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第三十三話
「クリスティーナ、帰るよ」
「は、はいぃ……」
あれから、ミシェル様はクリスティーナ様から離れなくなってしまいました。クラスは違うのに、休み時間の度に現れます。
ミシェル様は有能で、クリスティーナ様から了承を貰った1週間後には婚約が纏まっていました。あまりのスピードにセドリックも驚いていました。
元平民であるクリスティーナ様と、王族のミシェル様の婚約は反対意見も出そうなものでしたが、クリスティーナ様は既に貴族の養子になっておりましたし、礼儀作法も問題ありませんでしたから表立って反対する者は居ませんでした。クリスティーナ様が転生者である事も大きな理由でした。
……ですが、反対する者も居るには居るのです。
「クリスティーナ様はいらっしゃいますか?」
例えば、学年が違うのにわざわざやって来るわたくしの元妹。とかですね。
「ミシェル様と帰られましたよ」
クラスメイトが答えると、元妹のマリアベルは舌打ちをしました。はぁ……なんてはしたないんでしょう。この学校では最下位の男爵令嬢、しかも爵位は継げないというのにこの態度。マリアベルが話していた令嬢は、伯爵令嬢ですのに。
「ちっ……もう! なんであんな平民が……」
「ソレル男爵令嬢、僕の未来の妹に何か用事かい?」
セドリックがマリアベルに話しかけると、いつものように媚を売り始めました。
「ああ! セドリック様! わたくしの未来のお兄様!」
「ふざけるな。お前は僕とは無関係だ」
「だってわたくしのお姉様と、セドリック様はご婚約なさっているでしょう? ああ、お姉様もお久しぶりですわ。ずっと家に帰って来られないなんて、寂しかったですわ」
「……セドリック、忠告はしたのよね?」
「したよ! 僕を疑うの?!」
「いいえ、やっぱり話を聞かないなと思っただけよ。次に来る言い訳は、寮生活で手紙が届かなかった。とかだと思うわ。まぁ、今回だけは見逃してあげて」
「はぁ……ソレル男爵令嬢、貴方はマリーとの接触禁止令が出ている。今回だけは見逃すから、今後はマリーに近寄るな。次にマリーに近寄ったら即退学だ。これは、男爵家にも通達してある」
「なっ……なんで?! このわたくしが話しかけてあげてるの! お姉様は泣いて喜ぶべきでしょう?! さっさとわたくし達の地位を元に戻しなさいよ! このわたくしが男爵令嬢なんてありえないわ!!!」
「なんでよ。出会った瞬間逃げたかったわよ。まさか普通に話しかけてくるとは思わなかったわ。むしろ貴族でいられる事を感謝してちょうだい。次に一言でもわたくしに話しかければ貴方は退学よ。貴族で居られるのはあとわずかなんだから、せいぜい頑張って学びなさい」
「わたくしが貴族でなくなる訳ないわ!」
「マリーの言う通りだよ。学園を卒業したら成人だからね。成人したら貴方は貴族ではない。貴族でいるには、貴族と結婚するか、在学中に実績を積んで認められるしかないね」
「そんな……そんな訳……」
「きちんと確かめてみなさい。家に通達はいっているわ」
「貴族と結婚って……お姉様のせいで私は婚約破棄されたのよ。責任を取ってなんとかしてよ」
「なんとかって……君がそんなんだから婚約をしなかったんだよ?」
「ローランか。そういえばマリアベル嬢と婚約していたんだったか」
「ローラン様ぁ……。どうしてわたくしを捨てたんですか……」
マリアベルは目に涙を溜めています。あざといですね。
「誤解なきように言っておきます。僕はマリアベル嬢と婚約しておりませんでしたよ」
「え?! だって婚約者に渡すんだってマリアベルはわたくしに刺繍をさせていたじゃない! 宰相の御子息はローラン様だけでしょう?」
あとは、優秀な妹君がおられた筈ですが男児はローラン様だけの筈です。
「へぇ……マリーの刺繍入りを……ローランは持ってるの……?」
しまった……。最近クリスティーナ様とミシェル様をくっつけるのに夢中で、セドリックの嫉妬深さを忘れておりました。
確かにわたくし、以前はマリアベルに刺繍を強要されておりました。けど、セドリックに渡した数の方が圧倒的に多い筈なのですが……。
