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第一章 うちの娘は、世界一美しいわ!
9.毒リンゴ
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「ところで、そろそろアンタの旦那が仕事をするらしいぜ」
「白雪の養育権取り上げるとか言い出さないわよね?」
「言わねぇだろ。アンタのおかげで白雪の評判は良い。その噂がついに引き篭もりの国王陛下にまで届いたんだよ。毎回必死で宰相が訴えてたからな」
「宰相には悪いけど大人しく引き篭もってくれてる方がやりやすいわ。それに、白雪の評判が良いのは鏡の手柄じゃない」
「アンタの手柄だよ。俺はアンタのモノなんだから」
「むぅ……。確かに鏡を作ったのはわたくしだけど、モノって言うのは違う気がするわ」
「前世とやらを思い出したせいでますます甘ちゃんになってねぇか?」
「良いの! もう冷酷な魔女はおしまいよ! だって白雪に怖がられたくないもの!」
「アンタは元々甘かったよ。俺は物語でアンタが渡した毒リンゴも、本当に死ぬようなもんだったか怪しいなって思ってんだ。アンタなら口に入れた瞬間死ぬ毒だって作れるだろ」
「そうね。作れるわ。めんどくさいけどね」
「白雪姫の物語でアンタが悪役だったとは思えねぇんだよなぁ」
「えー……物語のわたくしは悪役よ。狩人を雇って白雪を殺そうとするし、毒リンゴも食べさせるし」
「さっきも言ったけど、信用できる狩人は居ないだろ。心当たりは1人だけ。アンタの夫は、お忍びで狩りをするのが好きなんだってよ」
「……まさか」
「今のアンタは違うけど、白雪と会うまでは夫に好かれたいと思ってたろ?」
「物語でわたくしが雇った狩人は、夫だってこと? そんな描写無かったわよ! 白雪だって、さすがに父親に気が付かないって事はないでしょ!」
「ある。白雪に聞いたけど、父親の顔をあまり覚えてないらしい。ま、ずーっと引き篭ってるんだから当然だよな。甘いアンタが心配して、娘が憎いなら殺してみろって言ったんじゃねぇか? 自分が悪役になって親子の縁を繋ごうとしたんじゃないか? ちょーっと強引な気もするけど、物語なんて捏造されるもんだしな」
「じゃあ、7人の小人って何よ!」
「国王は、隠密部隊を持っているんだよ。今は国王が腑抜けだから活動してねぇけど、7人居たはずだ。全員、小柄な男だぜ」
「なるほどね。小人の正体はそれか」
「アンタは白雪の様子を俺を通して見てたんじゃないか? そんな描写、物語でもあったんだろ?」
「確かに、鏡を見て白雪が生きていることを知って、わたくしは毒リンゴを作成したわ」
「本当に毒リンゴだったのか?」
「へ? 魔法で毒リンゴを作ってるような描写あったけど」
「栄養豊富なリンゴって可能性は? 食品の栄養価を高めるって魔法あったよな?」
「あったわ。じゃあわたくしは白雪に好物のリンゴを届けに行っただけ?」
「だいぶアンタに好意的な解釈をしてるけどな。他の贈り物も事故じゃね? もしくは……。そもそも、小人が隠密なら何度も危険な目にあわせねえだろ」
「むー……そもそも白雪姫の物語も色々パターンあって分からないのよね」
「せいぜい参考程度にするんだな。大体、毒なら喉に詰まらせた林檎が取れただけで元気になるっておかしいだろ。解釈が無理矢理なとこもあるけど、狩人が国王はありそうじゃね?」
「師匠なら相談出来るかしら。鏡、連絡って取れる?」
師匠の鏡とわたくしの鏡は繋がる事が出来る。
「あの人の鏡は怖いから、会いたくねぇ。俺が相談に乗るから、呼ぶのはやめてくれ」
「しっかり白雪を守ってくれるなら良いわよ」
「誠心誠意アンタの大事な白雪を守ってやる。だから頼む、あの人に連絡を取るのは非常時だけにしてくれ」
