【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ

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第5章 籠の中の鳥

第8話 潜入!王立学校女子寮

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 ファインダ王国の王都リオーネにある王立学校の制服に着替え、女子寮に到着した私とヴィレッタ。

 女子寮は白亜の石造りで、青い屋根が特徴的な5階建ての建物だった。
 周囲には手入れの行き届いた庭園が広がり、色とりどりの花々が咲き乱れている。

 門を警備している兵士に名前を言うと、すんなり中へ通された。

「はあ、急過ぎる。せめてみんなに一言告げてからでもよかったのになあ」

 まあ、ベレニスもフィーリアも女子寮に入りたがらないだろうし、クリスも勉強の二文字とは程遠い存在だ。
 男のリョウは論外だし、私とヴィレッタが潜入組になるのは確定しているのだが。

「マーガレット王妃も、レオノールを心配していらっしゃるのでしょう。ところでローゼ、任務は怪奇現象騒動の解決が主目的です。学校の授業では、あまり目立たぬようにしてくださいませ」

 以前、ベルガー王国の王立学校に1日だけ通ったのだが、その時の私の様子を思い出して、ヴィレッタは心配しているようだ。

「わかってるって。でも絶対、ヴィレッタのほうが目立つと思うんだよなあ」

「わたくしはベルガーの王立学校で、目立ったことはありません。ローゼとリョウ様のように、人をアッと言わせる才はございませんから」

 いやいやヴィレッタ、ベルガーでは政争の関係で避けられていただけだぞ?
 才だってめっちゃあるぞ?

 容易に想像できるよ、ヴィレッタに勉強を教わりたいと殺到するクラスメイトの姿が。

 などと考えながら、女子寮の寮長室の前に立ち、コンコンとノックする。

「お入りください」

 落ち着いた女性の声が聞こえてきて扉を開けると、寮長のモリーナさんが紺色のロングドレス姿で、礼儀正しく立っていた。

 彼女は年齢は27歳。深緑色の髪に眼鏡姿がよく似合う美人で、貴族令嬢でありながら寮長を務めていた。

 8年前のファインダ王国存亡の戦いで夫が戦死した悲しい過去があり、実家に戻るのも再婚も拒否し、募集されていた寮長職に志願して、今に至るそうだ。

「ローゼ・スノッサ様とヴィレッタ・レスティア様ですね。理事長から報告を受けています。急な入寮と入学ですが、陛下をお救いなさった冒険者一行の方々、歓迎致します。お部屋へ案内します。食事の時間とお風呂の時間、門限等はこちらに書いておりますので目を通しておいてください」

 紙を渡し淡々と説明し、モリーナ寮長は私たちを部屋へと案内すべく歩き出した。

 案内された部屋は5階にある角部屋だった。
 部屋には2つの木製ベッドと勉強机が置かれ、壁には王国の紋章が飾られていた。
 窓からは王都の景色が一望でき、遠くに王宮の尖塔も見える。

 ふう、知らない貴族令嬢と一緒になられても困るし、ヴィレッタと同じ部屋なのはよかったかな。

 新年まであと3週間だし、こんな時期に部屋割りをシャッフルされたら他の子達も嫌がるだろうし、当然と言えば当然の結果かも。

「ヴィレッタ様は、ベルガー王国のレスティア家公爵令嬢であり自由騎士の称号を得ているそうですが、ここはファインダ王国王立学校の女子寮、特別待遇はしませんのでそのつもりでお願いします」

 モリーナさんの眼鏡がキラリと光った。

「何か確認事項はございますか?」

「えっと、怪奇現象が起きているって話を聞いたんですが」

 私の質問に、モリーナさんはため息を吐く。

「もう外に噂が広まっているのですか。まったく、レオノール姫殿下も困ったお方です。私は怪奇現象を見たことがありません。寮生は多感な年頃で、大袈裟に騒ぐ傾向があります。噂に振り回され、寮生の不安を煽ることはしないでもらいたいものです」

 うーん、どうやらこのモリーナ寮長は、怪奇現象すらも信じていないっぽい。

 まあ、そりゃそうだろうな~。
 被害とかはないみたいだし、モリーナ寮長の立場的には、騒ぎになるのは心外って感じなのかも。

「あっ、テレサさんから私たち2人を『よろしくお願いします』と言付かっています」

 微笑んで、私は呟いたのだが……

「テレサ様ですか……あの方もレオノール姫殿下同様、手のかかる学生でした。親友にイリス・アーシャがいたのですが、2人でよく脱走してはトラブルを起こしていました。テレサ様のお知り合いなのは理解しました。ですが忖度せず、他の寮生と同じように扱いますので、ローゼ様もヴィレッタ様もトラブルは起こさないようにお願いします」

 モリーナ寮長の黒縁眼鏡がまたまたキラリと光る。
 彼女の姿勢は常に正しく、一挙手一投足に厳格さが滲み出ていた。

 う~ん、これは堅物な人だね。
 協力関係を構築するのに時間がかかりそうだ。

 モリーナさんが去り、とりあえず部屋の様子を確認したが、魔力は感知できなかった。

「この女子寮にいる誰かが、魔女の可能性が高いのですね」

 ヴィレッタは呟きつつ、窓の外の景色を眺めた。

 もうそろそろ本日の授業が終わり、寮生たちが帰ってくる時刻だ。
 夕食は全員で食べるのが決まりだから、まずはそこで魔力持ちを探ってみようかな?

「無意識の暴走なら、その子に魔女としての自覚と力の制御を教えるだけで済むんだけどね。……ジーニアのような邪教の魔女が潜伏していたら厄介かも」

 魔女の力は、使い方次第で祝福にも災いにもなる。
 私は自分の力を思い出し、その責任の重さを感じた。

 ヴィレッタの横に移動して窓際に立ち、外を眺める。

 窓の下には広い庭が広がり、寒いこの季節でも花々が手入れされて咲き誇っている。
 王都の街並みの平和な光景も見えた。

「ファインダの土地は、魔女狩りで逃れた人々が多く住まうと耳にした事があります。ローゼもファインダ王国第一王女だったローラ様の血が引き継がれています。ローゼの魔女としての力は、きっとローラ様譲りだったのですね」

「うん、マーガレット叔母様もテレサさんもそうだし、レオノールも多分使えると思う。けど、レオノールは剣が好きで魔法に興味ないからなあ。ただ、あの子は無自覚で暴走はしないと思う。何日間か一緒にいたけど、レオノールは精神が安定しているし、ストレスを溜めないで思いっきり発散するタイプだから」

 廊下から寮生たちの話し声や笑い声が聞こえ始め、夕暮れ時の女子寮特有の賑やかさが感じられた。
 するとドタドタと足音が聞こえ、ドアがノックもされずに開く。

「姉様! ヴィレッタさん! 会えて嬉しいです! どうして女子寮へ⁉ あれですか? 私に会いに来てくれたんですか! 脱走して旅に出る誘いですか⁉ いやあ、お誘いは嬉しいんですけど、今は怪奇現象を解決しないといけませんので残念ですが暫しの猶予を! おお! そうだ! 是非とも、ご一緒に怪奇現象の調査をしてくれませんか!」

 現れたのは予想通りのレオノールだ。
 その目には興奮と喜びが溢れている。

 彼女が部屋に飛び込んでくると、その勢いで窓のカーテンが揺れ、彼女の灰色の髪が風になびいた。

 窓から差し込む夕暮れの柔らかな光が、レオノールの髪と瞳を優しく照らし出す。

 その様子に私はヴィレッタと顔を見合わせて、同時にため息を吐いたのであった。
 
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