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18.冒険者達は噂する
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王都を出てしばらくは、多くの馬車が街道を行き交う。やがて、それぞれの行き先に応じて道が別れ、街道を行く馬車は減っていく。
歩みの遅い馬車は次々と他の馬車に抜かれ、やがて周りに馬車は見えなくなった。
「なぁ、クリス、どうしたんだ?」
ジルは馬車に乗り、クリステルの目をじっと見つめていた。気を遣った冒険者達は会話が聞こえない位置で護衛を行う。
既に冒険者の技能を見極め、昼間なら護衛を任せても問題ないと思ったジルは、遠慮なくクリステルを愛でていた。本気を出したジルは色気が溢れており、クリステルは真っ赤な顔で固まっている。
会話が聞こえない位置に居るとは言え、護衛対象から目を離す訳にいかない冒険者達は、絵画のように戯れる2人の噂話を始めた。
「ねぇねぇ、あのふたりって新婚さんなのかな?」
「そんな感じよね。クリスさんが初々しすぎるもん」
「ありゃ溺愛したくもなるわ。俺、話しかけたら殺されそう」
「あー……ジルさん絶対腕が立つよね。出会った時、護衛要らないでしょって思ったもん。女が多いパーティ希望するから、会う前は警戒してたんだけどね。ガウスなんて、依頼を断る気だったでしょ」
「そりゃそうだろ、女が多いほうが良いなんて、ろくな奴じゃないと警戒する。実際、そんな依頼人も多かったんだからさ。会ってみたら、明らかに俺より強え男が来たからどうしようかと思ったぜ。隙なんてまるでねぇ、さっき馬車に乗らなかったのだって、俺らの力量を見極めてたんだ。馬車に乗ってくれたって事は、少しは信用されたみてぇだな。でも、クリスさんを愛でながらも警戒は解いてない。隙がなさすぎて怖い」
「逆にクリスさんは隙だらけですよね。まるで貴族のお嬢様みたいです」
「めちゃくちゃ美人だもんね。ホントに貴族様だったりして」
「でも、髪は短いじゃない? 貴族のお嬢様ってみんな長髪だから違うんじゃない?」
「そうですね。貴族令嬢で短髪はありえません」
「あ、そっかレミィ貴族だったっけ?」
「国が滅びたのでもう貴族ではありませんけどね。両親も戦火で他界しましたし。クリスさんの身分は分かりませんが、髪を切られてますから、貴族であったとしても今後は貴族として生きることは無いのでしょう。貴族が髪を切るのは、生涯修道院に入る時くらいですもの。あとは、私みたいに貴族でなくなったとか、家出したとか駆け落ちとか。でも、家出や駆け落ちくらいでは髪は切らないわね……。それくらい貴族女性の髪は大事なの。だから、貴族だとしたら相当な覚悟だし……クリスさんは平民なんじゃないかしら? 美人さんだし、丁寧な態度だから貴族みたいだけど、貴族にしては痩せすぎだし……行商をされてるから裕福な商家の方かもね。まぁ、あんまり依頼人を詮索するのは止めましょう」
「そうね。私達は依頼をこなせばいいから。それにしても、クリスさんの髪型可愛いよね。切ったばっかりぽいけど……あれ、どこで切ったんだろ?」
「案外ジルさんが切ってたりして? それくらいなら聞いても良いんじゃない? 素性を聞くのは失礼すぎて駄目だけど」
「素性は絶対聞くなよ?! 下手したら面倒なことになるから!」
「そうね、素性を詮索した途端クビとかありえるわよ。シュラブまで、ジルさんなら安全に移動できそうだもの」
「俺らはあくまでトラブル避けだよな。野盗が出ないことを祈るぜ。クリスさんに手ぇ出そうとしたら、瞬時に全滅しそうだもんな」
「そうね。もし野盗が出たら、誰か一人はクリスさんについて。ジルさんは大丈夫そうだもの」
「逆にクリスさんには傷一つつけないようにしたほうが良いね」
冒険者達の噂話は、小声で話したつもりであったが、きっちりとジルの耳に入っていた。
「あいつら……好き勝手言いやがって。まぁ、弁えてはいるようだから良いけどな」
「ジル、どうしたの?」
「いや、なんでもない。それよりクリス、キスしていいか?」
「はいっ?! キス?! キスってあの……?!」
「そう、恋人同士がやるようなあのキス」
「み、みんなが見てるから……」