「分かったわ。鏡の解釈があってたとして、なんでわたくしは殺されたのかしら? わたくしはやっぱり白雪を虐めたんじゃない?」
「相手はあの変態王子だぞ。アンタの死体が欲しかったんじゃね?」
「それはありそう! やだぁ。気持ち悪いんだけど!」
「もうありえない未来だ。とりあえず夫の対応を考えたほうが良いんじゃねぇか?」
「仕事してくれるのは有り難いけど、白雪に酷いことをした事実は変わらない。絶対に白雪に謝罪して貰う。あの子を傷つけようとするなら許さないわ」
「そこは、夫婦で話し合えよ」
「忘れてた……! 一応夫婦だっけ……」
「すげぇイヤそうだな。いいニュースもあるぜ。料理長への命令が解除された。これで料理長は白雪に美味い飯を食わせられる。国王も白雪に危害を加える気はねぇ。白雪を可愛いと思ってる。安心しな」
「やった! やったわ! 今夜は白雪の好物にしてもらいましょう! デザートはアップルパイが良いわね。時間かかるから早く言わなきゃ! ごめん鏡、料理長の所に行って来るわ!」
「おう、言って来いよ。俺は家庭教師の時間だから働いて来る」
「まだ白雪には内緒にしておいて。驚かせたいし、白雪に冷たい態度を取らないように言い聞かせてくるから」
「分かった。最近の白雪は、アンタと食事をするのを楽しみにしてる。父親の事も気にしてたし、一緒に食事出来たら喜ぶ」
「くっ……早く白雪を喜ばせたいわ! けどあのクズ男は信用出来ない。すぐ白雪に会わせる訳にいかない。まずわたくしが話をするわ」
「今度は宰相や騎士団長が側に付いてるから大丈夫だぜ。前みたいに襲われる事はない。宰相も、騎士達も、すっかり女王様の虜だからな。ちゃんと守って貰えるよ。しっかし、あんだけ誘惑しようとしてた男をクズ呼ばわりか……ホント、変わったよな」
「あら、鏡も変わったわ。以前のクールな鏡も良いけど、わたくしは今の貴方の方が好きよ」
「……そうかよ」
鏡の耳が赤い。鏡の精も、照れると赤くなるのね。
「白雪の養育権取り上げるとか言い出さないわよね?」
「言わねぇだろ。アンタのおかげで白雪の評判は良い。その噂がついに引き篭もりの国王陛下にまで届いたんだよ。毎回必死で宰相が訴えてたからな」
「宰相には悪いけど大人しく引き篭もってくれてる方がやりやすいわ。それに、白雪の評判が良いのは鏡の手柄じゃない」
「アンタの手柄だよ。俺はアンタのモノなんだから」
「むぅ……。確かに鏡を作ったのはわたくしだけど、モノって言うのは違う気がするわ」
「前世とやらを思い出したせいでますます甘ちゃんになってねぇか?」
「良いの! もう冷酷な魔女はおしまいよ! だって白雪に怖がられたくないもの!」
「アンタは元々甘かったよ。俺は物語でアンタが渡した毒リンゴも、本当に死ぬようなもんだったか怪しいなって思ってんだ。アンタなら口に入れた瞬間死ぬ毒だって作れるだろ」
「そうね。作れるわ。めんどくさいけどね」
「白雪姫の物語でアンタが悪役だったとは思えねぇんだよなぁ」
「えー……物語のわたくしは悪役よ。狩人を雇って白雪を殺そうとするし、毒リンゴも食べさせるし」
「さっきも言ったけど、信用できる狩人は居ないだろ。心当たりは1人だけ。アンタの夫は、お忍びで狩りをするのが好きなんだってよ」
「……まさか」
「今のアンタは違うけど、白雪と会うまでは夫に好かれたいと思ってたろ?」
「物語でわたくしが雇った狩人は、夫だってこと? そんな描写無かったわよ! 白雪だって、さすがに父親に気が付かないって事はないでしょ!」
「ある。白雪に聞いたけど、父親の顔をあまり覚えてないらしい。ま、ずーっと引き篭ってるんだから当然だよな。甘いアンタが心配して、娘が憎いなら殺してみろって言ったんじゃねぇか? 自分が悪役になって親子の縁を繋ごうとしたんじゃないか? ちょーっと強引な気もするけど、物語なんて捏造されるもんだしな」
