婚約破棄計画書を見つけた悪役令嬢は

編端みどり

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3.最後の贈り物

 ミランダは、茶会が終わるとすぐに家に戻る準備を始めた。自室で少し気を抜いたミランダは、小さなため息を吐く。

「あの、ミランダ様……」

 普段は黙って仕事をする侍女のマリアが、意を決してミランダに話しかけた。

「どうしたの? マリア」

「ミランダ様だけが、我慢……」

 すぐにマリアの言いたいことを察したミランダは、マリアの言葉を遮った。

「側妃の件よね。王妃様が正しいわ。マリアもそう思うでしょ?」

「は……はい」

 戸惑いながら返事したマリアにミランダは笑顔で話しかける。

「アルフレッド殿下もよくソフィア嬢の話をしているもの。王の癒しになる方はたくさんいるべきよ。今は側妃様がいらっしゃらないけど、王に側妃様がいるのは普通の事よ」

 マリアの目をじっと見つめてから、天井裏に視線を移す。マリアはハッとした顔をして、黙って頭を下げた。

「侍女と聞いていたからソフィア嬢を側妃にしようとなさってるなんて知らなくて。王妃様のお心に気付かなくて、申し訳ないことをしたわ。だからね、急いでお父様にご相談しないといけないの。王妃様も、ソフィア嬢が公爵令嬢なら正妃にしても良いとおっしゃっていたでしょう? わたくしはお会いしたことがないから分からないけれど、きっと素晴らしいご令嬢なのよ。わたくしは、王家に忠誠を誓っているわ。国王陛下や王妃様、アルフレッド殿下の望みを叶えなければいけないと思ってるの」

 侍女たちは、ミランダに監視が付いていると知っているので個人的な会話をしないようにしている。
だが、王妃やアルフレッドの振る舞いがあまりに酷いときは、マリアのようにミランダを慰めようとする。

 しかしそれは、王家を批判する行いに他ならない。以前、ミランダを庇った侍女が解雇されてからミランダは侍女たちが何かを言おうとすると先回りして王家を褒めるようになった。
 マリアは目に涙を浮かべて口を閉ざし、仕事に集中した。荷造りを済ませたミランダは、宝石箱をマリアに手渡した。

「お世話になった侍女の皆さんにお礼をしたくて用意したの。結婚後もお世話になるし今後もよろしくということでお渡ししようと思っていて。本当はわたくしから直接お渡ししたかったのだけど、王妃様のご命令だから急いで家に戻らないといけなくて。だからマリア、この宝石箱にある真珠を侍女のみんなに渡して下さらない? みんなも、マリアに協力して欲しいの。マリア、一粒手に取ってみて」

「ミランダ様、これは……」

 宝石をミランダから手渡されたマリアは、目を見開いた。

「うちの特産の真珠よ。王妃様に毎年献上しているサイズの半分もないけれど、美しいでしょう? 一粒ずつになってしまうからささやかなものだけれど、良かったら受取って欲しいの。大きさがそれぞれ違うのは、許して頂戴」

 真珠は、三分の一だけミランダの家の家紋が刻まれていた。サイズが違うとミランダが説明しながら家紋のない真珠をマリアに見せる。伯爵令嬢でとある男の婚約者でもあるマリアは、家紋付きの宝石がもつ意味を知っていた。ミランダがこの宝石を自分に託した理由を理解したマリアは、黙ってミランダに頭を下げた。

 影はミランダを監視しているが、真珠に刻まれた小さな家紋には気付けない。
 会話さえしなければ、ミランダの真意が王家に伝わることはない。
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