お姉様優先な我が家は、このままでは破産です

編端みどり

文字の大きさ
43 / 57
辺境伯夫人は頑張ります

6

「それで、あの王子は何をしたんだ?」

茶会の様子を説明すると、フレッドはどんどん不機嫌になってしまった。でも、予想通りだから大丈夫。

「少し手に触れられただけよ。フレッドの自慢話をしたらすぐに離して頂けたわ」

「……え、オレの自慢話?」

「ええ! フレッドの素晴らしさをたくさんアピールしておいたわ!」

「何を言ったんだ?」

どんな話をしたか説明すると、フレッドのお顔がみるみる赤く染まる。何度見ても可愛らしいわ。

「フレッド、可愛いわ」

「オレを可愛いなんて言うのは、シャーリーだけだ」

「だって本当に可愛いんだもの! フレッド……ずっと会いたかったわ。本当はすごく寂しかったの。お願い、いっぱい抱きしめて」

「ああ、オレも寂しかった。シャーリー、愛してる」

たくさん抱きしめて貰って、ようやく気持ちが落ち着いた。フレッドはそのままわたくしを寝室に運ぼうとしたけど、その前にきちんと伝えておかないと。

「あのね、あちらの兵士が痩せていたのはやっぱり昨年の飢饉のせいだと思うの。備蓄があった我が国は大丈夫だったけど、あちらは違うみたい」

「うちは後3年は大丈夫だが、他所は違うという事か」

「そう、国が違えば常識も変わるわ。これ、分かる範囲で調べてきたの。あちらの常識を知っておいた方が良いと思って」

「ありがとう、さすがシャーリーだ。早めに頭に入れた方が良さそうだな。悪いが、少し時間を貰えるか?」

「ええ、お茶を淹れる?」

「いや、深夜だから要らない。すぐに読むから、シャーリーはここに居てくれるか?」

「え、ここに?」

「ああ、ここだ」

さっきから、フレッドの腕に包まれて動けないんだけど……?

「分かったわ」

「嫌か?」

「そんな訳ないでしょ? ずっとこうしたかったの。フレッドの腕の中に居るととっても暖かくて幸せなの。だけど、安心し過ぎて眠くなってしまって……」

「深夜だからな。大丈夫、眠ったらちゃんと運ぶから」

「……やだ、せっかくフレッドが帰って来たんだから、もっとお話ししたいわ……」

既に瞼が重くなっているとは言えず、誤魔化すようにフレッドに擦り寄った。

それに、もっとたくさん触れ合いたい。

正直、ハンス様に馴れ馴れしく触れられたのはとても嫌だった。フレッドと触れ合って、わたくしはフレッドの妻だと感じたい。

だけど、そんなはしたない事……言えない。

「シャーリー、どうしたんだ? もうすぐ読み終わるが、先に寝るか?」

「や……待ってるから……一緒に……いたいの……」

精一杯のお誘いだったが、フレッドは優しく頭を撫でてくれるだけ。

「可愛い……早く帰って来て良かった。腕枕してあげるよ。待ってて、すぐに読むから。……はぁ、読めば読むほどふざけているな。こんな運営で国家が成り立つと思っているのか……無能な商会より酷いではないか」

「わたくし、自国の事ばかり勉強していた事を反省したわ。他国の事を調べて、初めて自分達がどれだけ恵まれてるか実感したわ。うちの両親ですら、規定通りきっちり備蓄をしていた。不正がないように、毎年調査されていた。だから民は飢えずに、生きていける。辺境なんだから、もっと接する国の内部事情も調べるべきだったわ。そうすれば、切羽詰まっていて攻めてくるかもしれないと予想出来た」

「突然だったからオレも予想なんて出来てなかった。けど確かに、そういった事を予想出来れば兵の被害も少なくて済むな。守りを固めるばかりでなく、こちらから攻める事も必要か。よし、早速明日から検討しよう。シャーリーは凄いな。たくさん調べてくれて、ありがとう。ご褒美、欲しいかい?」