「待って下さい! 確かにマリアベル嬢と見合いはしました。刺繍入りのハンカチも頂きました。ですが、婚約はお断りした筈ですよ。きちんと王家を通して断りの手紙を出していますから、調べてみてください。それから、刺繍入りのハンカチは実家を調べてお返しします。マリー様が作られた物だったのですね。早く言って下さいよ! そんな危険物持っていたら危ないじゃないですか!」
「何だと! マリーの刺繍が危険だと言うのか!」
「違いますよ! 危険なのはセドリック様でしょう?! 王子が溺愛してる婚約者の手作り品なんて身を滅ぼすアイテムじゃないですか!!!」
「セドリック、幼い頃の話だしもうやめて。ほら、このハンカチの刺繍は昨日作ったの。セドリックの顔を刺繍したのよ。どうかしら?」
「素敵だね! 素晴らしいよ! さすがマリー!」
「良かったわ。これで機嫌を直して。愛してるわ。ローラン様、ハンカチを探して頂く必要はありません。幼い頃の物ですしもう紛失しているかもしれませんもの。ね、セドリック、これからは貴方にだけ刺繍をするわ。だからお願い、怒りを納めてちょうだい」
「マリー……分かった。ローランもすまない。みんなも驚かせて申し訳ない。さっきの事は忘れてくれ。ローランには現在婚約者が居る。過去の事は分からないが、ローランの婚約を斡旋したのは僕だ。ローランに婚約者が居ないのは確認してある。マリアベル嬢……おや……居ない?」
「あのぉ……セドリック様とローラン様が言い争っている時に、怒りながら教室から出て行かれました」
「そうか。騒がせて申し訳ない。ローラン、すまなかった」
「とんでもありません。……ただその、まさかマリアベル嬢から婚約者と思われているとは思いませんでした」
「早急に調べるし、ローランの婚約者にも……」
「わたくしがフォロー致しますわ」
「ありがとうございます。マリー様。僕は絶対彼女と結婚します。あんなのに邪魔されてたまるか……」
おやおや? そういえばクリスティーナ様が、ローラン様は腹黒キャラだと仰っていましたわね。もしかして、これから本領を発揮されるのでしょうか?
「は、はいぃ……」
あれから、ミシェル様はクリスティーナ様から離れなくなってしまいました。クラスは違うのに、休み時間の度に現れます。
ミシェル様は有能で、クリスティーナ様から了承を貰った1週間後には婚約が纏まっていました。あまりのスピードにセドリックも驚いていました。
元平民であるクリスティーナ様と、王族のミシェル様の婚約は反対意見も出そうなものでしたが、クリスティーナ様は既に貴族の養子になっておりましたし、礼儀作法も問題ありませんでしたから表立って反対する者は居ませんでした。クリスティーナ様が転生者である事も大きな理由でした。
……ですが、反対する者も居るには居るのです。
「クリスティーナ様はいらっしゃいますか?」
例えば、学年が違うのにわざわざやって来るわたくしの元妹。とかですね。
「ミシェル様と帰られましたよ」
クラスメイトが答えると、元妹のマリアベルは舌打ちをしました。はぁ……なんてはしたないんでしょう。この学校では最下位の男爵令嬢、しかも爵位は継げないというのにこの態度。マリアベルが話していた令嬢は、伯爵令嬢ですのに。
「ちっ……もう! なんであんな平民が……」
「ソレル男爵令嬢、僕の未来の妹に何か用事かい?」
セドリックがマリアベルに話しかけると、いつものように媚を売り始めました。
「ああ! セドリック様! わたくしの未来のお兄様!」
「ふざけるな。お前は僕とは無関係だ」
「だってわたくしのお姉様と、セドリック様はご婚約なさっているでしょう? ああ、お姉様もお久しぶりですわ。ずっと家に帰って来られないなんて、寂しかったですわ」
「……セドリック、忠告はしたのよね?」
「したよ! 僕を疑うの?!」
「いいえ、やっぱり話を聞かないなと思っただけよ。次に来る言い訳は、寮生活で手紙が届かなかった。とかだと思うわ。まぁ、今回だけは見逃してあげて」
