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第五話

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「エリザベス、わたくし王都から出たいの」

エリザベスと2人で小声で話す。周りに姉はいないから、今は大丈夫ね。
エリザベスから色んな方を紹介してもらい、ご挨拶をした。何人か親切な方がいて、姉の心配をして貰えた。ケイリー様ってば、初対面でも忠告したくなるくらいの人なのね……。

だけど、両親も姉もわたくしの忠告を無視したわ。今日の夜会での様子をみて改めて思うけど、ケイリー様が姉を捨てることはなさそうね。だってケイリー様の悪い噂けっこう広がっているもの。ケイリー様もご自覚がおありのようだし、必死で姉に媚びを売っているわ。姉は生贄だと小声で言っている人もいた。わたくしがあまりに変わっていたから妹だと気が付かなかった方も多くて普段聞こえない噂話が耳に入る。

姉や両親へケイリー様の事を忠告をした時のやりとりは録画魔法で撮って、記録玉に記録してある。何か言われたら出せるように、常に携帯しているし、エリザベスにも同じ記録を預けてある。記録玉は、複製は可能だが改ざんはできない魔道具なので、証拠として使えるのよね。最初に忠告したら無視されたから、頭にきて記録する事にした。先生もいざと言うときの証拠はできるだけ残せって言ってたしね。

先生から記録玉の魔道具のことを教えてもらって、どうしても欲しかったからこっそり用意したわ。両親と姉が仲良く旅行に行ってる間にバイトしてね。わたくしは当たり前のように置いていかれたわ。私の分は旅費がもったいないんですって。

でも、収支報告書ではわたくしも行ったことにするみたいよ。その分旅費を水増しして収支報告するんでしょうね。そのお金がどこに流れるかは知らないわ。使用人も旅行中は全員休みになったから、わたくしを監視する人は誰も居なくて天国だった。食事の用意も材料もなかったから、レストランで働いたわ。まかないは美味しくて幸せだった。このまま帰ってこないでって何度も思ったわ。でも、魔道具が2つ購入できた頃に両親と姉が帰ってきた。

「もっと痩せてると思ったのに。どこで餌を恵んでもらったの?」

姉からはそう言われたわ。その時、もう我慢しないと決めた。エリザベスと相談し始めたのはその後ね。

魔道具を駆使して、証拠を集めた。何度もケイリー様のことを訴えているのが残ってるから、これで聞いてないなんて言わせない。どうやら家族はケイリー様と共に破産するのがお好みの様だから、わたくしはさっさと逃げるわ。

先生の教え、その7。逃げることは悪い事ではない。戦略的撤退が出来ないものは状況判断ができない無能だ。

「シャーリーは王都に未練はないものね」

「むしろ嫌な思い出が多すぎるわ。先生とエリザベスに会えたのは良かったけど」

「そう言って貰えて嬉しいわ。方法としては3つかしら。地方に就職するか、地方の貴族と結婚するか、貴族をやめて姿を消す」

「就職はなしね。そのうち連れ戻されそうだわ」

普段は放置だけど、わたくしも貴族の娘。政略結婚の駒にはなるもの。

「じゃあ2択ね。わたくしとしては地方の貴族との結婚がいいと思うわ。貴族をやめるのも良いけど、見つかったら連れ戻されるリスクは就職と同じだもの」
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