婚約破棄された王女は暗殺者に攫われる

編端みどり

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50.元貴族は拒絶する

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「お断りします」

レミィは、険しい表情で言い席を立った。ジルとガウスはレミィを追いかけ、クリステルはそのまま席に残り、ルカとファルはオロオロしている。

「クリスさんじゃなくて、その、王女様。ごめんね。依頼の具体的な内容も聞いてないのに。でも、レミィは……その」

「分かってます。私を憎むのは当然です」

「あー……そうか、ガウスが言ってた。聞こえてたんなら、レミィの事は予想がついてたんだ」

クリステルは、黙って頷いた。申し訳なさそうに下を向くクリステルを、ルカとファルは不快そうに睨んだ。

「クリスさんは若いから、あのことに関係していないのは分かってる。でも、レミィが簡単に割り切れないのは分かるよね?」

「はい。酷いことを頼んでいる自覚はあります」

「そういうところはさすが王族サマだよね。傲慢だよ」

「私達はレミィが大事なの。いくらお仕事でも、レミィが傷つくことは受け入れられない。王族の命令でもね。冒険者は自由よ。嫌ならこの国……リーディル国から出ればいいもの。レミィがああ言うなら、依頼は受けられない」

「嫌な思いをさせて申し訳ありません。でも……私達には信用できる人があまりにも少ないのです。今回の計画を立てる時、城に堂々と入れて、信頼出来る人材として真っ先に思いついたのがみなさんでした。失礼と分かっていても縋ってしまったんです」

「信頼を得られたのは光栄だけどさ、なんだかんだで王女様なんだから、城に味方ぐらい居るでしょう。その人と連絡を取れば……」

「いません」

「なんでよ! 信用できる使用人の1人や2人居るでしょ?」

「わたくしの使用人は全て王妃様が手配していました」

「王妃って……あの処刑された?」

「はい。一時期は食事も与えられず、餓死寸前でした。影になったばかりのジルが助けてくれなければ死んでいましたね。それから、信用できる影の夫婦がおりましたが、夫は瀕死の重傷を負い、妻は看病の為に城を出されています。それもどうやら仕組まれていたようですね。今、城に信用できる者はおりません。父も、全てを信用できる程信頼関係を築けておりません。なにせ、まともに話した事はありませんもの。城を出る少し前に婚約破棄をされましたが、その時に父と一番長く話したでしょうか。私を守ってくれていたようですし、私も父を心配する気持ちはあります。でも、どうしてあんな事をしたのか……そう思うと分からないんです。お父様があんな事をしなければ……ジルは……」

「なんでそこにジルさんが出てくるのさ」

「それは、今から説明する。けど、他言無用だし、依頼は受けてもらう」

レミィを連れて、ジルとガウスが戻って来た。

「レミィ!」

「ガウス! 勝手に依頼を受けないでよ!」

「俺じゃねぇよ!」

「私が受けました。お願いします。この依頼を受けさせて下さい」

「なんで! いくらジルさんでもレミィを脅すなんて許さないんだから!」

「そんな人だとは思いませんでした。正直に謝罪してくれたクリスさんのほうがマシだわ」

「違うの! 脅されてなんかない!」

「あぁ、俺も見ていたがジルさんは殺気一つ出してない。誠心誠意レミィと話しただけだ」

「本当?」

「ガウス……ジルさんの味方してるわけじゃないわよね?」

「しねーよ! 俺が第一に考えるのはお前らに決まってんだろ!」

「そうよね。ごめん」

「お前らだってレミィが受け入れれば依頼を受けたいんだろ?」

「……それは……」

「クリスさんが死んじゃうのは……嫌」

「私もそうです。だから、ここに来た。でも、クリスさんの正体を聞いてすぐには受け入れられませんでした。私の国はもうありません。クリスさんがいい人なのは分かってますし、国が滅んだのはクリスさんのせいじゃない。でも、関係者である事は事実です。今の冒険者の暮らしは幸せですし、クリスさんが死ぬのは嫌だけど、色々と簡単に割り切れなくて……話も聞かずに急に飛び出してごめんなさい」

「レミィがそう思うのは当然だ。普通はジルさんみてぇに割り切れねぇよ」

「オレはクリスが居ればいい。出会いが仕組まれていようと、オレの出自がややこしかろうと関係ない」

「ほんとブレないっすよね。レミィの変わりっぷりから予想はしてますけど、ジルさんも結構な秘密を抱えてますよね? 単なる冒険者の俺達に話して良いんですか?」

「レミィ、ガウス、ルカ、ファルは信用出来る冒険者だ。依頼を受けなくても秘密は守ってくれるだろうし、失礼な依頼なのは分かってるんだ。ならせめて誠意は尽くすべきだろう。オレ達が偽物のまま依頼をするような失礼な事出来ん」

「秘密って……まだなんかあるの?!」

「あるみてぇだぜ。俺はもう訳が分からん。ぶっちゃけ依頼人がジルさんとクリスさんじゃなきゃ絶対受けねぇ」

「って事は、ガウスもレミィと同じで依頼を受けたいんだ」

「ああ、依頼内容は聞いた。面倒だし、危ねぇし、たっぷり報酬は頂きたい。でも、俺はこの依頼を受けたい」

「ふーん、半分は味方にしちゃったか。さすがジルさんだね」

「ごめん、レミィが納得してるなら私も依頼を受けたい。依頼内容は分かんないけど、レミィとガウスが受けるって言うなら、私達に出来る仕事って事でしょ?」

「ファルもか。なんでよ」

「クリスさんが、嘘をつくとは思えない。本当に味方が居なくて困ってるんだと思う。友達、助けたいじゃない?」

「ま、そうね。私も賛成。ただし、なんでレミィが納得したのかは教えて貰う。でないと受けられない」

「ああ、それはオレから話す。レミィには、オレの出自を伝えたんだ。そしたら話を聞いてくれた」

「私は、依頼内容も聞かずにクリスさんがリーデェル国の……この国の王女と聞いただけで飛び出しました。頭は完全に混乱していたし、騙されたと思った。クリスさんが高貴な人だと気が付いていたのに。でも、ジルさんが言った言葉は立ち止まるしかなかった」

「ジルさん、あれなんて言ったんすか? 俺は聞こえなかったんですよ。ここなら誰も聞いてねぇし、外に人影も無えから、教えて下さいよ」

「物凄い小声でしたからね。周りには聞こえていないでしょう」

「オレは、ジル・ド・カヴァニャだって言っただけだ」

「カヴァニャってまさか……」

「ああ、どうやらオレは滅んだカヴァニャ国の王族だったらしい」
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