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第二章
23.乗るしかねえ ※ユウヤ視点
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「消えた……?」
アキラが呆然としているが、俺には分かる。あれは転移魔法だ。
獣人は魔法が苦手だと最初に説明された。俺でも使えない転移魔法をレナが使えるとは思えない。
多分、魔道具だ。転移の魔道具はものすごく高価だと聞いた事がある。そんなもんを持てるほど、レナは冒険者として成功しているんだ。
……あのレナの笑みは……なんだかゾッとするものがあった。
アオイやカナを亡くして壊れてしまったのではないだろうか。
とにかく、あのレナに近寄る気にはなれねぇ。
「お、おい! 俺達はどうすんだよ!」
アキラが騒いでいるが、俺は良い機会だったと思う。ダイチは前衛の要だったけど、すぐにレナを探そうとして面倒だった。
この世界に慣れていないうちは、ダイチのリーダーシップに助けられる事が多かった。けど、もうダイチはいらない。向こうから俺たちを捨ててくれたんだ。
俺達がダイチを助ける義理はない。
冒険者ギルドで、態度が悪いと何度も忠告を受けた。
ダイチやアキラはあまり気にしていないが、俺はそろそろヤバいと思っている。戸籍のない俺達は、冒険者として生きて人間関係を築くしかない。あのドワーフの言う通り、もし除名されたらどうすんだ。
どこかの街を拠点にして、信頼を勝ち得て、定住権を得られるように頑張ろうと何度も訴えた。けど、ダイチはレナを探すと譲らなかった。前衛のダイチがいなければ、冒険者の仕事はできない。だから従うしかなかったけど、いい加減態度の悪さにうんざりしていたんだ。向こうからいなくなってくれたならラッキーだ。アキラは流されやすいから、俺が誘導してやりゃ態度の悪さも直るだろう。
前衛は探せばいい。そろそろクラスメイトだけで固まらず、こちらの世界の人達と交流するべきだと思ってたしな。
「どこに転移したか分からないから、ダイチは死んだと思うしかない。俺達は仲間を探して冒険者を続けよう」
「……そうだな。あいつ、いつもいつもレナってウザかったし。ま、幸せにやってるだろ」
「だと良いけどな。転移する寸前のレナの笑み……あの子、あんな顔する子だったか?」
「いつもダイチに怯えてた記憶しかねぇ。学校も来なくなっちまったし。確かに、なんか変だったな。アオイやカナが死んじまって、おかしくなったんじゃね?」
アキラと会話していると、目の前にたくさんの男達が現れた。背の高い冒険者の男が話しかけてくる。
「あの男がレナと幸せになる未来はねぇよ」
7人の冒険者と1人のドワーフ……このドワーフ、ギルドでレナなんていねえって言ってた奴だ!
まさか……ダイチは……!
「お前ら、ダイチに何をした?」
「安心しろ。死んだりはしねぇよ」
「こちらを見て下さい」
ドワーフが、地図を広げる。これ、だいぶ離れた大陸だな。なんか光ってるけど……なんだこれ。
「ダイチさんの現在位置です」
「なんで分かるんだよ」
「説明して欲しければ僕についてきて下さい。転移しますから。知りたくなければこれで終わりです。ダイチさんは元気に生きてますからご安心下さい」
ドワーフの男が、冷たい目で淡々と語りかけてくる。なんだこいつ。弱そうなのに、めちゃくちゃ怖え。
ダイチは友人だ。さっきはつい見捨てようとしちまったけど、やっぱり気になる。アキラを見ると、小さく頷いた。
ただ、こいつらの言いなりにはなれねぇ。
「俺らの安全を保証してくれ」
そう言うと、ドワーフの男以外の奴らが冒険者証を預けてきた。冒険者証は、冒険者にとって命と同じくらい大切な物だ。
アキラの態度が軟化した。
「今からゆっくり話せる場所に案内する。身分証を預けるし、俺達は距離を取る。これは転移できる魔道具だ。お前なら、これが本物だって分かるよな?」
渡された魔道具は、間違いなく転移の魔道具だった。
「俺らが気に入らなかったら、それを使って逃げれば良い。で、冒険者ギルドに訴えろよ」
呆然としていると、冒険者の男が転移の魔道具だけを華麗に奪い去った。
「この魔道具の価値は分かるよな? 転移に同意してくれりゃ、報酬として渡してやるよ」
転移の魔道具を売れば、一生働かなくても良いくらいの大金が手に入る。アキラは、ゴクリと喉を鳴らして魔道具を受け取ろうとしている。
「待ってくれ。なんでこんな高価なもんを渡す。それだけ教えてほしい」
「僕にとってレナさんは、それだけ大切な人なんです。こんな魔道具、僕なら幾つだって作れる。僕の目的は、貴方達がレナさんに近寄らない事。それだけですよ」
そう言って穏やかな笑みを浮かべるドワーフの男は、底知れぬ凄みがあった。
「この人の言ってる事は本当だ。彼は俺達の依頼人。お前らがレナを狙ってるから、大金を払って俺達を雇ったんだ。お前らにとっても悪い話じゃねぇ。お前らに求めるのはひとつだけ。レナに近寄らなければ良いだけだ。それだけで高価な魔道具がお前らのモンだ。どうする? 乗るか?」
最初に話しかけてきた男が遠回しに脅してくる。
アキラはすっかり怯えちまってる。俺だって、今すぐ逃げ出したいくらいビビってる。けど、この数から逃げるのは無理だ。
