞬間、想像を絶する魔力が解き放たれた。
 その力は私の魔力と混ざり合い、まるで新たな生命が誕生するかのような輝きを放った。

 私たちの想いと、クリスの想いが溶け合うように混ざり合い、消滅のペンダントは跡形もなく砕け散っていった。

 泉の底に座り込むクリスを抱き上げ、私は感謝を伝える。
 ありがとう。
 諦めないでくれて……助けさせてくれて……私の手を取ってくれて……ありがとうって!
 
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