Monsters・W・Class―モンスターズ・W・クラス―

青髭

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生まれたての弱者

人間と魔物の対話

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 ユークリッドは視線を一度アシュリーへと向けると直ぐにアラックに戻した。
 透けた身体から察するにゴースト系の魔物である。

「君は見たところレイスかな?」
「いや、レッサーレイスだ。今更出てきてこんなことを言うのもなんだけど攻撃はしてこないんだな」
「ふーむ、それは君も同じことじゃないか?」
「それはつまりこっちが攻撃してこなければそっちも攻撃はしないと?」
「まあ、そんなところだよ。ところで君は魔術師なのかい?」
「へ?いや、違うけど…」
「そうか、いやレイスという魔物は大概が実験に失敗した魔術師が成仏できずに彷徨って成るものと聞いているのでてっきりそうなのかと思ったんだ。では魔力が高いとか?」
「そ、そういう事もないです。あ、あの!」

 突然アラックが声を上げた。
 いや、先程から今か今かと言い出そうとしていたので意図せず声が大きくなったのだ。

「そんなに声を出さなくても聞こえているよ。で、何かな?」
「り、リーテス王国って知ってますか!?それとできればそこへの行き方とか教えてもらいたいんですけど!」
「ふむ、リーテス、リーテス、リーテス…」

 ユークリッドは噛み締めるようにその言葉を口にする。
 どうやら記憶を探っているらしくアラックはおとなしく待つ。

「すまないが私の知識の中にそのような国は無いようだ、何分私も全ての国を把握しているわけではなくてね。力になれずにすまないと思うよ。察するにそこは君の故郷かなにかなのだろ?」
「ああ、そうだ。俺の生まれ育った故郷だ」
「そうか、しかしそのなりで帰るには些か問題があるんじゃないのかい?」
「…」
「魔術師でも無い魔力が高い訳でもない者がレイスにはなりえない。君は、実に可笑しい」

 ユークリッドが視線をアシュリーへと向けた。

「そこの君も同じ境遇なのかな?」
「へ?わ、私ですか!?」
「おっと、女性だったのか、すまない骸骨姿では皆目検討もつかなくてね」
「そ、そうなんですよ!彼と同じでしてへへへ…」

 ユークリッドは一度空を仰ぐ。
 気づけば太陽は真上を過ぎて傾き始める直前だった。

「私の専門はアンデッド退治でね」
「…ましゃか!?」

 アンデッド退治と聞いてアシュリーの声が揺れる。
 アラックもなんとなくだが察しがついた。
 騎士にしてアンデッド退治を得意とするもの。

「私は聖騎士パラディン職業ジョブを得ている」

 聖騎士パラディン、騎士の上級職にして神に認められし者。
 騎士の剣技と神官の信仰系魔術を行使するハイブリッド騎士だ。
 体力、魔力共に強大で並みの者では太刀打ちできないほどだ。
 それが今目の前にいる人物だという。

 アシュリーはガタガタと震えてアラックの後ろへと隠れる。
 アラックは不思議と彼を怖いとは思わなかった。
 それが久々の人間に会えたことに対するものから来ているのか、本当にユークリッドが無害の様に思えているのかは正直分からない。
 けれどアラックは怖くないという点だけは素直に思えたのだ。

「パラディンですか、凄いですね」
「君は後ろの彼女の様に怯えないのだね」
「そう…みたいですね。自分でもなんでかよくわからないんですけど」

 アラックは頬を人差し指でかく。
 それを見たユークリッドは目を瞑る。

「フフフ、君は実に人間味あふれるレイスなのだな。こんなレイス見るのは初めてだよ」
「まあレイスはレイスでもレッサーが付くけどね」
「私は王から勅命を受けていてね。その報告をしないといけないんだ。それもできるだけ早く。およそおとぎ話の中でしか聞いたことがないような魔王という存在の片鱗。君たちは今のところ無害な様だし今は見逃してあげようじゃないか。君たちに神の御加護がありますように」

 そう言ったと思えばユークリッドはアラック達を横切って消えていった。
 今の二人ではユークリッドの足の速さは正に消えたと言ったほうがしっくりくるだろう。
 そこには圧倒的はレベルの差があったのだ。
 アラックはその事に気が付くとそこで初めてユークリッドが少しだけ怖いと思った。

「な、なななな、なにしてやがりますかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「う、うるさ!?」

 突然荒れ狂うアシュリー、それは正にモンスターの姿である。

「バカじゃないの!?相手はこの大陸、しかもこの森に単騎で来れるような正真正銘の化物なのよ!?そんな相手にバレてたとは言え前に出るなんてバカじゃないの!?」
「二回もバカって言うことないんじゃ」
「バカよバカ!バカすぎるわよ…」

 力が抜けたのか急にへなへなと崩れるアシュリー。

「こ、腰ぬけた…」
「いやちゃんとついてるよ」
「言葉の綾よ!スケルトンジョーク!」
「って、ここってどっかの大陸なの?」

 アラックは色々と知らないことがまだあるんだなと思った。
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