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第二十五話【アルベルト視点】
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「何故だ……何故だ何故だ何故だ……」
僕は、正しかった筈だ。なのになんで、こんな事になってるんだ?
きっかけは2年前だ。
サブリナが、娼館で客を刺したと逮捕された。
逮捕されたら基本的に離婚になるのは、平民も変わらない。だが、お互い支え合う気があるのなら離婚は回避出来る。
今回は、僕が希望すれば離婚にはならないと騎士団から説明があった。
わざわざ、団長が来るなんてやはり私は平民とは違うのだと鼻高々だった。
「以上の通り、アルベルトさんとサブリナさんの離婚は成立します。ですが、アルベルトさんが異議を申し立てれば婚姻は継続されます。如何致しますか?」
「そんなもの、当然離婚だ! さすがに王太子殿下も犯罪者になった我々の婚姻継続など望まないだろう!」
「そうですね。アルベルトさんがそう仰るなら、その方がよろしいでしょう。では、今後アルベルトさんとサブリナさんは他人です。アルベルトさんがサブリナさんを支える必要はありません。もちろん、逆も然りです」
「あんな犯罪者と結婚していたなど汚点だ! いっそ婚姻をした事すら無かった事にしたい!」
「ああ、相手が犯罪者になってしまったなら可能ですよ」
「……なんだと?」
「婚姻無効を申し立てますか?」
「もちろんだ!」
こうして、私とサブリナの結婚は無かった事になった。
「ふん! あの女、全く役に立たん! 迷惑ばかりかけやがって! だがスッキリしたな。いっそ宿屋のミィちゃんと結婚するか」
僕は、サブリナが働いている間に仲良くなった宿屋のミィちゃんを口説こうと考えた。彼女は、平民らしくガサツだが、胸が大きいのが良い。だが、せっかく僕が口説いてやったのに、彼女は冷たく僕を追い出した。
「アルベルトさん、今後出禁だから」
「は?! 何故だ?!」
「アタシ、不誠実な男が大っ嫌いなの。アルベルトさんは、お金払いも良かったし、サブリナさんの旦那様だし、世間話くらいはお相手してあげてたけど、今回の事で顔も見たくなくなったわ。お金も、なくなるでしょうしね。だって全部サブリナさんが稼いでたんでしょ?」
「……それは」
「資産家って言う割にサブリナさんはいつも顔色悪いし、おかしいなって思ってたのよね。もう、貴方は街中の噂だよ」
「ま、街中の噂って……?」
「アルベルトさんは、必死で家計を支えてた妻を捨てる鬼畜だって。サブリナさんは頭良かったし、お小遣い程度のお金で色んなお店の経営改善してくれてたの。だから、アルベルトさんにもみんな親切だったのよ。それなのに、サブリナさんを娼館で働かせるなんて最低。アルベルトさんが働けって強要したらしいじゃない」
「ま、待ってくれ! サブリナが娼館で働いてたなんて知らなかったんだ! 犯罪を犯したら離婚になるのは普通だろう?!」
サブリナが、娼館に行く時は別人のような服とメイクに途中で変えさせている。バレるなんてヘマはする訳ない。それに、サブリナも娼館に行く時は貴族の時の自分で行くと言っていた。近所の人とは仲良くする方が都合が良いと……。だが、演技にしては楽しそうだったな。まさか、平民の時の姿が本来のサブリナなのか?
娼館に行く時のサブリナは、以前よりも露出も多く美しい。変装の意味もあり、全部私が見立てていたんだ。街中に居る時の地味なサブリナと結びつける奴は居ないと思っていたのに、何故バレている。
「娼館の主人が言ってたんだから、違うなら早く娼館行って噂止めてきたらどう? 娼館も騙された被害者だって騒いでるわ。元貴族のアルベルトさんの紹介だし、優遇してたのにって。まさか自分の妻を連れてくるなんて思わなかったってね。支配人はサブリナさんの事知らなかったんですって。娼婦は知ってた子も居るし、支配人に伝えたって総スカンよ。あの娼館、もう潰れるかもね。ついでに言うと、平民は犯罪を犯したら離婚になる家庭なんて僅かよ。みんな、罪を償いながら家族の帰りを待つわ。多少近所に冷たくされてもね。離婚はよほど破綻してた家庭だけ。よほど極悪な犯罪を犯したならともかく、今回は先にサブリナさんが刺されそうになって、身を守ろうとして相手を刺したって聞いたわよ。それで離婚する? 他の人に罪を擦りつけた、サブリナさんは悪いけどさ」
「そ、そうだ! サブリナが悪い!」
「ま、それはそうね。ちなみにアルベルトさんは捕まってからサブリナさんに会いに行ったの?」
「そ、それは……」
「サイテー! サブリナさんって家事も全部してたわよね。手荒れに悩んでたもの。さらに娼館で働かせるなんて……よっぽど追い詰められてたんだわ……それなのに、離婚になったからって嬉しそうにアタシを口説くなんてドクズよ! 二度と来るな! 顔も見たくないわ!」
そう言われて追い返されてから、近所に噂が回り、食べ物を買うにも嫌な顔をされるようになった。
仲良くしていた女の子も近づいただけで逃げていく。
そうなると人と会いたくなくて、だんだん家に篭るようになり、家で鬱々と過ごす事が増えた。
僕は、正しかった筈だ。なのになんで、こんな事になってるんだ?
