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17.王女は溺愛されている事を知る
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ジルは、すぐにクリステルを冒険者と引き合わせた。
「はじめまして、リーダーのレミィです。よろしくお願いします」
女性3名、男性1名の冒険者パーティーを雇ったジルは、馬車の操縦等の説明を始めた。
「クリスです。よろしくお願いします」
「行き先はさっき言った通り、シュラブの街だ。大丈夫か?」
「はい。私達はシュラブにある遺跡に行きたいのです。護衛の仕事があれば稼げますし助かります」
クリステルは、先程アーテルに伝えた地名と違う事に気が付いたが、ジルが目配せをしたので黙っている事にした。
「シュラブまで普通なら徒歩で4日くらいだけど、妻が少し身体が弱くてな。悪いけど1週間くらいはかかると思う。その分依頼料は上乗せするから」
ジルは、クリステルと夫婦だと冒険者達に説明していた。クリステルもジルから聞いていたので分かっていたが、いざジルに妻だと言われると恥ずかしくて顔が赤くなってしまった。
「急いでる訳じゃねぇし、金が多く貰えるなら大歓迎だぜ」
冒険者パーティーで唯一の男性で、盗賊のガウスはそう言って笑った。ガウスは、身体が大きく顔や身体には無数の傷があった。溢れる自信は、冒険者として実績を積んでいる事を伺わせる。他のメンバーも同様だった。戦士が2名、盗賊が1名、狩人が1名という典型的な冒険者パーティーで、全員それなりに腕が立つのは素人であるクリステルでも一目で分かった。
「え、出来たら早く出発したいんじゃなかったのですか?」
「……お恥ずかしながら、金欠で宿代が無いのです。ジルさんが、もし明日出発になっても宿代を持つと仰って下さったので、仕事を請けました」
「けど、早く出発した方が良いぜ。さっき酒場に行ったら、姫さんが暗殺されたんだって。まぁ、犯人はもう捕まって国王自ら処刑したらしいけど。ただ、喪に服すからしばらく市民の購買意欲は落ちる。だから街を出ようとする商人が増えるし、関所は混むぜ」
「そうか、ならさっさと出よう。用意は良いか?」
「はい、お待ちしている間に準備は整えておきましたので」
「クリスは馬車に乗ってくれ。御者は得意な奴が交代で頼む。スピードは遅めだ」
ジルは手早く冒険者に指示を出し、クリステルを抱えて馬車に乗せた。馬車は小さな二頭立ての幌馬車だ。仕入れた商品を載せても、3名程度は馬車に乗れる。
「ジルは?」
「ちょっと周りを警戒する。後で乗るから」
不安そうなクリステルの頭を撫でて、クリステルに毛布を渡したジルは、レミィ達と馬車の周りを歩き出した。
御者はガウスが行い、ジルの指示通りゆっくりとした速度で進んで行く。
「いつもより関所に人が多いな。これからもっと混むぜ」
「関所は、代表が行けば良いからオレが行く。レミィも来てくれ」
「わかりました」
クリステルは、ジルがレミィと関所に行くのを黙って見ていたが、内心は面白くなかった。
「奥さん、何むくれてんだ?」
「むくれてなどいません!」
「むくれてんじゃん。なぁ?」
「可愛いですね」
「ほんとだねー。こんな美人の奥さんじゃジルさんが溺愛するのも分かるわ」
「……へ?」
「クリスさん、明らかにジルさんから溺愛されてんじゃん。馬車のスピードとかもだけど、そもそも私らに依頼書来た時も、条件に女性が多いパーティーが良いって書いてあったよ。だから、どんなエロオヤジが依頼人かと思ったら、単に奥さんに男が近寄るのが嫌だっただけって凄いよね」
「俺、何回も奥さんと2人になるなって釘を刺された」
「私らにも言ってたよ。ガウスが奥さんに手を出さないように見張れって」
「マジか?! 俺、信用されてねぇ!」
「何度か依頼したならともかく、初対面だしね。女が多いパーティーで上手くやってるなら大丈夫だろうとは言ってたから、ガウスを疑ってる訳ではないと思うよ。けど、こんな美人な奥さんなら溺愛するの分かる!」
「だよねぇ、クリスさんホントに綺麗だよね。まるでお姫様みたい」
「分かるわぁ! ジルさんと並ぶと絵画みたいだよね!」
クリステルは、今まで容姿を褒められた事など無かったので、冒険者達の賞賛に戸惑っていた。くすぐったい気持ちをどう処理すれば良いか分からず、混乱し始めたところに、ジルとレミィが戻って来た。
「ただいま。クリス、なんで顔赤いんだ?」
「じ、ジルぅ……」
恥ずかしくなったクリスはジルに縋り付いた。
「く、クリス?! どうした?!」
「お熱いねぇ、ジルさんも馬車に乗ったらどうだ?」
「そーそー! クリスさんも寂しがってたよ。レミィに嫉妬してたし」
「なっ……嫉妬って……」
「へぇ、クリス、そうなのか?」
