お姉様優先な我が家は、このままでは破産です

編端みどり

文字の大きさ
5 / 57

第五話

しおりを挟む
「エリザベス、わたくし王都から出たいの」

エリザベスと2人で小声で話す。周りに姉はいないから、今は大丈夫ね。
エリザベスから色んな方を紹介してもらい、ご挨拶をした。何人か親切な方がいて、姉の心配をして貰えた。ケイリー様ってば、初対面でも忠告したくなるくらいの人なのね……。

だけど、両親も姉もわたくしの忠告を無視したわ。今日の夜会での様子をみて改めて思うけど、ケイリー様が姉を捨てることはなさそうね。だってケイリー様の悪い噂けっこう広がっているもの。ケイリー様もご自覚がおありのようだし、必死で姉に媚びを売っているわ。姉は生贄だと小声で言っている人もいた。わたくしがあまりに変わっていたから妹だと気が付かなかった方も多くて普段聞こえない噂話が耳に入る。

姉や両親へケイリー様の事を忠告をした時のやりとりは録画魔法で撮って、記録玉に記録してある。何か言われたら出せるように、常に携帯しているし、エリザベスにも同じ記録を預けてある。記録玉は、複製は可能だが改ざんはできない魔道具なので、証拠として使えるのよね。最初に忠告したら無視されたから、頭にきて記録する事にした。先生もいざと言うときの証拠はできるだけ残せって言ってたしね。

先生から記録玉の魔道具のことを教えてもらって、どうしても欲しかったからこっそり用意したわ。両親と姉が仲良く旅行に行ってる間にバイトしてね。わたくしは当たり前のように置いていかれたわ。私の分は旅費がもったいないんですって。

でも、収支報告書ではわたくしも行ったことにするみたいよ。その分旅費を水増しして収支報告するんでしょうね。そのお金がどこに流れるかは知らないわ。使用人も旅行中は全員休みになったから、わたくしを監視する人は誰も居なくて天国だった。食事の用意も材料もなかったから、レストランで働いたわ。まかないは美味しくて幸せだった。このまま帰ってこないでって何度も思ったわ。でも、魔道具が2つ購入できた頃に両親と姉が帰ってきた。

「もっと痩せてると思ったのに。どこで餌を恵んでもらったの?」

姉からはそう言われたわ。その時、もう我慢しないと決めた。エリザベスと相談し始めたのはその後ね。

魔道具を駆使して、証拠を集めた。何度もケイリー様のことを訴えているのが残ってるから、これで聞いてないなんて言わせない。どうやら家族はケイリー様と共に破産するのがお好みの様だから、わたくしはさっさと逃げるわ。

先生の教え、その7。逃げることは悪い事ではない。戦略的撤退が出来ないものは状況判断ができない無能だ。

「シャーリーは王都に未練はないものね」

「むしろ嫌な思い出が多すぎるわ。先生とエリザベスに会えたのは良かったけど」

「そう言って貰えて嬉しいわ。方法としては3つかしら。地方に就職するか、地方の貴族と結婚するか、貴族をやめて姿を消す」

「就職はなしね。そのうち連れ戻されそうだわ」

普段は放置だけど、わたくしも貴族の娘。政略結婚の駒にはなるもの。

「じゃあ2択ね。わたくしとしては地方の貴族との結婚がいいと思うわ。貴族をやめるのも良いけど、見つかったら連れ戻されるリスクは就職と同じだもの」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました

由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。 彼女は何も言わずにその場を去った。 ――それが、王太子の終わりだった。 翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。 裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。 王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。 「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」 ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。

姉の婚約者であるはずの第一王子に「お前はとても優秀だそうだから、婚約者にしてやってもいい」と言われました。

ふまさ
恋愛
「お前はとても優秀だそうだから、婚約者にしてやってもいい」  ある日の休日。家族に疎まれ、蔑まれながら育ったマイラに、第一王子であり、姉の婚約者であるはずのヘイデンがそう告げた。その隣で、姉のパメラが偉そうにふんぞりかえる。 「ぞんぶんに感謝してよ、マイラ。あたしがヘイデン殿下に口添えしたんだから!」  一方的に条件を押し付けられ、望まぬまま、第一王子の婚約者となったマイラは、それでもつかの間の安らぎを手に入れ、歓喜する。  だって。  ──これ以上の幸せがあるなんて、知らなかったから。

お姉さまは最愛の人と結ばれない。

りつ
恋愛
 ――なぜならわたしが奪うから。  正妻を追い出して伯爵家の後妻になったのがクロエの母である。愛人の娘という立場で生まれてきた自分。伯爵家の他の兄弟たちに疎まれ、毎日泣いていたクロエに手を差し伸べたのが姉のエリーヌである。彼女だけは他の人間と違ってクロエに優しくしてくれる。だからクロエは姉のために必死にいい子になろうと努力した。姉に婚約者ができた時も、心から上手くいくよう願った。けれど彼はクロエのことが好きだと言い出して――