わたくしの気持ちは、フレッドに筒抜けだった。耳元で囁かれると、頭がぼうっとしてフレッドの事しか考えられなくなってしまう。

「……欲しいわ。いっぱい欲しい」

うわ言のように呟くと、フレッドがニヤリと笑った。ああもう、かっこよすぎて直視出来ないわ。

「疲れてるんじゃないの?」

わざと焦らそうとするなんて、なんて意地悪なの。だけどそんなフレッドが愛おしい。

「フレッドの方が疲れてるでしょう?」

「ああ、だから癒してくれるかい」

「……喜んで」

あなたにおすすめの小説

皇太子夫妻の歪んだ結婚 

夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。 その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。 本編完結してます。 番外編を更新中です。

妹に全てを奪われた私、実は周りから溺愛されていました

日々埋没。
恋愛
「すまないが僕は真実の愛に目覚めたんだ。ああげに愛しきは君の妹ただ一人だけなのさ」  公爵令嬢の主人公とその婚約者であるこの国の第一王子は、なんでも欲しがる妹によって関係を引き裂かれてしまう。  それだけでは飽き足らず、妹は王家主催の晩餐会で婚約破棄された姉を大勢の前で笑いものにさせようと計画するが、彼女は自分がそれまで周囲の人間から甘やかされていた本当の意味を知らなかった。  そして実はそれまで虐げられていた主人公こそがみんなから溺愛されており、晩餐会の現場で真実を知らされて立場が逆転した主人公は性格も見た目も醜い妹に決別を告げる――。  ※本作は過去に公開したことのある短編に修正を加えたものです。

【完】夫に売られて、売られた先の旦那様に溺愛されています。

112
恋愛
夫に売られた。他所に女を作り、売人から受け取った銀貨の入った小袋を懐に入れて、出ていった。呆気ない別れだった。  ローズ・クローは、元々公爵令嬢だった。夫、だった人物は男爵の三男。到底釣合うはずがなく、手に手を取って家を出た。いわゆる駆け落ち婚だった。  ローズは夫を信じ切っていた。金が尽き、宝石を差し出しても、夫は自分を愛していると信じて疑わなかった。 ※完結しました。ありがとうございました。

《完結》悪女と噂されたわたくしのざまぁ

ヴァンドール
恋愛
悪女と噂のわたくしとの結婚なら、どれほど軽んじても問題はないと思っていた旦那様。 ところが……。

ただ誰かにとって必要な存在になりたかった

風見ゆうみ
恋愛
19歳になった伯爵令嬢の私、ラノア・ナンルーは同じく伯爵家の当主ビューホ・トライトと結婚した。 その日の夜、ビューホ様はこう言った。 「俺には小さい頃から思い合っている平民のフィナという人がいる。俺とフィナの間に君が入る隙はない。彼女の事は母上も気に入っているんだ。だから君はお飾りの妻だ。特に何もしなくていい。それから、フィナを君の侍女にするから」 家族に疎まれて育った私には、酷い仕打ちを受けるのは当たり前になりすぎていて、どう反応する事が正しいのかわからなかった。 結婚した初日から私は自分が望んでいた様な妻ではなく、お飾りの妻になった。 お飾りの妻でいい。 私を必要としてくれるなら…。 一度はそう思った私だったけれど、とあるきっかけで、公爵令息と知り合う事になり、状況は一変! こんな人に必要とされても意味がないと感じた私は離縁を決意する。 ※「ただ誰かに必要とされたかった」から、タイトルを変更致しました。 ※クズが多いです。 ※史実とは関係なく、設定もゆるい、ご都合主義です。 ※独特の世界観です。 ※中世〜近世ヨーロッパ風で貴族制度はありますが、法律、武器、食べ物など、その他諸々は現代風です。話を進めるにあたり、都合の良い世界観となっています。 ※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。

完結 貴族生活を棄てたら王子が追って来てメンドクサイ。

音爽(ネソウ)
恋愛
王子の婚約者になってから様々な嫌がらせを受けるようになった侯爵令嬢。 王子は助けてくれないし、母親と妹まで嫉妬を向ける始末。 貴族社会が嫌になった彼女は家出を決行した。 だが、有能がゆえに王子妃に選ばれた彼女は追われることに……

全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。

彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。

婚約破棄後のお話

Nau
恋愛
これは婚約破棄された令嬢のその後の物語 皆さん、令嬢として18年生きてきた私が平民となり大変な思いをしているとお思いでしょうね? 残念。私、愛されてますから…