「じゃあ、7人の小人って何よ!」
「国王は、隠密部隊を持っているんだよ。今は国王が腑抜けだから活動してねぇけど、7人居たはずだ。全員、小柄な男だぜ」
「なるほどね。小人の正体はそれか」
「アンタは白雪の様子を俺を通して見てたんじゃないか? そんな描写、物語でもあったんだろ?」
「確かに、鏡を見て白雪が生きていることを知って、わたくしは毒リンゴを作成したわ」
「本当に毒リンゴだったのか?」
「へ? 魔法で毒リンゴを作ってるような描写あったけど」
「栄養豊富なリンゴって可能性は? 食品の栄養価を高めるって魔法あったよな?」
「あったわ。じゃあわたくしは白雪に好物のリンゴを届けに行っただけ?」
「だいぶアンタに好意的な解釈をしてるけどな。他の贈り物も事故じゃね? もしくは……。そもそも、小人が隠密なら何度も危険な目にあわせねえだろ」
「むー……そもそも白雪姫の物語も色々パターンあって分からないのよね」
「せいぜい参考程度にするんだな。大体、毒なら喉に詰まらせた林檎が取れただけで元気になるっておかしいだろ。解釈が無理矢理なとこもあるけど、狩人が国王はありそうじゃね?」
「師匠なら相談出来るかしら。鏡、連絡って取れる?」
師匠の鏡とわたくしの鏡は繋がる事が出来る。
「あの人の鏡は怖いから、会いたくねぇ。俺が相談に乗るから、呼ぶのはやめてくれ」
「しっかり白雪を守ってくれるなら良いわよ」
「誠心誠意アンタの大事な白雪を守ってやる。だから頼む、あの人に連絡を取るのは非常時だけにしてくれ」
「分かったわ。鏡の解釈があってたとして、なんでわたくしは殺されたのかしら? わたくしはやっぱり白雪を虐めたんじゃない?」
「相手はあの変態王子だぞ。アンタの死体が欲しかったんじゃね?」
「それはありそう! やだぁ。気持ち悪いんだけど!」
「もうありえない未来だ。とりあえず夫の対応を考えたほうが良いんじゃねぇか?」
「仕事してくれるのは有り難いけど、白雪に酷いことをした事実は変わらない。絶対に白雪に謝罪して貰う。あの子を傷つけようとするなら許さないわ」
「そこは、夫婦で話し合えよ」
「忘れてた……! 一応夫婦だっけ……」
「すげぇイヤそうだな。いいニュースもあるぜ。料理長への命令が解除された。これで料理長は白雪に美味い飯を食わせられる。国王も白雪に危害を加える気はねぇ。白雪を可愛いと思ってる。安心しな」
「やった! やったわ! 今夜は白雪の好物にしてもらいましょう! デザートはアップルパイが良いわね。時間かかるから早く言わなきゃ! ごめん鏡、料理長の所に行って来るわ!」
「おう、言って来いよ。俺は家庭教師の時間だから働いて来る」
「まだ白雪には内緒にしておいて。驚かせたいし、白雪に冷たい態度を取らないように言い聞かせてくるから」
「分かった。最近の白雪は、アンタと食事をするのを楽しみにしてる。父親の事も気にしてたし、一緒に食事出来たら喜ぶ」
「くっ……早く白雪を喜ばせたいわ! けどあのクズ男は信用出来ない。すぐ白雪に会わせる訳にいかない。まずわたくしが話をするわ」
「今度は宰相や騎士団長が側に付いてるから大丈夫だぜ。前みたいに襲われる事はない。宰相も、騎士達も、すっかり女王様の虜だからな。ちゃんと守って貰えるよ。しっかし、あんだけ誘惑しようとしてた男をクズ呼ばわりか……ホント、変わったよな」
「あら、鏡も変わったわ。以前のクールな鏡も良いけど、わたくしは今の貴方の方が好きよ」
「……そうかよ」
鏡の耳が赤い。鏡の精も、照れると赤くなるのね。
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