初夜で白い結婚を宣言する男は夫ではなく敵です

編端みどり

文字の大きさ
11 / 46

第十一話

しおりを挟む
「しかし、3年もあれば途中で危険性に気がついたり、書類を破棄させようとするのではないか?」

「その可能性は考えてありますわ。ですから、写を作る機械を貸してくださいませ。そのうち書類を破棄しようとしてくるかもしれませんし……」

「あり得るな。うちの泥棒用の金庫に写を入れておこう」

「旦那さまには、わたくしの書類は実家の金庫にあると伝えておきます。わたくしは、密かに写を持っておきます。本物は、ここにない方が良いでしょう。念のためお爺さまに預かって頂きますわ。書類がこの家にあると思われると、狙われる可能性はありますけど……」

「それくらいは問題ない。警備を強化する。しかし今後はミモザが頻繁にこの家に来るのはまずいな」

「ええ、今日は付いていませんが、そのうちわたくしに監視が付くでしょう。お義母様は、なんでもお知りになりたいようですから。初夜の様子まで聞かれた時は、吐き気を抑えるのが大変でしたわ」

「うわっ……ありえない……」

「そうね、息子夫婦の営みの話なんて聞きたくもないわ。もちろん言いたくもないでしょうし」

お母様と、お義姉様がドン引きしています。

「うちはそんな事聞いたりしないから!」

「俺もそんな話はしないから!」

お父様と、お兄様は慌ててフォローしていて、みんなで笑いあっています。

会話の内容はえげつないですが、穏やかな空気が流れています。

これが、わたくしとっての普通の家族です。全てを監視したがったり、わたくしの名前すら呼ばない夫の家はわたくしとはどうしても相容れませんわ。

「よし、今この時をもって、ダンカ侯爵家は我が家の敵だ。使用人、関連する商会、その他関係者にすぐに通知しろ。ミモザ、お祖父様も呼んだから、直接書類を預けなさい。お祖父様から書類を奪える者はそうそう居ないからね」

「はい! お祖父様に会えるのも嬉しいです!」

「表向きは今まで通りにする事。だが集められる情報は全て集めるように全員に通達してくれ。ミモザを蔑ろにしたと言えば、皆怒り狂うだろうから、情報は集まりやすいだろう。うちは男爵家だと舐めておるようだが、あちこちに商売のルートはあるんだ。誰を怒らせたか、身に染みて分かって頂こう。ミモザ、確実に落とすために油断させて奴等の内部情報を集めろ。ネタは多い方が良い」

「かしこまりました。お任せくださいませ」

父の決定に、反対する者は誰もおりませんでした。それから夫が来るまでに、さまざまな事を話し合いました。祖父とも会い、穏やかな時間を過ごせましたわ。

実家との連絡は、わたくしが商会を運営してから変装して客として来店する事にして、しばらくは家族に会わない事にしました。

あまり頻繁に外出すると、すぐに監視が付けられそうだからです。念のために、今後は常に監視が付いているつもりで動く事にします。気持ち悪いですが、3年の我慢です。耐えてみせますわ。

「情報収集は任せろ。格上だろうが関係ない。可愛いミモザ、つらくなったら全てを捨てて逃げてきなさい」

「ありがとう、お祖父様。でもわたくし、頑張ってみますわ」

「ミモザ、商会の職員は公募してくれ。うちの息がかかった者を送り込む。合図はいつも通りだ」

「承知しましたわ。お兄様」

「ミモザ、商会が出来たらすぐに変装して行くからね!」

「お義姉様、お会いできるのを楽しみにしておりますわ」

「ミモザ、敵を舐めてはダメよ。3年だけ、何とか耐えなさい」

「はい! お母様! 敵を侮ったり致しませんわ!」

「ミモザ、あんな男と結婚させてすまない……」

「お父様、泣かないで下さいませ。お父様が結婚誓約書に高額な離婚の慰謝料を設定して下さったおかげで、なんとかなったのですから。それに、この結婚をお断りする術はありませんでしたもの。わたくし、3年したらまた新たな人生を歩みますわ! 今日はお会いできて良かったです。お父様、お母様、お兄様、お義姉様、お祖父様、愛してますわ」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します

スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」 眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。 隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。 エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。 しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。 彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。 「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」 裏切りへのカウントダウンが今、始まる。 スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!

