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プロローグ
しおりを挟む今の季節にしては暖かい。
放課後の校舎裏……。
「…好き」
俺の聞き間違いだろうか?
今、目の前にいる
俺の憧れの先輩の口から…
いやいや、そんなはずは…
それとも、願望が強すぎて、都合のいいように聞こえたのか?
『オレにも、好きって聞こえたぞ‼』
そうだよな! やっぱり… って。
お前もいたのか?
『当たり前だろ、オレたち一心同体なんだから』
一心同体って…学校には来るなと、あれほど言ったのに。
なんて言ってる場合じゃない。
「すみません。先輩、俺の聞き間違えだと困るので、もう1回、言ってもらえませんか?」
そんな俺の言葉に、少しはにかみながら… ちょっと怒ったような調子で、開いた口から聞こえてきたのは…。
「真聖君が……好き」
やっぱり、聞き間違えじゃない。
思わず、握りこぶしをつくり、小さくガッツポーズをした。
「俺も、先輩のことが好きです」
やっと言えた。
今まで我慢したかいがあった。
俺たち、両思いだあー。
『良かったなー』
でも、先輩の顔は青ざめていて、何か言いたそうに見つめている。
「真聖君の気持ちはうれしいけど…、付き合う気はないの」
エッー、どういうこと?
両思いなのに… 付き合わない…。
何のための告白だったんだ?
「そっそれはどういうことですか?」
さっきまでの幸せ気分が、一気にしぼんでいく。
「もうすぐ卒業でしょ。だから… 気持ちだけ伝えたかったの」
そんなあ~。
俺の気持ちは… どうなんの?
これからバラ色の人生が送れるはずだったのに…。
でも、どうすることもできない。
「わかりました…」
仕方ないよな。
『マサキ… 本当にいいのか?』
いいんだ。先輩の気持ちがわかっただけでも…。
「本当にごめんなさい。真聖君」
そう言って、先輩は、背中を向け帰って行った。
ひとり残された俺は… 空を見上げ、こぼれる涙をこらえた。
『マサキ、我慢しないで、泣いていいんだぞ』
あぁ、そういえば、お前はいたんだったな。
情けないとこ見られたな。
『気にすんな。相棒だろ』
サンキュー。
お前がいてくれて良かったよ。
この短い時間で、天国から地獄って… ツライなぁ。
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