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ルビーのブローチを渡すまで逃しません

5.カーラの幸せ

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「カーラさんは、とても強いですよね。お父さんとお兄さんから話を聞いてますよ。もし嫌でないのなら、エリザベス様の護衛をしてくれませんか?」

「カーラは、強いのですか?」

「ええ。身のこなしや歩き方からそうだろうなとは思っていました。おそらく彼女は、私はもちろん、ポール様より強いですよ」

「ポールより?!」

ああ……お嬢様が驚いておられる。
また、母のように女なのに……そう言われるのだろうか。身構えていると、エリザベスお嬢様は手を叩いて喜んで下さった。

「凄いわ! カーラが強いなんて知らなかったわ!」

あれ?
エリザベスお嬢様は、母のように顔を顰めたりなさらなかった。嬉しそうに、凄い凄いと褒めて下さった。

「エリザベス様は、これからイアンの婚約者になります。今までより多くの危険に晒される事になる。そんな時、信頼関係のある護衛が側に居てくれたら、安心ですよね?」

「そうですね。カーラさえ良ければ、わたくしの護衛もして欲しいわ。もちろん、その分給与を上げるから」

それから、トントン拍子に話は進み、私はエリザベスお嬢様の専属護衛という地位を得た。

母は、今までの事を忘れたかのように娘が強くて誇らしいと近所に言いふらした。そんな母の姿に複雑な気持ちになったが、そんなのは些細な事だ。

父や兄や、弟と堂々と鍛錬出来るようになった。ずっと母に止められていたが、鍛錬をしたがっていた妹も鍛錬に加われるようになった。母まで、身体を鍛えだした。私は訓練の成果が出て、また兄に勝てるようになった。

父や兄も、以前のように私をお情けで訓練に加えてくれるんじゃなく、仲間として一緒に身体を鍛えてくれるようになった。兄にしか教えていなかった秘伝を父が教えてくれた。

ずっと勝てなかった兄は、私が羨ましいと言った。自分も女だったら、お嬢様を守れるのにと。

私はずっと兄が羨ましかった。そんな兄が、私を羨ましいと言う。なんだ、視点が変われば見方も変わるのだと目から鱗が落ちた。

そんな兄は、ポール様の護衛になった。それも、リアム様の口添えのおかげだ。兄は嬉々としてポール様を守っている。ポール様はかなり強いので、主人より強くないと意味がないと、兄の鍛錬は増えた。

家族はみんな、嬉しそうに暮らしている。
以前は、母が嫌いで、父や兄が羨ましかった。父や兄に認められる弟が少しだけ妬ましかったし、母に理想の女性像を押し付けられる妹を哀れに思っていた。

だけど、今は母が嫌いではなく、父や兄を尊敬している。弟や妹と鍛錬をするのも楽しい。みんな、大事な家族だ。

「カーラのおかげで、今日も安全に過ごせたわ。ありがとう」

毎日そう言ってお礼を言って下さるエリザベスお嬢様。なんて素晴らしい人なのだろう。お嬢様を守れるなんて、私は世界一幸せだ。こんな幸せな日々を過ごせるのは……リアム様のおかげだ。
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