婚約破棄された王女は暗殺者に攫われる

編端みどり

文字の大きさ
31 / 66

31.男だらけの酒場

しおりを挟む
「オメェは行かなくて良かったのか?」

ドリスは奢ってもらった酒を美味しそうに飲みながら問いかけた。

「ああ、女4人で食事をするのが楽しそうだからな。俺はたまにしか行かねぇ事にしてるんだ。俺が行けば、絶対ジーティルさんが来るんだけど、それだとレミィ達も気を遣うからな」

「なるほどな。オメェも大変だな。女ばっかりのパーティなんて面倒じゃねぇか?」

「良いんだよ。俺はアイツらを気に入ってるんだから」

「そうかぃ、まぁ、上手くいってるみてぇで良かったぜ。男は何人もレミィにクビにされてたからオメェもすぐクビだと思ったぜ」

「普通に接すれば良いんだよ。そうすりゃなんてことはねぇ」

「それが出来ねぇ男ばっかだったんだろうが」

「下心がありゃぁ駄目だ」

「あんな美人ばっかじゃ下心持つなって方が無理だぜ」

「ま、それも分かる。俺だって普通に出会ってたら下心くらい持つぜ。けど、レミィは俺の命の恩人だからな。俺はまだ恩を返しきれてねぇ。アイツらを守るためなら、下心くらい捨てるさ。男がパーティに居るだけで変な奴も寄りつかねぇからな」

「相変わらず義理堅いな。面倒なことも多いだろうになんでパーティを組んでるのかと思ってたら、そんな理由があったんだな」

「ああ、人に歴史ありって言うだろ? オメェだって生きてりゃ色々あんだろ」

「あるな。人に言える事も、言えない事もある」

「だよなぁ。言える事はたまに吐き出すのが健康的に生きるコツだぜ。言えない事が多すぎても、少しは吐き出すことを勧めますぜ。……ねぇ、ジーティルさん」

ガウスがそう言うと、今までなかった気配が現れた。闇に溶け込むように気配を消していたジルは、苦い顔をしていた。

「うぉ! 全然気が付かなかった!!!」

「さすがに1週間も寝食を共にしたら気配くらい覚えます。上手く隠してましたけどね」

「そうか、オレもまだまだだだな。もっと修行が要るな」

「これ以上強くなってどうすんだ!」

叫ぶドリスを無視して、ガウスはジルに話しかける。

「それで、なんか俺らに用ですか?」

「ああ、聞きたいことがあってな。話が落ち着いてから声をかけようと思ったんだが」

「出来れば最初から話しかけて下さいよ。俺らを監視してんのかと思ったじゃないですか」

「そんなつもりではなかったんだが……すまん」

「まぁいいっすよ。クリスさんは見守らなくて良いんですか?」

「レミィ達もオレの気配をなんとなく察知するんだ。だから、邪魔しないようにしてる。帰りは必ず宿まで送ってくれるから安心だしな」

「ちょっとは鳥籠から出すつもりがあったみたいっすね」

「……だが、冒険者ギルドで男どもがクリスに向ける視線を見たときは少し後悔した」

「すげぇ顔してますぜ。よく我慢しましたね」

「クリスは応援されて嬉しそうだったからな」

「一緒に冒険者になれば離れなくて良いですし、今後は問題ありませんよ。ジーティルさんの実力は知れ渡りましたから、ちょっかい出す奴も居ないでしょう。それに、クリスさんを狙ってたバカ共も今頃震えてるでしょうし」

「何かしてくれたんだよな?」

「俺はちょっと噂話をしただけですぜ」

「そうか、お礼を兼ねてここはオレが奢ろう」

「俺は奢ってもらう理由がねぇぞ!」

「さっき王都がきな臭いって言ってただろ? 詳しく教えてくれないか? 奢りの酒はこれで終わりだろ? この後はオレが奢る。つまみもどうだ?」

「そういうことならお安い御用だ。真ん中に座れよ」

「ありがとう。早速聞かせてくれ」

「おうよ。王都は、今姫さんが暗殺されたからって慎ましく過ごしてんだけど、姫さんが死んだ後から、バタバタ死んでた貴族が死ななくなったんだ。だから、姫さんが暗殺してたんだってもっぱらの噂だぜ。そもそも姫さんは側室のお子らしくて、あんまり良い扱いを受けてなかったらしい。しかも、隣国の王子に婚約破棄されちまったんだろ? 婚約破棄されるなんてなんか問題があったに決まってるってよ。だから、姫さんが死んでよかったって言ってる市民が少しずつ増えてきてる」

「なるほどな……」

険しい表情をしているジルに、ドリスは自らの見解を小声で述べた。

「けど、なんかきなくせぇんだよな。噂の広がり方が、自然じゃねぇんだ。俺は姫さんは悪くねぇと思うぜ。だって、姫さんは冷遇されてたんだろ? 暗殺なんて、余程権力がねぇと指示出来ねぇもん。姫さんに心酔してる暗殺者でもいれば別だけどよ。姫さんが暗殺を指示してたんじゃなくて、姫さんが死んだから暗殺をする必要がなくなったんじゃねぇかな」

「なるほど。そう思ってる市民も居るのか?」

「俺らみてぇに、ひねくれた奴らだけだけどな。そんな奴らは、この国に見切りをつけてる。国外に出るなら早めに出た方が良いかもしれねぇぜ」

「俺らも国外に出ようかな……けどよぉ、なかなか獲物が出ねぇんだよな」

「あれは2年かったパーティも居るんだ。たかが1ヶ月で手に入るかよ。ガウスがまだ街に居るなら、俺は少しの間この国を出るぜ」

「ドリスも義理堅いよな。俺はレミィ達と相談して、国を出るか決めるよ。ジーティルさんは、国外ですか?」

「ああ、明日には発つ」

「そうですか。レミィ達が残念がりますけど……そうだ。冒険者カード見せて下さいよ。書かれてる番号宛にメッセージを預けられるんで」

「そうなのか?」

「はい。ギルドは独自の情報網がありますからね。メッセージは職員に見られるから、暗号でも決めますか?」

「そうか。なら何かあった時に頼む」

盗賊達は、暗号を使うのにも慣れている。あっという間に話し合いはまとまり、ジルは男達に頼み事のお礼に高価な酒を奢った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

婚約破棄までの168時間 悪役令嬢は断罪を回避したいだけなのに、無関心王子が突然溺愛してきて困惑しています

みゅー
恋愛
アレクサンドラ・デュカス公爵令嬢は舞踏会で、ある男爵令嬢から突然『悪役令嬢』として断罪されてしまう。 そして身に覚えのない罪を着せられ、婚約者である王太子殿下には婚約の破棄を言い渡された。 それでもアレクサンドラは、いつか無実を証明できる日が来ると信じて屈辱に耐えていた。 だが、無情にもそれを証明するまもなく男爵令嬢の手にかかり最悪の最期を迎えることになった。 ところが目覚めると自室のベッドの上におり、断罪されたはずの舞踏会から1週間前に戻っていた。 アレクサンドラにとって断罪される日まではたったの一週間しか残されていない。   こうして、その一週間でアレクサンドラは自身の身の潔白を証明するため奮闘することになるのだが……。 甘めな話になるのは20話以降です。

虐げられ続けてきたお嬢様、全てを踏み台に幸せになることにしました。

ラディ
恋愛
 一つ違いの姉と比べられる為に、愚かであることを強制され矯正されて育った妹。  家族からだけではなく、侍女や使用人からも虐げられ弄ばれ続けてきた。  劣悪こそが彼女と標準となっていたある日。  一人の男が現れる。  彼女の人生は彼の登場により一変する。  この機を逃さぬよう、彼女は。  幸せになることに、決めた。 ■完結しました! 現在はルビ振りを調整中です! ■第14回恋愛小説大賞99位でした! 応援ありがとうございました! ■感想や御要望などお気軽にどうぞ! ■エールやいいねも励みになります! ■こちらの他にいくつか話を書いてますのでよろしければ、登録コンテンツから是非に。 ※一部サブタイトルが文字化けで表示されているのは演出上の仕様です。お使いの端末、表示されているページは正常です。

悪役令嬢の妹君。〜冤罪で追放された落ちこぼれ令嬢はワケあり少年伯に溺愛される〜

見丘ユタ
恋愛
意地悪な双子の姉に聖女迫害の罪をなすりつけられた伯爵令嬢リーゼロッテは、罰として追放同然の扱いを受け、偏屈な辺境伯ユリウスの家事使用人として過ごすことになる。 ユリウスに仕えた使用人は、十日もたずに次々と辞めさせられるという噂に、家族や婚約者に捨てられ他に行き場のない彼女は戦々恐々とするが……彼女を出迎えたのは自称当主の少年だった。 想像とは全く違う毎日にリーゼロッテは戸惑う。「なんだか大切にされていませんか……?」と。

毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。

克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。

妹のために愛の無い結婚をすることになりました

バンブー竹田
恋愛
「エミリー、君との婚約は破棄することに決まった」 愛するラルフからの唐突な通告に私は言葉を失ってしまった。 婚約が破棄されたことはもちろんショックだけど、それだけじゃない。 私とラルフの結婚は妹のシエルの命がかかったものでもあったから・・・。 落ちこむ私のもとに『アレン』という大金持ちの平民からの縁談が舞い込んできた。 思い悩んだ末、私は会ったこともない殿方と結婚することに決めた。

幼馴染以上、婚約者未満の王子と侯爵令嬢の関係

紫月 由良
恋愛
第二王子エインの婚約者は、貴族には珍しい赤茶色の髪を持つ侯爵令嬢のディアドラ。だが彼女の冷たい瞳と無口な性格が気に入らず、エインは婚約者の義兄フィオンとともに彼女を疎んじていた。そんな中、ディアドラが学院内で留学してきた男子学生たちと親しくしているという噂が広まる。注意しに行ったエインは彼女の見知らぬ一面に心を乱された。しかし婚約者の異母兄妹たちの思惑が問題を引き起こして……。 顔と頭が良く性格が悪い男の失恋ストーリー。 ※流血シーンがあります。(各話の前書きに注意書き+次話前書きにあらすじがあるので、飛ばし読み可能です)

残念な顔だとバカにされていた私が隣国の王子様に見初められました

月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
公爵令嬢アンジェリカは六歳の誕生日までは天使のように可愛らしい子供だった。ところが突然、ロバのような顔になってしまう。残念な姿に成長した『残念姫』と呼ばれるアンジェリカ。友達は男爵家のウォルターただ一人。そんなある日、隣国から素敵な王子様が留学してきて……

処理中です...