興味はないが、皇帝になってやるよ

編端みどり

文字の大きさ
43 / 45
番外編 誰が兄上壊したの?

第十二話

しおりを挟む
「こんな部屋あったんだ。だからイオスはセーラを匿えたんだね!」

現在、イオスとセーラとフォスは、過去のイオスの部屋にあった隠し部屋に居る。フォスの婚約者のレミィも一緒だ。

それから、イオスの提案で宰相のデュバルも居る。セーラから話を聞いたフォスとイオスは、数々の企みの裏に冷戦状態の隣国が居るのではないかと考えていた。だが、詳細を話したくとも、どこで話が漏れるか分からない。皇帝陛下の目である密偵があちこちに潜んでいる為、城でそのような話をできる場所はほとんどない。

その為、イオスが過去に使っていた隠し部屋を提供した。現在は、一棟全てがイオス専用として使われており、イオスに忠実な使用人も揃っていた。例の隠し部屋は、天井裏にも潜めない。過去の皇帝が、そのように作ったからだ。

本日は、結婚式の打ち合わせという名目で集まっている。父上と母上に、育ててもらった恩返しをしたいので、サプライズを考えている。その打ち合わせだと使用人には伝えてある為、皆快く席を外してくれた。恐らく、忠実な使用人達は今日の事を皇帝陛下に報告する事はないだろう。

万が一報告されても、父も知らないフリをしてくれる筈だとフォスは言った。デュバルも、笑顔で同意した。

フォスはデュバルを呼ぶ事を反対したが、イオスはデュバルの人脈や、情報網が必要だと主張して今回の場が用意された。レミィだけに話すより、デュバルも巻き込んだ方が安心だとイオスは主張した。

「デュバル公爵は、義理堅い男ですし今後も兄上が皇帝になれば支えてくれる人物です。オレの時も、ずいぶん助けてくれました。彼は信用して良いと思います。それに、僕らだけで動くには限界があります。父上に全て話すのも手ですが、母上に手を出したと知れば見境なく戦争を仕掛けるでしょう。無駄に民の犠牲を出したくありません」

「……確かに、父上に言うのはナシだ。分かった、イオスを信じるよ。だけどイオス、皇帝になるのは僕じゃない、イオスだよ」

「兄上の方が向いています」

「……ま、それはおいおいだね。今は、目の前の事を片付けよう」

「はい!」

デュバルは、初めて見る隠し部屋に驚きを隠せない。部屋の由来を話せば、口をあんぐり開けていた。

「「安心してくれ、我々が愛人を持つなどあり得ない」」

口を揃えて主張する兄弟に、セーラもレミィもクスクスと笑った。

「このような隠し部屋は存じませんでした。ここに入れて下さる程に信用して頂き光栄ですが……一体おふたりは何を話したいのですか? 皇帝陛下へのサプライズにしては、厳重過ぎますぞ」

「デュバル公爵、いや、お父様。それからレミィ、これから我々が言う事は現実的ではない。だが、実際に僕たち3人が経験した事なんだ。レミィ、本当は貴方に言うのが怖い。お願い……僕を嫌わないで」

「フォスは相変わらず臆病ね。わたくし、貴方が好きよ。隠し事は嫌い。だからね、教えて。受け入れ難い事でも、頭ごなしに貴方を否定したりしないわ」

「そこで全て受け入れるって言わないあたりレミィだよね」

「そりゃそうよ。聞かないと判断できないもの。でも、隠さず話してくれようとするフォスは、素敵よ。大好き!」

「……ああもう、レミィには敵わないよ」

フォスは、少しずつ過去の事を話し始めた。最初は半信半疑だったデュバルとレミィだが、フォスやイオスが知らない筈の事を知っていたり、セーラの国の危機など見逃せない事も多くあり、最終的には3人は過去の記憶があると判断した。

「これは……確かに人に言えませんな。我々を信用して明かして下さった事、心から感謝致します。誰にも明かさない事を、ギレ・ディ・デュバルの名において誓います」

それは、本来であれば皇帝陛下にしか行わない誓い。デュバルは、ふたりの心意気に報いる為にあえて誓いを行った。

「同じく、レミィ・ディ・デュバルの名において誰にも明かさない事を誓いますわ。フォス、教えてくれてありがとう。隠すのは辛かったでしょう? わたくし、変わらずフォスを愛してるわ」

「レミィ……ありがとう……」

フォスはレミィに拒絶されなかった事に安心して、レミィを抱きしめ、静かに泣いた。

「今後の為に、色々情報収集を致しますのでお任せください。宰相の人脈をフル活用致しますぞ」

逞しい味方を得た兄弟は、父へのサプライズを決めて解散した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

とっていただく責任などありません

まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、 団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。 この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!? ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。 責任を取らなければとセルフイスから、 追いかけられる羽目に。

あっ、追放されちゃった…。

satomi
恋愛
ガイダール侯爵家の長女であるパールは精霊の話を聞くことができる。がそのことは誰にも話してはいない。亡き母との約束。 母が亡くなって喪も明けないうちに義母を父は連れてきた。義妹付きで。義妹はパールのものをなんでも欲しがった。事前に精霊の話を聞いていたパールは対処なりをできていたけれど、これは…。 ついにウラルはパールの婚約者である王太子を横取りした。 そのことについては王太子は特に魅力のある人ではないし、なんにも感じなかったのですが、王宮内でも噂になり、家の恥だと、家まで追い出されてしまったのです。 精霊さんのアドバイスによりブルハング帝国へと行ったパールですが…。

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

阿里
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています

六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。 しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。 「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!

【完結】私の見る目がない?えーっと…神眼持ってるんですけど、彼の良さがわからないんですか?じゃあ、家を出ていきます。

西東友一
ファンタジー
えっ、彼との結婚がダメ? なぜです、お父様? 彼はイケメンで、知性があって、性格もいい?のに。 「じゃあ、家を出ていきます」

友人の結婚式で友人兄嫁がスピーチしてくれたのだけど修羅場だった

海林檎
恋愛
え·····こんな時代錯誤の家まだあったんだ····? 友人の家はまさに嫁は義実家の家政婦と言った風潮の生きた化石でガチで引いた上での修羅場展開になった話を書きます·····(((((´°ω°`*))))))

処理中です...