あっち向いてホイっ!

ありま

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「今日は、転校生を紹介する」
 
「エーッ!」
 
「先生、女?  男?」
 
「今、呼ぶから、静かにしなさい」
 
 ざわつく教室。
 
 ヒソヒソとささやきあう声。
 
 そりゃそうだ、3日前に、入学式があったばかりで…転校生って??
 
 誰だって、不思議に思うだろう。
 
 何か、やらかした…  アブナイ奴なんじゃないか…
 
 とか…  考えるよな…  普通。
 
 
 本当は、入学式に間に合うはずだったんだ…。
 
 ちょっとしたトラブルさえ無きゃ…
 
 そもそも、俺のいる魔法の国と、ここ日本は、時間にズレがあるらしく…
 
 気がついた時には、入学式が終わってたぁー。
 
 なんて初歩的なミス!?
 
 ありえないよなぁ。
 
 まあ、今まで、日本に来たことがある奴なんて、いなかったから…  しょうがないんだけど…。
 
 どうせなら、入学式…  出たかったなぁ~  残念。

「入りなさい」
 
 うわー、呼ばれた。
 
 緊張するゥ。
 
 皆、こっち見てる。
 
 
「な~んだぁ~  男か」
 
 残念がる、男子の声。
 
 悪かったなッ、男で…。
 
「ちょっと、イケメンかも…」
 
 なんて、嬉しそうな女子の声も聞こえてきて…
 
 結構、可愛い子多いな~  ムフッ。
 
 なんて言ってる場合じゃない。
 
 自己紹介って、どうすりゃいい?
 
 軽く、パニックになりかけ…
 
 心臓バクバク、目が回りそう…
 
 ヤバっ!
 
 俺の緊張が…  
 
 もう限界…  
    
 かも…?
 
 そのとき……。
 
『名前を言え、あと、特技とか…』
 
 サンキュー!  相棒。
 
 やっぱ、頼りになるぜぇ~。
 
 だけど…  それ以上は、大きな声、出すなよ。
 
 頼むぞ……。
 
 初日から、変な奴だとは、思われたくないからな。
 
 え~と、名前と特技?
 
 特技~?
 
 急に言われても…
 
 特技なんか…無い…よなぁ。
 
『無ければ、よろしくお願いします。
だけ言え』
 
 おう、わかった。
 
 相棒に促されるまま…
 
 考え込んでいると、
 
 そこに、先生の声が聞こえてきた。
 
「自己紹介をしてください」
 
「…はい」
 
 震える声で返事をし、それでもなんとか…  
 
 深呼吸…  落ち着いて…。
 
「桜井  真聖です。  よろしくお願いします」
 
 よっしゃぁー。
 
 言えたぞぉー。
 
 小さなガッツポーズをし…
 
 ホッと、一安心。
 
「よろしくねぇ~」
 
「ヨロシク~」
 
 と、あちこちから、声があがり…
 
 パチパチと、拍手が起こった。
 
 まずまずの出来だろう。
 
 席に着いたとたん、隣から、声がかかった。
 
「橘  まことです。よろしく」
 
「あっ、桜井  真聖です」
 
 あわてて返事をし、よーく顔を見てみると…
 
 日焼けした小麦色の肌に、目鼻立ちのハッキリした、ショートカットの綺麗な顔があった。
 
 身長は、俺より高そうだけど…、男…?
 
 いやッ、スカート穿いてるッ!
 
 女…かぁ。
 
「部活、何やってた?」
 
「へッ、部活…?  えーと…  何にも」
 
 部活ってなんだ?
 
 俺の国には、そんなの無い。
 
 挙動不審になってる俺に、構わず…
 
 話しかけてきて、
 
「バスケなんてどう?」
 
 聞かれても…
 
 部活を知らない俺に、バスケがわかるわけないだろっ。
 
 ひとりツッコミをし、
 
「バスケって、楽しいぞう。放課後、見学に来いよ」
 
 おいおい、俺の顔みて、興味ないの気づかないか?
 
 これでもかといわんばかりに、バスケについてのうんちくを披露され…
 
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 やめる気配…は無いな。
 
 頭の中は、もう、パニックで…
 
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 と、大声で叫びそうになる。
 
 我慢の限界…
 
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 やっと言えた。
 
 ちょっと、キツかったかな?
 
「ああ~そっかぁ、悪い」
 
 気にしてないみたいだな。
 
「いつでもいいから、見学」
 
 見学って……。
 
 まだ、言う?
 
 そこは諦めてくれよー!
 
 でも、断れない…  気弱な…  俺。
 
「…  考えとく」
 
 とりあえず、言ったけど…
 
 
 本当に、バスケって、なんだろう?
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