あっち向いてホイっ!

ありま

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    俺、魔法の国の第三皇子。
 
 皇子といっても…  役に立つ魔法を使えない落ちこぼれ…。
 
 本当に小さな魔法の国。
 
 一年中、花が咲き乱れ、空はどこまでも青く、大きな湖に、豊かな緑が広がって……。
 
 争いごとも無く、皆が笑顔で、仲良く暮らしてるそんな国。
 
 だから…  魔法が使えないことが…  こんなにも苦しい。
 
 第三皇子だから…。
 
 王位を継ぐわけじゃないから…。
 
 自分のことじゃないから…。
 
 誰も本気で心配してくれる人がいない。
 
 父も…  母も…
 
 
 生まれた時に、皆、魔法を使えるようにするために、相棒が降りてくるんだけど…。
 
 自分以外の人には見えない。
 
     一心同体の生き物が……。
 
 もちろん、俺にもいる…  カメレオンの茶々丸。
 
 とってもカワイイ奴なんだ。
 
 目玉がクリクリして、色はコロコロ変わるし、体も大きくなったり、小さくなったり、変幻自在。
 
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 瞬間移動も出来る、優秀な相棒なんだけど…。
 
 問題があって、声の大きさが…
 
 興奮すると、我を忘れて叫ぶから、ヒヤヒヤさせられる。
 
 そんな時は、魔法の呪文…。
 
 俺が使える、たった一つの呪文
 
「あっち向いてホイっ!」
 
 俺以外の人は、呪文を念じるだけで、思い通りになる…  けど…。
 
 何度やっても、うまく出来なくて…  
 
 声に出すから…  周りの人には、変な目で見られるし…。
 
 
 相棒には、満足している。
 
 ただ…  どうしようもなく……。
 
 俺の潜在能力が、元々低いらしい。
 
 集中力も…続かないし…。
 
 努力すれば出来る。
 
 とか、励まされても… 
 
 そんなもん、どうやって鍛える。
 
 どうすりゃいいんだぁ?
 
『ごめんよぅ、マサキ…  オレの力不足で…』
 
「何、言ってんだぁ。俺の問題だろ、お前のせいじゃない」
 
『でもよー、このままじゃあ……  ダメだろ?』
 
『第三皇子とはいえ、一応、王族なんだから…』
 
「そんな事、言われなくても、解ってるッ!」
 
 俺だって、出来るもんならとっくにやってる。
 
 どうにも出来ないから、こんなに悩んでるんだ。
 
 この国の人達には、出来ない奴の気持ちなんか…  解らない。
 
 絶対に……。
 
 
 そうだ!?
 
 どこか…  他の国で修行…  なんて出来ないかなぁ?
 
「どう思う?  相棒」
 
『いいと思うぜ‼』
 
「そうと決まったら、善は急げッ!」
 
『おーい、どこに行くんだあ?』
 
「あぁ…、うん、前から気になってた国があるんだ。」
 
『どこなんだい?』
 
「それは…、国王の許可がおりたら、教えるよ」
 
 行くとなったら、準備が大変だぁ‼
 
 でも…?
 
 何を準備したらいいんだ?
 
 誰か行ったことあったかなぁ…。
 
 うーん。
 
 とりあえず…、なんとかなるよな?
 
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