「悪いようにはしません。レナさんにさえ、近寄らなければ」
優しそうに笑うドワーフが怖い。俺達は、彼等の言う通り転移に同意するしかなかった。
アキラが呆然としているが、俺には分かる。あれは転移魔法だ。
獣人は魔法が苦手だと最初に説明された。俺でも使えない転移魔法をレナが使えるとは思えない。
多分、魔道具だ。転移の魔道具はものすごく高価だと聞いた事がある。そんなもんを持てるほど、レナは冒険者として成功しているんだ。
……あのレナの笑みは……なんだかゾッとするものがあった。
アオイやカナを亡くして壊れてしまったのではないだろうか。
とにかく、あのレナに近寄る気にはなれねぇ。
「お、おい! 俺達はどうすんだよ!」
アキラが騒いでいるが、俺は良い機会だったと思う。ダイチは前衛の要だったけど、すぐにレナを探そうとして面倒だった。
この世界に慣れていないうちは、ダイチのリーダーシップに助けられる事が多かった。けど、もうダイチはいらない。向こうから俺たちを捨ててくれたんだ。
俺達がダイチを助ける義理はない。
冒険者ギルドで、態度が悪いと何度も忠告を受けた。
ダイチやアキラはあまり気にしていないが、俺はそろそろヤバいと思っている。戸籍のない俺達は、冒険者として生きて人間関係を築くしかない。あのドワーフの言う通り、もし除名されたらどうすんだ。
どこかの街を拠点にして、信頼を勝ち得て、定住権を得られるように頑張ろうと何度も訴えた。けど、ダイチはレナを探すと譲らなかった。前衛のダイチがいなければ、冒険者の仕事はできない。だから従うしかなかったけど、いい加減態度の悪さにうんざりしていたんだ。向こうからいなくなってくれたならラッキーだ。アキラは流されやすいから、俺が誘導してやりゃ態度の悪さも直るだろう。
前衛は探せばいい。そろそろクラスメイトだけで固まらず、こちらの世界の人達と交流するべきだと思ってたしな。
「どこに転移したか分からないから、ダイチは死んだと思うしかない。俺達は仲間を探して冒険者を続けよう」
「……そうだな。あいつ、いつもいつもレナってウザかったし。ま、幸せにやってるだろ」
「だと良いけどな。転移する寸前のレナの笑み……あの子、あんな顔する子だったか?」
「いつもダイチに怯えてた記憶しかねぇ。学校も来なくなっちまったし。確かに、なんか変だったな。アオイやカナが死んじまって、おかしくなったんじゃね?」
アキラと会話していると、目の前にたくさんの男達が現れた。背の高い冒険者の男が話しかけてくる。
「あの男がレナと幸せになる未来はねぇよ」
7人の冒険者と1人のドワーフ……このドワーフ、ギルドでレナなんていねえって言ってた奴だ!
まさか……ダイチは……!
「お前ら、ダイチに何をした?」
「安心しろ。死んだりはしねぇよ」
「こちらを見て下さい」
ドワーフが、地図を広げる。これ、だいぶ離れた大陸だな。なんか光ってるけど……なんだこれ。
「ダイチさんの現在位置です」
「なんで分かるんだよ」
「説明して欲しければ僕についてきて下さい。転移しますから。知りたくなければこれで終わりです。ダイチさんは元気に生きてますからご安心下さい」
ドワーフの男が、冷たい目で淡々と語りかけてくる。なんだこいつ。弱そうなのに、めちゃくちゃ怖え。
ダイチは友人だ。さっきはつい見捨てようとしちまったけど、やっぱり気になる。アキラを見ると、小さく頷いた。
ただ、こいつらの言いなりにはなれねぇ。
「俺らの安全を保証してくれ」
そう言うと、ドワーフの男以外の奴らが冒険者証を預けてきた。冒険者証は、冒険者にとって命と同じくらい大切な物だ。
アキラの態度が軟化した。
「今からゆっくり話せる場所に案内する。身分証を預けるし、俺達は距離を取る。これは転移できる魔道具だ。お前なら、これが本物だって分かるよな?」
渡された魔道具は、間違いなく転移の魔道具だった。
「俺らが気に入らなかったら、それを使って逃げれば良い。で、冒険者ギルドに訴えろよ」
呆然としていると、冒険者の男が転移の魔道具だけを華麗に奪い去った。
「この魔道具の価値は分かるよな? 転移に同意してくれりゃ、報酬として渡してやるよ」
転移の魔道具を売れば、一生働かなくても良いくらいの大金が手に入る。アキラは、ゴクリと喉を鳴らして魔道具を受け取ろうとしている。
「待ってくれ。なんでこんな高価なもんを渡す。それだけ教えてほしい」
「僕にとってレナさんは、それだけ大切な人なんです。こんな魔道具、僕なら幾つだって作れる。僕の目的は、貴方達がレナさんに近寄らない事。それだけですよ」
そう言って穏やかな笑みを浮かべるドワーフの男は、底知れぬ凄みがあった。
「この人の言ってる事は本当だ。彼は俺達の依頼人。お前らがレナを狙ってるから、大金を払って俺達を雇ったんだ。お前らにとっても悪い話じゃねぇ。お前らに求めるのはひとつだけ。レナに近寄らなければ良いだけだ。それだけで高価な魔道具がお前らのモンだ。どうする? 乗るか?」
最初に話しかけてきた男が遠回しに脅してくる。
アキラはすっかり怯えちまってる。俺だって、今すぐ逃げ出したいくらいビビってる。けど、この数から逃げるのは無理だ。
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