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第二十九話
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学園生活は、平和なまま1年が過ぎました。
最初はクリスティーナ様への攻撃を考える貴族も居たそうですが、全てミシェル様が事前にお話し合いをしたそうです。
半年もすれば、2人の邪魔をする人は居なくなりました。
クリスティーナ様によると1年目で好感度を上げて2年目でどんどんイベントが起きるのだそうです。
だから、クリスティーナ様とミシェル様が延々といちゃついているだけで終わりました。ミシェル様は口説いてるつもりなのですが、クリスティーナ様には伝わっているか分かりません。
今日は、その辺を確認する為にクリスティーナ様とお茶会をしています。
「1年目は、ゲームはサクサク進みます。プレイ時間は2時間もないんじゃないかな?」
「2時間って結構長くありませんか?」
「やだなぁ、ゲームしてれば2時間なんてすぐですよ。1年目は誰を攻略するか決まってなければ色んなキャラとのイベントがあります。攻略対象絞ってれば1年目でラブラブになれますね。学園モノ定番の行事もたくさんあるけど、1年の時は行事で会う攻略対象と過ごすだけで邪魔は入りません。悪役令嬢も出てこないです。マリー様、本当にゲーム興味ないんですね」
「そうなの。ほとんどした事ないのよね。会社の女の子に乙女ゲームにハマっている子がいて貸してくれて、やってみた事もあるんだけど難しくて分からなくて。なぜかすぐにゲームオーバーになってしまうの」
「乙女ゲームですぐゲームオーバーって下手すぎでしょう。そういえば、私が会社でゲーム貸した先輩もそうでした。半泣きで何度やってもうまくいかないって言ってました。その先輩歴女だったから、幕末が舞台の乙女ゲーム貸したんですよね。あとで、社長夫人に何を教えてるんだって部長に怒られましたけど、社長夫人だなんて知らなかったんですもん。良い人でした。優しかったし、そういえば……マリー様にどことなく似てますね」
「わたくしが借りたのも、幕末の京都が舞台のゲームだったわ。なぜか、序盤ですぐに死んでしまって進めなかったの。いっぱい偉人が出てくるって言うから楽しみにしてたのに……」
「そうそう、そう言ってました。序盤に乙女ゲームでは絶対選ばない選択肢がいくつかあるんですけど、先輩はそれを選んじゃうんです。乙女ゲームで序盤にそんな罠を仕掛けてるゲームは珍しいから……同じゲームかも……ってか……マリー様ってまさか……川口社長の奥様じゃ……」
川口は、わたくしの前世の苗字です。結婚後ですけどね。そういえばクリスティーナ様は会った時から誰かに似てる気がしておりました。きっと、あの人でしょう。
「そうよ。クリスティーナ様の前世は、山下さんかしら? 山下 香さん。違う?」
「そ……そうです。うっそ! なんで気が付かないかなあたし!」
「お互い若いですし、髪色や目の色が違いますからね。気が付きませんよ。わたくしも先程まで気が付きませんでしたもの」
「前世持ちが多いから、前世の個人プロフィールは相手が言うまで聞くなって不文律ありますもんね」
「ええ、国が欲しいのはあくまで知識です。前世で犯罪を犯していても、今世で何もしていなければ罪には問えませんし、詮索することで前世持ちの人が隠すようになるのは困りますからね。1人が怖がれば、それはいずれ広がってしまいますもの。いまのところ、犯罪を犯した方は居ないようですけど……」
「前世持ちはかなり優遇されますから生活苦の犯罪とかは無くなりますよね。ってか、こんだけ優遇されてると前世持ちを騙る人とか出てこないんですか?」
「それは判明した時点で処刑だから、あんまりいないわね。見た目も引き継ぐから、バレてしまう事が多いわ。疑わしい人に即処刑だと教えれば、大抵嘘だったと告白する。それが最後通告ね。あと、親族にも最後通告するわ。それでも嘘を吐き通すなら、証拠を固めて処刑してる。一族郎党処刑だから、かなりの大罪ね。近年は、大罪だって認識が広がって前世持ちを騙る人は少ないけど、たまにいるわ」
「うわぁ……やっぱ前世とは違いますね」
「そうね、あんまり優しくはないわね。最後通告してるだけ良いのかもしれないけど。なんだかんだ言っても、平和な日本とは違うわ。処刑も基本的に公開処刑だしね」
「あれ、たまたま見ちゃって1週間寝込みました」
「分かるわ。わたくしも最初はそうだったもの」
「マリー様は、立場上処刑を見届けないといけないことも多いでしょう? つらくないですか?」
「つらいわ。でも、セドリックと一緒に居る為には仕方ないもの。そこは割り切るしかないわ。わたくしは第一王子の婚約者だもの」
「そっか……王子様と結婚するって大変ですね」
しまった……。余計な事を言ってしまいました。これでミシェル様と恋仲になるのをクリスティーナ様が躊躇したら困ります。とにかく、今はフォローして後でセドリックと相談しましょう。
ミシェル様とクリスティーナ様は、ずいぶん仲良くなったようですから、可愛い弟の恋路を邪魔したくありませんわ。
「わたくしは、今は王妃教育として見届け人をしてるけど、本来は国王夫婦の仕事よ。だから、王子の婚約者が全員処刑の見届け人をしなければいけないわけではないわ! だから、大丈夫よ!」
「マリー様……そんなに焦ってどうしたんですか? セドリック様と婚約する方もマリー様みたいに色々やらなきゃいけないんでしょうね。大変ですよね」
どうしよう!! この会話……密偵が聞いてるわよね。あぁ、ミシェル様のアプローチが効いてない事を知った王妃様がなんて仰るかしら……。
