16 / 66
16.暗殺者は出発を急ぐ
しおりを挟む
「さっき聞いたの。ジルが暗殺をするふりをしてみんなを保護していたって」
「なんで言うんですか?!」
「ジルが姫様に王妃の言うままに暗殺を繰り返した男だと誤解されたままではいけないと思ってな……しかし良かったな。姫様はジルと生きたいとまで仰せになったぞ。国王陛下に報告せねば……」
そう言って、アーテルはまた泣き出した。
「しなくていいですよ! あと、泣かなくていいです。さっさと涙を拭いてくださいよ!」
「いや、これは重大事項だ。必ず報告する」
アーテルはジルから受け取ったハンカチで涙を拭い、クリステルに目配せをした。クリステルは慌てて、父からの手紙を暖炉に放り込んだ。
「ん? クリス、それは何?」
「お父様からの手紙よ。読んだら破棄しなきゃいけないから」
クリステルは、ジルに手紙の内容を知られないように平静を装った。しかし、ジルはクリステルの僅かな変化に気が付いた。
「なんか、困る事書いてあった?」
「い、いいえ! 大丈夫よ!」
ジルは、クリステルの目をじっと見つめて再度聞いた。
「オレに言いたくないことが書かれてた?」
「そんな事……」
「嘘だね。おおかた親父や兄貴の事でも書かれてたんだろ? あいつらもう処刑された?」
「ジル……どうして分かるの……?」
「姫様、そこは嘘でも誤魔化すところですぞ。ジルに気遣いは不要でしたな。結論から言えばまだ生きてるが、取り調べが済み次第解放され、そのまま我々が始末することになったぞ」
「あー……やっぱそうなるか。王妃の実家に戻られると厄介だもんね。城の内部情報もある程度知ってるし、かといってこのまま雇う訳にもいかないし。あいつらオレの事恨んでるだろうなぁ。ねぇ、王妃はどうなるの?」
「証拠は着々と揃っているからな。おそらく離婚程度では済まないだろう。場合によっては、貴族への見せしめとして公開処刑になるかもしれぬ」
「王子は?」
「今のところクリステル様の暗殺に関わった証拠は挙がっていない。だが、ジルが用意していた偽の依頼書を破棄したのはヒュー王子だ」
「ばりばり関わってんじゃん」
「だが、それは状況証拠なのだ。母を守るために疑わしいものを処分したと言われたらどうなる?」
「そっか……王妃の証拠は大量だけど、ヒュー王子の証拠はあんまりないのか」
「そういった意味では、ヒュー王子こそ厄介だ。警戒するに越したことはない。第一王子なだけあって、権力はあるからな。クリステル様の死に王子が疑問を持てば、簡単に生きている事を調べ上げられる」
「王子の手駒、増えてきたもんねぇ」
「うむ、少し癇癪持ちではあるが、人心掌握術は国王陛下以上だからな。影も何人かはヒュー王子寄りになってきている。実際、ヒュー王子が依頼書を破棄した時に付いた影の数名は、ヒュー王子は何もしてなかったと報告してきた。ジルが生きている事を知っているのは、私とマリアだけなのが幸いだな」
「なるほどね。オレの事知ってるのは、国王陛下の忠臣だけか」
「そうだ。だから早めに王都を出た方が良い。クリステル様を守りたいなら、今の王都は危険だ」
「分かった。クリス、すぐに出発しようと思うんだけど、良いかな?」
「さっき少し寝たし大丈夫よ! でも、護衛の都合は大丈夫なの?」
「うん、依頼したらすぐにでも出発したいって言ってたから。荷物の都合もあるし、一旦連れと確認するって言って待機してもらってる。だから、馬車と荷物持って行けばすぐに出れるよ」
「どこに行くつもりだ?」
「とりあえず港町のポッタかなぁ。悩んでるとこ」
「そうか、気を付けて行けよ。姫君は旅に慣れておられない。無理はさせるなよ」
「オレがそんな事すると思う?」
「愚問だったな。クリステル様、どうかお幸せに」
「ありがとう。お父様によろしくね」
「なんで言うんですか?!」
「ジルが姫様に王妃の言うままに暗殺を繰り返した男だと誤解されたままではいけないと思ってな……しかし良かったな。姫様はジルと生きたいとまで仰せになったぞ。国王陛下に報告せねば……」