「じゃぁ、見てない時なら良いって事か?」
クリステルは、小さく頷いた。ジルは嬉しそうに笑って、クリスの唇にキスを落とした。
歩みの遅い馬車は次々と他の馬車に抜かれ、やがて周りに馬車は見えなくなった。
「なぁ、クリス、どうしたんだ?」
ジルは馬車に乗り、クリステルの目をじっと見つめていた。気を遣った冒険者達は会話が聞こえない位置で護衛を行う。
既に冒険者の技能を見極め、昼間なら護衛を任せても問題ないと思ったジルは、遠慮なくクリステルを愛でていた。本気を出したジルは色気が溢れており、クリステルは真っ赤な顔で固まっている。
会話が聞こえない位置に居るとは言え、護衛対象から目を離す訳にいかない冒険者達は、絵画のように戯れる2人の噂話を始めた。
「ねぇねぇ、あのふたりって新婚さんなのかな?」
「そんな感じよね。クリスさんが初々しすぎるもん」
「ありゃ溺愛したくもなるわ。俺、話しかけたら殺されそう」
「あー……ジルさん絶対腕が立つよね。出会った時、護衛要らないでしょって思ったもん。女が多いパーティ希望するから、会う前は警戒してたんだけどね。ガウスなんて、依頼を断る気だったでしょ」
「そりゃそうだろ、女が多いほうが良いなんて、ろくな奴じゃないと警戒する。実際、そんな依頼人も多かったんだからさ。会ってみたら、明らかに俺より強え男が来たからどうしようかと思ったぜ。隙なんてまるでねぇ、さっき馬車に乗らなかったのだって、俺らの力量を見極めてたんだ。馬車に乗ってくれたって事は、少しは信用されたみてぇだな。でも、クリスさんを愛でながらも警戒は解いてない。隙がなさすぎて怖い」
「逆にクリスさんは隙だらけですよね。まるで貴族のお嬢様みたいです」
「めちゃくちゃ美人だもんね。ホントに貴族様だったりして」
「でも、髪は短いじゃない? 貴族のお嬢様ってみんな長髪だから違うんじゃない?」
「そうですね。貴族令嬢で短髪はありえません」
「あ、そっかレミィ貴族だったっけ?」
「国が滅びたのでもう貴族ではありませんけどね。両親も戦火で他界しましたし。クリスさんの身分は分かりませんが、髪を切られてますから、貴族であったとしても今後は貴族として生きることは無いのでしょう。貴族が髪を切るのは、生涯修道院に入る時くらいですもの。あとは、私みたいに貴族でなくなったとか、家出したとか駆け落ちとか。でも、家出や駆け落ちくらいでは髪は切らないわね……。それくらい貴族女性の髪は大事なの。だから、貴族だとしたら相当な覚悟だし……クリスさんは平民なんじゃないかしら? 美人さんだし、丁寧な態度だから貴族みたいだけど、貴族にしては痩せすぎだし……行商をされてるから裕福な商家の方かもね。まぁ、あんまり依頼人を詮索するのは止めましょう」
「そうね。私達は依頼をこなせばいいから。それにしても、クリスさんの髪型可愛いよね。切ったばっかりぽいけど……あれ、どこで切ったんだろ?」
「案外ジルさんが切ってたりして? それくらいなら聞いても良いんじゃない? 素性を聞くのは失礼すぎて駄目だけど」
「素性は絶対聞くなよ?! 下手したら面倒なことになるから!」
「そうね、素性を詮索した途端クビとかありえるわよ。シュラブまで、ジルさんなら安全に移動できそうだもの」
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「そうね。もし野盗が出たら、誰か一人はクリスさんについて。ジルさんは大丈夫そうだもの」
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冒険者達の噂話は、小声で話したつもりであったが、きっちりとジルの耳に入っていた。
「あいつら……好き勝手言いやがって。まぁ、弁えてはいるようだから良いけどな」
「ジル、どうしたの?」
「いや、なんでもない。それよりクリス、キスしていいか?」
「はいっ?! キス?! キスってあの……?!」
「そう、恋人同士がやるようなあのキス」
「み、みんなが見てるから……」
「じゃぁ、見てない時なら良いって事か?」
クリステルは、小さく頷いた。ジルは嬉しそうに笑って、クリスの唇にキスを落とした。
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