前世の推しが婚約者になりました

編端みどり

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番外編

第二王子視点 1

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「おかえりなさい。あら? なんだか良い香りがするわね。女性の香水の香りだわ」

「違う! これは仕事だ!」

「そんなに焦らなくても知ってるわよ。アルフレッドがわざわざ報告に来てくれたわ。アマンダは大丈夫なの?」

「ああ、唾をかけられただけで怪我はないからな」

「唾なんて……許せないわね」

いつも穏やかな妻が顔を歪めている。私も同じ気持ちだ。だが……。

「放っておいてもアルフレッドが報復する。手を出したら怒るぞ。我々はアマンダを慰めるくらいしか出来る事はない」

「そうね。王妃様をお誘いして、アマンダとお茶でも飲みましょう」

「アマンダの好きな菓子を手配しておこう」

私は王弟で、騎士隊長をしている。兄は国王、ふたつ下の弟は歌い手、他にもたくさんの弟や妹がいる。兄弟が多く兄が優秀だった事もあり、私は王族でありながら自由に過ごす事が許された。

私は母が苦手だ。兄と私は厳しく躾けたのに、弟や妹達には甘い母が受け入れられなかった。兄は仕方ないと割り切っていたようだが、私は兄のように割り切れなかった。

だから、騎士団に入った。私が怪我をすれば母が心配してくれるのではないか。そんな子どもじみた理由で騎士になった。だが、騎士はそんなに甘くない。

騎士団長は有力貴族だから、王族である私も騎士団長になれるだろう。そんな甘い気持ちは入団初日に打ち砕かれた。

騎士団は完全な実力主義。騎士団長は、単に騎士の中で一番強いから騎士団長をしているだけだったのだ。

歴代の騎士団長は平民もたくさん居た。そんな事も知らずに騎士になったのかと散々馬鹿にされた。だが、身分は関係なく実力主義である騎士団は生意気な王子である私を簡単に受け入れてくれた。

必死で身体を鍛えた。少しずつ認められるようになってきた時、王になった兄に呼び出されひとつの隊を任された。

それは世界的に有名な歌い手になった弟、アルフレッドの護衛。

アルフレッドとはほとんど会う事はなかった。話した記憶もない。兄もそうだった筈なのに、いつの間にか兄とアルフレッドは兄弟らしい関係を築いていた。

私は今度は、アルフレッドに嫉妬心を抱いた。私は兄を尊敬している。騎士団に入った私を心配してよく様子を見に来てくれたし、衝突しがちだった仲間たちの仲を取り持ってくれたりもした。そんな兄がアルフレッドを心配する、なんだか面白くなかった。

だが、反論する事は許されない。国王の命令には従うしかない。兄は、アルフレッドも心配だがアマンダに傷ひとつつけないように。と言った。

アルフレッドはともかく、なぜアマンダ? そう思ったが、理由はすぐに判明した。
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