そう言って、アーテルはまた泣き出した。
「しなくていいですよ! あと、泣かなくていいです。さっさと涙を拭いてくださいよ!」
「いや、これは重大事項だ。必ず報告する」
アーテルはジルから受け取ったハンカチで涙を拭い、クリステルに目配せをした。クリステルは慌てて、父からの手紙を暖炉に放り込んだ。
「ん? クリス、それは何?」
「お父様からの手紙よ。読んだら破棄しなきゃいけないから」
クリステルは、ジルに手紙の内容を知られないように平静を装った。しかし、ジルはクリステルの僅かな変化に気が付いた。
「なんか、困る事書いてあった?」
「い、いいえ! 大丈夫よ!」
ジルは、クリステルの目をじっと見つめて再度聞いた。
「オレに言いたくないことが書かれてた?」
「そんな事……」
「嘘だね。おおかた親父や兄貴の事でも書かれてたんだろ? あいつらもう処刑された?」
「ジル……どうして分かるの……?」
「姫様、そこは嘘でも誤魔化すところですぞ。ジルに気遣いは不要でしたな。結論から言えばまだ生きてるが、取り調べが済み次第解放され、そのまま我々が始末することになったぞ」
「あー……やっぱそうなるか。王妃の実家に戻られると厄介だもんね。城の内部情報もある程度知ってるし、かといってこのまま雇う訳にもいかないし。あいつらオレの事恨んでるだろうなぁ。ねぇ、王妃はどうなるの?」
「証拠は着々と揃っているからな。おそらく離婚程度では済まないだろう。場合によっては、貴族への見せしめとして公開処刑になるかもしれぬ」
「王子は?」
「今のところクリステル様の暗殺に関わった証拠は挙がっていない。だが、ジルが用意していた偽の依頼書を破棄したのはヒュー王子だ」
「ばりばり関わってんじゃん」
「だが、それは状況証拠なのだ。母を守るために疑わしいものを処分したと言われたらどうなる?」
「そっか……王妃の証拠は大量だけど、ヒュー王子の証拠はあんまりないのか」
「そういった意味では、ヒュー王子こそ厄介だ。警戒するに越したことはない。第一王子なだけあって、権力はあるからな。クリステル様の死に王子が疑問を持てば、簡単に生きている事を調べ上げられる」
「王子の手駒、増えてきたもんねぇ」
「うむ、少し癇癪持ちではあるが、人心掌握術は国王陛下以上だからな。影も何人かはヒュー王子寄りになってきている。実際、ヒュー王子が依頼書を破棄した時に付いた影の数名は、ヒュー王子は何もしてなかったと報告してきた。ジルが生きている事を知っているのは、私とマリアだけなのが幸いだな」
「なるほどね。オレの事知ってるのは、国王陛下の忠臣だけか」
「そうだ。だから早めに王都を出た方が良い。クリステル様を守りたいなら、今の王都は危険だ」
「分かった。クリス、すぐに出発しようと思うんだけど、良いかな?」
「さっき少し寝たし大丈夫よ! でも、護衛の都合は大丈夫なの?」
「うん、依頼したらすぐにでも出発したいって言ってたから。荷物の都合もあるし、一旦連れと確認するって言って待機してもらってる。だから、馬車と荷物持って行けばすぐに出れるよ」
「どこに行くつもりだ?」
「とりあえず港町のポッタかなぁ。悩んでるとこ」
「そうか、気を付けて行けよ。姫君は旅に慣れておられない。無理はさせるなよ」
「オレがそんな事すると思う?」
「愚問だったな。クリステル様、どうかお幸せに」
「ありがとう。お父様によろしくね」
6
あなたにおすすめの小説
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
虐げられ続けてきたお嬢様、全てを踏み台に幸せになることにしました。
ラディ
恋愛
一つ違いの姉と比べられる為に、愚かであることを強制され矯正されて育った妹。
家族からだけではなく、侍女や使用人からも虐げられ弄ばれ続けてきた。
劣悪こそが彼女と標準となっていたある日。
一人の男が現れる。
彼女の人生は彼の登場により一変する。
この機を逃さぬよう、彼女は。
幸せになることに、決めた。
■完結しました! 現在はルビ振りを調整中です!