きっかけは2年前だ。
サブリナが、娼館で客を刺したと逮捕された。
逮捕されたら基本的に離婚になるのは、平民も変わらない。だが、お互い支え合う気があるのなら離婚は回避出来る。
今回は、僕が希望すれば離婚にはならないと騎士団から説明があった。
わざわざ、団長が来るなんてやはり私は平民とは違うのだと鼻高々だった。
「以上の通り、アルベルトさんとサブリナさんの離婚は成立します。ですが、アルベルトさんが異議を申し立てれば婚姻は継続されます。如何致しますか?」
「そんなもの、当然離婚だ! さすがに王太子殿下も犯罪者になった我々の婚姻継続など望まないだろう!」
「そうですね。アルベルトさんがそう仰るなら、その方がよろしいでしょう。では、今後アルベルトさんとサブリナさんは他人です。アルベルトさんがサブリナさんを支える必要はありません。もちろん、逆も然りです」
「あんな犯罪者と結婚していたなど汚点だ! いっそ婚姻をした事すら無かった事にしたい!」
「ああ、相手が犯罪者になってしまったなら可能ですよ」
「……なんだと?」
「婚姻無効を申し立てますか?」
「もちろんだ!」
こうして、私とサブリナの結婚は無かった事になった。
「ふん! あの女、全く役に立たん! 迷惑ばかりかけやがって! だがスッキリしたな。いっそ宿屋のミィちゃんと結婚するか」
僕は、サブリナが働いている間に仲良くなった宿屋のミィちゃんを口説こうと考えた。彼女は、平民らしくガサツだが、胸が大きいのが良い。だが、せっかく僕が口説いてやったのに、彼女は冷たく僕を追い出した。
「アルベルトさん、今後出禁だから」
「は?! 何故だ?!」
「アタシ、不誠実な男が大っ嫌いなの。アルベルトさんは、お金払いも良かったし、サブリナさんの旦那様だし、世間話くらいはお相手してあげてたけど、今回の事で顔も見たくなくなったわ。お金も、なくなるでしょうしね。だって全部サブリナさんが稼いでたんでしょ?」
「……それは」
「資産家って言う割にサブリナさんはいつも顔色悪いし、おかしいなって思ってたのよね。もう、貴方は街中の噂だよ」
「ま、街中の噂って……?」
「アルベルトさんは、必死で家計を支えてた妻を捨てる鬼畜だって。サブリナさんは頭良かったし、お小遣い程度のお金で色んなお店の経営改善してくれてたの。だから、アルベルトさんにもみんな親切だったのよ。それなのに、サブリナさんを娼館で働かせるなんて最低。アルベルトさんが働けって強要したらしいじゃない」
「ま、待ってくれ! サブリナが娼館で働いてたなんて知らなかったんだ! 犯罪を犯したら離婚になるのは普通だろう?!」
サブリナが、娼館に行く時は別人のような服とメイクに途中で変えさせている。バレるなんてヘマはする訳ない。それに、サブリナも娼館に行く時は貴族の時の自分で行くと言っていた。近所の人とは仲良くする方が都合が良いと……。だが、演技にしては楽しそうだったな。まさか、平民の時の姿が本来のサブリナなのか?
娼館に行く時のサブリナは、以前よりも露出も多く美しい。変装の意味もあり、全部私が見立てていたんだ。街中に居る時の地味なサブリナと結びつける奴は居ないと思っていたのに、何故バレている。
「娼館の主人が言ってたんだから、違うなら早く娼館行って噂止めてきたらどう? 娼館も騙された被害者だって騒いでるわ。元貴族のアルベルトさんの紹介だし、優遇してたのにって。まさか自分の妻を連れてくるなんて思わなかったってね。支配人はサブリナさんの事知らなかったんですって。娼婦は知ってた子も居るし、支配人に伝えたって総スカンよ。あの娼館、もう潰れるかもね。ついでに言うと、平民は犯罪を犯したら離婚になる家庭なんて僅かよ。みんな、罪を償いながら家族の帰りを待つわ。多少近所に冷たくされてもね。離婚はよほど破綻してた家庭だけ。よほど極悪な犯罪を犯したならともかく、今回は先にサブリナさんが刺されそうになって、身を守ろうとして相手を刺したって聞いたわよ。それで離婚する? 他の人に罪を擦りつけた、サブリナさんは悪いけどさ」
「そ、そうだ! サブリナが悪い!」
「ま、それはそうね。ちなみにアルベルトさんは捕まってからサブリナさんに会いに行ったの?」
「そ、それは……」
「サイテー! サブリナさんって家事も全部してたわよね。手荒れに悩んでたもの。さらに娼館で働かせるなんて……よっぽど追い詰められてたんだわ……それなのに、離婚になったからって嬉しそうにアタシを口説くなんてドクズよ! 二度と来るな! 顔も見たくないわ!」
そう言われて追い返されてから、近所に噂が回り、食べ物を買うにも嫌な顔をされるようになった。
仲良くしていた女の子も近づいただけで逃げていく。
そうなると人と会いたくなくて、だんだん家に篭るようになり、家で鬱々と過ごす事が増えた。
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