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1.婚約破棄計画書
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「これは……なに?」
いつものように婚約者の仕事を代行していたミランダは独り言を呟いた。
ミランダは侯爵令嬢で、10歳の頃に王太子の婚約者になった。現在17歳だ。結婚まで、あと半年。ミランダが18歳になった日に王太子アルフレッドとミランダは式を挙げる。
結婚準備は着々と進んでおり、ミランダは王城に引っ越しを済ませ、政務を行なっている。王にも、王妃にも認められている。
特に王妃はミランダを気に入っており、一緒に仕事をして毎日のようにお茶を飲む。この後も、王妃とのティータイムの予定が入っている。
ティータイムの前に、王太子の執務室でアルフレッドが放置した書類を整理しようとしたミランダは、とんでもない物を見つけてしまった。
「婚約破棄……計画書……?」
ミランダが見つけたのは、アルフレッドとミランダの婚約破棄計画書だった。
読みにくい字で書かれたそれは、ミランダの悪女ぶりが5枚に渡って綴られており、婚約破棄をして男爵令嬢のソフィアと結婚するべきだと書かれている。
ソフィアがいかに優秀で、王妃に相応しいのか10枚に渡って綴られたそれを全て読み終えたミランダは、吐き気がしてうずくまった。
「これ……アルフレッドの字じゃ……なによこれ……どうしてこんなものが……」
これがもし、聞き覚えのない令嬢の名が書かれていればいくら婚約者のアルフレッドの字でも吐き気を催したりはしなかっただろう。
しかしミランダは、ソフィアを知っていた。
直接会った事はないが、婚約者であるアルフレッドがソフィアの話をしていた。ミランダを一切褒めないアルフレッドが、優秀だ、素晴らしい令嬢だと誉め称えていたので僅かに胸が痛んだのを覚えている。
王妃もソフィアは優秀なのでミランダの侍女にしたいと言っていた。
ミランダは、王妃が認めるなら侍女に推薦するのも悪くないと思っていた。つい先日、父に手紙を書いてソフィアの調査と見込みがある令嬢なら侍女にならないか打診して欲しいと書いて送ったばかりだ。
調査結果はまだ届いていない。家族に今すぐ会いたいと思ったミランダは、婚約破棄計画書を隅々まで読み込み記憶してから、未処理書類の一番下に置いた。他の書類も全て確認し、期日と万が一処理されなかった場合どうなるか確認する。期日はひと月以上あり、どの書類も処理されなくても王と王妃に同じものが回っているので王族の誰かが決裁すれば仕事が進む。最悪、止まってしまっても大きな影響はない。
そのような書類しか回されなくなった婚約者を情けなく思いながら、ミランダは涙を堪えて深呼吸した。
アルフレッドの仕事が遅いと誰もが知っているので、最近はアルフレッドに回る書類が少なくなっていた。文官達は可能な限り王や王妃に決裁を回し、アルフレッドに回す書類は最低限。ミランダが実家に帰れば、アルフレッドに書類を回す文官はいないのでこれ以上書類が増えることはない。
文官達の合言葉は、あと半年の我慢。ミランダが結婚し王族になれば、ミランダの決裁で仕事を進められるようになるからだ。
ミランダは、小声で情報を整理し始めた。
「式の準備だと言えば、帰れるわよね……ううん、いっそソフィア嬢の件を言い訳にして……王妃様のお茶会で帰宅の許可を取って、晩餐の時に報告して……今夜中に帰れば……なんとか覚えていられる。その前に、アルフレッドと話をする? いや、それは無理……忘れちゃう……影も……家なら……」
ミランダは何度も深呼吸を繰り返し、溢れる涙をハンカチで拭い化粧を直して部屋を出た。汚い字で書かれた婚約破棄計画書が、書類の一番下で潰されていた。
いつものように婚約者の仕事を代行していたミランダは独り言を呟いた。
ミランダは侯爵令嬢で、10歳の頃に王太子の婚約者になった。現在17歳だ。結婚まで、あと半年。ミランダが18歳になった日に王太子アルフレッドとミランダは式を挙げる。
結婚準備は着々と進んでおり、ミランダは王城に引っ越しを済ませ、政務を行なっている。王にも、王妃にも認められている。
特に王妃はミランダを気に入っており、一緒に仕事をして毎日のようにお茶を飲む。この後も、王妃とのティータイムの予定が入っている。
ティータイムの前に、王太子の執務室でアルフレッドが放置した書類を整理しようとしたミランダは、とんでもない物を見つけてしまった。
「婚約破棄……計画書……?」
ミランダが見つけたのは、アルフレッドとミランダの婚約破棄計画書だった。
読みにくい字で書かれたそれは、ミランダの悪女ぶりが5枚に渡って綴られており、婚約破棄をして男爵令嬢のソフィアと結婚するべきだと書かれている。
ソフィアがいかに優秀で、王妃に相応しいのか10枚に渡って綴られたそれを全て読み終えたミランダは、吐き気がしてうずくまった。
「これ……アルフレッドの字じゃ……なによこれ……どうしてこんなものが……」
これがもし、聞き覚えのない令嬢の名が書かれていればいくら婚約者のアルフレッドの字でも吐き気を催したりはしなかっただろう。
しかしミランダは、ソフィアを知っていた。
直接会った事はないが、婚約者であるアルフレッドがソフィアの話をしていた。ミランダを一切褒めないアルフレッドが、優秀だ、素晴らしい令嬢だと誉め称えていたので僅かに胸が痛んだのを覚えている。
王妃もソフィアは優秀なのでミランダの侍女にしたいと言っていた。
ミランダは、王妃が認めるなら侍女に推薦するのも悪くないと思っていた。つい先日、父に手紙を書いてソフィアの調査と見込みがある令嬢なら侍女にならないか打診して欲しいと書いて送ったばかりだ。
調査結果はまだ届いていない。家族に今すぐ会いたいと思ったミランダは、婚約破棄計画書を隅々まで読み込み記憶してから、未処理書類の一番下に置いた。他の書類も全て確認し、期日と万が一処理されなかった場合どうなるか確認する。期日はひと月以上あり、どの書類も処理されなくても王と王妃に同じものが回っているので王族の誰かが決裁すれば仕事が進む。最悪、止まってしまっても大きな影響はない。
そのような書類しか回されなくなった婚約者を情けなく思いながら、ミランダは涙を堪えて深呼吸した。
アルフレッドの仕事が遅いと誰もが知っているので、最近はアルフレッドに回る書類が少なくなっていた。文官達は可能な限り王や王妃に決裁を回し、アルフレッドに回す書類は最低限。ミランダが実家に帰れば、アルフレッドに書類を回す文官はいないのでこれ以上書類が増えることはない。
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ミランダは、小声で情報を整理し始めた。
「式の準備だと言えば、帰れるわよね……ううん、いっそソフィア嬢の件を言い訳にして……王妃様のお茶会で帰宅の許可を取って、晩餐の時に報告して……今夜中に帰れば……なんとか覚えていられる。その前に、アルフレッドと話をする? いや、それは無理……忘れちゃう……影も……家なら……」
ミランダは何度も深呼吸を繰り返し、溢れる涙をハンカチで拭い化粧を直して部屋を出た。汚い字で書かれた婚約破棄計画書が、書類の一番下で潰されていた。
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