前世の推しが婚約者になりました

編端みどり

文字の大きさ
20 / 56

19

しおりを挟む
夜会は、今まで参加していた茶会とは全く違った。極力家族と離れないようにしていたが、やはりみんなそれぞれにお付き合いがある。

わたくしは1人になり、様々なお誘いを受けていた。その度に、笑顔で断る。婚約者の居ない男性はともかく、婚約者の居る男が誘いに来るな。ああもう、お姉様方に睨まれたじゃない!

「初めまして。ずいぶん人気ね」

冷たい声がする。

ああ、この人は王妃様のご実家のご令嬢だわ。確かお名前はレベッカ・グレイス・エヴァンス様。わたくしと同い年だが、茶会でお会いした事はない。お話しするのは初めてだ。一応うちは筆頭公爵家。面と向かって文句を言えるのは彼女くらいなのだろう。

「初めまして。アマンダ・オブ・テイラーと申します。エヴァンス公爵令嬢のお噂は伺っておりますわ。刺繍がお得意だとか。わたくしはあまり得意ではありませんので、羨ましいですわ」

「レベッカ・グレイス・エヴァンスよ。レベッカで良いわ」

頬を染めておられる。攻略成功かしら?
レベッカ様はキツいご令嬢だと言われているけど、刺繍の腕はプロ級で婚約者である騎士団長が大好きらしい。ツンツンしてるけど、騎士団長の前では幸せそうに微笑んでいたんですって。他の人の目があるとずーっとツンツンしてるみたいで、仲は良くないと思われてる。

お母様独自のネットワークで調べた結果、レベッカ様は騎士団長が大好きだと分かってる。騎士団長も、歳の離れたレベッカ様を大事にしておられるそうだ。

わたくしはレベッカ様をツンデレだと認識した。だから、お会いするのが楽しみだったのよね。絵姿より、実物の方が可愛いわ!

「レベッカ様は、どんな刺繍をなさいますか? わたくしもアルフレッド殿下に刺繍を贈りたいのですが、なかなか上手く出来ないのです」

「そうなの? 最初はハンカチに名前を刺繍するくらいで良いのよ。出来る?」

「名前なら出来ますわ。でも、絵柄が上手く出来ないのです」

「簡単な物から始めてはどうかしら? 花なんかは簡単でおすすめよ。なんなら、今度教えてあげるわ」

うわ、レベッカ様優しい!
ツンと澄ましたお顔をなさっておられるけど、この人は良い人だわ。

「本当ですか?! 嬉しいです! 是非我が家にお越しになって下さいまし」

「……良いわ。お邪魔するわね。来週なんていかが?」

こうして、レベッカ様と交流を持つ事に成功した。彼女はアル様をどう思っているのかしら。分からないけど、今は触れるべきではないわね。

営業でもそうだった。最初から売ろうとすると売れない。関係を作ってからでないと、話を聞いてもらえない。

そう習ったし、それで結果を出した。でも、上司が変わりスピードを求められるようになった。既存の顧客へのサポートは数に入れられず、新規顧客を開拓した者が評価されるようになった。

それもひとつの営業の形だろう。

でも、私はそのスピードについて行けなかった。

……っと、まただわ。最近、前世の事を考える時間が増えた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

「陛下、子種を要求します!」~陛下に離縁され追放される七日の間にかなえたい、わたしのたったひとつの願い事。その五年後……~

ぽんた
恋愛
「七日の後に離縁の上、実質上追放を言い渡す。そのあとは、おまえは王都から連れだされることになる。人質であるおまえを断罪したがる連中がいるのでな。信用のおける者に生活できるだけの金貨を渡し、託している。七日間だ。おまえの国を攻略し、おまえを人質に差し出した父王と母后を処分したわが軍が戻ってくる。そのあと、おまえは命以外のすべてを失うことになる」 その日、わたしは内密に告げられた。小国から人質として嫁いだ親子ほど年齢の離れた国王である夫に。 わたしは決意した。ぜったいに願いをかなえよう。たったひとつの望みを陛下にかなえてもらおう。 そう。わたしには陛下から授かりたいものがある。 陛下から与えてほしいたったひとつのものがある。 この物語は、その五年後のこと。 ※ハッピーエンド確約。ご都合主義のゆるゆる設定はご容赦願います。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

【完結】婚約を解消して進路変更を希望いたします

宇水涼麻
ファンタジー
三ヶ月後に卒業を迎える学園の食堂では卒業後の進路についての話題がそここで繰り広げられている。 しかし、一つのテーブルそんなものは関係ないとばかりに四人の生徒が戯れていた。 そこへ美しく気品ある三人の女子生徒が近付いた。 彼女たちの卒業後の進路はどうなるのだろうか? 中世ヨーロッパ風のお話です。 HOTにランクインしました。ありがとうございます! ファンタジーの週間人気部門で1位になりました。みなさまのおかげです! ありがとうございます!

どうも、死んだはずの悪役令嬢です。

西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。 皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。 アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。 「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」 こっそり呟いた瞬間、 《願いを聞き届けてあげるよ!》 何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。 「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」 義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。 今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで… ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。 はたしてアシュレイは元に戻れるのか? 剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。 ざまあが書きたかった。それだけです。

【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。

猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは、聖女。 ――それは私ではなく、姉でした。 復活した魔王によって侯爵領を奪われ、没落した姉妹。 誰からも愛される姉は聖女となり、私は“支援しかできない白魔導士”のまま。 王命により結成された勇者パーティ。 勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い。 そして――“おまけ”の私。 前線に立つことも、敵を倒すこともできない。 けれど、戦場では支援が止まれば人が死ぬ。 魔王討伐の旅路の中で知る、 百年前の英雄譚に隠された真実。 勇者と騎士、弓使い、そして姉妹に絡みつく過去。 突きつけられる現実と、過酷な選択。 輝く姉と英雄たちのすぐ隣で、 「支えるだけ」が役割と思っていた少女は、何を選ぶのか。 これは、聖女の妹として生きてきた“おまけ”の白魔導士が、 やがて世界を支える“要”になるまでの物語。 ――どうやら、私がいないと世界が詰むようです。 ※本作の章構成:  第一章:アカデミー編 32話  第二章:討伐軍編 32話  第三章:魔王決戦編 36話 ※「カクヨム」、「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位) ※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。

地味で結婚できないと言われた私が、婚約破棄の席で全員に勝った話

といとい
ファンタジー
「地味で結婚できない」と蔑まれてきた伯爵令嬢クラリス・アーデン。公の場で婚約者から一方的に婚約破棄を言い渡され、妹との比較で笑い者にされるが、クラリスは静かに反撃を始める――。周到に集めた証拠と知略を武器に、貴族社会の表と裏を暴き、見下してきた者たちを鮮やかに逆転。冷静さと気品で場を支配する姿に、やがて誰もが喝采を送る。痛快“ざまぁ”逆転劇!

処理中です...