「はぁ……ソレル男爵令嬢、貴方はマリーとの接触禁止令が出ている。今回だけは見逃すから、今後はマリーに近寄るな。次にマリーに近寄ったら即退学だ。これは、男爵家にも通達してある」
「なっ……なんで?! このわたくしが話しかけてあげてるの! お姉様は泣いて喜ぶべきでしょう?! さっさとわたくし達の地位を元に戻しなさいよ! このわたくしが男爵令嬢なんてありえないわ!!!」
「なんでよ。出会った瞬間逃げたかったわよ。まさか普通に話しかけてくるとは思わなかったわ。むしろ貴族でいられる事を感謝してちょうだい。次に一言でもわたくしに話しかければ貴方は退学よ。貴族で居られるのはあとわずかなんだから、せいぜい頑張って学びなさい」
「わたくしが貴族でなくなる訳ないわ!」
「マリーの言う通りだよ。学園を卒業したら成人だからね。成人したら貴方は貴族ではない。貴族でいるには、貴族と結婚するか、在学中に実績を積んで認められるしかないね」
「そんな……そんな訳……」
「きちんと確かめてみなさい。家に通達はいっているわ」
「貴族と結婚って……お姉様のせいで私は婚約破棄されたのよ。責任を取ってなんとかしてよ」
「なんとかって……君がそんなんだから婚約をしなかったんだよ?」
「ローランか。そういえばマリアベル嬢と婚約していたんだったか」
「ローラン様ぁ……。どうしてわたくしを捨てたんですか……」
マリアベルは目に涙を溜めています。あざといですね。
「誤解なきように言っておきます。僕はマリアベル嬢と婚約しておりませんでしたよ」
「え?! だって婚約者に渡すんだってマリアベルはわたくしに刺繍をさせていたじゃない! 宰相の御子息はローラン様だけでしょう?」
あとは、優秀な妹君がおられた筈ですが男児はローラン様だけの筈です。
「へぇ……マリーの刺繍入りを……ローランは持ってるの……?」
しまった……。最近クリスティーナ様とミシェル様をくっつけるのに夢中で、セドリックの嫉妬深さを忘れておりました。
確かにわたくし、以前はマリアベルに刺繍を強要されておりました。けど、セドリックに渡した数の方が圧倒的に多い筈なのですが……。
「待って下さい! 確かにマリアベル嬢と見合いはしました。刺繍入りのハンカチも頂きました。ですが、婚約はお断りした筈ですよ。きちんと王家を通して断りの手紙を出していますから、調べてみてください。それから、刺繍入りのハンカチは実家を調べてお返しします。マリー様が作られた物だったのですね。早く言って下さいよ! そんな危険物持っていたら危ないじゃないですか!」
「何だと! マリーの刺繍が危険だと言うのか!」
「違いますよ! 危険なのはセドリック様でしょう?! 王子が溺愛してる婚約者の手作り品なんて身を滅ぼすアイテムじゃないですか!!!」
「セドリック、幼い頃の話だしもうやめて。ほら、このハンカチの刺繍は昨日作ったの。セドリックの顔を刺繍したのよ。どうかしら?」
「素敵だね! 素晴らしいよ! さすがマリー!」
「良かったわ。これで機嫌を直して。愛してるわ。ローラン様、ハンカチを探して頂く必要はありません。幼い頃の物ですしもう紛失しているかもしれませんもの。ね、セドリック、これからは貴方にだけ刺繍をするわ。だからお願い、怒りを納めてちょうだい」
「マリー……分かった。ローランもすまない。みんなも驚かせて申し訳ない。さっきの事は忘れてくれ。ローランには現在婚約者が居る。過去の事は分からないが、ローランの婚約を斡旋したのは僕だ。ローランに婚約者が居ないのは確認してある。マリアベル嬢……おや……居ない?」
「あのぉ……セドリック様とローラン様が言い争っている時に、怒りながら教室から出て行かれました」
「そうか。騒がせて申し訳ない。ローラン、すまなかった」
「とんでもありません。……ただその、まさかマリアベル嬢から婚約者と思われているとは思いませんでした」
「早急に調べるし、ローランの婚約者にも……」
「わたくしがフォロー致しますわ」
「ありがとうございます。マリー様。僕は絶対彼女と結婚します。あんなのに邪魔されてたまるか……」
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