とにかく、今夜にでもセドリックと相談しましょう。
最初はクリスティーナ様への攻撃を考える貴族も居たそうですが、全てミシェル様が事前にお話し合いをしたそうです。
半年もすれば、2人の邪魔をする人は居なくなりました。
クリスティーナ様によると1年目で好感度を上げて2年目でどんどんイベントが起きるのだそうです。
だから、クリスティーナ様とミシェル様が延々といちゃついているだけで終わりました。ミシェル様は口説いてるつもりなのですが、クリスティーナ様には伝わっているか分かりません。
今日は、その辺を確認する為にクリスティーナ様とお茶会をしています。
「1年目は、ゲームはサクサク進みます。プレイ時間は2時間もないんじゃないかな?」
「2時間って結構長くありませんか?」
「やだなぁ、ゲームしてれば2時間なんてすぐですよ。1年目は誰を攻略するか決まってなければ色んなキャラとのイベントがあります。攻略対象絞ってれば1年目でラブラブになれますね。学園モノ定番の行事もたくさんあるけど、1年の時は行事で会う攻略対象と過ごすだけで邪魔は入りません。悪役令嬢も出てこないです。マリー様、本当にゲーム興味ないんですね」
「そうなの。ほとんどした事ないのよね。会社の女の子に乙女ゲームにハマっている子がいて貸してくれて、やってみた事もあるんだけど難しくて分からなくて。なぜかすぐにゲームオーバーになってしまうの」
「乙女ゲームですぐゲームオーバーって下手すぎでしょう。そういえば、私が会社でゲーム貸した先輩もそうでした。半泣きで何度やってもうまくいかないって言ってました。その先輩歴女だったから、幕末が舞台の乙女ゲーム貸したんですよね。あとで、社長夫人に何を教えてるんだって部長に怒られましたけど、社長夫人だなんて知らなかったんですもん。良い人でした。優しかったし、そういえば……マリー様にどことなく似てますね」
「わたくしが借りたのも、幕末の京都が舞台のゲームだったわ。なぜか、序盤ですぐに死んでしまって進めなかったの。いっぱい偉人が出てくるって言うから楽しみにしてたのに……」
「そうそう、そう言ってました。序盤に乙女ゲームでは絶対選ばない選択肢がいくつかあるんですけど、先輩はそれを選んじゃうんです。乙女ゲームで序盤にそんな罠を仕掛けてるゲームは珍しいから……同じゲームかも……ってか……マリー様ってまさか……川口社長の奥様じゃ……」
川口は、わたくしの前世の苗字です。結婚後ですけどね。そういえばクリスティーナ様は会った時から誰かに似てる気がしておりました。きっと、あの人でしょう。
「そうよ。クリスティーナ様の前世は、山下さんかしら? 山下 香さん。違う?」
「そ……そうです。うっそ! なんで気が付かないかなあたし!」
「お互い若いですし、髪色や目の色が違いますからね。気が付きませんよ。わたくしも先程まで気が付きませんでしたもの」
「前世持ちが多いから、前世の個人プロフィールは相手が言うまで聞くなって不文律ありますもんね」
「ええ、国が欲しいのはあくまで知識です。前世で犯罪を犯していても、今世で何もしていなければ罪には問えませんし、詮索することで前世持ちの人が隠すようになるのは困りますからね。1人が怖がれば、それはいずれ広がってしまいますもの。いまのところ、犯罪を犯した方は居ないようですけど……」
「前世持ちはかなり優遇されますから生活苦の犯罪とかは無くなりますよね。ってか、こんだけ優遇されてると前世持ちを騙る人とか出てこないんですか?」
「それは判明した時点で処刑だから、あんまりいないわね。見た目も引き継ぐから、バレてしまう事が多いわ。疑わしい人に即処刑だと教えれば、大抵嘘だったと告白する。それが最後通告ね。あと、親族にも最後通告するわ。それでも嘘を吐き通すなら、証拠を固めて処刑してる。一族郎党処刑だから、かなりの大罪ね。近年は、大罪だって認識が広がって前世持ちを騙る人は少ないけど、たまにいるわ」
「うわぁ……やっぱ前世とは違いますね」
「そうね、あんまり優しくはないわね。最後通告してるだけ良いのかもしれないけど。なんだかんだ言っても、平和な日本とは違うわ。処刑も基本的に公開処刑だしね」
「あれ、たまたま見ちゃって1週間寝込みました」
「分かるわ。わたくしも最初はそうだったもの」
「マリー様は、立場上処刑を見届けないといけないことも多いでしょう? つらくないですか?」
「つらいわ。でも、セドリックと一緒に居る為には仕方ないもの。そこは割り切るしかないわ。わたくしは第一王子の婚約者だもの」
「そっか……王子様と結婚するって大変ですね」
しまった……。余計な事を言ってしまいました。これでミシェル様と恋仲になるのをクリスティーナ様が躊躇したら困ります。とにかく、今はフォローして後でセドリックと相談しましょう。
ミシェル様とクリスティーナ様は、ずいぶん仲良くなったようですから、可愛い弟の恋路を邪魔したくありませんわ。
「わたくしは、今は王妃教育として見届け人をしてるけど、本来は国王夫婦の仕事よ。だから、王子の婚約者が全員処刑の見届け人をしなければいけないわけではないわ! だから、大丈夫よ!」
「マリー様……そんなに焦ってどうしたんですか? セドリック様と婚約する方もマリー様みたいに色々やらなきゃいけないんでしょうね。大変ですよね」
どうしよう!! この会話……密偵が聞いてるわよね。あぁ、ミシェル様のアプローチが効いてない事を知った王妃様がなんて仰るかしら……。
とにかく、今夜にでもセドリックと相談しましょう。
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