政略結婚の指南書

編端みどり

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15.妻が優秀過ぎる【ロバート視点】

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「聖帝国ラーアントの王族だと! オキ共和国の公爵令嬢ではなかったのか?!」

薔薇の話をした時に態度がおかしかったから嫌な予感はしていたが、まさか王族とは。

「そのようです。今、奥様が丁寧に事情を聞いておられます。エイダさんから逐一報告が来ておりますから、急いで対策を立てましょう。連絡しなくて大正解でしたね」

「ジョージは連絡しようとしたがな」

「そりゃそうですよ。他国の公爵令嬢なんてさっさと帰すに限りますからね。オキ共和国なら、帰して問題ありませんし。まさか聖帝国の王族とは。約束だから連絡するなと旦那様が命じたおかげです。さすが旦那様。奥様も惚れ直す事でしょう」

「お世辞はいい。貴族令嬢が行方不明になっただけであの数の密偵が来るのはおかしいと思っていた。オキ共和国の言葉を使っていたが、下手だったしな。聖帝国が絡んでいる可能性は考えていたが、まさか王女様が行方不明とは」

「聖帝国は恥になるから探して処分しようとしているのでは?」

「あの国は……そういう国だったな。ありえないとは言えないな。聖帝国の動きを注視しておいてくれ」

「承知しました」

私ならマリアが攫われても取り返すし、傷が癒えるように大切にする。婚約中でも、婚約破棄したりしない。

オキ共和国はおおらかな国だから、貴族が攫われても無事見つかれば良かったで済んでしまう。だが、我が国はもう少し状況が厳しい。無事見つかっても、婚約が破談になる事が多い。相手が婚約者を大切にしていればそのまま結婚する場合もあるが、家のパワーバランスが崩れるから親の方から断られたりもする。一旦白紙や破談にして、格下の家に嫁ぐ場合が多いな。辛い過去を乗り越えて夫に愛され幸せに暮らしている方もいる。結婚しなくても、家族が大切に保護してくれることもある。

だが、聖帝国で貴族令嬢が攫われてしまえば……我が国とは比にならないくらい悲惨な未来が待っている。貴族なら家を追い出され、どこにも受け入れて貰えない。

さまよった結果、厄介な男に騙されたり、他国の娼館に売られたりしてしまうようだ。聖帝国に娼館はないので、移動の最中に逃げ出そうとして野生動物に襲われたという話も聞く。

ごくまれに家族を大切にしている家なら一生軟禁で済む事もあるが、王族となれば……周りの声もある。軟禁では済まないだろう。命が危ない。

「他国においそれと口出しするわけにいかん。だが、命の危険があるのに帰すわけにもいかん。あの2人の本名は分かったか? うちに接触してきた密偵はリリアとリーナと言っていたが」

彼等はオキ共和国の密偵と言っていたが、やはり嘘だったのだろう。

「マチルダ・トゥーラ・ラーアント様とミーシャ・トゥーラ・ラーアント様です」

「第一王女と第二王女じゃないか……!」

「ええ、よく話してくださいましたね。さすが奥様です。奥様は誰にも言わないようにと命じられています。我々はオキ共和国の公爵令嬢、リリア様とリーナ様として接する必要がありますね」

「……そうなるだろうな。私とマリアが会わなければ、情報は漏れないとお考えなのだろう……はぁ、しばらくマリアと会えないな」

「そうそう、奥様からご伝言です。愛してる、とのことです」

「はっ?! え……あ、愛してる……!」

「ええ、そろそろお気付きでしょう。これは夢ではありません。奥様は旦那様の為に頑張っておられます。ミリアさんに的確な指示を出し、王女様達の信頼を得ようとしておられるのも全て旦那様の為です」

「わ、私の……?」

「はい。この件が終わったらゆっくり夫婦の時間をとってください」

さすがに、もう長い夢ではないと分かる。マリアの為にも、今後の事を考えないと。

お2人は自分達が国に帰ればどうなるか分かっていらっしゃる。だから簡単に正体を明かさず、我々を警戒しているのだろう。だが、王女様達はマリアを信じてくださった。マリアが彼女達の意見を尊重すると言ってくれたおかげだ。

他国に介入する事は出来ないが、マリアを信じた彼女達を放っておけん。とはいえ、私が一番守らねばならないのは領地と領民だ。彼女達を助ける事で領地が危険に晒されるのは許されない。

全く、誘拐した奴らが悪いのに何故被害者である彼女達が苦しまねばならんのだ。そう思った時、ふと疑問が湧いた。厳重に警護されている王女様が2人も誘拐されたのはどうしてだ?

彼女達は昨年亡くなった王妃様の子。喪が明けた半年前、ラーアント国王は再婚した。ちょうど我々の結婚式が執り行われた時期と被る。行方不明の令嬢を探す兵士が国内に侵入して、私は式の後すぐ出陣した。ひょっとして、彼女達が誘拐されたのは……。

この誘拐事件には裏がある。急いで国王陛下に相談しなくては。

手紙を書こうとしたら、エイダから追加の報告が来た。報告を聞いて、私は更に頭を抱えてしまった。
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