クリステルの手を握り、意地悪そうに笑うジルは美しく、冒険者達は息を呑んだ。
「はじめまして、リーダーのレミィです。よろしくお願いします」
女性3名、男性1名の冒険者パーティーを雇ったジルは、馬車の操縦等の説明を始めた。
「クリスです。よろしくお願いします」
「行き先はさっき言った通り、シュラブの街だ。大丈夫か?」
「はい。私達はシュラブにある遺跡に行きたいのです。護衛の仕事があれば稼げますし助かります」
クリステルは、先程アーテルに伝えた地名と違う事に気が付いたが、ジルが目配せをしたので黙っている事にした。
「シュラブまで普通なら徒歩で4日くらいだけど、妻が少し身体が弱くてな。悪いけど1週間くらいはかかると思う。その分依頼料は上乗せするから」
ジルは、クリステルと夫婦だと冒険者達に説明していた。クリステルもジルから聞いていたので分かっていたが、いざジルに妻だと言われると恥ずかしくて顔が赤くなってしまった。
「急いでる訳じゃねぇし、金が多く貰えるなら大歓迎だぜ」
冒険者パーティーで唯一の男性で、盗賊のガウスはそう言って笑った。ガウスは、身体が大きく顔や身体には無数の傷があった。溢れる自信は、冒険者として実績を積んでいる事を伺わせる。他のメンバーも同様だった。戦士が2名、盗賊が1名、狩人が1名という典型的な冒険者パーティーで、全員それなりに腕が立つのは素人であるクリステルでも一目で分かった。
「え、出来たら早く出発したいんじゃなかったのですか?」
「……お恥ずかしながら、金欠で宿代が無いのです。ジルさんが、もし明日出発になっても宿代を持つと仰って下さったので、仕事を請けました」
「けど、早く出発した方が良いぜ。さっき酒場に行ったら、姫さんが暗殺されたんだって。まぁ、犯人はもう捕まって国王自ら処刑したらしいけど。ただ、喪に服すからしばらく市民の購買意欲は落ちる。だから街を出ようとする商人が増えるし、関所は混むぜ」
「そうか、ならさっさと出よう。用意は良いか?」
「はい、お待ちしている間に準備は整えておきましたので」
「クリスは馬車に乗ってくれ。御者は得意な奴が交代で頼む。スピードは遅めだ」
ジルは手早く冒険者に指示を出し、クリステルを抱えて馬車に乗せた。馬車は小さな二頭立ての幌馬車だ。仕入れた商品を載せても、3名程度は馬車に乗れる。
「ジルは?」
「ちょっと周りを警戒する。後で乗るから」
不安そうなクリステルの頭を撫でて、クリステルに毛布を渡したジルは、レミィ達と馬車の周りを歩き出した。
御者はガウスが行い、ジルの指示通りゆっくりとした速度で進んで行く。
「いつもより関所に人が多いな。これからもっと混むぜ」
「関所は、代表が行けば良いからオレが行く。レミィも来てくれ」
「わかりました」
クリステルは、ジルがレミィと関所に行くのを黙って見ていたが、内心は面白くなかった。
「奥さん、何むくれてんだ?」
「むくれてなどいません!」
「むくれてんじゃん。なぁ?」
「可愛いですね」
「ほんとだねー。こんな美人の奥さんじゃジルさんが溺愛するのも分かるわ」
「……へ?」
「クリスさん、明らかにジルさんから溺愛されてんじゃん。馬車のスピードとかもだけど、そもそも私らに依頼書来た時も、条件に女性が多いパーティーが良いって書いてあったよ。だから、どんなエロオヤジが依頼人かと思ったら、単に奥さんに男が近寄るのが嫌だっただけって凄いよね」
「俺、何回も奥さんと2人になるなって釘を刺された」
「私らにも言ってたよ。ガウスが奥さんに手を出さないように見張れって」
「マジか?! 俺、信用されてねぇ!」
「何度か依頼したならともかく、初対面だしね。女が多いパーティーで上手くやってるなら大丈夫だろうとは言ってたから、ガウスを疑ってる訳ではないと思うよ。けど、こんな美人な奥さんなら溺愛するの分かる!」
「だよねぇ、クリスさんホントに綺麗だよね。まるでお姫様みたい」
「分かるわぁ! ジルさんと並ぶと絵画みたいだよね!」
クリステルは、今まで容姿を褒められた事など無かったので、冒険者達の賞賛に戸惑っていた。くすぐったい気持ちをどう処理すれば良いか分からず、混乱し始めたところに、ジルとレミィが戻って来た。
「ただいま。クリス、なんで顔赤いんだ?」
「じ、ジルぅ……」
恥ずかしくなったクリスはジルに縋り付いた。
「く、クリス?! どうした?!」
「お熱いねぇ、ジルさんも馬車に乗ったらどうだ?」
「そーそー! クリスさんも寂しがってたよ。レミィに嫉妬してたし」
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「へぇ、クリス、そうなのか?」
クリステルの手を握り、意地悪そうに笑うジルは美しく、冒険者達は息を呑んだ。
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