【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ

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第4章 竜は泉で静かに踊る

第26話 勝利 〜そして〜

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 私とクリスが水面に浮かび上がると、泉全体が七色に輝いていた。
 湖畔で待っていた仲間たちは、私たちの無事を確認すると安堵の表情を浮かべた。

 そして、ヴィレッタが私を思いっきり抱きしめてくる。

 ちょっと苦しいです。はい。だってフィーリアもベレニスも、レオノールまで抱きついて来るから!

「師匠は抱きつかないんですか⁉ ここ、空けておきますね!」

 ちょっ! 余計なことをするな、レオノール!
 リョウにまで抱きつかれたら恥ずかしくて死んじゃうぞ!

「あ~いや……俺はその……うん。無事でよかった。ローゼ、お疲れ」

 ヴィレッタの神聖魔法で回復したリョウの姿に安堵しつつ、照れている顔を見て羞恥心が湧き上がってくる。
 顔が赤いのは恥ずかしいから?
 こっちまで顔が赤くなっちゃうよ。

 何はともあれ、みんな無事でよかった。

 当のクリスまで、みんなの真似をして私に抱きついてきたが、よく考えたらクリスは裸で水浸しじゃないか⁉
 あっ、私も服が水浸しだった。

 ヴィレッタたちの暖かい体温が伝わる中、リョウがベレニスに飛び蹴りされたんですけど⁉

「ムッツリはあっちで待機よ! そんでもって、私たちはこっからさらに抱きつくっと♪」

 ベレニスの言葉に促され、フィーリア、レオノール、ヴィレッタが再び私とクリスに抱きついてきた。

「あはは~。みんな温かいね~」

 嬉しそうなクリスの笑い声が響いた。
 みんなが抱き合う中、リョウは頬をポリポリと照れくさそうに掻いて後ろを向く。

 それを眺めながら、私はリョウに微笑むのだった。

「これは……⁉ どうやら無事のようだな」

 泉に多くのエルフやリザードマンが現れ、クーリンディアさんがホッとしたように呟いてきた。
 どうやら私たちを心配して駆けつけてくれたようだ。

「ったく、もの凄え魔力を感じたぜ。この森の終わりが来たと震えたが、リョウたちと赤竜ちゃんかよ。おい、赤竜ちゃんよお、この前は俺をよくもラフィーネに置いていきやがったな」

「ん~? 誰だっけ~?」

「んな⁉ ザイルーガだよ! リザードマンの族長代理の! ったく……相変わらず呑気な赤竜ちゃんだぜ」

「てか! ザイルーガ! あんたも男なんだからシッシ! 女子の裸を覗こうなんて、とんだエロリザードマンね」

「んがっ! 誰が鱗のねえ肌を見て興奮するかよ! ったく……魔女の嬢ちゃんは相変わらずだなあ」

 頭を掻きつつも、私の言うことを律儀に実行するザイルーガであった。
 意外と紳士な奴め。

「クーリンディア! 男たちは傭兵のいる場所まで下がって待機よ! ララノアたち女子組は、傭兵たちがこっちへ近づこうとしたら阻止しなさい!」

 ベレニスの冗談なんだろうけど、本気の命令と受け取っていないか?
 エルフもリザードマンたちも、一斉に言う通りに動いたんですけど⁉

 リョウがクーリンディアさんとザイルーガに、何があったかの説明を求められ、しどろもどろしているなあ。
 早く合流しないと駄目かも。

 もう! みんなのリョウへの評価が、さっきまで天井知らずだったのに、また頼りないって思われているぞ!

「それじゃ、クリス。服を着よっか?」

「え~? 別にこのままでもいいと思うけど~」

 私の言葉にクリスは不思議そうな顔で答えた。
 どうやら服が嫌いのようだ。

「服を着ないと一緒にいられないから! 竜の姿が本来の姿なのかもしれないけど、裸だと街に入れないから! 私は服を着たクリスと、ずっと一緒にいたいかな~なんて」

 ここは説得しないと。
 赤竜の姿のクリスは強くてカッコいいけど、街の中で一緒にお買い物とか、お風呂とか、食事とか、寝る前の女子トークとかができなくなっちゃうからね♪

「ローゼさん。それ告白みたいっすよ。リョウ様が言ったら、クリスさんが竜に戻ってリョウ様を踏みつけそうっす。そんくらい恥ずかしいセリフっすよ」

「フィーリア茶化さない! って! なんでリョウだと踏みつけるの⁉」

 フィーリアはニヤニヤしつつ私とクリスを眺め、その隙にヴィレッタとレオノールがクリスに、シュバババと服を着せていった。

 うん、似合っている。
 ロングスカートが美しい脚線を強調し、タイトなブラウスがクリスのくびれを際立たせている。
 長身のスレンダー体型には、こういう服装が似合うよね。
 色も赤色でクリスのイメージカラーでピッタリだよ。

「股間がスースーするよ~」

「そういうセリフは言っちゃ駄目! リョウには絶対言っちゃ駄目だからね!」

「街に戻ったら下着屋さんに直行ですね」

 そんな、私とヴィレッタによる和やかな雰囲気の締めくくり。
 クーリンディアさんたちエルフも、ザイルーガたちリザードマンもホッと安心している様子。
 リョウもようやく私たちの下へやってきて、みんなと笑い合うのだった。

 そんな時だ。
 森の奥からパチパチパチと乾いた音が響き渡り、闇の中から男が姿を現す。

「いやあ、見事見事。あのペンダントを撃ち破るなんてなあ。さすがの俺も、この結末は予想しなかったわ」

 低い、嘲笑を含んだ声。

 リョウの顔が一変した。
 これまでの寛容さや優しさが一掃され、ただ憎しみと怒りだけのような表情になった。

 ザイルーガやクーリンディアさんたちが一斉に武器を手にし、猛獣を睨むように男を警戒した。
 私はその緊迫した空気に呼応するように体が震え上がり、背筋を走る恐怖を感じてしまった。

「ノイズ‼」

 リョウが剣を抜き、男へ斬りかかる。

 男……ノイズも長剣を持ち、嗤いながらリョウの剣戟を受け止めた。

「よお! 生きていて嬉しいぜ。以前のように父さんと呼んでいいんだぜ?」

 赤く光る禍々しい長剣を持ち、鎧の漆黒が光沢を放ち、眩しい。
 黒髪に無精髭でガッシリした体格。

 その鎧は無数の傷跡を負いながらも、まるで生き物のように光を反射する。
 黒髪は乱れ、鋭い眼光は獲物を狙う獣のようであり、その瞳の奥底には底知れぬ闇が潜んでいた。
 ノイズの体格は、鍛え上げられた筋肉が鎧の下でも盛り上がりを示している。

 こいつが……こいつがノイズ・グレゴリオか!
 リョウを少年兵にし、パルケニア王国デリムで叛乱を起こし、自ら率いる少年兵を惨殺して去った男!

 リョウが旅をする目的の復讐相手!
 そして邪教の魔女ルシエンが、死ぬ間際に呟いた名前!

 まさかの人物の登場に先程までの和やかな空気は、もう、どこにも残っていなかった。
 
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