■第14回恋愛小説大賞99位でした! 応援ありがとうございました!
■感想や御要望などお気軽にどうぞ!
■エールやいいねも励みになります!
■こちらの他にいくつか話を書いてますのでよろしければ、登録コンテンツから是非に。
※一部サブタイトルが文字化けで表示されているのは演出上の仕様です。お使いの端末、表示されているページは正常です。
幼馴染以上、婚約者未満の王子と侯爵令嬢の関係
紫月 由良
恋愛
第二王子エインの婚約者は、貴族には珍しい赤茶色の髪を持つ侯爵令嬢のディアドラ。だが彼女の冷たい瞳と無口な性格が気に入らず、エインは婚約者の義兄フィオンとともに彼女を疎んじていた。そんな中、ディアドラが学院内で留学してきた男子学生たちと親しくしているという噂が広まる。注意しに行ったエインは彼女の見知らぬ一面に心を乱された。しかし婚約者の異母兄妹たちの思惑が問題を引き起こして……。
顔と頭が良く性格が悪い男の失恋ストーリー。
※流血シーンがあります。(各話の前書きに注意書き+次話前書きにあらすじがあるので、飛ばし読み可能です)
婚約破棄までの168時間 悪役令嬢は断罪を回避したいだけなのに、無関心王子が突然溺愛してきて困惑しています
みゅー
恋愛
アレクサンドラ・デュカス公爵令嬢は舞踏会で、ある男爵令嬢から突然『悪役令嬢』として断罪されてしまう。
そして身に覚えのない罪を着せられ、婚約者である王太子殿下には婚約の破棄を言い渡された。
それでもアレクサンドラは、いつか無実を証明できる日が来ると信じて屈辱に耐えていた。
だが、無情にもそれを証明するまもなく男爵令嬢の手にかかり最悪の最期を迎えることになった。
ところが目覚めると自室のベッドの上におり、断罪されたはずの舞踏会から1週間前に戻っていた。
アレクサンドラにとって断罪される日まではたったの一週間しか残されていない。
こうして、その一週間でアレクサンドラは自身の身の潔白を証明するため奮闘することになるのだが……。
甘めな話になるのは20話以降です。
悪役令嬢の妹君。〜冤罪で追放された落ちこぼれ令嬢はワケあり少年伯に溺愛される〜
見丘ユタ
恋愛
意地悪な双子の姉に聖女迫害の罪をなすりつけられた伯爵令嬢リーゼロッテは、罰として追放同然の扱いを受け、偏屈な辺境伯ユリウスの家事使用人として過ごすことになる。
ユリウスに仕えた使用人は、十日もたずに次々と辞めさせられるという噂に、家族や婚約者に捨てられ他に行き場のない彼女は戦々恐々とするが……彼女を出迎えたのは自称当主の少年だった。
想像とは全く違う毎日にリーゼロッテは戸惑う。「なんだか大切にされていませんか……?」と。
妹のために愛の無い結婚をすることになりました
バンブー竹田
恋愛
「エミリー、君との婚約は破棄することに決まった」
愛するラルフからの唐突な通告に私は言葉を失ってしまった。
婚約が破棄されたことはもちろんショックだけど、それだけじゃない。
私とラルフの結婚は妹のシエルの命がかかったものでもあったから・・・。
落ちこむ私のもとに『アレン』という大金持ちの平民からの縁談が舞い込んできた。
思い悩んだ末、私は会ったこともない殿方と結婚することに決めた。
毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。
克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。
【完結】処刑後転生した悪女は、狼男と山奥でスローライフを満喫するようです。〜皇帝陛下、今更愛に気づいてももう遅い〜
二位関りをん
恋愛
ナターシャは皇太子の妃だったが、数々の悪逆な行為が皇帝と皇太子にバレて火あぶりの刑となった。
処刑後、農民の娘に転生した彼女は山の中をさまよっていると、狼男のリークと出会う。
口数は少ないが親切なリークとのほのぼのスローライフを満喫するナターシャだったが、ナターシャへかつての皇太子で今は皇帝に即位したキムの魔の手が迫り来る…
※表紙はaiartで生成したものを使用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる