婚約破棄された王女は暗殺者に攫われる

編端みどり

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41.身勝手の代償

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「どうして……どうしてよ……うまくいっていた筈でしょう……」

カツン……カツン……。

冷たい地下牢に、冷たい靴音が響く。牢に居るのは、明日公開処刑される罪人だ。

罪人と収監されているのは、かつては王妃として栄華を極めた女だ。だが、傲慢にも王家の血を引く姫君を殺害した罪に問われている。

王家を血を引く者の殺害は大罪だ。
既に王妃の実家は取り潰され、殆どの者は公開処刑された。許されたのは、ほんの数名。幼い子どものみだった。子どもも、身元が分からないように孤児として育てられ生涯王家に監視される。

明日は、最後に残った王妃の処刑が行われる。

姫君は、貴族の暗殺を行っていたと噂が流れた。その為、殺害された事を歓迎する声もあったが、国王陛下から王妃の罪が明かされると世の中の流れはガラッと変わった。

姫君は、王妃に虐げられて命まで奪われた。暗殺を繰り返していたのは王妃だったのだ。

国王は喪が明けた日に証拠を揃えて王妃を糾弾した。

王妃は反論したが、数々の証拠は王妃の罪を詳らかにした。あまりの罪の重さに、王妃を庇う者は居なかった。

……誰も、王妃を庇わなかった。

王妃が大事にしていた息子も、母を糾弾した。王家の血を引くのは国王と自分しか残っていない。亡くなった姫君がどれだけ貴重な存在だったのかを涙ながらに皆に訴えた。

王妃のせいで、妹と交流する事を阻まれたのだと王子は訴えた。母がこんな事をしたのは自分のせいだと涙を流した王子は、母の罪を何も知らなかったらしい。

王子は時期国王になるが、優秀な王になるだろう。そう皆が期待した。

なぜなら、母の罪を軽くするよう訴えたい気持ちはあるが、それはしてはならない。例え、暗殺未遂でも母は公開処刑だと王子は泣いていたからだ。

自分の母親にここまで公平な判断が出来るなら、現国王と同じように優秀な王になるだろう。

そう評価された王子は、牢の中に居る母親を冷たく見つめていた。

ヒューは既に影を味方につけていた。今日ヒューに付いているのはヒューの味方ばかり。この事が国王に報告される事はない。

国王に忠実な影は仲間の裏切りにあい瀕死の重傷を負っていた。国王の影はヒューの味方が増えており、国王は少しずつ権力を削がれていた。

「ヒュー! 助けに来てくれたのね!」

「いいえ、母上。貴方は明日処刑が決まっています。ここの鍵は父上しか持っていません。だから、開けるのは無理ですよ」

「そんな……そんな……」

「仕方ないでしょう。王家の血を引くクリステルを暗殺した罪は重いのですから」

「わたくしは……ヒューの為に……」

「僕がいつそんな事を頼みましたか?」

「ヒュー……どうして……」

「母上は短絡的過ぎます。気に入らなければ暗殺なんて、目をつけられるに決まっています。父上はずっと前から母上をマークしていました。母上が暗殺したと思っていた人達は、生存者も多いみたいですよ。全く、どうやって情報を得ていたのか……。まぁ、予想は出来ますけど。母上のせいで、僕の立場も悪くなりました。しばらくはいい子を演じるしかありませんね。余計な事をしてくれましたよね。ま、邪魔だったクリステルを城から排除してくれた事だけは感謝しますよ。どうせならきっちり殺して欲しかったですけどね」

「どういうこと……?」

「ジルに暗殺を指示した貴族は、父上に保護されていたそうですよ。どうやらジルは裏切り者だったようですね。多分クリステルは生きていますよ。父上が淡々と仕事をこなしているのがその証拠です。クリステルの母親が亡くなった時は、一ヵ月部屋から出て来なかったそうですからね。その時の話を色んな人に聞きましたけど、あまりに違い過ぎます。クリステルを愛してないとしてもおかしい。ま、クリステルは僕が見つけ出して今度こそきっちり始末しますからご安心下さい。クリステルはいい子なので死んでも母上と同じ所には行かないでしょうけどね。何人も暗殺した母上が行く所は、どこですかねぇ」

「ヒュー……どうしてそんな事言うの……?」

「さようなら。明日は僕は見届けません。父上の配慮で、免除されました。実の母の処刑を見るのは辛いだろうってね。父上はお優しい、クリステルにそっくりだ」

「クリステル……クリステル……あの女さえいなければ……」

既に正気を失い、ブツブツと呟き始めた王妃を無視して、ヒューは牢を後にした。

靴音が遠ざかり、静寂が訪れても王妃の心は騒ついたままだった。

翌日、世紀の悪女は公開処刑された。

彼女は反省する事なく、暗殺した姫君に呪いの言葉を吐いていた。その姿は異様で、人々は恐れた。

伴侶の処刑を見届けた国王陛下は、生涯誰とも婚姻しないと宣言した。

王家の血を引く者はヒュー王子だけ。

王位継承者が決定した瞬間だった。
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