結婚初夜、「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と夫に言われました

ましゅぺちーの
恋愛
侯爵令嬢のアリサは婚約者だった王太子テオドールと結婚した。 ちょうどその半年前、アリサの腹違いの妹のシアは不慮の事故で帰らぬ人となっていた。 王太子が婚約者の妹のシアを愛していたのは周知の事実だった。 そんな彼は、結婚初夜、アリサに冷たく言い放った。 「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と。

拝啓、許婚様。私は貴方のことが大嫌いでした

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【ある日僕の元に許婚から恋文ではなく、婚約破棄の手紙が届けられた】 僕には子供の頃から決められている許婚がいた。けれどお互い特に相手のことが好きと言うわけでもなく、月に2度の『デート』と言う名目の顔合わせをするだけの間柄だった。そんなある日僕の元に許婚から手紙が届いた。そこに記されていた内容は婚約破棄を告げる内容だった。あまりにも理不尽な内容に不服を抱いた僕は、逆に彼女を遣り込める計画を立てて許婚の元へ向かった――。 ※他サイトでも投稿中

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

地獄の業火に焚べるのは……

緑谷めい
恋愛
 伯爵家令嬢アネットは、17歳の時に2つ年上のボルテール侯爵家の長男ジェルマンに嫁いだ。親の決めた政略結婚ではあったが、小さい頃から婚約者だった二人は仲の良い幼馴染だった。表面上は何の問題もなく穏やかな結婚生活が始まる――けれど、ジェルマンには秘密の愛人がいた。学生時代からの平民の恋人サラとの関係が続いていたのである。  やがてアネットは男女の双子を出産した。「ディオン」と名付けられた男児はジェルマンそっくりで、「マドレーヌ」と名付けられた女児はアネットによく似ていた。  ※ 全5話完結予定  

結婚記念日をスルーされたので、離婚しても良いですか?

秋月一花
恋愛
 本日、結婚記念日を迎えた。三周年のお祝いに、料理長が腕を振るってくれた。私は夫であるマハロを待っていた。……いつまで経っても帰ってこない、彼を。  ……結婚記念日を過ぎてから帰って来た彼は、私との結婚記念日を覚えていないようだった。身体が弱いという幼馴染の見舞いに行って、そのまま食事をして戻って来たみたいだ。  彼と結婚してからずっとそう。私がデートをしてみたい、と言えば了承してくれるものの、当日幼馴染の女性が体調を崩して「後で埋め合わせするから」と彼女の元へ向かってしまう。埋め合わせなんて、この三年一度もされたことがありませんが?  もう我慢の限界というものです。 「離婚してください」 「一体何を言っているんだ、君は……そんなこと、出来るはずないだろう?」  白い結婚のため、可能ですよ? 知らないのですか?  あなたと離婚して、私は第二の人生を歩みます。 ※カクヨム様にも投稿しています。

「妹の方が可愛い」と不倫夫に捨てられた私。どうぞ借金まみれの実家ごと引き取って。私が肩代わりしていた負債、すべてお二人に引き継いでおきました

唯崎りいち
恋愛
「お前より妹の方が可愛い」 不倫した夫は私を追い出し、略奪した妹と笑った。 どうぞ、その「可愛い妹」と地獄までお幸せに。 私が肩代わりしていた実家と店の多額の借金、すべてお二人に引き継いでおきましたから。 「財布」を失った元夫と、逃げ場を失った妹。 身の丈に合わない贅沢を望んだ寄生虫たちの、惨めな末路を特等席で眺めさせていただきます。

愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました

由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。 尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。 けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。 そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。 再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。 一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。 “尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。 静かに離婚しただけなのに、 なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。

処理中です...