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第三十五話

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あれから、すぐに白い結婚は証明されて、離婚は成立しました。書類も提出したら、なんて非道な契約をするんだと同情されました。

わたくしも夫を嵌めるつもりだったと告白しましたが、こんなの嵌めるうちに入らない。しかも、向こうから言い出したんだから自業自得だと言われました。なんだか全面的にわたくしを肯定して下さったので、いたたまれない気持ちになりましたわ。

女神像の前で、初夜に言われた事や今までの仕打ちを告白しました。夫以外に愛する人が居たのかと聞かれましたが、特に恋愛関係になった人は居なかったので居ないと答えました。当然、嘘はないと認定されました。

わたくしは、夫に尽くそうとしたが蔑ろにされ、それでも婚姻中は浮気も不倫もしなかった貞淑な妻。アスター様は、初夜で妻を侮辱して、浮気した男となりました。

アスター様は、学校で非常勤の講師をしていたのですが、あっさりクビになりました。倫理観のない人間に講師は出来ないとの事です。ここ半年ほどはローザ様にくっついていて、仕事をしておりませんでしたから、今回の事がなくてもそのうちクビだったと思います。

社交も生涯出来なくなりました。

ですが、その知らせをアスター様が聞く事はありませんでした。

アスター様は、ローザ様に離婚を突きつけられ、激昂してローザ様を刺したそうです。ローザ様は命は取り留めましたが、未だに目覚めません。

アスター様は妻の殺害未遂で逮捕されました。裁判の判決はまだですが、既に正常な判断能力を失っておられます。ずっとローザ様の名を呟いておられるそうです。

侯爵家は、取り潰しになりました。違法賭博で捕まったアスター様のご両親は、生涯幽閉だそうです。

色々ありましたが、実家に戻ってからは穏やかな時間を過ごしています。

あっという間に、離婚をしてから1年経ちました。

わたくしはお兄様の商会で働いております。やはり仕事は楽しいです。晴れて白い結婚が証明されましたので、すぐに嫁ぐ事も出来ますし、何度かプロポーズもされました。

ですが、わたくしが結婚している時にプロポーズしてきた方ばかりでしたので、お断りしました。

お父様とお兄様にもご相談しましたが、今後は政略結婚をしなくて良いと言われました。お断りした方も、全員問題ないそうです。

しばらくは傷心の妹をそっとしておいてくれと、お兄様が公言して下さいました。それから、わたくしに結婚の話は来ません。

お義姉様も、お母様もわたくしを甘やかしてくれます。

家はとても居心地が良くて、ずっと居たいと思ってしまいます。でも、そろそろこれからの事を考えないといけません。
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