[完結中編]蔑ろにされた王妃様〜25歳の王妃は王と決別し、幸せになる〜

コマメコノカ@女性向け・児童文学・絵本
恋愛
 王妃として国のトップに君臨している元侯爵令嬢であるユーミア王妃(25)は夫で王であるバルコニー王(25)が、愛人のミセス(21)に入り浸り、王としての仕事を放置し遊んでいることに辟易していた。 そして、ある日ユーミアは、彼と決別することを決意する。

ただ誰かにとって必要な存在になりたかった

風見ゆうみ
恋愛
19歳になった伯爵令嬢の私、ラノア・ナンルーは同じく伯爵家の当主ビューホ・トライトと結婚した。 その日の夜、ビューホ様はこう言った。 「俺には小さい頃から思い合っている平民のフィナという人がいる。俺とフィナの間に君が入る隙はない。彼女の事は母上も気に入っているんだ。だから君はお飾りの妻だ。特に何もしなくていい。それから、フィナを君の侍女にするから」 家族に疎まれて育った私には、酷い仕打ちを受けるのは当たり前になりすぎていて、どう反応する事が正しいのかわからなかった。 結婚した初日から私は自分が望んでいた様な妻ではなく、お飾りの妻になった。 お飾りの妻でいい。 私を必要としてくれるなら…。 一度はそう思った私だったけれど、とあるきっかけで、公爵令息と知り合う事になり、状況は一変! こんな人に必要とされても意味がないと感じた私は離縁を決意する。 ※「ただ誰かに必要とされたかった」から、タイトルを変更致しました。 ※クズが多いです。 ※史実とは関係なく、設定もゆるい、ご都合主義です。 ※独特の世界観です。 ※中世〜近世ヨーロッパ風で貴族制度はありますが、法律、武器、食べ物など、その他諸々は現代風です。話を進めるにあたり、都合の良い世界観となっています。 ※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。

「帰ったら、結婚しよう」と言った幼馴染みの勇者は、私ではなく王女と結婚するようです

しーしび
恋愛
「結婚しよう」 アリーチェにそう約束したアリーチェの幼馴染みで勇者のルッツ。 しかし、彼は旅の途中、激しい戦闘の中でアリーチェの記憶を失ってしまう。 それでも、アリーチェはルッツに会いたくて魔王討伐を果たした彼の帰還を祝う席に忍び込むも、そこでは彼と王女の婚約が発表されていた・・・

【完結】さようなら、婚約者様。私を騙していたあなたの顔など二度と見たくありません

ゆうき
恋愛
婚約者とその家族に虐げられる日々を送っていたアイリーンは、赤ん坊の頃に森に捨てられていたところを、貧乏なのに拾って育ててくれた家族のために、つらい毎日を耐える日々を送っていた。 そんなアイリーンには、密かな夢があった。それは、世界的に有名な魔法学園に入学して勉強をし、宮廷魔術師になり、両親を楽させてあげたいというものだった。 婚約を結ぶ際に、両親を支援する約束をしていたアイリーンだったが、夢自体は諦めきれずに過ごしていたある日、別の女性と恋に落ちていた婚約者は、アイリーンなど体のいい使用人程度にしか思っておらず、支援も行っていないことを知る。 どういうことか問い詰めると、お前とは婚約破棄をすると言われてしまったアイリーンは、ついに我慢の限界に達し、婚約者に別れを告げてから婚約者の家を飛び出した。 実家に帰ってきたアイリーンは、唯一の知人で特別な男性であるエルヴィンから、とあることを提案される。 それは、特待生として魔法学園の編入試験を受けてみないかというものだった。 これは一人の少女が、夢を掴むために奮闘し、時には婚約者達の妨害に立ち向かいながら、幸せを手に入れる物語。 ☆すでに最終話まで執筆、予約投稿済みの作品となっております☆

新しい人生を貴方と

緑谷めい
恋愛
 私は公爵家令嬢ジェンマ・アマート。17歳。  突然、マリウス王太子殿下との婚約が白紙になった。あちらから婚約解消の申し入れをされたのだ。理由は王太子殿下にリリアという想い人ができたこと。  2ヵ月後、父は私に縁談を持って来た。お相手は有能なイケメン財務大臣コルトー侯爵。ただし、私より13歳年上で婚姻歴があり8歳の息子もいるという。 * 主人公は寛容です。王太子殿下に仕返しを考えたりはしません。

処理中です...